善意の裏には悪意が詰まっている ◆xzYb/YHTdI


レストラン。

そこに名などなく。

ただ、レストランという表記がなされている。

そんな場所で。

ただ一人。

男がいた。


名を、時宮時刻という。


そして彼の称号は、《時宮時刻》。

 ◇

まだ否定姫が訪れていない頃。
時宮時刻はここ、レストランに訪れた。
その室内は冷房が利いているのだろう。
いわいるエアコンというものからひんやりと冷気が零れている。
その冷気が傷に沁み渡り、最初は痛く感じて顔を顰めていたが、
慣れてきたのであろう。
いつも通りの澄ましたような顔に戻る。
―――いや、少し顔は綻んでいるように見えた。

「世界の終焉もあと一日も経たずとして、訪れてもおかしくは無いな」

やけに物騒な事を呟く。
勿論普通の人物が、普通の状態で、普通に発した状況であれば、絵空事だと冗談で終わる話で済むが、この場合は違う。
呪い名という人物が、左腕がもげた状態で、殺し合いという状況で発した言葉のだからなかなか馬鹿に出来ない。
それに、現在進行形という形で、《人類最終》こと想影真心が暴走している。
確かに、世界が終わってもおかしくはなかったこの頃である。

人類を最も終わらせられることのできる橙なる種、想影真心。

彼女を止められる可能性をもつのは、現在考えらる上では、


この両名に加え、

想影真心。

本人しかいないだろう。

しかし、だ。それは変えられる。
殺し名だろうが、呪い名だろうが、虚刀流だろうが、忍者だろうが、『魔法』使いだろうが、
怪異だろうが、普通だろうが、特別だろうが、異常だろうが、過負荷だろうが、悪平等だろうが。
可能性自体はもっている。
ただし、《零崎》に限りは既に滅ぼされている身。可能性が格段に下げられてこそいるけれど。

閑話休題。

その物騒なことを呟いた時宮は厨房近くにあった、救急箱を右腕で取り出す。
ただそれだけのことで、少しバランスを崩す。
それもそうだ。
今まで、どんな時、どんな場所、どんな経路を辿ろうがそこに存在し続けていた身体が一部が破損しているのだ。
今までどおりに身体のバランスをとろうとしていては、バランスは崩れる。
しかし、これに関しても、慣れろ。ということなんであろう。
狐のセリフを借りるのであれば、それはどちらにしても同じこと。
結果的には変わらない。

「――――ふむ、これでいいか」

そんなこんな言っている間に、彼は消毒を手早く終わらせていた。
しかし、彼にはまだやることがあった。

「さて、手荷物を整理でもするか」

ディパックの整理。
今の五体不満足である彼にとってこのディパックは重すぎる。
ましてはリュック型をしているディパックを片方の肩にしかかけられずあまりにも、負担が大きかった。
だから、今後使いそうにないものは、ここに放置するか壊しておく。
そんな考えの元、ディパックからま飛び出してきたものは、

「自転車、マウンテンバイクか。――――放置だな。というか今までよく持ててたな」

それは、阿良々木暦のお気に入りであったマウンテンバイクである。
かつて、神原駿河―――否、レイニーデヴィルに破壊されたそれが、彼の目の前にあった。
そんな自転車を、彼は捨てる。
まずそもそも、片腕の彼に自転車を乗らそうなど、不可能ではないがあまり難しい。
かといいつつ、持ち歩くには重かった。
破壊をしないのは、そんな労力をここで割けたくなかったから。
勿論この自転車を第三者が使用しようとするかもしれないが、よほどのことがない限り、自身には影響しない。
移動速度が速くなろうが、どちらも同じこと。
やられるときは、どうあ足掻こうともやらるのだ。想影真心などにとっては無意味も無意味。
むしろ、山道などでは小回りが利くのはやはり徒歩だ。
そう言う意味で森に身をひそめる分には、これを譲歩すればいい。
だからこのマウンテンバイクは放置することとなった。

次に取り出したのは……。

「―――――錐?」

それを人は、錠開け専門鉄具(アンチロックブレード)という。
推理小説の重要なるキーワード、『密室』を見事にぶち壊してくれる一品である。
しかし、中途半端に鉄の重さを兼ね備えているため、判断に困る。
ここに、鍵がされている場所などあるかどうかが不明でもあり。
それでも結果としては。

「まぁ――――もっておいても損は無いだろう」

そういう判断に辿りついて、それをディパックへと仕舞う。
決断は早く、行動も早く、最後の支給品があるか確かめてみる
そうして最後に取り出したのは―――――。

「酒、か」

そう、酒。
某戯言遣いが嫌うあれである。理由は自業自得とはいえども。

「いらないな」

即決だった。
それも、当然だと思うが。
なにせ、酒だ。むしろ使用したら終わりな品物。


ただし今回に限り、ただ放置するだけでは彼は終わらなかった。



「酒。酒―――――か」


その支給品である酒の名称は『ジーマ』といい、
透明で、泡も目立たず、アルコール度数もビールと同じか劣るぐらい。
――――細工をしやすいと言えばしやすいだろう。

「さて、まぁどの道この酒に使い道は無いのだ。やってみる価値はある」

彼は考えは、これを水割りしたのち、ただ放置する。
それで、近寄ってくる馬鹿がいたとしてそれを飲み、勝手に自滅をしてくれるようなのであれば、そっちの方が好都合だ。
まぁ勿論、アルコール臭はするし、味は少なからずするし、大体こんなあからさまに怪しい物体を飲むかと言ったら飲まないのが普通だ。
水割りするのは、あまりにあからさま過ぎるのを防ぐだけである。ようはほとんど何の意味もなさいない。
だから、これは保険にもならないただの行為。
しかし、どうせ支給された品を使い方を考えつけるのに、ただ捨てるだけなのは些か勿体ないという感情に支配され、それを開始した。
奥の方からコップを取り出す。

 ◇

数分後。
その品物は完成した。

「まぁ――――こんなものだろう」

そして、それはそのまま冷蔵庫へと消えていき、後に否定姫によって飲まれることとなる。
それが意味するは、彼の行為は無駄ではなかった。ということだ。
しかし彼は特別、酒を嗜む訳ではないと思われる。
飲んで市販のビールと言った類だろう。
なので、その水の分量をどれほどのものにしたかはわからない。
それは、否定姫にとって、そのアルコール分はどれほど伝わったかわからないことを意味する。

そんなこと、彼の知る由ではないが。


「さて―――――次に進もうか。目指すは」


スーパーマーケット。

食料の補給だ。
腹も減る頃だ。支給品の食料は携帯食として残しておいた方が無難であるし。
ちなみに、レストランは冷凍された食品ばかりで噛むことすら叶わない物ばかりであった。
勿論先に提示した森にひそめるという案もあるが、空腹に変えられるものではない。
今はただ血になりそうなものを食わなければ、血は足りないという物だ。


そうして、時宮は再び動き出した。


否定姫が訪れたころには、彼は既にレストランは遠くに見えた。
放送が間もなく始まる。



【1日目/早朝/G-7】
【時宮時刻@戯言シリーズ】
[状態]背中に負傷、左腕欠損 (共に消毒他簡易的な治療済み)
[装備]
[道具]支給品一式、錠開け専門鉄具@戯言シリーズ
[思考]
基本:生き残る。
 1:できるだけ多くの配下を集める。
 2:この戦いを通じて世界の終焉に到達したい。
 3:スーパーマーケットにて食料補給


[備考]
※「ネコソギラジカル」上巻からの参戦です。


[操想術について]
※対象者と目を合わせるだけで、軽度な操想術なら施術可能。
※永久服従させる操想術は、少々時間を掛けなければ使用不可。
※否定姫がアルコールをどう反応したかは不明です。


[レストラン]
※阿良々木暦のマウンテンバイクがレストランの内部、もしくは周辺のどこかにあります。

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「鬼」そして《鬼》 投下順 骨倒アパートの見るものは
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最終更新:2012年10月02日 08:50