真庭狂犬の災難 ◆H5vacvVhok


 そこは、とあるネットカフェの一室。 そこで、二人の少女がのほほんとくつろいでいた。
 一人は、女子高生のような格好をしていて、頭にかぶったニット帽が妙にチャーミングな娘である。
 もう一人は、手に入れるのが非常に難しいとされる『澄百合学園』の制服を身に纏い「うにー」っと床に寝そべっている青い長髪が印象的な娘だった。

 無桐伊織玖渚友である。

 玖渚は、なにやら寝そべりながらパソコンを弄ってるようだ。 それを後ろから眺める伊織は「ううー」と唸っていた。
「玖渚さん。何か有益な情報は見つかりましたか?
 例えば、人識くんの居場所とか、人識くんの居場所とか、人識くんの居場所とか」
 それに対して玖渚は「うにー」と首を傾げ
「う~ん、ここのネット回線が外部と切断されちゃってるみたいだからどうしようもないね~」
 と暢気に言ってのけた。
「せめて、ちーくんと連絡が取れれば何とかなりそうなんだけどね~」
 これじゃあ駄目だね、っと笑う玖渚。
「そうですか。それじゃあ、仕方がないですねえ。私も双識にいさんを見習って、探し回るとしましょうか。
 じゃあ、いきましょう。玖渚さん」
「うに~」
 と、その場を後にする二人組みを付けねらう影があった。

☆ ☆ ☆

 そこは、とあるネットカフェの一室。
 そこに獲物を前にした狼の如く、全神経を二人の少女に向けている影があった。
 その影は、袖のないしのび装束を身に纏い、体中に鎖を巻きつけている。
 その格好だけでも十分に奇怪なのに、体中にはびっしりと刺青が彫ってあった。
 よく見ると女のようだった。
 『伝染の狂犬』こと真庭狂犬である。
 狂犬の殺意と殺気は嘗てないほどに研ぎ澄まされていた。
 この戦いに勝ち抜けば、真庭狂犬の悲願―――真庭の里の再興が現実のものとなる。
 真庭の里を誰よりも大切に思う狂犬は、己の全てをこの戦いに賭けていた。
 負けることは許されない。
(みんな、待ってな! あたしが必ずみんなを救って見せるから!!)
 仲間の姿を思い浮かべ、真庭狂犬は二人の少女に飛び掛った。

☆ ☆ ☆

 真庭狂犬の凶刃が、二人の少女に炸裂しようとしていた。
 完全に気配を消した真庭狂犬は普通の人間ならば、まず感知できないし、
 また感知できたとしても、その頃にはもう狙われた人間は死んでいる。
 まさに完全無欠の暗殺術である。
 普通の人間ならまず、逃れることはできないだろう。
 そう、普通の人間なら……。

 そして、刹那。
 地面に倒れ伏しているのは……

 真庭狂犬であった。

「?」
 無意識に殺気を察知して狂犬の顔面に一撃を喰らわした無桐伊織は、何が起きたのか理解できない様子だった。
 そして、それは狂犬も同じだった。
(なんで? どうして? 完全に気配を消していたじゃない!!)
 真庭喰鮫といい、真庭忍軍哀れである。
「あの~、大丈夫ですかぁ」
 と心配そうに手を差し伸べる伊織。
 それに狂犬は凶悪な笑みを浮かべて、伊織の手を握り

「真庭忍法―――狂犬発動」

 と叫んだ。
 それに、伊織はまたしても
「?」
 と首を傾げるだけだった。
「――――――!!!」
 この事実に驚愕を隠しきれない狂犬。
 真庭狂犬の『狂犬発動』は、相手の肉体を乗っ取る忍術である。
 乗っ取れるのは、女性の肉体だけという欠点があるが、成功確立は十割を誇るまさに至高の忍術なのだ。
 その究極の忍術が何故かこの少女には通用しない!!
(そんな筈はない! そんなことがあってたまるか!!)
 だが、狂犬はある「違和感」に気づく。
「あ……あんた、その腕は義手なの!?」
「そうですけど、それがなにか?」
 やっぱりそうか、と漸く理解した狂犬は即座に思考を入れ替え、狙いを無桐伊織から玖渚友に変更し、襲い掛かる!!
(この女は後からゆっくりと殺してやる!まずはこの青い子供からだ!!)
 狂犬の殺意が玖渚に向かったその瞬間、大鋏が狂犬の腹を抉った。
「なっ―――――――!!!!!」
「ああ、ごめんなさい。最近、人を殺してなかったので、つい殺っちゃいました」
 てへへ、と舌を出して笑う伊織。
 その虫も殺さないような純粋無垢な笑顔をその眼に写し、狂犬の意識は闇に溶けていった。
 その少女、無桐伊織のもう一つの名は、『零崎舞織』。
 殺し名七名、序列第三位。 
 『零崎一賊』の末妹である。

☆ ☆ ☆

 無桐伊織は、刺青だらけの奇妙な女に止めを刺さず、大鋏―――『自殺志願』をスカートのホルスターに収めた。
 その様子を見て、玖渚友は不思議そうに首を傾げ、
「あれ、どうしたの? 舞ちゃん? 零崎一賊って仇なすものは皆殺しが通例なんじゃあないの?」
 と青い瞳を伊織に向け尋ねた。
「……本当はそうらしいですけどねえ。 赤い最強のお姉さんに誓ってしまいましたので……。あのお姉さんを敵に回すぐらいなら殺不なんて軽いもんですよ」
 それに笑いながら同意する玖渚。
「じゃあ、そろそろ出るとしましょうか? また敵襲があったらめんどいですし……」
「うに~」
 と今度こそ二人の奇妙な少女はネットカフェを後にした。

【一日目/深夜/D-6ネットカフェ】
【無桐伊織@人間シリーズ】
[状態]殺人衝動が溜まっている
[装備]『自殺志願』―――マインドレンデル
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
1、玖渚さんのボディーガード。
2、とにかく、人識くんと合流したい。
[備考]
 ※時系列では「ネコソギラジカル」からの参戦です。

【玖渚友@戯言シリーズ】
[状態]健康
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
1、舞ちゃんに護ってもらう。
2、いーちゃんと合流したい。
3、ぐっちゃんにも会いたいな。
[備考]
 ※「ネコソギラジカル」上巻からの参戦です。

☆ ☆ ☆

 真庭狂犬が目を覚ましたのは、その数分後であった。
 かち。 かち。 かち。
 なにやら奇妙な音が聞こえる。
 そのまま呆けた状態で数分間経過し、漸く狂犬はその音の正体に気づく。
 それは、狂犬が恐怖に震え、自らの歯で奏でていた音であった。
(なんだ! なんなんだ、あの女は!! あれは、この世に存在していい生物じゃあない!)
 真庭狂犬が怯え、恐れ、慄き、発狂寸前にまで追い詰めた存在……。
 それは、無桐伊織……ではなく、玖渚友であった。
 殺意を無桐伊織から玖渚友に向けた瞬間に、その「変化」は起きた。
 少女の淡い青色の瞳が、深い蒼へと変わりこの世のどんな者よりも壮絶な笑みを浮かべこちらを見た瞬間、狂犬の全てが凍てついた。
(あたしはあれと同じものを見たことがある! あれは……)
 狂犬は、凍空こなゆきの肉体を『狂犬発動』で奪った際に見た記憶を思い出していた。
(そうだ、あれはたった一人で凍空一族を殲滅してみせたあの女と同じ目をしていた……!!)
 どくん、どくん、と心臓が未だに警鐘を鳴らし続けている。
 なんていうものに自分は関わってしまったのだろうと狂犬は後悔の念と抱くと同時に
 真庭の里の仲間たちの想いも強まっていく。
(こんなところで終われない!! 仲間たちのためにも―――!)

「ゆぅらぁりぃ―――」

 背後に気配を感じ、慌てて振り向く狂犬。
 そこには、ボロボロの『澄百合学園』指定の制服を身に纏った少女が立っていた。
 なにやらアブナイ雰囲気の少女であったが、なにより異様なのが、その手に握られた一振りの日本刀である。
 その刀からは、禍々しくも毒々しい妖気が発せられていた。
「きゃしゃああああああああああああああ!!!!!!!」
 いきなり奇声をあげ、狂犬に襲い掛かる少女。
 この緊急事態に狂犬は戦闘態勢を整えるが、
「っく―――!!」
 先ほどの戦闘で負った傷による激痛でその場に倒れ伏してしまった。
「―――――――!!」
 そして、繰り広げられる虐殺劇―――!!
 真庭忍軍の戦士がまた一人、儚く命を戦場に散らした。

【真庭狂犬@刀語 死亡】


☆ ☆ ☆

 真庭狂犬を虐殺して見せた少女の名は、西条玉藻
 澄百合学園のエースにして問題児である。
 彼女が毒刀・鍍を手にしたところで、素の彼女は元々発狂していたような側面があったのでこれといった変化は客観的に見れば何一つないのだが……。
 その目に狂気を宿し、彼女は次の戦場を求め彷徨う。


【西条玉藻@戯言シリーズ】
[状態]健康、毒刀・鍍による発狂状態
[装備]毒刀・鍍
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(1~3)
[思考]
 あてもなくなく、ぷらぷらするか。
[備考]
※「クビツリハイスクール」からの参戦です。


外物語 時系列順 異常(アブノーマル)の思考、そして考察
外物語 投下順 異常(アブノーマル)の思考、そして考察
START 真庭狂犬 GAME OVER
START 無桐伊織 堕落の果て、害悪の跡地にて
START 玖渚友 堕落の果て、害悪の跡地にて
START 西条玉藻 偶然目が合ったので

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最終更新:2012年10月02日 07:56