ゆっくらいだーディケイネ 第4話

『ゆっくらいだーディケイネ』



これまでのゆっくらいだーディケイネは!

チルノは、割と最強だった。




第4話 五里紅霧中



妖々夢の世界の次に訪れたのは紅い霧に包まれた『紅魔郷の世界』。
たしかこの霧は人間にはそこそこ有毒だった気がするので、念のためにマスクを付けて外出する事にした。
…が、マスクなんてそうそう使わないのでどこにしまったのかすっかり忘れてしまっている。

「どこやったっけ…」
「おねえさん、慌てなくてもいいんだぜ!」(シュコー)
「れいむ達は絶対に急かしたりしないよ!だから…」(シュコー)
「「ゆっくり準備してね!!!」」(シュコー)(シュコー)

どうやら今回、こいつらは付いてくる気らしい。まぁ今回は雪山に登るわけじゃあないからそんなに邪魔にはならないだろうし、
それは別に構わないのだが…

「…ねえ、どうしてアンタらガスマスクなんて持ってんの?」
「ゆっふっふ、備えあれば憂い無し、だよ!」(シュコー)
「どんな事態に陥ってもゆっくりするための準備は怠らないんだぜ!」(シュコー)

どんな事態を想定してガスマスクなんて準備したのか。そもそもどこに隠し持っていたのか。
疑問は尽きないが考えたところで解決しそうにないし、解決したところで何の得にもならなさそうなのでとりあえずマスク探しを続行する。
というかお前ら、ゆっくりしてないで手伝ってくれ。



なんとかマスクを見つけ、とりあえず外に出てみた。

「なんか、微妙に時期を外したような格好になったわね」
「ゆ?何の話?」(シュコー)
「なんでもないわ」
「で、これからどこに行くのぜ?」(シュコー)

それだ。問題は。
原作通りに行けば紅魔館(のような所)に行けばいいんだろうが、前回しらたまろうで思いっきりハズしてしまったため
そこであっている確証がもてない。
それ以前に、ここがどこかわからない。
前のときはご丁寧に『しらたまろう この山のてっぺん↑』とかいう看板があったから良かったのだが、
今回はそういった案内の類は見当たらない。まあ普通は無いんだけど。
それどころか、ここはあたり一面木だらけ森の中。見晴らしは最悪だ。

「とりあえず、適当に歩いてみましょうか」
「てきとうだね!」(シュコー)
「いい加減だね!」(シュコー)
「ナイチチだね!」(シュコー)
「ずさんだね!」(シュコー)
「行き当たりばったりだね!」(シュコー)

なんだか聞き捨てならない事を言われたような気がするが、気のせいということにしておこう。
そんなわけであてども無く森の中を練りに練り歩いた。もうどのくらい経っただろうか、そろそろ帰り道の記憶が心配になってきた頃、
『それ』とばったり出くわした。

「…あ」
「…うー?」

れみりあだ。ようやく手がかりになりそうなヤツがいたと思ったら…

「ううーーーーーーーーーー!」

こっちを見るなり逃げ出した。

「追うわよ!」

ようやく見つけた手がかりを失うわけにはいかない。私は逃げるれみりあを追って走り出した。スクランブルダッシュだ。
飛んでいるとはいえれみりあのスピードはたかが知れている。苦も無く追いつき、捕らえることが出来た。

「うー!ううー!離して!」
「捕って食やしないわよ!ちょっと話を聞くだけだから!」
「うー…ほんと?怖いことしない?」
「しないしない」

どうやら害意がない事を理解してもらえたらしい。会話が可能なれみりあで助かった。
そして身体から霧が出ていない事を見るに、前回のゆゆこよろしくコイツは犯人ではないらしい。
さて何を聞こうかと考えていると、れいむとまりさが追いついてきた。

「おねえさん、ゆっくり待ってね!」(シュコー)
「置いてくなんてひどいんだぜ!」(シュコー)
「うー!」

れみりあが私の陰に隠れた。あぁそうか、ガスマスクが怖くて逃げ出したのか。気持ちは解る。

「とりあえずアンタらそれ外しなさいよ。怖がってるじゃない」
「ゆっ?そんなこと言って、れいむのマスクを盗る気だね!させないよ!」(シュコー)
「おねえさんの考えてる事なんか全部まるっとお見通しなんだぜ!」(シュコー)
「いいから取る」

喚く二人のガスマスクを問答無用で剥ぎ取った。れみりあが平気な顔して飛んでるんだし、ちょっとくらい平気だろうと思ったのだが…

「「ゆわあああああああああ!」」
「うー!?」

取った途端に大声をあげてそこら中を滅茶苦茶に飛び跳ね始めた。れみりあはそれに驚いておろおろしている。かく言う私も驚いた。
マスクを取ったのはマズかったのか…?

「ちょっとアンタら…」
「うー!う"う"ー!」
「あーもう!」

今度はれみりあが泣き出してしまった。跳び回るれいむにまりさ、泣き出すれみりあ。
どうしたらいいかと困っていると、飛び回っていたれいむとまりさが左右から同時にれみりあにぶつかった。
といっても衝突とか激突とか大げさなものではない。れみりあのほっぺたがれいむ、まりさとむにぃーっと重なって、
そのまま3人一緒にぽてっと地面に落ちた。そして…

「「ゆっくりしていってね!!!」」
「…うー♪」

その一言でなんか全てが解決してしまった。理解に苦しむ現象だが、アレか、ゆっくりにしか解らない世界とかそういうのか。



「おねえさんのおかげで死にかけたよ!きちんと謝ってね!」(シュコー)
「ごめりんこ」

二人にガスマスクを返し、れみりあを加えた我々4人は森の中を進んでいく。
あの後、れみりあから聞いた話によれば…



「何日か前からこの霧が出てきて、なぜかれみぃは平気だったんだけど仲間のみんなはどんどんゆっくりできなくなっちゃって…。
それで、みんながゆっくりできないのは嫌だから、怖いけどこの霧を止めに来たんだよ!」
「れみりあはえらいね!」(シュコー)
「ゆっくりのかがみだぜ!ゆっくりミラーだぜ!」(シュコー)

それはなんか…違う。
どーでもいいけどコイツら、台詞の後にいちいち(シュコー)が付くからいつ喋ったのかわかりやすいな。

「で、止める方法ってわかってんの?」
「わかんない…でもとりあえず、霧がどこから出てるか確かめようと思って霧の濃い方に向かってるんだよ。方法はそれから考えるよ」
「まぁ、原因がわからなきゃ確かに対処のしようもないと思うけど…たとえば霧出してるやつがおっかないバケモノとかだったらどうすんの?」

ふと振り向くとれみりあの姿が消えていた。見回すと、木の陰でうーうー言いながら震えている。

「うぅぅぅー…怖いよ…怖いよ…」
「たとえばの話だって。今からそんなに怖がってちゃ霧なんか止められないわよ?」
「うぅー………」

しぶしぶといった感じで木陰から出てきた。こんな怖がりでよく解決に行こうなんて思ったものだ。

「れみりあ!きっと大丈夫だよ!」(シュコー)
「元気を出すんだぜ!」(シュコー)
「「ゆっくりしていってね!!!」」(シュコー)(シュコー)

二人並んでいつもの台詞を叫ぶ…のだが、ガスマスクのせいで妙な迫力が出てしまっている。

「う、うー?」

れみりあの方もリアクションに困っているようだ。まあいいか、気は紛れたみたいだし。
しかし今更ながらよく考えてみると私達って…

私(ディケイネ)
れいむ(ガスマスク1号)
まりさ(ガスマスク2号)
れみりあ(ビビリ)

…うわあ、なんだか凄い編成になっちゃったぞ。

「うー!あのお屋敷は…」

この3人が一体なんの役に立つのか必死で考えていると、何か『それっぽい』場所に着いたようだ。

「紅魔館…の、『ようなもの』ね」

紅霧の発生源となっている紅いお屋敷といえばそれはもう紅魔館で決まりなのだが、前のアレがしらたまろうだったのでとりあえず
紅魔館(仮)とでも呼ぼうか。私達は今、その紅魔館(仮)の門が見える茂みに身を隠している。
で、門には紅魔館よろしく門番がいる。なんとゆっくりではない、人の形をしている門番だ。状況から考えて『ただの人間』とは考えにくい…
が、それよりももっと気になる点があった。

「なんであの人バニーの格好してんの?」
「うー、わかんない…」

私の知っている『紅魔館の門番』は人民服っぽいのを着て、帽子にたしかええとなんだっけ…『中』とか書いてある帽子を被っていたはずだ。
しかしこの紅魔館(仮)の門前にいるあの人はバニースーツにウサ耳、網タイツまではいている。
そんなふざけた格好をした門番だが、眼差しは真剣そのものだ(ギャップで笑える)。

「うーん、ただでは通してくれそうに無いわね…」
「れいむ達に任せてね!」(シュコー)

足元を見ると、れいむとま…ガスマスクコンビが葉っぱの付いた木の枝を2本ずつ持っていた。

「…アンタら、まさかそれ使って忍び込む気?」
「鋭いねおねえさん!」(シュコー)
「ほめてつかわすぜ!」(シュコー)

そんなコントじゃあるまいし。いや、でも門番の格好もコントしてるし…ひょっとして行けちゃったりするか?

「まあいいわ、やってみなさい。減るもんでもなさそうだし」
「成功の報告をゆっくり待っててね!」(シュコー)
「ひゃうぃごーだぜ!」(シュコー)

ガスマスクズは木の枝を持って茂みの中を移動する。一応、門番の死角から進もうとはしているようだ。
意外だった。てっきり何も考えずに直進、というか突撃するもんだと思ってた。

「「そーろ、そーろ」」(シュコー)(シュコー)

声出しながら忍び込むヤツがいるか。しかし結構近づいているのに門番は気づいたそぶりを見せない。ひょっとしてヌケてるのか?
門まで残り10メートルくらいまで近づいたとき、二人の歩が止まった。

「気づかれてないね!!!!!!」(シュコー)
「大成功だね!!!!!」(シュコー)

なんでわざわざここまで聞こえるような大声で話すんだ。しかし門番は相変わらず真正面を向いたまま微動だにしない。
ひょっとしてあの人、目ェ開けたまま寝てるんじゃなかろうか。
しかしガスマスクが残り5メートルくらいまで接近したその時…

「何の御用でしょうか?」
「「ゆっ!?」」(シュコー)(シュコー)

遂に気づかれたらしい。目にも留まらぬ速さでガスマスクの目の前に移動した。

「そこに隠れている方達も、お仲間なのでしょう?とっくにバレてますよ」
「うー!」
「…参ったわね」

まっすぐこちらを向いてそう言ってきた。あさっての方向向いて言ったのなら「てきとー言ってやんの。馬っ鹿でー」と笑ってやるのだが、
どうもマジでバレてるらしい。
隠れていても仕方ないので堂々と出て行った。れみりあは私の後ろでこそこそしている。

「いつから気づいてたの?」
「さぁ…とりあえず、あなた方が私を発見するより前だとは言っておきましょう」
「シカト決め込んでたってワケ?」
「私は『門番』ですから」

なるほど。自分の仕事は門を守る事…あくまで侵入者の撃退であり、不審者がいようがそれは管轄外ということか。
しかしそんな事より気になるのが…

「なんでアンタそんな格好してんの?」
「…色々あるんですっ!」

くうっ!と鳴いて顔を背けた。色々あるらしい。

「そう…何があったのかは知らないけど、くじけちゃダメよ。そりゃあこんな所に日がな一日ぼんやり突っ立ってるだけの仕事、
足腰痛めそうだとか精神的に辛そうだとかあるかもしれない。でも職に貴賎なし、そんな仕事でも立派に誰かの役に立ってるのよ。
だからこれからもがんばって…」
「お言葉はありがたいのですがさり気に中に入ろうとしないでください」
「…ちっ」

この手もダメか。ガスマスクが「そんな手で入れると思ったの?」(シュコー)「ばかなの?」(シュコー)とかほざいている。
お前らに言われたくない。

「何にせよ、招かれざるお客様をお通しするわけには参りません。どうしてもと仰るのなら力づくと言う事になりますが…」

門番は私達を一瞥した。

「出来ますか?ただのゆっくりと、ただの人間に」
「はん!ただの人間だと思わない事ね!」(シュコー)

おいれいむ、それは私の台詞だ。

「やれやれ、結局こうなるのね…変身!」
『ユックライドゥ!ディケイネ!』

ロケットのフタを閉めると同時に一頭身のシルエットが現れ、私と重なり光を放つ。
いつものようにディケイネに変身した。

「これは…!?」

門番は面食らったようだ。そりゃそうだろうなあ、初見なら誰だってそーなる。私もそーなる。

「また、面妖な…」
「見かけで判断すると痛い目見るわよ!」

先手必勝、私はポシェットからメダルを取り出す。

『スペルライドゥ!』
「…はっ!」(シュコー)
「まりさどうしたの?」(シュコー)
「あの門番さん…おねえさんよりおっぱい大きいぜ!」(シュコー)
『国符「三種の神器 剣」!』
「「あじゃぱアーッ!」 」(シュコー)(シュコー)

弾幕がガスマスクに直撃した。

「ゆぐぅ…ひどいよおねえさん…」(シュコー)
「手が滑ったわ」
「手はないぜ…今は…」(シュコー)

出鼻をくじかれた感じがする。

「なるほど、手加減は無用のようですね」
「してくれると、ありがたかったんだけどね」

再びバニ…門番と対峙する。その双眸に油断はない。

「はあああっ!」

やはりこいつも気を使うようだ、空中に気弾を生成し投げつけてきた。

「ぃよっととと!おっかないわね、もう!」
「まだまだッ!」

なんとか回避するも、次々と弾を放ってくる。さすが門番を務めるだけあって、攻め入る隙が見当たらない。

「ラチがあかないわね…」
「ちょこまかとッ!」

今はなんとか避けられているが、この状況は良くない。私はポシェットから次のメダルを取り出した。

「『最強』の力、借りるわよ!」
『ユックライドゥ!チルノ!』

前回手に入れたチルノのメダルを使い、ディケイネからチルノへと変身した。

「また姿が変わった!?」

意表を突けたらしく、攻撃の手が一瞬緩む。その隙を見逃さず私は一気に距離を詰めた。

「しまった!懐に…」
「油断したわね!」
『スペルライドゥ!アイシクルフォール…』

そしてスペルを発動させ…

『…-Easy-!』

…とっさに防御体勢をとった門番の両脇を、氷の弾幕がするーりと抜けていく。

「…?」
「…」
「…」(シュコー)
「…」(シュコー)

呆気に取られているうちにすばやく下がって距離をとった。

「ねえねえまりささんごらんになりました今の?」(シュコー)
「何がしたいのか意味不明なんだぜ。今のまりさには理解できないんだぜ」(シュコー)

外野がうるさい。ちくしょう、お約束か。なんとなく嫌な予感はしたんだ。

「さっきは少し油断しましたが、もうそうはいきませんよ。一気に行きます!」

門番は今までとは段違いに多い気弾を作り出し、それを一斉に飛ばしてきた。

「ちょッ…とおおおおおお!」

今までの弾幕でさえなんとか避けられるレベルのものだったのに、数が増えた事で難易度は格段に上がっている。
パーフェクトフリーズによる弾幕停止も考えたが、無理だ。発動する前にやられてしまう。

「う…うぅー!」

声に反応して振り向くと、れみりあの方に流れ弾が飛んでいくのが見えた。

「馬鹿!早く逃げなさい!」
「うっ…う…ううー!怖いよおー!」

最悪だ。その場で泣き出してしまった。

「ったく、世話の焼ける!」

全速力でれみりあに体当たりして、着弾コースから強引に外す。そして本来れみりあに当たるはずだった気弾にあたってしまった。

「ぅぅああっ!」
「う、ううー!」

吹っ飛ばされて落下する。その衝撃で変身が解けた。

「ううー!ごめんね!ごめんね!」
「ったた…怖いんだったらせめてどっかに隠れてなさいよ…」

門番は構えを解き、元の位置に戻った。

「勝負あり、ですね。そちらの3人に戦闘力は無いようですし」

確かにこのれみりあでは戦えない。ガスマスクには端から期待していない。
どうする、一度出直すか?そう考えていると、門番がふいと茂みの方を向いた。

「…ところでさっきから傍観している貴女。何者ですか?」

唐突に門番がそんな事を言い出した。すると茂みががさがさと揺れ、セミロングの女の子が歩いてきた。
先ほどの私達と同じように隠れて様子を窺っていたらしい。

「やれやれ…無様なものね。でもまあ、れみりあちゃ…れみりあをかばった事は評価してあげるわ」
「あんた…一体誰?」

その少女はゆっくりと、左手を前に突き出した。指先にはキーホルダーがぶら下がっている。
そして、そのキーホルダーの先端に付いているロケットは…

「そういう話は後でしましょう?」
「それは…まさか!」

少女はメダルを取り出し、ロケットに挿しこんだ。

「そうよ…そのまさかよ!」
『ユックライドゥ!』

-つづく-




書いた人:えーきさまはヤマカワイイ

この作品はフィクションです。ゆえに実在する人物だのなんだのとは一切関係ないんじゃないかと思います。


  • バニー美鈴は素晴らしい。大変素晴らしい
    でもディエンドポジションの娘が来たから次回の冒頭で
    リュウガさんの如くかませ犬化しそうで怖いな -- 名無しさん (2009-06-14 22:03:40)
  • ちるの役にたたねぇw
    泣けるで -- 名無しさん (2009-06-14 23:51:15)
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最終更新:2009年08月10日 22:06