【リレー小説企画】ゆっくらいだーディケィネ 第8話

「創作スレ一周年企画」仮面ライダーディケイネ

第8話 月の都


目の前に広がる海、
れいむは波打ち際でその海をじっと眺めていた。
「う~み~は~広い~な、おおき~い~な~。」
とりあえず歌ってみるが、歌声が静かに響くだけ、
後ろに飼い主である紅里の家と目の前に広がる海以外、ここには何も無かった。
さて、ひとしきり歌ってかられいむは考えた。


「お姉さんもまりさも何処に言っちゃったんだろう・・・・。」


30分前に何があったのか、解り易く解説しよう。


なんやかんやで色々あって、ゆっくりれいむとまりさと共に世界を旅する変身お姉さん、床次 紅里。
永夜紗の世界に別れを告げ、彼女は新たな世界へとやってきた。
「さて、今度はどんな変な世界に着いたのやら・・・。」
そういって窓を開けようとした次の瞬間。

「突撃~!」

いきなり大量のゆっくりがドアを破って入ってきた。
入ってきたゆっくりはどれもこれも見ない顔していたが共通点が二つあった。
ウサギの耳をつけていた事と、太めのストローを持っていたことである。

「ちょッと!人の家のドアを勝手に壊して何のつもり!?」

「うるさい!この危険人物め!」

入ってきたゆっくりの一人がストローを突きつけてそう言った。

「危険人物ぅ?」

「貴方とそこに居る黒い帽子をかぶったゆっくりは"大量の穢れ"を持ち込んでいる。」

「ゆがーん!?まりさもか!?」

「そんな危険人物を放っておくわけには行かない!一緒に来てもらう!」

「・・・・何よ、さっきから訳の解らない事言って。」

紅里はそういって突きつけられたストローを押し返す。

「こんなもの突きつけられてそんな事言われたって、私は怖くもなんとも無いんだけど。」

そう言って紅里は入ってきたゆっくり達を睨みつける。
「う・・・・。」
ゆっくり達はその視線に脅えている。

「ど、どうしよう、隊長にいわれて捕まえに来たけど、このお姉さん、思ったより怖い!」

「いや、怯むな!あれを使えあれを!」

「は、ハイ!あれですね!」

うさ耳ゆっくりの内の2匹がストローを咥えて前に出る。
「?何、やる気?」
紅里はそういってペンダントを構える。
何かしてきたら変身して懲らしめてやるつもりだ。

「それ!ぴゅ~!」

「ぴゅ~・・・。」

ストローの先から変な液体がビューと出てくる。
しかも勢いが無い。
液体は紅理に届かず、床にべちょっと広がった。

「・・・・・。」

「お姉さん、こいつら何がしたいんだぜ?」

まりさが紅里にそう問いかける。
そんなの紅里にわかるわけが無い。
しかし、一つ確かなことがある。
「まぁ取りあえず、床を汚した分はお仕置きしないとね。」
そういってペンダントを構え、ポーチからメダルを取り出す。
そして、ペンダントにメダルをはめてディケイネに変身しようとしたその時!

モワン。

液体をぶちまけられた床から白い煙が発生した。
「!」
ゆっくりに近づいていた紅里はその煙をまともに吸ってしまった。
「こ、このけむりは・・・・ガクっ。」
紅里は白目をむいて気絶してしまった。
「お、おねえさん!?」
あっさり気絶した紅理を見てまりさは驚きの声を上げた。

「よし!こいつをゆっくり運べ!」

「は~い!」

うさ耳ゆっくり達は気絶した紅里を運び出そうとする。
まりさはそれを見てすぐに行動した。
「ま、待て!おね~さんを連れて行くならまりさを倒していくんだぜ!」
玄関まで一っ飛びしてうさ耳ゆっくり達の前立ちはだかりそう叫んだ。
その結果・・・。


「こいつも捕まえろ。」

「ハイ!」

「え?何?ちょっとみんなそのストローで何する気?うわああああ吸わないでぇえええええ!
 寄って集ってまりさのおはだをすわないでぇええええええ!いやぁ!そこはらめぇ!いく!いっちゃう~!


『ヘブン状態!』


 ・・・・むきゅ~。」

・・・身の程知らずにカッコつけようとすれば、こうなるのは自然の道理というものである。

「よし!このゆっくりと人間を月の宮殿まで照れていくんだ!」

「ハイ!ゆっくり理解しました!」

「それと床に巻いたものもふき取って置くこと!」

「わかってます!」

こうして紅里とまりさは謎のうさ耳ゆっくりに連れて行かれたのであった。
・・・ちなみにれいむはこの大騒ぎにも気づかず、押入れで真っ先にグ~スカ寝ていた。



こうしてこの世界に来て早々、紅里とまりさはゆっくりの大群に連れ去られ、霊夢だけが置いてけぼりにされたわけである。


「ゆう、まいったね・・・。」


目を覚ましたら紅里もまりさの姿も無い。

外に出たらあるのは海と砂浜ばかり。

冷蔵庫の食べ物はあらかた食べつくしてしまった。

こんなジリ貧な状況でじっとしている訳には行かない。
何か、行動しなくては。

「・・・まりさもおねーさんも簡単に死なないと思うからあとまわしにして・・・
 取りあえず、れいむは夕ご飯を探そう!」

何はともあれ、腹は減っては戦ができない、とれいむは常々思っている。
・・・さっき冷蔵庫の中のものを空にする程食べたはずだが、まぁ気にしてはいけない。
れいむはご飯を探そうと、跳ねて移動しようとした。
異変は、その時起こった。


びょぉおおおおおおん!


「ゆゆ!?」
れいむの身体は、自分でも予想が付かないくらいに高く飛び上がっていた。
通常が1m位なら、現在は10メートルくらい飛んでいる。
しかも、なんだか落ちていく動作もふわふわで変な感じだ。
「ゆゆ!?お空を飛んでいるみた~い!」
そういいながられいむは地面に着地した。

「・・・これすげぇ!なんだかめっちゃすげぇ!」

れいむは味わったことの無い感覚に感動を覚えていた。
もう一度跳ね上がる、
普段では考えられないくらいれいむの身体は高く浮き上がる。
そして、ゆっくり落ちて地面にフワリと着地する。
正に夢心地のような飛び方とはこのことか。
「ゆっ~ゆっ~ゆっ~ゆう~めい~じん!」
楽しくなって歌まで飛び出してきた。
「よし!いっちょ気合を入れて!」
れいむはそう言うと、今度はいつもより力を込めて飛び上がった。

びょぉおおおおおおんっ!

「ゆううううううううううううんッ♪」

れいむは、実に50メートルほど飛び上がった。
正に、遊覧飛行だ。
「ゆう~いい眺めだね~。」
れいむはそう言って50メートルからの眺めを見つける。
遥か彼方には海、後は果てしない穴ぼこだらけ荒野。
それが、れいむが見た50メートルの高さの風景だった。
「・・・でも、なんだかこの世界、なんにもないね。」
そして、これがれいむが50メートルの高さからこの世界を見た感想が、これだった。
遥か彼方に見える海以外はでこぼこの穴が開いた荒野が広がる無人の世界。
本当にさみしい所だと、れいむは心のそこから感じた。
・・・よ、そんな事を思っていたその時。


ガクっ!?


「ゆ!?」


いきなりれいむは、何かに引っ張られるような感覚に襲われた。


~☆~


一匹のゆっくりは今、非常に焦っていた。
現在そのゆっくりは一匹のゆっくりにおわれている。

「・・・様!待ってください!」

そう叫んで彼女を追いかけてくるのは、やはりゆっくりだ。
そのゆっくりに捕まるものかと彼女は、必死の思いで逃げ回る。
今、追加まる訳には行かない。
捕まったら、苦労して手にした獲物をみすみす手放すことになる。
そんな事は、彼女にとって決してあってはならないことなのだ。

「逃がしませんよ!今捕まえないと、どんなお仕置きをされるか解ったもんじゃないですから!」

しかし、逃げる方も必死なら追う方も必死だ。
お互い捕まるものか逃がすものかと一進一退の追いかけっこを続けている。
追いかけっこをしている内に他のゆっくりとすれ違う。

ドンッ!

逃げる方のゆっくりとすれ違った弾みでバランスを崩したそのゆっくりは、そのまま追いかけて居る方のゆっくりにぶつかってしまった!

「うわ、避け切れなくてごめんなさい!」

「こ、こちらこそごめんねレイセンさん!」

ぶつかった二匹のゆっくりは、お互いにごめんねごめんねと誤りあった。
・・・今が逃げるチャンス!と、そのゆっくりは考えた。
全速力で奪取し、角を曲がる。
しかし、そのゆっくりの足はそこで止まってしまった。


・・・何故なら、その先はいわゆる行き止まりだったからだ。


正面、左右、天井四方を高い壁に挟まれた袋小路。
「ちいっ!しまった!」
ゆっくりは慌ててきた道を引き返そうとするが・・・。

「・・・追い詰めましたよ、とよひめさま。」

その道は一匹のゆっくりによって阻まれていた。
たれ耳気味のウサギ耳が特徴のゆっくりレイセンによって。
立ちはだかる冷戦を見て、ゆっくり・・・いや、とよひめは舌打ちした。

「さあとよひめ様、あれを返してくれませんか?」

「やぁねえ、あれを勝手に持って行った位で何を大げさな。」

「よりひめ様が楽しみにしていたのをお忘れですか!?」

「全部持って行った訳じゃないんだからそんな怒らなくても・・・・。」

レイセンとそんなやり取りを繰り広げながら、とよひめはどうやってこの状況を脱するか考える。
・・・しかし、いい手は思いつかない。
もはや、諦めるべきか、そう考えたその時。


「うわあああああああああああああああ!」


遥か空の彼方からそんな叫び声が聞こえてきた。

「!?」

「何事だ!?」

とよひめとレイセンが同時に上を見上げたその時!


バキイッ!


ドゴオッ!


ぐはあっ・・・。


ドさっ。


スタッ。


「10点満点!」


「ええと・・・。」
とよひめも読み手も状況がわからないと思うので一応解説しよう。

1.ゆっくりれいむが天井をぶち破って落ちてくる。

2.れいむ、レイセンの顔面に見事着地。

3.レイセンの呻き声

4.レイセンダウン。

5.れいむ、見事着地。

6.れいむ的には10点満点だった。

と、言う訳である。


「ここは何処?上から見た時はこんな所何処にも無かったよ?」

れいむは自分が今居る場所が解らず、辺りをキョロキョロ見回している。

「ねぇ、そこのゆっくりさん。」

と、とよひめがそんな混乱状態のれいむに話しかけてきた。

「ゆゆっ、始めてみるゆっくりだね!れいむはれいむだよ、ゆっくりしていってね!」

とよひめの存在に気づいたれいむはお馴染みの挨拶を繰り出した。

「私はとよひめよ、ゆっくりしていってね!・・・まぁとにかくありがとう、助かったわ。」

「ゆゆ?れいむ、お礼言われるような事したの?」

とよひめにお礼を言われたれいむはちょっと混乱する。

「貴方がいなかったら、もう少しで私が捕まるところだったわ。
 お礼って程じゃないけど、これを分けてあげる。」

そう言ってとよひめは帽子の中から何かを取り出した。
みると、それはみずみずしい桃だった。
「ゆゆ!この桃さん、食べていいの!?」
れいむはそれを見て、目の色を変えた。
「ええ、遠慮なく食べて良いわよ。」
そういわれたら、断るようなれいむでは決して無い。
れいむはすぐに桃にむしゃぶりついた。

「む~しゃ、む~しゃ、幸せ~!」

みずみずしくさっぱりした舌通りを、れいむは存分に堪能するのであった。
「貴方は見かけないゆっくりね、何処から来たの?」
とよひめはれいむにそう問いかける。

「れいむ?れいむはね・・・。」

れいむは今までの冒険をとよひめに話した。
紅里とまりさと一緒にさまざまな世界をめぐった思い出を。
勿論、自分の活躍は百倍ほど誇張表現して。

「へぇ、貴方とそのお友達って大変な冒険をしてきたのね。」

「そうだよ!えっへん!」

そういって誇らしげにれいむは相変わらず何処にあるのか解らない胸を張る。

「・・・そういえば、目を覚ましたらお姉さんもまりさも居なかったけど、何処に言ったのかな・・・。」

「ねえ、そのお姉さんとまりさってゆっくりの特徴は解る?」

「お姉さんはさむえとひんにゅうが特徴でまりさは大きな帽子をかぶってるよ。」

「・・・それなら、さっきそんな特徴の人間とゆっくりを見かけたわ。」

「ゆ?そうなの?どこで?」

「あれは確か・・・・。」

とよひめがその先を言おうとしたその時。

ザザザザザザザッ!

突如、れいむの足元から鋭い刃がれいむを囲むように飛び出てきたのだ!

「うわぁあああああああああああああ!」

いきなり現れた刃に、れいむは叫び声を上げる。
「このやいばは・・・・!」
とよひめは刃を見て驚きの声を上げる。

「・・・姉上、とりあえずそいつから離れていてくれないか?」

そう言って一匹のゆっくりが現れる。
紫の髪を黄色のリボンで止めたポニーテールが特徴のゆっくりだ。
手も無いのに、どうやって持っているのか不明だが、自分の背丈の倍もある長い刀を持っている。

「え?よりひめちゃん、意味が全然解らないんだけど。」
とよひめはそのゆっくり――よりひめにむかってそう言った。
「そいつは月の宮殿に不法侵入した罪人だ、捕まえる必要がある。」
そう言ってよりひめはれいむに近づく。

「むう、良くわからないけど・・・れいむはここで捕まる訳には行かないよ!」

「もう捕まってるだろうが、その刃の檻からは逃げられないぞ!」

「ゆっふっふ、まだまだ甘いね、君。」

れいむは不適に笑って柔軟体操を始める。

「この檻、真上ががら空きだよ!」


ビョーン!


れいむは勢い良く真上に飛び上がった!
そして、刃の檻から脱出する!
「な、何イッ!」
まさか脱出されるとは思わなかった、よりひめは驚き、と惑う。
れいむはすたっと着地する。


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  'r ´     | ::::i     |      ヽ、ン、
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  i イ iゝ、イ人| ::::|      ! レ/_ルヽイ i |
  レリイi (ヒ_]  / :::::| 。.   |   ヒ_ン ).| .|、i .||
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「ゆふふ、このれいむにかかればこんな檻はちょちょいのちょいだね!

「いや、ちょちょいのちょいじゃないだろ、真っ二つだ、見事にスライスされてるぞ。」

よりひめは縦に真っ二つになったれいむの姿を見て即効でつっこみを入れた。
「あ、まじい。」
慌てて二つになった身体をくっつけるれいむ。
「では、ゆっくり追いかけっこの始まりだね!」
身体を無事にくっつけたれいむは凄い逃げ足でこの場を逃げ出した。
「し、しまった!逃がすか!」
よりひめは慌てて追いかけようとする。
と、その前にやっておくべき事がある。

「おい、レイセン、起きろ!」

よりひめは倒れている、レイセンを起こした。

「あ、あれ?よりひめ様、私は・・・・。」

「緊急事態だ、月の宮殿に賊が侵入した。」

「え?ぞ、賊!?」

「宮殿を警護中のゆっくりたちに伝えろ、全力を持って賊を捕まえろ、とな。」

「あ、ハイ!解りました!」

よりひめからの指示を受けてレイセンは跳ねて移動しようとする。

「おっと、急いでいるんだから跳ねて移動しちゃ駄目ですよね。」

レイセンはそういうと、身体に力を込めた。

シュワワワワワ・・・・!

すると、足の方から無数の白い泡が湧き出てきた。
「それでは、言ってまいります!」
レイセンはそういうと、泡を出しながら滑るように高速で移動し始めた。
「よし、私も行くとするか!」
レイセンを見送ったよりひめはれいむを追わんと自分も走り出した。
跡に残されたのはとよひめのみ。

「・・・何だか知らないけど助かったわね、私はこの桃をどこかゆっくりできるところで食べるとしましょうか。」

とよひめはそう言ってゆっくり何処かに向かい始めたのだった。



~☆~


れいむは月の宮殿の廊下を凄い勢いで逃げ回っていた。
しかし、何処に逃げたら良いのか解らない。
当たり前で、この月の宮殿は始めて訪れるのだから右も左も解るはずが無い。
「ゆう、せめて案内板くらい上げてくれれば良いのに・・・不親切な場所だね、ここは!」
とりあえず、曲がり道を曲がったり、真っ直ぐ進んだりでれいむは適当に進んでいった。


シューッ!


と、れいむの後ろから何かが滑ってくるような変な音が聞こえてくる。
「ゆ?」
一体何かと、れいむは後ろを振り向いてみる。


「待て~!そこのしんにゅうしゃ~!」


何と、二匹のうさ耳ゆっくりがれいむの両側から凄い勢いで追いかけてきたのだ!
その移動方法もかなり異質、
普通のゆっくりのように跳ねて移動せずに、白い泡を吹き出して滑るように移動しているのだ!
「ゆゆ!?な、何なのあれは!?」
れいむは見たことの無いゆっくりの移動方に驚きを隠せない。
凄い速さで擦ってきたうさ耳ゆっくりは、二匹がれいむを挟みこむような位置に移動する!

「よし!捕らえた!」

「シャボン玉でこいつの動きを止めるんだ!」

2匹のうさ耳ゆっくりは滑りながらストローを咥えると、ストローから大量のシャボン玉を噴き出した!

ポワワワワワワワ!

「ゆゆ!?ナニコレェ!?」

いきなりシャボン玉を吹き付けられて、れいむは混乱状態になってしまった。

「よし!今だ捕らえるぞ!」

「おう!」

二匹のうさ耳ゆっくりは同時に、れいむに向かって突撃した!
「ゆゆっ!」
危険を感じたれいむはすぐに反応する!
「ばっくすてっぽ!」

バアッ!

れいむは素早く後ろにジャンプした!

「!」

「しまった!」

目標地点に敵がいなくなり、焦るうさ耳ゆっくり!
急ブレーキをかけようにも、速度が乗りすぎて急に止まれない!

ゴツン!

2匹のゆっくりは、そのままお互いに頭をぶつけてしまった!
「ゆゆ~お先に~。」
れいむは悠々とその2匹の頭上を飛び越えていった。
そして床に着地しようとしたた次の瞬間!


ぱきいんっ!


何と、着地地点の廊下が一瞬にして凍ったのだ!


「え?」

慌てたれいむだったがそのままその凍った床に着地してしまった。
・・・まさかこのまま滑って転んで頭を打って気絶?
いや、ちがう。

ベタッ!

余りの低温に足の部分と廊下がくっついてしまった!

「ゆゆ!?床に引っ付いて動けない!?」

何とかもがいて逃げ出そうとするが、床に引っ付いた皮の部分が剥がれそうになるのでどうしようもない。
「い、一体何が起こったの~!?」
れいむはパニック状態になって大声でそう叫んだ。

「そんな慌てることじゃない、床の温度を―50℃にしただけだ。」

そう言ってれいむの間の前によりひめが現れた。
・・・が、様子がおかしい。
彼女の身体から白い冷気が溢れているのだ。
良く見ると、彼女の全身が霜で覆われている。

「私の中身を液体窒素に替えたことでな、身体が張り付いて動くことが出来まい。」

「・・・えきたい・・・チッソ?」

聞きなれない言葉が出てきてれいむは首をかしげる。

「液体窒素を知らないのか?地上のゆっくりは学が無いな・・・。」

「地上のゆっくり?何の事?れいむはれいむだよ?」

「とぼけるな、小麦粉と餡子で構成されたボディのゆっくりなんて、地上にしか居ない。」

「ゆ?じゃあここのゆっくりは饅頭じゃないの?」

「そんな事はお前が知る必要が無い、今お前に必要なことは、私たちに従うことだ。」

そう言ってよりひめはれいむに近寄っていく。
れいむまであと一歩まで近づいたその時・・・れいむは不適に笑った。

「ねえ・・・よりひめ・・・だっけ?」

「?」

「何だか解らないけど、よりひめは凄いことが出来るんだね、だったら今度はれいむができることを見せてあげるよ!」

「なに!?」


「さあ!お食べなさい!変則バージョン!」


パカッ!




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     レ ル` ー--─ ´ルレ レ´


何と、れいむは横に二つに分かれた!
「なあっ!?」
いきなりの事に戸惑うよりひめ。
床にくっついた状態の下半身と分離したれいむは、そのまま凍ってない床の上に着地する!
そしてすぐに身体を元通りに復元する、下半身と切り離した分、身体が少し小さくなってしまったが。

「おのれ、縦に分かれたり横に分かれたり、地上のゆっくりは何とも奇怪だ!」

「ゆっゆっゆっ!れいむを捕まえるなんて君たちには無理だね!」

れいむはそう言って走り出した!

「逃がすか!中身チェンジ!」

そういうと同時に、よりひめの身体から白い泡が吹き出される!
そして、凄い勢いで滑り出してれいむを追いかけ始めた!

「あ!いたぞ!あのゆっくりだ!」

「逃がすか!」

更に不味いことに、レイセンも応援を連れて追いかけてきた!
現在、逃げるれいむの背後には10匹以上のうさ耳ゆっくりとよりひめが追跡してきている。

「うう、このままじゃあ追いつかれちゃうよ。」

れいむはヤバイと思い始めたその時。

「うわ・・・ちょっと・・・そこまでするの・・・。」

「うわぁあああああ・・・・・やめてぇえええええ・・・・。」

遠くから、聞き覚えのある声がれいむの耳に入った。
「ゆ?今の声はおねえさんとまりさ?」
れいむは今の声が何処から聞こえてきたのかと辺りを見回す。
見ると、通路の横の扉から、また声が聞こえてくる。

「いたいぃいい・・・・おねがいだからやめてぇえええ・・・・。」

「お願い・・・!ホントにやめて・・・!」

聞こえてくる声はどっちも悲痛なものだ、
二人とも、居なくなったと思ったら一体何をされているのだ?
「・・・まりさ!お姉さん!」
れいむは自分が追いかけられていることも忘れてその扉に飛び込んだ!

「ちょっと!れいむのお友達に何しようとしているの!」

れいむは扉に飛び込んで、大声でそう叫んだ!
部屋に飛び込んだれいむがそこで目撃したものは!

「いいから!あんな所まで洗わなくていいから!恥ずかしいっての!」

「うわぁああああ!まりさのお目目にシャンプーがぁああああああああ!」

「いいえ!よりひめ様の命令ですから身体の隅々まで丁寧に現せて貰います!」

「だから言ったんですよ!目に入ってしみるから目は閉じておきなさいって!」

「ああもう!お母さんにもそこまで洗わせた事が無いのに!」

「せめてシャンプーハットをおねがぁああああい!」

無数のうさ耳ゆっくり達に全身くまなく洗われている紅里とまりさの姿だった。
うさ耳ゆっくりたちは身体から白い泡を出して、身体を擦り付けることによって二人の身体を洗っている。
紅里は恥ずかしいとこまで洗われて赤面し。
まりさはシャンプーが目にしみて泣きまくっていた。

「・・・え~と、お姉さんとまりさ、何やってるの・・・。」

れいむは呆然とした様子で紅里とまりさに向かってそう言った。
その時だった。

「隊長!あのゆっくりは風呂場に逃げ込んだようです!」

「しめた!あの部屋は行き止まりだ。」

後ろから、そんな声が聞こえてくる。
れいむが嫌な予感がして振り向くと。

バタン!

「神妙にお縄につけぇえええ!」

扉が開き、よりひめを筆頭としたうさ耳付きゆっくりが一斉にれいむに襲い掛かる!

「うわぁああああああああ!」

れいむの叫び声が、風呂場に良く響き渡った。



~☆~


・・・あ~何だかんだで久しぶりにさっぱりした。


バスローブを羽織り、頭にタオルを巻いて私は久しぶりにさっぱりした気持ちになっていた。
まぁ、考えてみれば世界を巡るたびに出て以来、ロクに風呂に入っていなかった。
たまりに溜まった垢を一気に洗い流せば、そりゃさっぱりもするだろう。

気がついたら私は変な建物の中に居てここは何処なんだ、と思っていたら
紫のポニーテールのゆっくり(後で聞いたらこいつはとよひめと言ってこの月の宮殿のうさ耳ゆっくりをまとめているらしい。)がやってきた。
そいつは私とまりさの体をしげしげと見てこう言った。
「やはり酷く穢れているな、身を清めて穢れを排除しろ。」
こうしてあっという間に風呂場に連れて行かれて(私にいたっては全裸に剥かれて。)ゆっくり全員で全身くまなく洗われたのであった。

・・・まぁ本気であれはかなり恥ずかしかったが。
「まぁ、汚れは落としたから、後はゆっくりしてもかまわん、部屋は与えてやる。」
と、かなり豪華な部屋を用意してくれた。
内心、まだむかつきは収まらないが、まぁこの位の待遇をしてくれるなら許してあげなくも無い。

「ふう~酷い目にあったぜ・・・。」

と、ベッドの上ではまりさが広げたバスタオルの上でコロコロ転がって身体を拭いている。
目が赤いのはシャンプーが眼に入ったと言っていたからその所為かもしれない。
身体を現れていたときはギャーギャー騒いで居たが、今はやたらと落ち着いたもんだ。

「いくら何でも、あいつらちょっとやりすぎだぜ・・・。」

「・・・今回ばかりはあんたの意見に同意するよ。」

実際、あいつらこれでもかという位に私たちの全身の汚れを落としてきたのだ。
かなり強くこすられた所為か、今でも肌がちょっと痛い。

「それにしても、あいつら何でまりさやおねーさんをあそこまで念入りに洗ったんだぜ?」

「それは、月の住人にとって、ありとあらゆる汚れ・・・穢れは罪そのものだからよ。」

と、部屋の入り口のほうで声がする。
振り向いてみると、そこには金髪に白い帽子をかぶったゆっくりの姿があった。
確か、ここのゆっくりたちがとよひめ様と読んでいるゆっくりだ。
さっき話に出てきたよりひめというゆっくりの姉に当たるらしい。

「ふ~ん、貴方達が姉さんが言ってた来亡者?随分とみずぼらしいかっこしてるのね。」

「・・・みずぼらしいってどういう意味だぜ!まりさのような・・・。」

話がややこしくなりそうなので私はまりさの口をそこで遮った。

「・・・罪ってどういう事?」

「穢れが溜まると、そこに寿命が生まれてしまう。
 だからこそ月の住民達は徹底的に穢れを排除し、寿命が生まれないようにしているの。」

「・・・???」

とよひめの説明を聞いてまりさが鼻水を流してる、
こりゃとよひめの説明を全然理解してないな。

「要するにこの世界の住人は汚いのが大嫌い!ってことかしら?」

私が分かりやすく説明してやると、
まりさは「ああ、そういう事か!」と納得した顔になった。
とよひめは更に説明を続ける。

「毎日二時間の掃除は勿論、消毒、抗菌、害虫駆除。
 そして一人一日二度のの入浴、手洗い、うがい、歯磨き。
 月の民はこれらの活動を徹底して清潔を心がけているわ。
 だから穢れにまみれた貴方達来亡者をを放っておくわけにはいかなかったのよ。」

なるほど、だからあんなことされたと言う訳か。
はぁ、こんな目に合うくらいならマメに洗って置けばよかった。
・・・と、そこで疑問が生まれる。
まりさや私は連れてこられたのに、何であいつられいむの事は放って置いたんだ?

「れいむは元からキレイだからだぜ!アイツ、暇さえあればシャワーで身体を洗っているから。」

なるほど、確かにれいむはかなりのキレイ好きだし。
・・・と、れいむのことで思い出したことがある。

「あのさ、ウチのれいむはまだ尋問されてる訳?」

「ええ、尋問室に連れて行かれて尋問中よ。」

れいむは月の宮殿に不法侵入した罪で逮捕されてしまった。
現在、尋問室に連れていかれて、事のあらましを白状させられている・・・らしい。
何故らしいって言ったのかって?
だって私、風呂場で取り押さえられたところから、れいむの姿を見ていないもん。
尋問室に連れて行かれたという情報は、ウサギ達から聞いたことなのだ。

「れいむの奴、無事でいるかな・・・?」

まりさは心なしかそわそわしている。
何だかんだで長年のパートナーの事が気になるのだろう。
実際、私もれいむの事はまぁどんな拷問にかけられてもケロリとしてるだろうなと思いつつも
内心は不安だなってくらいには心配してるし。

「気持ちはわかるけど、尋問室には入っちゃ駄目って言われてるしなぁ。」

「だったら私が見せてあげようかしら。」

と、とよひめがにこりと笑った顔でそんな事を言ってきた。

「見せてあげるって、尋問室まで案内してくれるのか?」

「アハハ、貴方達を勝手に尋問室に入れたら私が怒られちゃうわよ。」

まりさはというととよひめの言葉を聞いて首をかしげる。

「じゃあどうやって見せてあげるって言うんだぜ。」

「ねえそこのあなた、洗面器に水をはってこっちに持ってきてくれるかしら。」

「・・・・あの、私には紅里って言う名前があるんだけど。」

「じゃあ紅里さん、早くもって来てくれないかしら。」

何が何だか分からないが、ここは素直に従うことにしよう。
適当な洗面器に水を入れてとよひめの前においてやる。

「じゃあ貴方達に尋問室の様子を見せてあげるわ・・・。」

そう言うと、とよひめは静かに目を閉じた。
・・・そこからとよひめはピクリとも動かない。
「・・・あ!洗面器のおみずに何かが映り始めたぜ!」
まりさの言うとおり、洗面器に張ってある水に何かの光景が映し出されたのだ。
こいつがこのゆっくりの力なのか・・・?と、そんな事言ってる場合じゃない。
私とまりさは同時に洗面器を覗き込んだ。

「ハムハム、ガツガツ!」

・・・映ったのは刑事ドラマにでてきそうな取調室。
そのテーブルの上に、れいむと、たれ気味のうさ耳ゆっくり――確か名前はレイセンといったっけ――が乗っかっている。
何だかレイセンはウンザリしているのに対し、れいむは凄い勢いでカツどんをパクついていた。

「うめぇ!めっちゃうめえ!」

「・・・あの、それ食べたらここに不法侵入した経緯をはいてくださいよ。」

「ご馳走様!」

「吐いてくれる気になってくれましたか?」

「・・・まだお腹がすいて、頭がボーっとしてるよ!もっと頂戴!」

「え!?まだ食べるんですか!?もう5杯目ですよ!」

「お腹一杯になれば思い出すよ、多分!」

「・・・・・。」

レイセンは暫く黙った後、テーブルの上においてあった黒電話の受話器を持ち上げた。
「・・・すみません、月月亭ですか?・・・あの、すいませんがカツどんお願いします。」

・・・私はれいむの行動を見てちょっと呆れ帰ってしまった。
こいつ、自分がどう言う状況に置かれているのか解っているのか?
ああ、あのレイセンってゆっくり涙目じゃん、かわいそうに・・・。

「れいむの奴、何やってるんだぜ・・・・。」

あ、まりさが怒ってる、まぁこれは仕方が・・・。
「まりさもカツ丼ガツガツ食いたいぜ!ちょっとまりさも尋問されに行ってくるぜ!」
・・・っておい!あんたもホトホトいい神経してるな!
まりさは尋問室に向かおうとするが、そこを部屋の外に見張りとして立っていたうさ耳ゆっくりに阻止される!

「困ります!よりひめ様の許可なしに外に出ないで下さい!」

「むむ!カツ丼食い放題コースはれいむだけだって言いたいのか!?そうは行かないんだぜ!」

うさ耳ゆっくりと必死の押し合い相撲を始めるまりさ。
それを眺めながら私は別の事を考え始めた。


よりひめ、とよひめ、レイセン、極め付きに月の民
ここまで来ればこの世界が「儚月抄の世界」だってのは理解できる。
問題は「ここでどんな異変を解決すればいいのか」って事だ。
原作どおりだと、れみりゃ達がロケットに乗ってやってくるからそいつを捕まえれば解決?
・・・どう考えても、これは違うと思う、今更れみりゃと戦うのもあれだし。
まぁ、原作とは違う例もあったし、とりあえずは異変が起きてみるまで待ってみようかと思っていると・・・。


ズウン・・・・。


「・・・ん?なんか今、部屋がゆれなかったか?」

「・・・いいえ、違います、これは・・・宮殿中が揺れている?」


ビーッ!ビーッ!


「う、うわッ!一体何だぜ!」



「緊急事態です、緊急事態です、『ケガレ』が大量発生しました。
 非戦闘員は直ちに地下シェルターへ退避、戦闘要員は戦いの準備をしてください。」




・・・都合よく、異変が起こってくれやがりました。





後編(第9話)へ続く





補足説明

とよひめたちのすむ月の宮殿(および、月の都)は普段は特殊な結界で外からは見えません。
また、月の宮殿は外とは違って地球と同じ重力が働いています。
れいむが月の宮殿の天井から落ちてきた訳は気づかずに月の宮殿の真上を通った結果、
月の宮殿の重力に捕まり、そのまま引力に引かれて落ちてしまったからです。


作者、かに
・・・キャラの再現って難しい。


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最終更新:2009年08月15日 20:54