ゆっくり姉妹 中篇

「ぎゃおー♪たべちゃうぞー♪」「う゛~♪う゛~♪」

「ゆっくりゃ様、こっち、こっち」「ゆフラン様、そっちは行き止まりですよ」

ゆっくり達が来て3週間が経過した。
ゆっくり達は更に館の中の皆と仲良くなった。今ではゆっくりゃとゆフランはいつも誰かと遊んでいる。
今もフランとメイド達と共に遊んでいる最中だ。
この3週間、レミリアもゆっくり達がじゃれてくることは何度もあった。しかしレミリアはそのたびに逃げてきた。
今では自らのカリスマ性の低下の事は特に問題にしていなかったが、
そのかわり自らの心に深い罪悪感と激しい嫉妬をを覚えるのであった。
あの二匹はいつも一緒にいた。ゆっくりゃがおねぇさんぶって行動し、それにゆフランがついていった。
二匹ともお互いの事をまるで姉妹のように寄り添いあっていた。
自分はどうだったか。フランが生まれてこれまでの間、あの二匹がお互いにするように接してあげたことはあったのだろうか。
もっと優しくすることが出来たのではないだろうか。あの子達のように接することができたら。苦悩する日々が続いていた。






「ふらん!こっち♪こっち♪」「ゆっくりしね♪」

そんなある日の夕方、二匹と廊下でばったり出くわすことになった。
ゆっくりゃがゆフランを連れて飛んでいる。
めずらしくフランが見当たらない。周りには誰もいない。
面倒なことになったと思っているこちらの気も知らず、無邪気に飛んでくる。


「ゆぅ~♪」「う゛~♪」

「今少し気分が悪いの。あっちにいってなさい・・・」

「ゆ・・・?ゆっくりできる?だいじょうぶ?だいじょうぶ?」「う゛~?」


そんなレミリアを見て、二匹は元気付けるのようにおどけてみせた。
しかしまったく悪気のないその仕草がかえってレミリアを苛立たせることになった。



「いないいない、うー♪」「ゆっくりー♪」

「いいから向こうに行けって・・・」

だんだん心の中の黒い部分がふつふつと沸きあがってくるのを感じる。

自分の居場所を奪ったこいつらが憎かった。


「うっとおしぃ・・・」


「うー?」「ゆっ?」


こいつらは何も苦労せずに、何も犠牲にせず、フランと一緒にいる。

とたん、ダムが決壊するように今まで抑えていた感情が溢れてきた。

「うっとおしいっていってんのよ!あんた達なんでそんなにフランと仲良くしていられるのよッ!
あの子に何もしていないくせに!饅頭の癖にぃッッ!」

明らかに八つ当たりだとわかっていてももう止まらない。

レミリアは二匹のほほに手をかけ、それが千切れるのではないかというほどの強さでつねった。

二匹は泣き喚きながらバタバタともがいている。

「いだいっ、いだい~!」「ゆっ・・・、う゛う゛ぅ」

「あんた達はもうフランに近づくんじゃないわよ・・・。もし今度近づいたら引きちぎって犬の餌にしてやるッッッ。」

「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁん」「う゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ」

二匹はあっという間にレミリアの前から飛び去って逃げてしまった。二匹は窓から外に向かって飛んで行った。
二匹の後姿を見て、レミリアはようやく我に返り、自分がどれだけひどいことをしてしまったのか知った。

最悪だった。嫉妬のあまり小動物に八つ当たりをして、あまつさえ二匹を可愛がっているフランに対して近づくなと脅してしまった。
その結果、二匹はろくに出たこともない紅魔館の外に出て行ってしまった。
フランは二匹を溺愛していた。あの子達になにかあったらフランはどうなってしまうのだろう。

呆然としていると、外から美鈴が駆け寄ってきた。

「お嬢様、ゆっくりゃ様とゆフラン様が外に飛び出してしまったのですが、なにかご存じないですか。」

「し、知らないわよ・・・。私は何も・・・」

とたんに美鈴は険しい目をしてきた。

「・・・お嬢様、気の流れが乱れていますよ。本当のことを言ってください。」


美鈴の剣幕に気圧され、レミリアはぽつり、ぽつりと先ほどあったことを喋った。思い出しながら口に出すと、
自分がどれだけ大人気なかったのか再確認することになった。
それを聞いて、うろたえるレミリアに変わって美鈴は素早く対策を立てる。二匹の安否とフランドールの事が心配だ。

「わかりました。とりあえずフランドール様とメイド達には事情を伏せて、
ゆっくりゃ様達が外に遊びに行って危ないということにして伝えることにいたします。
そのときに咲夜さんとパチュリー様は事情を知っていたほうがいいでしょうから、
おふたりにはあらかじめ事情をお伝えいたします。」

主に意見をするということは、かなり精神をすり減らす行動だ。しかし今はそのようなことを言っている場合ではない。

「勝手なことだとは思いますが、許してくださいますか。」

部下に任せるなんて主失格だとレミリアは自嘲した。
一方で気を使ってくれた美鈴に感謝しながら、事態が動いていくことに流されることとなった。









結局、レミリア、咲夜、小悪魔、メイド達、そしてフランがゆっくり達の捜索のために出発することになった。
美鈴は門番であり、館の警護のために残らざるをえず、パチュリーは捜索に向いていないためである。

レミリアはフランがついてくることを拒んだが、フランは

「私も行く。駄目って言われてもついていく。あの子が何も食べられなかったり、寝るところがなくて困っていると思うと、
すっごくやだ。」

と、フランは頑として自らがついていくことを譲らなかった。

その様子を見てレミリアは胸が痛んだ。








捜索を始めて、すでに5時間が経過していた。あたりは完全に闇に覆われ、人外の蠕く時間となっている。
しかし、ゆっくりゃとゆフランの姿は見当たらない。途中でいくつかのグループに別れ、レミリアは咲夜とフランと共に行動していた。


「おふたりはいったいどこに・・・」

咲夜は懸命に探していた。全身が汗だくになり、息も絶え絶えである。瀟洒な彼女にはあるまじき余裕のなさであった。

「はやくみつけないと・・・。ゆっくりゃとゆフラン、おなかすいてないかな・・・」

フランは泣きそうであった。地下に閉じ込められていた頃には決してなかった、幸せな時間が明日からは失われるのではないかと思った。
あの子達は自分が毎日一緒にご飯をあげていた。自分で餌をとったことは一度もない。
あの子達はあれで意外とグルメだ。おなかをすかしていないだろうか。
一緒のベッドで寝ているときに、寝ぼけて食べそうになってしまったことがある。悪い人や妖怪に食べられてはいないだろうか。

そんな辛そうなフランの姿を見て、レミリアは声をかけずにいられなかった。事情を隠していることに罪悪感を感じた。
せめて、心配させないために、冗談でも言おう。

「ねぇ、フラン」

「なに、お姉様」


「もし、もしもよ。もしあの子達が戻ってこなかったらどうするの。ほら、ひょっとしてただ外に出て遊びたかっただけかもしれないし
、紅魔館の中に飽きたんじゃ・・・」

その言葉を聞いて、フランはとうとう我慢できずに泣き崩れてしまった。その能力ゆえに隔離された彼女には、
友達から捨てられるということに耐えることができないのであろう。

失言であったが、もう遅い。

「お嬢様、失礼いたしますが聞かなかったことにさせてください。」

事情を知っている咲夜が横槍を入れる。泥沼であった。

途方にくれていると、遠くから飛んでくる影があった。小悪魔である。二匹の姿が見つかったようだった。しかしその顔は青ざめていた。
小悪魔が息を切らせながら報告する

「ゆっくりゃ様と・・、ゆフラン様が、その、太陽の畑にいたって、風見幽香と一緒に・・・」








少し時は遡る。

幽香は太陽の畑の中で夜の散歩をしていた。彼女は妖怪にしては珍しく、向日葵と共に日中に行動している。
そのため、こんな夜更けまで行動するのは滅多にないことであった。

「あら、ゆっくりじゃないの」

目の前の二匹のゆっくりに目が留まる。涙で目を腫らしていて、弱弱しい。ここに来るまで相当の距離をさまよったのであろう。

「おねぇさんはゆっくりできるひと?」「ゆ?」

ゆっくり達は怯えながら聞いてくる。ところどころに傷があることから、動物にでも襲われたのだろうか。
ゆっくりは基本的に食べられることを恐れないふてぶてしい生き物なので、ここまで何かに怯えるのは珍しかった。
たぶん相当な箱入りか、あるいは誰かにとても可愛がられて生きることに執着してしまったから、
現世でゆっくりすることを望んでいるためであろう。

「ゆっくりできるひとよ。それよりどうかしたの。こんな時間に」

聞くところによると二匹は紅魔舘の主人の妹のペットで、主人の怒りに触れて逃げてきたらしい。
幽香は、おもしろいことになりそうだと興味を持った。

幽香は基本的にゆっくりに興味がない。彼女のように長い時間を生きた妖怪は同じく強力な力を持った妖怪か人間しか相手にしない。
このところ強敵との戦いがなかったのでつまらなかった。妖怪が幻想郷に来てから、段々決闘にルールがつくようになった。
それはそれで手軽に戦えるため悪くないが、やはりお互いの全力を持って命を奪い合う戦いが恋しかった。
けれども、こいつらを餌にすれば紅魔館の悪魔の妹が食いついてくるかもしれなかった。
噂に聞く全てを破壊する程度の能力とはどのようなものだろうか。


「二人ともゆっくりしていってね。歓迎するわ」

それはまさに人外が浮かべる妖しい微笑だった。








風見幽香。危険度極高。人間友好度最悪。以前は大量虐殺を趣味としていたといわれる。幻想郷最悪の妖怪。

「風見幽香は危険よ。私達に任せてフランは帰りなさい。」

「そうです。ここはフランドール様には危険です。」

レミリアと咲夜は必死だった。冷静さを失っているフランと好戦的で有名な幽香を会わせたら、まずただではすまないであろう。

「嫌よ。あの子達が危ないって言うんなら、絶対に私は行く。あの子達を助けるの。」

フランは言うことを聞かなかった。レミリアがなんと言おうと、決して譲らない。

また、あの黒い感情がわいてくる。

なんであの子たちばかり。

私だってフランのことを守ろうって、ずっと頑張ってきたのに。

「フラン、お姉様の言うことが何できけないの。」

レミリアはフランの頬を叩く。フランは信じられない顔をした。

「あの子達がそんなに大事、あの饅頭が、あんなのただの食べ物じゃない。」



叩く、


叩く、


段々強く。


何度も


「お嬢様、いったい何を・・・」

あわてて咲夜がレミリアを抑える。しかしレミリアはもう止まらない。

気がついたらなぜゆっくりゃ達が逃げたのか、言ってしまった。

その時、どれだけ二匹が憎かったかレミリアは自らの嫉妬を抑えることができなかった。









そして全てを語り終えたとき、フランはゆっくりとレミリアに近づいてきた。


そして

殴った。こぶしを握って。

その衝撃波で人間である咲夜は吹き飛ばされ、近くの大木に頭を打ちつけられてしまった。咲夜が時を止める暇もない。
信じられないスピードと破壊力だった。

「お姉様、今までありがとう。そしてさよなら。」

信頼していた姉に裏切られた彼女は、もはや周りが見えていなかった。そしてあっという間に飛び去ってしまった。


またやってしまった。

レミリアは呆然としていた。

この数百年間、私があの子にしてきたことは何だったのだろう。
結局、あの子を閉じ込めて、孤独にして、そして傷つけただけだった。
せっかくできた友達まで奪ってしまった。
レミリアはどうすればいいのかわからなかった。泣き出せるものなら泣きたかった。


咲夜が声をかけてくる。


何もわからない。


もうどうでもいい。



もうどうでも・・・。













また殴られた。今度は平手で、相手は咲夜だった。



咲夜はレミリアをまっすぐ見ていた。


「あの子達はお嬢様とフランドール様より生まれました。」

咲夜は頭から血を流していた。足元もふらついている。
レミリアは咲夜の気迫に押され、一言も発することができない。

「けれども決して本人とは似てもにつきません。ですが、ですが・・・」

もはや立っているのも辛いだろう。それでも咲夜は凛として言い放った。

「あの子達はとても仲が良かったです。まるで本当の姉妹のように。ですから、その元になったお嬢様なら、
フランドール様を愛しているお嬢様なら、きっとうまくいくはずです。今からでも、遅くはな・・・」

最後まで言い切ることなく、咲夜は倒れてしまった。




小悪魔に咲夜の治療を任せ、レミリアはフランを追うことにした。





咲夜の言葉が頭に響いていた。








レミリアが太陽の畑についた頃にはすでにフランと幽香が戦っていた。いつもの弾幕ごっこではなく、肉弾戦も含めた決闘であった。
フランが幽香に駆け寄って、有無を言わさずに戦いになったと考えられる。
ゆっくりゃとゆフランは畑の中のぽっかり空いた空洞に位置していた。恐怖で逃げられないのだろう。
幽香が畑に被害を出さないためか、空中でぶつかり合っているのが幸いだった。
なにしろ幻想郷最悪の妖怪と最凶の悪魔の激突である。レミリアでさえも下手に近づいたらただではすまないだろう。






飽きたな。

幽香はフランの圧倒的な破壊力を持った弾幕と吸血鬼の身体能力に一時は感嘆したものの、
一合、二合と組み合っていくうちに、早くも興が削がれつつあった。
この二人の戦いは戦闘ではなく、闘牛と呼べるものであった。
フランは明らかに冷静さが失われていた。そのため、いつものような豊富な弾幕を用いた様々な攻撃をせず、
一直線に相手を狙った大振りの一撃と大雑把な弾幕のみ打ち続けていた。
幽香はいくら破壊力がある弾幕であろうと、軌道が単純なら楽にかわせる。
フランが身体能力に頼って接近戦に持ち込んでも、幽香も身体能力には全く引けをとっていない。
それどころかフェイントも駆け引きもせずただ直線的な動きで追ってくるフランの攻撃は、
戦闘経験が豊富な幽香にはかすることさえしなかった。



「もっと頭を使いなさいな。吸血鬼に脳がないってほんとうなの?」

「逃げるなぁっ!正面からきなさいよ!」


期待はずれだわ・・・



もっと面白くなると思ったのに、このふがいなさは何だ。せっかくの決闘だ。もっと楽しませて欲しい。


フランの弾幕を最小限の動きでかわす。幽香はかわした際に軽く一撃を打ち込む。難なく当たり、フランは吹き飛ぶ。
そこに幽香は追い討ちをかける。フランは必死に反撃する。そのあまりのスピードのため、レミリアが近づくことさえできなかった。


「本当に下手ねぇ。あなた、自分より強い相手と戦ったことないでしょう。」

「だまれだまれだまれぇっ!!!」

さぁ、どうするかと幽香は考えた。そうだ。相手が怒りによって突っ込んでくるなら、下手に頭を冷やさせるよりも、
もっと挑発して、より相手の力を引き出せばいい。ああいったタイプは逆上させてそのリミッターをはずしたほうがいい抵抗を見せる。

「そんなにあの子達がだいじなの?あんなへんてこな生き物が。悪魔にしてはいい趣味しているわね。」

「あの子たちを悪くいうなぁっっ!」


逆上したフランの剣を幽香が鼻歌交じりにかわす。それは踊っているようにも見えた。

幽香は邪悪に微笑む。


「そこでもっとあなたが本気になれるいいことを思いついたの・・・。」



何かを守ろうとする者には


それを目の前で打ち砕こうとする。


「あなたが負けたらあの子達をぐちゃぐちゃに引き裂いて向日葵の肥料にしようと思うの。たっぷり生きたまま時間をかけてちぎって、
ちぎって、ちぎって、畑中に埋めるの。それとも日干しにして虫達の巣にしてあげようかしら。
生きたまま体中に穴を空けさせてさ。いい声で鳴きそうね。素敵でしょう。どっちがいいと思う?」

両者の動きが止まり、フランの周りの空気が一変する。
その表情はゆっくり達とじゃれあった無邪気な少女のものではなかった。
それはかつて地下に閉じ込められていた頃のような、仮面のように無機質な顔であった。


「うるさいよおまえ・・・」

あふれ出す狂気のなか発現する、あらゆるものを破壊する程度の能力
彼女を孤独にした元凶
望まれなかった力
それが彼女の心を憎しみが侵したとき、本来の力を発揮する
空が赤く染まり
空気ですら焼けていく
全てが終わったときには何も残らない



「さぁ、ぼやぼやしていると一匹ずつ始末していくわよ。どっちからにしようかなぁ。」

幽香の試みは成功した。
これだ、これこそがフランの力の本質。圧倒的な暴力。
自分に対して恐怖を与えてくる者こそ戦うに値する。
かつてない強敵との邂逅に幽香は血がたぎった。



フランの右手に魔力が集中する。当たらないのなら辺り一面を吹き飛ばしてしまえばいい。当たればどうってことはない。
だれも立ち上がれない。あの子達を守るんだ・・・。

「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ、ごぁいよぉぉぉ」「う゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇっ」


しかしそれがゆっくりゃ達さえも巻き込んでしまうほどの力であることをフランは知らなかった。
ただ守ることだけを考えて、それゆえに自らの手で愛するものを壊してしまうであろうことを。
そのために、レミリアはフランを地下に閉じ込めたことを。


フランは全力で幽香に向かって突進した。迎え撃つ幽香、そしてその後にいるゆっくりゃとゆフラン。射線が重なっていた。



その戦いを見ていたレミリアの頭をよぎったのは、近い未来大切な友達を壊して、周りにだれもいなくなったフランの運命。



「ふら゛ぁ゛ぁ゛ぁん!!!」「ゆ!?」

そして目の前に映るは、今妹庇おうと身体を前に差し出すゆっくりゃの姿。





頭の中で何かが弾けた。














レミリア・スカーレットの能力




運命を操る程度の能力



対象の運命それを打ち破ることができる能力。


しかし土の中に種も植えずに芽が出ないように、運命を変えるには何かの行動が必要となる。


この場合は、全力のフランの一撃をその身に受けること


いくら吸血鬼とはいえ、ただではすまないだろう


しかし自分にとって願うはフランの幸せ


この場に導いてくれたのは自分を信頼してくれる従者


教えてくれたのは餡子とひき肉によってできた身体を持つ、自らとその妹の分身。


今度は自分が頑張る番だった。


風よりも速く、音よりも速く、光よりも速く、レミリアはフランの前に立ちふさがり、その一撃を受け止める。


風圧で皮がむける。熱で肉が焼けつくされる。衝撃で骨が砕ける。


この一撃を受け止める数秒が、永遠にも感じられた。


けれども大丈夫、耐えられる、私はあの子のおねぇさんなのだから・・・











フランの一撃を耐え切ったとき、レミリアの左腕は吹き飛んでいた。右足はぷらぷらと皮一枚でつながり、羽は共に歪な形に曲がっていた。
そして胸には大きな穴が。


「そんな・・お姉様・・なんで・・・・」

正気に戻ったフランが信じられないものを見る目をレミリアに向ける。レミリアの後には、唖然とした幽香がいた。
その更に後にはゆフランとそれをかばうゆっくりゃの姿が見えた。二匹ともとても怯えている。
レミリアの後以外は、草一本の残っていなかった。レミリアがいなかったらどうなっていたのか、フランは気がついた。

「あ・・ぁ・・ぁ・・」

フランが力なく後ずさった。目には光が灯っていなかった。

「ごめんね・・・。フラン・・・・」


レミリアはフランに懺悔を、ゆっくりゃとゆフランに感謝をしながら、意識が途切れた。

最後に目に映ったのは、叫び声を上げる妹と、泣き喚きながら飛んでくる饅頭たちであった。




  • 吸血鬼は実年齢に精神年齢が伴わないのだろうか? -- 名無しさん (2010-11-28 11:48:36)
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最終更新:2010年11月28日 11:48