Harvest Museum

ウィルさんの作品

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1.●▲の秋 (10/15 up)


第一話「●▲の秋」

 カロッテ村は年中温暖な気候で、正直季節感などは全くない。
 でも、やはり新しい季節を迎えると、これをしなくてはいけないとか、あれをしなくてはいけない、というようなことを考えることがある。
「ということで、お兄ちゃん。秋といえば、何がある?」
 切り株に座っていたヴィオは兄であるバルテルに突然尋ねた。
 妹の思いつきにつきあわされるのはいつものことなので、にんじんの種をまいていたバルテルは汗を拭いながら嘆息混じりに答えた。
「そうだな。芸術の秋とかあるな」
「……お兄ちゃんらしくないなぁ」
「うるせぇ」
 ヴィオはバルテルのいったことを考え、そして決意したように立ち上がった。
「よし、芸術っぽいの探してくるよ!」
「探してくるって」
 バルテルの質問を無視し、ヴィオは店番を頼むと、そのまま旅立っていった。

<しばらくして>

「ただいまぁ~」
 ヴィオはそこにいろんな物体を並べた。
「なんだ? これは」
 バルテルはその中から一つ選んで尋ねた。それは、魚のひらきであった。
「アジのひらきよ。でも、これは作り物なの。凄いでしょ」
 他にも、部屋には折れた剣やら、ぷにぷにの像やらが並んでいた。
「凄いでしょ。これだけ集めるのに、魔物を100匹以上倒したんだから」
「・・・・スポーツの秋にはなってるかな」
 その日のうちに、全ての商品は完売した。
 どこの誰が何の目的で買ったかは知らないが、やはり、芸術の秋だからなのだろうか。
 もう、そのころには蒔いていた種が、もう収穫間近まで成長していた。





2.収穫 (10/15 up)


第二話「収穫」

 にんじんは年に二度収穫する時期がある。
 夏と秋というのが一般的らしい。
 もっとも、先ほども言ったが季節感のないカロッテ村では年中収穫していた。
「おい、ヴィオ。今日はにんじんの収穫するから手伝ってくれ」
 それほど大きくはない声で、バルテルは二階でまだ眠っているヴィオを起こそうとした。本来ならその倍のオクターボの声で叫ばないと起きないだろうが、今日は別だった。
 0.1秒後、急にどたばたしてきた。そして、3秒後、彼女は降りてきたのだった。
「だぁぁぁっ! 最後まで服を着ろ!」
 ヴィオは最後まで服をきておらず、あちらこちらから下着が見え隠れしている状況で一階まで転がり落ちてきた。
「にんじんの収穫だよね」
「ああ。だから、最後まで服を着ろ」
 妹とはいっても、艶やかな肢体があちらこちらから覗いているという状況を見るというのは男にとっては恥ずかしい状況なのか、バルテルは手で目を覆ってヴィオに叫んだ。
「はぁい!」
 ヴィオは服を最後まで着ると、元気よく返事した。


「収穫中のにんじんを喰うなよ」
 バルテルは収穫前、最初にヴィオにそう言い放った。
「はぁい・・・」
 少し悔しそうに返事するヴィオ。だが、バルテルは意地悪でいっているのではない。念を押さないと、ヴィオは土のついたままにんじんを食べてしまいかねないからである。
 収穫を始めて数十分。半分くらいの収穫が終わっていたそのときであった。
「キャー、お兄ちゃん、ミミズが!」
 その悲鳴はヴィオのほうから聞こえてきた。
 女の子らしいところもあるんだなと、バルテルは立ち上がりミミズを取ってあげようとした。だが――
「お兄ちゃん、どうしよ。この子、死にそうだよ。」
 どうしろというのだろう。
「いつも土を耕してくれる影のにんじん生産者なのに」
「・・・・ああ、そうだな」
 なぜか、その数時間後、ミミズの墓を作らされたバルテルなのであった。
 木でできているが、なかなか立派な墓であった。





3.アトリエ愛 (10/15up)


第三話「アトリエ愛」

 ヴィオのアトリエは店の中にある。
 そのために困ることがいろいろあるのだ。
 まずは爆発。火薬関係を扱うとたまにあることだが、当然客はびっくりする。
 そして、異臭。当然、客は快く思わないだろう。
「ということがあるの。アイゼルさん」
 バルテルがミミズの墓を作っている間、ヴィオはアイゼルと世間話をしていた。
「なるほどね。私のときは工房の中での商売はせずにお店に卸していたからそこは気付かなかったわ」
「そうなんです。何かいい方法ありませんか?」
「それはね、気にしないことよ」
「え?」
 アイゼルは昔話をした。
 アイゼルの同級生の女の子の話なのだが、彼女は昔から工房でいろいろなことをしていたらしい。ケムイタケを暖炉の近くに置いたために小火騒ぎを起こしたり、妖精を大 量に呼んで数日間もどんちゃん騒ぎをさせたり、爆発や異臭騒ぎもよくあることだったが、それでも彼女の店は人気であったらしい。
「へぇ、そんな人がいるんですね。私、自身が持てました」
「それはよかったわ。チーズケーキの好きな普通の女の子だったんだけど、今頃どうしてるかしら」
 そして、アイゼルは遠い目で遥か向こうの故郷を思い出していた。
「あ、アイゼルさん。ミミズがいますよ」
 ヴィオはミミズを持ち上げて、アイゼルに見せた。
 アイゼルは少し引きつった顔をしながら、
「ヴィオ、あの子に少し似てるかも」
 アイゼルはそう呟いた。
 昔の肝試し
『ねぇ、アイゼル。ほら、こんなに大きい蛇がいるよ!』
『ちょっとエリー、捨ててきなさいよ!』
 そのとき、アイゼルは本気で逃げたという。
(そういえば、あの子、元気にしてるかしら)
 アイゼルは少し微笑み、過去のことを思い出していた。





4.学園祭 (10/15 up)


第四話「学園祭」

「そういえば、アイゼルさんの住んでた街って学校あったんですよね。何か、変わったこととかあったんですか?」
「そうねぇ」
 アイゼルは思い出すように昔のことを思い出した。

<数年前>

 アイゼルは一人でアカデミーの学園祭を見ていた。
 人だかりの向こうは伝説の錬金術士、マルローネさんの残した偉業のブースがあるらしいが、人が多く、アイゼルは諦めた。
 だが、出てきた人が失望しているか大笑いしているのはなぜだろう。
 マルローネさんを尊敬している人ならたいてい、その素晴らしい偉業を見て喜ぶはずなのに。
「ま、とりあえず何か食べようかしら」
「アイゼル~! チーズケーキ食べていかない?」
 そこで、エリーはチーズケーキを販売していた。
 一つ銀貨3枚(300円相当)だよ!
「味は期待しませんけど、一つ頂くわ」
 味を期待していないのは本当であった。友達の義理とは言わない。
 そして、アイゼルは一口食べた。
「あら、おいしい」
「でしょ。結構作るの大変だったんだよ」
「そうなの? 材料は何を使ってるの?」
「ほとんどの材料はね、シャリオミルクでできるの。あとは魔法の草と……」
「魔法の草・・・?」
 食用だったかしら?
「ぷにぷに玉かな」
「ぷにぷに玉・・・」
 アイゼルは錬金術士である。
 きっと、エリーは普通のケーキの手法ではなく、錬金術士で作ったことは想像できた。
 だが、チーズケーキを錬金術で作るなど。いや、作れるだろうが、それだけの材料でチーズケーキを作ることなど、エリーのレベルで可能なのだろうか。
 アイゼルはその一晩、ずっと悩んだという。幸い、お腹はこわさなかった。
 後日談であるが、エリーのチーズケーキは飛ぶように売れたが、当然原価割れしており、大赤字であったらしい。





5.詩 (10/15 up)


第五話「詩」

「あはは・・・学校といっても、みんな勉強してただけよ」
 アイゼルはすこし青ざめた顔で歩いていった。
 そのころにはバルテルはもうミミズの墓を作り終えている。
「じゃ、家に帰るか」
「うん。」
  
 その日の晩御飯は言うまでもなく、にんじん尽くしであった。
 そして、夕食後。
「お兄ちゃん。ちょっとそこに座ってて」
 食事のあと、自分の部屋にもどろうとするバルテルをヴィオは制した。
 そして、スネアトロメル、カリヨンオルゴル、三叉音叉、オーラなどの楽器を並べる。
 するとどうしたことだろう。楽器が一人で二鳴り始めた。
「全部に『生きてる』の属性を加えたの」
 そして、ヴィオは歌い始めた。
 それは、感謝の詩であった。
 農作物を育ててくれる大地に。
 魚をいざなってくれる海に。
 そして、自分を愛してくれる人々に。
 ヴィオは感謝の詩を歌った。
 そして、
「どうだった? 音楽の秋は?」
「ああ、よかった。だがな、ヴィオ」
 バルテルは頬杖をついて、半眼で答えた。
「もう、冬だ」
「え?」
「おまえが芸術品探してる間に二ヶ月過ぎた。今日は12月だ」
「・・・・そうなの?」
 ヴィオは信じられないような口調でそう呟くと、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
 そのころ、カロッテ村の近くの平原で大地震がおこったり、カロッテ村の人々の調子が悪くなったりしたのは、ヴィオの鳴らした楽器のせいなのかそうでないのかは定かではない。




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