すまんな ◆CAP.3FrrY.
「うーん……」
壁のボードに張り出された大判のインストカードとゲームモニタの間を何度も往復する男がいた。
彼もまたこの『バトル・ロワイアル(仮)』のロケテストの話を聞きつけここに足を運んだうちのひとりだ。
格闘ゲームそのものはスト2をやったことがあるだけという程度だが、ゲーム自体は子供の頃からずっとしているし
今回のこのゲームに登場するキャラの大半を知っているくらいには漫画やアニメも見ていたりする。
そして彼はこのゲームに自分のお気に入り作品が登場していると知り、だったら遊んでみたいと実際にここに来たわけだ。
今は記念すべき初のプレイとしてこのゲーセンで有名なゲーマーらがプレイしているが、
自由にプレイできるようになれば真っ先に筐体の前に座りたいと彼は思っていた。
しかし、問題が発生していた。
彼は、各プレイヤーの前にあるモニタと、全体の経過やランダムにキャラを写すライブモニタをじっくり観察していた。
他にここに集まっている大勢の人らもだいたいは同じようにしている。
贔屓のゲーマーの後ろに張り付いて実況を楽しんでいる者もいるが、だいたいは各モニタを色々と見てまわっていた。
理由は簡単で、ようはこれから自分が使うキャラの観察と研究、あるいはゲーム内での動きから使うキャラの選定をしているのだ。
メジャーマイナー様々だが、それゆえに皆は簡単には持ちキャラを決められずにいて、色々と観察をしている。
そして、彼には先に言ったようにお気に入り作品があり、ゲーム開始以来、そのキャラがどこかに写らないかと探していた。
だが、それが見つからない。
確かに事前の発表情報の中にはあったし、その作品の他のキャラは出ている。
公式サイトにもそのキャラは登場すると書いてあるし、スクリーンショットだって掲載されている。
何度も確かめたが、インストカードにだって載ってるし、原作を再現したいくつかの必殺技もその中で紹介されている。
なのにどうしても見つからない。
仕方がない。そう嘆息すると、男はスタッフジャンパーを来たアークスタッフに聞いてみることにした。
勿論、ただこれまでに画面に映る機会がなかっただけというのが常識的な結論であるから、質問することに恥ずかしさを覚えるが、
それでも彼はそのキャラを使おうとわざわざ足を運んだのだ。きっちり確認したかった。
スタッフを質問攻めにしている人垣の中に思い切って割り込み、彼は思い切ってそれを質問する。
「枸雅匡平ってゲームに出てます? なんか全然見ないんですけど」
すがるような瞳でスタッフを見る。いますよとだけ返してほしかった。しかしスタッフはへらりと笑うと期待とは真逆のことを言った。
「あ、ごめんなさーい。枸雅匡平はちょっとトラブルがあって今のver.じゃ出てこないんですよ。次からは出てくる予定なんで」
あっさりとそう返され、男はそうだったのかとガックリ肩を落とす。
そして人の波に押しやられるままにゲームの傍から離れると、熱狂する光景を見て羨ましく思い、自分の意気込みが悲しくてため息を吐いた。
そのまま踵を返してゲーセンを出ていく。
またアーケードが一歩衰退に近づいたかもしれない。しかし、そんな彼の姿を気にとめる者は誰もいなかった。
【枸雅匡平が使いたかった男@現実 帰った】
【枸雅匡平@神様ドォルズ いなかった】
最終更新:2013年01月22日 05:07