Harvest Museum

あいうえさんの作品

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1.●▲の秋 (10/18 up)


「食欲の秋」
 
 
 すっかり日も暮れて、ライナーたちはネモの宿屋「宵の明星」に泊まることになった。
 宿内の酒場の店主であり、オリカの幼馴染でもある歌姫クレアの好意により酒場を貸しきってもらい、夕食を済ませる。
 その後は、キッチンの片付けを手伝う者、割り当てられた部屋で自分の時間を過ごす者などそれぞれの方法で英気を養っていた。
 
 ライナーは夕食後、自分に割り当てられた部屋で熱心にグラスメルクを行っていた。
 旅先で多くの材料を見つけることができたため、好奇心の強いライナーは今まで挑戦したこともないような難度の高いレシピに挑戦していた。
 部屋には必ずといっていいほどオリカ、ミシャ、シュレリアなどの3人のレーヴァテイル達の誰かが出入りし、ライナーが製作したアイテムに、呼ぶのにちょっと抵抗があるような珍妙なセンスの名前を付けるのが日常茶飯事になっていた。
 しかし、今夜は珍しく誰も部屋に来ていない。いたらいたで何処か抵抗があるものの、いなかったらいなかったで少し物足りない。ライナーはそんな気分を味わっていた。
 そんな静けさもあってか、窓の外ではスズムシやマツムシ、コオロギなどが己が美声を誇示していた。
「ああ・・・もう秋なんだなー」
 レシピカードに書かれていた幾つかのアイテムを製作し、大きく伸びをしたライナーが呟いた頃には時計の針はもう10時を回っていた。
 7時頃に夕食が終わって3時間。必死に作業をしていたライナーの腹の虫も外の虫たちに負けないほどの音量で大きく鳴いた・・・
「腹減ったなぁ・・・。食欲の秋ってやつかもなぁ・・・」
 なんともなしに呟いた言葉と同時に部屋のドアがノックされた。
 
「ライナー?入るよー?」
 ドアをノックしているのはおそらくオリカだろう。
「ああ、オリカか。入ってもいいよ。」
 ライナーが許可すると同時に入ってきたのはノックした本人だけではなかった。
「お邪魔しまーす。」
「失礼しますね。」
「ミシャ!?それにシュレリア様まで!3人とも一体どうしたんだ?」
 色恋沙汰に鈍感な本人はあまり気付いてはいないが、この3人の少女はライナーをめぐって恋の鞘当をしており3人が同時にライナーの部屋にいるのはとても珍しいことだった。
「ライナー、お腹空いてないかなぁって思って。」と、ミシャ。
「それで、私達3人でライナーにお夜食でも作ってあげようということになって・・・。」と、シュレリア。
 普通の男なら自分に好意を持っている女の子3人にここまでされたら嬉しさのあまり卒倒してしまうだろう。しかしライナーの反応は違っていた。
「さ、3人で協力して作ったのか・・・?」とライナーは恐る恐る聞いた。
 ライナーがこんな態度を取るのにもしっかりとした理由がある。
 以前にも彼女達が料理の腕を振るったことはあるのだ。ミシャは料理が得意で、今までも沢山の料理を振舞ってくれた。
 しかし問題なのはオリカとシュレリアの2人で、彼女達の料理を見たものはしばらく唖然としてしまうだろう。
 オリカが以前作ったものは、パフェ皿にドッコイ定食をこれでもかと盛り付け、生クリームをかけた「ドッコイパヘ」や、文字通りネロネロとした喉越しのソーダに焼肉(!)を入れた「焼肉ソーダ」などを。
 そしてシュレリアも、オリカほどではないものの、かつてメガミルクにオパールライスを加えた「メシジュース」なるものを振舞っている。
 これらの味がマズイのであれば2人を責める事もできるだろう。しかし不思議なことに彼女達の料理はとても美味なのだ。これにはライナーだけでなく他の仲間たちも首を捻っている。
「うん、そうだよ。今回はあたしとミシャちゃんとシュレリア様の合作だよ!」
「へ、へぇ・・・そうなのか。それは楽しみだなぁ・・・」
 ライナーの顔がやや引きつっているように見えるのは気のせいではあるまい。

 そんな訳でライナーは酒場へと案内された。これからどんな料理が目の前に現れるのか。ある意味恐怖にも似た感情で待っていた。
 そんな時間も長くは無く、3人が蓋を被せた盆をライナーの前に置く。
 もったいぶった動作でミシャが蓋を持つ。ライナーは服の下を嫌な汗が流れるのを感じた。
「ジャッジャジャーン!!」
 お決まりの台詞と共にミシャが蓋を取り、中のものをライナーの目に晒す。
 ライナーは絶句した。
 それは料理の名を語ったカオスだった。
 軽く3人前は入ろうかという巨大なパフェ皿から溢れんばかりに盛られているのはご存知ドッコイパヘ。
 生クリームの代わりに盛り付けられているのはオパールライスの量を当社比5割増くらいにはしたであろうメシジュースがかかっており、サイドには大人の握り拳小はあろうかという大自然アイスが2つ。
 極め付きはパフェ皿の縁で、隙間も無いのではないかというほどビッシリと焼肉が敷き詰められていた。
「どう?ライナー?驚いて声も出ないでしょ?」
「名付けて『大自然ドッコイ焼肉パヘのメシジュース和え』!!凄いでしょ!」
「私達、ライナーの為に作ったんですよ。さぁ、召し上がれ」
 できるなら丁重にお断りして逃げ出したかったが3人の極上の笑顔に阻まれてライナーは自分の性格を呪いつつスプーンを取った・・・。
「いただきます・・・」
 
 1時間かけて完食し、精一杯の笑顔で「ご馳走様、とても美味かったよ」と言うとライナーはフラフラと部屋への帰路をとった。
 美味しかったという感想に嘘偽りは1つも無かった。だが、見ただけで食欲がなくなってしまうような料理を大量に食べた為に胃袋だけでなく精神もボロボロになっていた。
 部屋に着き、そのままベッドに倒れこんだライナーは、
「もう食欲の秋なんてたくさんだ・・・」
と、一言呟き、そのまま意識を手放した。
 
 ライナーが食べ過ぎによる腹痛で3日ほど生死の境を彷徨ったことは言うまでも無い・・・。





2.収穫


3.アトリエ愛


4.学園祭


5.詩




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