<バレンタイン前編>
ケース1:天海春香の場合
春香 「あ、シン君だ! おはよう!」
シン 「あぁ、おはよう。って……どうしたんだそれ?」
春香 「どうしたんだって、今日はバレンタインじゃないですか」
シン 「いや、それは知ってるけど……」
春香 「はい! シン君にもあげちゃいます。
プロデューサーさんの次くらいにはお世話になってるんで、感謝の気持ちです!」
シン 「あ、ありがとう……それで春香」
春香 「はい?」
シン 「……その、台車に乗ったウェディングケーキもかくやってサイズの巨大チョコレートケーキはなんだ?」
春香 「 (のヮの) 」
シン 「いやこっちを見ろ」
春香 「それじゃあこれで失礼しますね! まだプロデューサーさんに渡してないんで!」
シン 「ちょ、待て春香! って早っ!? もう見えなくなった!?」
ケース2:
萩原雪歩の場合
シン 「しかしなんだったんださっきの……まさかあれをプロデューサーに? やっぱり止めるべきだったか?」
雪歩 「あのー」
シン 「いやでもなぁ、もし黒い方の春香が出てきたらこっちも洒落にならないし……というかこのチョコ食っても大丈夫なのか?
ちょっとでも口にしたら即愚民化とかそんなことはないな……?」
雪歩 「あ、あのー……」
シン 「そうだ、ネコに少し食べさせて様子を見るか!」
雪歩 「……うう、気付いてもらえない。もう穴を掘って埋まるしか」
シン 「冗談だ、どうした雪歩?」
雪歩 「き、気付いてるならせめて返事くらいしてくださいよぅ!」
シン 「いやさ、気になり始めたら止まらなくなって」
雪歩 「うう~」
シン 「ゴメン、悪かった。で、何?」
雪歩 「あ……その、いつもお世話になってるので、これ、どうぞ!」
シン 「お、ありがとう。これチョコ?」
雪歩 「は、はい……抹茶とホワイトチョコで作ってみました」
シン 「そっか、ホントありがとな」
雪歩 「う……や、やっぱり恥ずかしいですぅっ!」
シン 「って結局こうなるのかよ!? 頼むから掘るな! しかもいつもよりいーーー!?」
ケース3:高槻やよいの場合
シン 「また後でこっちに請求が来るんだろうな……ん? あれは、やよいか?」
やよい「うっうー! シンさん、おはようございまーす!」
シン 「おはよう。どうしたんだ? 胸いっぱいに何か抱えてるけど」
やよい「今日はバレンタインですから、みなさんにチョコを配ってるんです!」
シン 「みなさん?」
やよい「はい! さっき春香さんと雪歩さんにも会ったんで渡しました!」
シン 「……やよい、バレンタインって女の子が男にチョコをあげるんじゃないか?」
やよい「え? えぇっ!? そうだったんですかっ!?」
シン 「まぁ世間一般的に考えたら」
やよい「あう~……やっちゃったぁ」
シン 「あー、でもいいんじゃないか? こういうイベントはそこまでこだわらなくても」
やよい「う~……あ、じゃあシンさんにあげるのはいいんですよね?」
シン 「俺に?」
やよい「はい! いつもお世話になってますから! どーぞ!」
シン 「……うん、ありがとう。でも大丈夫か? まだまだたくさんあるけど」
やよい「平気です! プロデューサーと社長にあげたら、残ったのはウチの弟たちにあげますから!」
シン 「そっか、そういえばやよいには弟がいるんだっけ」
やよい「そーです! 五人兄弟です!」
シン 「……大事にしろよ」
やよい「え? あ、はい! それじゃあこれで失礼しまーす!」
ケース4:秋月律子の場合
シン 「にしても三つもチョコ抱えたままなのもなぁ……そうだ、たしか紙袋があっちに」
――ガチャリ
律子 「あら? シンじゃない。どうしたの」
シン 「おはようございます、律子さん。えっと、どこかに紙袋ってありませんでしたけ?」
律子 「それならこっちにあるわよ。はい……って、それチョコ?」
シン 「はい、さっきそこで」
律子 「おやおやぁ~。マネージャー殿も隅に置けないわね~」
シン 「ち、違いますって! これは別にそういうものじゃ……」
律子 「はいはい。あ、そうだ。ならこれも貰ってく?」
シン 「へ? なんですかそれ」
律子 「バレンタインのイベントで作ったチョコが余ったのよ。貰ったはいいけど自分で作ったものだから手を出しづらくて」
シン 「律子さんが作ったんですか?」
律子 「……せめてその意外そうな顔は引っ込めときなさいよ」
シン 「あ、いえ、すいません」
律子 「まぁいいわ。で? いるの? いらないの?」
シン 「……いただきます」
律子 「正直でよろしい。はい」
シン 「ありがとうございます。あ、中が見える。なんか律子さんらしいデザインですね」
律子 「私らしい?」
シン 「なんかこう、丁寧で繊細な感じの……綺麗なチョコというか」
律子 「う……面と向かってそういうことを言われると少し照れるわね」
シン 「え? あ……すいません」
律子 「あ~もう謝らない! ほら、さっさと行く! 仕事の邪魔!」
シン 「し、失礼しましたー!」
――ガチャッ! バタンッ!
律子 「……まったくもう、なんでそこで謝るんだか」
ケース5:
三浦あずさの場合
シン 「また余計なこと言っちゃったかなぁ……」
あずさ「あらぁ、シン君。おはよう」
シン 「あずささん、おはようございます」
あずさ「あら~? 何を持ってるのかしら?」
シン 「あ、これですか? えぇまぁ、なんというかいろいろと」
あずさ「あらあらまぁまぁ」
シン 「な、なんですか?」
あずさ「いえ別に~。はい、どうぞ」
シン 「ってなんですか突然。というかなんですかこれ?」
あずさ「チョコレート、今朝ここに来る途中で商店街の人から勧められて買ったのよ。好きな人のために買いませんか、って」
シン 「商店街って全然通勤ルートじゃないですよね、また迷って……ってえぇっ!?」
あずさ「あら? どうしたの?」
シン 「い、いや今好きな人がどうとか!?」
あずさ「うん、だからあげたのよ」
シン 「それってどういう……」
あずさ「だからつい買っちゃったのよ、みんなの分」
シン 「……あぁ、そういうことですか」
あずさ「どうかしたの? ほっとしたような残念そうな、複雑な顔だけど」
シン 「なんでもないです……それと、ここをまっすぐ行っても非常口しかありませんよ。事務室ならあっちです」
あずさ「あら~?」
ケース6:星井美希の場合
シン 「あ~、なんか凄いカッコ悪いとこ見られた気が」
美希 「何が?」
シン 「何がって……うぉっ!? なんだ美希か、驚かせるなよ!」
美希 「? なんでそんなに驚いてるの?」
シン 「なんでってそりゃ……いいや、もう。でも美希こそどうしたんだ?
今日はオフのはずだったろ」
美希 「うん、チョコレート渡そうかと思って」
シン 「……美希もか」
美希 「も?」
シン 「いや、さっきから立て続けにもらってさ」
美希 「ふーん、そうなんだ。でもミキはマネージャーにはあげないよ」
シン 「あれ? そうなのか」
美希 「うん、美希は本命しかあげないの」
シン 「ということは、プロデューサー?」
美希 「そういうことなの。で、ハニーどこ?」
シン 「社長に話があるとか言ってたけど……」
美希 「そうなんだ、ありがと。それじゃあね」
シン 「って待った! まさか社長室に入って渡さないよな!?」
美希 「そんなことするわけないよ。ちゃんと出てきてから渡すの」
シン 「あ、あぁ……それならいいかな?」
美希 「でしょ? じゃあまたね」
シン 「……ん? そういえばさっき春香もプロデューサーにって言ってたよな? ということは社長室の前で鉢合わせ……頂上決戦?
逃げて! プロデューサー逃げてーーー!!」
<バレンタイン後編>
ケース7:
双海亜美・真美の場合
亜美 「シン兄ちゃんはっけーん!」
真美 「とつげきー!」
シン 「のわっ!? 危ないだろこの暴走娘ども!」
亜美 「むむ、なんかすっごく失礼なこと言われた気がする」
真美 「シン兄ちゃんデリカシーなーい」
シン 「やかましい! ったく、何か用か?」
亜美 「ここのかとーか?」
真美 「あ、それパパが言ってたよねー」
シン 「……もう行くぞ」
亜美 「わわ、待った待った」
真美 「はい! シン兄ちゃんにプレゼントー!」
シン 「プレゼントって……チョコか?」
真美 「ピンポーンだいせいかーい!」
亜美 「亜美たちが心をこめて作ったんだからしっかり食べてね!」
シン 「いや食べるのはいいんだが、ここでか?」
亜美 「あったりまえじゃん」
真美 「早く早くー」
シン 「わかったわかった……生チョコってやつかな? じゃあひとつ」
亜美 「どう?」
真美 「そっっちょくな感想をどーぞ!」
シン 「…………か、」
双子 『か?』
シン 「辛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
亜美 「おぉっ」
シン 「舌が機能不全を起こして壊死しそうなほどヒート! 辛さを越えて刻み込まれる激痛のビート!
あまりの味に混乱と絶望の淵に叩き込まれて震えるぞハート!
これぞ! まさに! 味覚のカタストロフィだッッッ!! ぐふっ!?」
真美 「すっごーい! シン兄ちゃんグルメリポーターみたーい!」
亜美 「さすが亜美真美特製ハバネロチョコだね! ハバネロの量がきぎょーひみつ」
真美 「おー、でんじゃらす」
シン 「お、おまえらなぁ……」
双子 『それじゃあねー!』
シン 「……いつかおぼえとけよあいつら」
ケース8:
水瀬伊織の場合
シン 「あの劇薬チョコ社長にあげちゃったけど大丈夫かな? まぁ死にはしないだろうしいいか」
伊織 「ふんふんふ~ん……あら? アンタ何やってんのよ?」
シン 「今度は伊織か……別に、特になんかやってるわけじゃない」
伊織 「へぇ……と、ところでアンタ今ヒマして」
アッー!
伊織 「……何、今の声? 社長っぽかったんだけど」
シン 「あぁ、多分味覚がデモ起こしたんだろ」
伊織 「なんかよく分かんないけど大丈夫なの?」
シン 「命に別状はない、と思う。じゃあこれで」
伊織 「ま、待ちなさい!」
シン 「ん? なんだよ」
伊織 「だから……って、何持ってるのよ?」
シン 「あぁこれか、なんかチョコとかもらったんで入れてる」
伊織 「…………ふぅん」
シン 「な、なんだ? 突然不穏な空気になった気がするんだが」
伊織 「なんでもないわ、よっ!」
シン 「痛っ!?」
伊織 「アンタなんか、チョコの角に頭ぶつけて一ヶ月くらい入院してなさい!」
シン 「って~……なんなんだよいったい。ん? ぶつけてきたこれってチョコか? なんでこんなの持ってたんだ?」
ケース9:菊地真の場合
シン 「とりあえず持っとくか。って、なんだあのプレゼントの山? しかも崩れてるし」
? 「うう……だれか、たすけてぇ」
シン 「え? 声がした……って真か!? なんでプレゼントの下に埋もれてるんだ!?」
真 「と、突然崩れてきて……とにかく早く引っ張りでしてほしいんだけど」
シン 「あ、あぁ。今行く」
~3分後~
真 「ふぅ、助かったぁ。危うくプレゼントの下敷きになって、今までのボクの人生がスタッフロールで流れていくとこだったよ」
シン 「それはヤバかったな、俺は幽体離脱までしか経験したことないけど。で、これひょっとして真宛てか?」
真 「うん、それも全部」
シン 「なんでまた今日に限って……あ、ひょっとしてバレン」
真 「うわぁ!? 今はその単語聞きたくないからやめてっ!」
シン 「ご、ゴメン。でもそうか、これ全部か」
真 「大体おかしいんだよ、ボクは女の子なのに女の子からこんなにチョコが贈られて来るなんて」
シン 「あ~、悪い。それに関してなんて言っていいのか分からない」
真 「うう、ボクの状況って言葉にもできないレベルなのかな……」
シン 「あはは……じゃあまたな」
真 「あ、待ってシン。え~と……はいこれ」
シン 「おいおい、これファンのプレゼントじゃないのか?」
真 「違うよ、それはボクが買ったもの。友達にはみんな買ってるし、よかったら食べてよ」
シン 「そうなのか、ありがとう……でも真、友達ってみんなにか?」
真 「うん、雪歩にもあげたし学校の友達にも毎年……どうしたの?」
シン 「……いや、なんでもない」
ケース10:
如月千早の場合
シン 「ああやって真のファンは増えていってるんだろうなぁ……まぁ、あえて言う必要もないか」
千早 「シン、お疲れ様」
シン 「あぁ、千早か。今日はラジオのゲストだったんだっけ?」
千早 「ええ。時期が時期だから、ラブソングの紹介ばかりだったわ」
シン 「まぁそれは仕方ないだろ。そういうイベントなんだし」
千早 「でも、だからといって恋愛の話題を私に振るのは少し困ったわ」
シン 「あ~、確かに答えにくそうな話だな」
千早 「今は歌が私の恋人のようなもの、で話は終わったけど」
シン 「あれ? そんな話はないのか?」
千早 「……あると思う?」
シン 「ゴメンナサイモウイイマセン」
千早 「ふぅ……そういえばバレンタイン企画でチョコレートを貰ったけど、よかったらあげるわ」
シン 「え? でもそれって千早宛てのものじゃないのか?」
千早 「『気になる人がいたらあげてください』って貰ったものをあげるのも少し気が引けるし、他にあげる当てがあるわけでもないから」
シン 「そうか、じゃあそういうことならありがたく貰うよ」
千早 「ありがとう……って私が言うのもおかしいわね。それじゃあまた」
シン 「あぁ、お疲れ。 ん? なんかいろいろ引っかかるような……まぁいいか」
ケースFINALE:音無小鳥の場合
小鳥 「あら、シン君。今日は大変だったみたいね」
シン 「まぁ、いろんな意味でいろいろあったんで……そういえばプロデューサーと社長はどうしたんです?
途中から姿が見えなくなったんですけど」
小鳥 「二人とも病院よ。プロデューサーさんは食べすぎで、社長はお腹を壊したとか」
シン 「…………(合唱)」
小鳥 「それで、シン君は本命を貰えたのかしら?」
シン 「本命って……別にそういう間柄じゃないんですから。っていうか、そんなことになったらスキャンダルとかマズイじゃないですか」
小鳥 「それはそうなんだけど、気付いてないの?」
シン 「何にです?」
小鳥 「あ、あはは……まぁそれはともかくとして」
シン 「?」
小鳥 「シン君がみんなから贈り物を貰えたっていうことは、それだけみんなシン君を受け入れてくれてるってことじゃないかしら」
シン 「それは……」
小鳥 「あなたの事情は私と社長しか知らないことだけど、それでも今日までこの関係を築けたのはシン君自身が頑張った成果だと私は思うわ」
シン 「…………」
小鳥 「まぁ、かくいう私はみんなみたいにチョコを作る暇も相手もいないけど……ポッキー食べる?」
シン 「……いただきます」
小鳥 「はい、どうぞ。それにしてもシン君来月はたいへんそうね」
シン 「は?」
小鳥 「ホワイトデー、女の子へのお返しは三倍返しが基本よ?」
シン 「………………あ」
――来月に続く?
最終更新:2010年06月15日 21:37