【リレー小説企画】ゆっくらいだーディケイネ 第9話 後編

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ゆっくらいだーディケイネ 第9話 ■Bパート

~ここから先は第3者の視点で書かせていただきます~
~統一しろよと言う苦情は一切受け付けません~


ドゴオッ!


馬ケガレの一匹がついに月の都を囲む防護壁をぶち破り、月の都に潜入してしまった!
馬ケガレはそのまま月の都の中心にある月の宮殿まで突進していく!

「まずい!」

より姫は馬ケガレがぶち破った壁の穴から月の都に入っていく。
しかし、他の馬ケガレも出来上がった穴から都に突入しようとする!

「よりひめ様!ここは私たちが何とかします!」

それを食い止めたのはうさ耳ゆっくり率いるレイセンだった!
白い煙とシャボン玉で、馬ケガレの突入を防いでいる!
短時間でしかないが、それでも時間稼ぎにはなる。

「…すまない!」

よりひめはそれだけ言うと、全身から泡を出して一気に滑り出した!
凄い勢いで月の都に突入した馬ケガレを追いかける!
しかし、よりひめが馬ケガレに追いつくより、馬ケガレが月の宮殿に突入するのが早そうだ。
月の宮殿まで後10メートル…9メートル…。

(くそっ!間に合わないか!?)

よりひめがそう思った次の瞬間!


「・・・・・・・!」



突然、馬ケガレの足が止まる。
「何だ?」
よりひめは突然馬ケガレが足を止めたことに驚き、急ブレーキをかける。
馬ケガレの視線の先・・・・月の宮殿の巨大正門、
その正門に、二人の少女が立っていた。

「うわお、間近で見るとやっぱり洒落にならないほど大きいじゃん。」

「よくも私のかわいいゆっくりを苛めてくれたわね!この代償は高くつくわよ!」

「いや、勝手に自分の物宣言するな、この変態。」

「ちょッと!私の事を変態って言わないでよ!」

「ごめん、痴女だったか。」

「痴女ですらない!私はただゆっくりが好きな女の子よ!」

紅里と伝子であった。
何だが月の宮殿正門前で、漫才みたいなやり取りを繰り広げている。
「…あいつら、何でここに居る!?何をやっているんだ!?」
よりひめは二人の少女を見て混乱した。
と、伝子がそんなよりひめの姿を見つける。
「あ、よりひめだぁ~ゆっくりなのに凛々しい顔つきだぁ~でもそのギャップがよし!」
……鼻血を出して親指を立ててグッジョブ、している。
「…何だこいつは…。」
よりひめは激しい頭痛に襲われた…。

「まぁ、とにかくまずは、この何かラオウが乗ってそうな黒い馬を何とかしますか!」

紅里はそう言ってペンダントとメダルを取り出した。
伝子も同じく、キーホルダーとメダルを取り出す。

『変身!』

二人は掛け声と共にメダルをそれぞれのアイテムにはめ込んだ!

『ユックライドゥ!』

『ディ・ケイ~ネ!』

『ディ・エイキ!』

光に包まれ、紅里はディケイネ!伝子はディエイキに変身した!
「…な、変身…したのか?」
よりひめは変身した二人をみて驚きを隠せない。

「そんじゃ、まずは目の前のケガレだか何だかよく解らない物を倒しますか!」

「ゆっくりを苛めた罪は重いわよ!」

変身した二人は馬ケガレのほうをにらみつけた。
そして、次の瞬間、驚くべきことが起こった。
「……ディ…けいね…。」
何と、馬ケガレがディケイネを見て言葉を発したのだ。

「え!?」

「け、ケガレが喋っただと!?そんな事は一度も…!」

いきなり喋ったケガレにディケイネもよりひめも驚きの声を上げる。
ケガレは更に喋り続ける。

「悪魔…すべての世界…滅ぼすゆっくり…!」

「ちょっと!ひょっとしてこいつ私が世界を滅ぼす的な事言ってない?」

「もしかしなくても言ってるわね。」

「滅ぼす…前に…潰す!」

馬ケガレはディケイネに向かって突撃してくる!
「う、うわっ!」
ディケイネはとっさにメダルをペンダントにはめた!

「ユックライドゥ!チチチチチチチルノ!」

ディケイネはチルノの姿に変身した!
「そいで持って!」
続けてメダルをはめる!

「スペルライドゥ!チルノ!」

凍符「パーフェクトフリーズ!」

氷の魂が馬ケガレの足元に向かって飛んでいく!

ガチインッ!

馬ケガレは足元が急に凍った所為でバランスを崩した!
そのまま横出しになる馬ケガレ!

「やった!」

「後は私が!」

そこへ飛び出してきたのはディエイキだった。

「ちょ、何であんたが!?」

「あんたの手持ちじゃ、ケガレに止めを刺すのは難しいでしょ、ここは私に任せなさい!」

ディエイキはメダルを取り出し、キーホルダーにはめ込んだ!

「ユックライドゥ!ゆーびぃ!」

現れたのは手足を持つゆっくり、ゆーびぃ!
「・・・ゴォオオオオオオオオオッ!」
ゆーびぃは物凄い勢いで吸い込みを始めた!

「う、うぉおおおおおお…!」

ギュポンッ。

馬ケガレはゆーびぃの腹の中に納まってしまいました。

「な、何と、…。」

「私達が数十人がかりで処理するケガレを、たった二人で…!」

戦いの様子を見ていたよりひめのお月のうさ耳ゆっくりたちが驚きの声を上げる。
と、その時だ。

「うわあっ!」

いきなりレイセンが上から降って来た!
よりひめは慌ててレイセンをキャッチする!

「レイセン!いきなり上から降ってきてどうしたと言うんだ!」
ぼろぼろなレイセンによりひめは慌てて話しかけてみる。
「す、すみません、ケガレたちを食い止め切れませんでした・・・。」
レイセンはつらそうな顔でよりひめにそう言った。


ドドドドドドドド!


激しい足跡が聞こえてくる。
嫌な予感がしてディケイネ達が音のするほうへと振り向いてみると、
そこにはこちらに向かってくる馬ケガレの大群があった!
「うわ!」
思わず声を上げるディケイネたち。


「ディ…ケイネ…!」

「悪魔…悪魔…。」

「滅ぼす…もの…!」


しかも、全員寸分の類も無く、ディケイネの方向に向かってくる!
「うわお!?やっぱりこいつらも私狙い!?」
一気に迫ってくる馬ケガレの大群を見て驚きを隠せないディケイネ。
しかし、と惑っている暇は無い!

「ああもう、やるしかないか!」

ディケイネは決心すると、新しいメダルをペンダントにはめ込んだ!

「ユックライドゥ!テル・・・カグ~ヤ!」

・・・何か一瞬名前を呼び間違えたがそこはスルーしてください。
とにかく今度はディケイネの姿がかぐやに変わった!
「ちょ!かぐやでどうやってあの軍団に対処する気なの!?」
ディエイキがディケイネにそう問いかける。
「ふふん、それは見れば解るわよ!」
そういってディケイネは一枚のメダルをペンダントにはめ込んだ。


「スキルライドゥ!かぐや!」


永遠と須臾を操る程度の能力 発動!!!


かぐやは人には認識できないほどの一瞬――須臾を集める事が出来る。
これを利用することによって彼女は人には認識できない瞬間の世界で行動することが出来る。
………即ち、どういう事かというと。


シュンッ!


ドガッ!バキッ!ドゴッ!バキッ!


「・・・・・・!」


敵が認識出来ないほどの超高速で移動できるようになるのだ。
いわゆる仮面ライダーカブトが使うクロックアップと同じ物だと思えば良いだろう。

とにかくその能力を使って、ディケイネは馬ケガレ全員に攻撃を加えた!
「・・・・・・!?」
馬ケガレは何が起こったのか解らないまま倒れこむ。
着地するディケイネ。
「うっ・・・・。」
それと同時に、輝夜の姿から元のディケイネに戻ってしまう。
「うう、やっぱりかぐやの身体って働く事には向いてないようね………。」
かぐやのゆっくりとしての身体能力はパチュリーと同レベルと言われている。
そして、時間を操る能力は得てして身体に負担をかけるものである。
ディケイネは一瞬にして10時間は戦ったような疲労感に襲われた。

「あの、辛そうですけど大丈夫ですか!?」

うさ耳ゆっくりの一人がディケイネに問いかける。

「……大丈夫、それより倒れたケガレを浄化しないと行けないんじゃない?」

「……あ!」

確かに、倒れたケガレを何とかしないとまた起き上がってしまう。
そのことに気づいたうさ耳ゆっくり達はすぐに倒れた馬ケガレを洗いに向かった。

「それ、みんなでこいつらを洗え~!」

「お~!」

全員で手分けして馬ケガレを洗っていく。
外にいたうさ耳ゆっくり達も合流し、ケガレの洗浄作業は高速で行われた。
「ハイハイ!小さくなったケガレはみ~んなゆーびぃが吸い込んじゃいますからね~♪」
うさ耳ゆっくり達に洗われて小さくなったケガレは、全部ディエイキが召喚したゆーびぃが吸い込んでしまった。
・・・何はともあれ、これで馬ケガレの脅威は月の都から去った。
月の都は馬ケガレが暴れまわったためにかなりの被害ででてしまったが、完全に破壊されてはいない。

「……お前達には助けられたな、礼を言う。」

よりひめはディケイネに向かってそう言った。
「…礼を言うのはまだ早いでしょうが…。」
そう言ってディケイネは歩き出す。
「……!何処に行こうと思ってるんだ、お前は!」

「まだ外に、あのケガレの親玉が残っているでしょうが。」

そう、まだ遥かにあの地平線を埋め尽くすほどの巨大なケガレが残っているのだ。
巨大ケガレは確実に月の都に近づいてきている。
そうでなくても、さっきのような馬ケガレを生み出して月の都を襲ってくるかもしれないのだ。
放っておくわけには、絶対に行かない。

「待て!まさかその身体であいつを倒しに行くつもりか!?」

「まぁ、そのつもりだけど。」

それを聞いたよりひめは正気じゃない、と考える。
ディケイネはさっきの能力を使った反動で、身体に強力なダメージを負っている。
これであのケガレに挑もうなんて、正気ではない。

「待て、お前を行かせる訳には行かない!」

「何よ、悪いけど私は行かないと決めたら行かないけど、行くと決めたらとことんまでいく女よ。」

「だとしても、貴様を行かせる訳には行かない、元々ケガレの問題は我々月のゆっくりの問題だ!
 無関係な貴様を巻き込むわけには行かない!」

「……関係、あるとしたら?」

「!?」

「あいつら、私の姿を見たら「世界を滅ぼすゆっくり」とか言って襲ってきたでしょ……
 どうやら今回月の都をあいつらが襲った理由って・・・私にあるみたいね。」

「そ、そうなのか!?」

「あんたの姉さんはケガレがあんなに積極的に攻めてくるのは始めてみたって言ってたわ、
 その理由も多分私よ、私を倒すために、あいつらは必死になって月の都に攻め込もうとした。」

「…………。」

「だからあたし一人で行くのよ、他人に迷惑をかけるのは私の主義じゃないからね。
 帰ってこなかったら、シェルターに居るれいむとまりさの事よろしく頼むわ、
 ちょっと迷惑な奴だけど、根っからの悪人じゃないから。」

それだけ言ってディケイネは月の都から出ようとする。
…と、その時、ディケイネの身体がフワリと浮き上がった。

「え!?」

「……ならば私も助太刀されてもらう、恩を返せぬままにくたばってもらっては困るからな。」

よりひめがディケイネの身体を持ち上げたのだ。
よりひめはディケイネの身体を持ち上げると、全身から泡を吹き出した。

「ちょ、良いって下ろして!」

「悪いが!私もこうと決めたらテコでも動かんゆっくりでな!
 レイセン!悪いが怪我したゆっくりの手当てをしてくれ!」

「え、ええ!?二匹だけで行くつもりなんですか!」

不安げな表情でレイセンはよりひめにそう問いかける。

「大丈夫、私がそう簡単にやられるゆっくりではないからな。」

しかし、力強く答えるよりひめを見て、レイセンは確信した。
彼女を止めることは、不可能だと。

「…そ、そうですか…ではお気をつけて下さい!」

自分出来る事は、二人を見送ることだけだ。


「じゃあ私はゆっくりの手当てをさせてもらうわね。」


ディエイキはそう言って怪我してるゆっくりに向かっていく。

「さあみんな!お姉さんと包帯マキマキしましょ~ね!」

「・・・折角ですけど、遠慮します。」

「がーん!」

月のゆっくりにそう言われて、軽く落ち込んでしまったディエイキでした。
「そんじゃ、行きますか!」
「よし!いくぞ!」
よりひめはデイケィネを乗せて、凄い勢いで滑り出した!


~☆~


地平線の向こうにあるオオケガレの元に向かう、ディケイネとよりひめ。
「……月の都に住むゆっくり達は元々人間に連れられてこの都にやってきたんだ。」
と、突然よりひめが口を開く。
「人間と私達は、穢れなきこの地を開拓し、力をあわせて月の都を作った。
 私達はその過程で穢れを捨て、今のスポンジボディを手に入れたのだ。」

「ゆっくりって、穢れを捨てるとスポンジになるわけ?」

「らしいな、何故そうなるのかは私達にも解らん。」

どうやらゆっくりのいい加減さは何処に行っても代わらないらしい。

「やがて、人間と一部のゆっくりが更にゆっくり出来る場所を求めて新天地へと旅立った。
 私達はここに残り、月の都でゆっくりしていく道を選んだ。
 ・・・その時、去っていった人間のリーダーと約束したのだ、
 何があっても、お前達は月の都を守り抜いて欲しい、ここは私達の故郷なのだと。

 ・・・だからお前には感謝している、もう少しで…私は約束を守れなくなるところだった。」

「あの、何でいきなりそんな事を話し出す訳?」

「まぁ、目的地に着くまで暇だからな、それにお前にも私達の事を知ってもらいたかったのかもしれない。」

「ふぅ~ん…。」

「・・・そうこうしている内に目的地には着いたみたいだな。」

よりひめはそういって急ブレーキをかけた。
ディケイネの目の前のケガレは、ありえない大きさだった。
正にケガレの海、としか言いようが無い。

「さて、こんなデカブツをどうやって倒したもんだか・・・。」

ディケイネは、目の前に広がるケガレの海を見て、どうしたものかと考えてしまう。

「こいつには核がある、そいつさえぶち壊せば!」

「……その核は、何処にあるわけ?」

「まぁ、上から地道に探すしかないのだが。」

「……ホントにこいつを何とかできるのか不安になってきたわ……まぁ、仕方ないか。」

そういってディケイネはメダルを取り出した。
「ユックライドゥ!れみみりゃ!」
メダルをペンダントにはめて、ディケイネはれみりゃに変身した。
「今度は私が運ぶ番ね。」
ディケイネはよりひめを頭の上に乗せると、その翼で空中に舞い上がった。

「うわッととと……重力が弱いと飛ぶのも簡単じゃないわね。」

「だ、大丈夫なのか?」

「大丈夫、直に慣れるって。」

そういって、れみりゃになったディケイネはよりひめを乗せてケガレの海の上を飛んでいく。

「さて…核は何処に…。」
ディケイネは真下に広がるケガレの海をキョロキョロ見回してみた。
……ケガレの海の丁度中心に当たる部分に、黒い球が浮いている。

「あれだ!あれがこのケガレの核だ!」

よりひめはその核を見て大声でそう叫ぶ。
「あれだけむき出しなんて、何てわかり易い・・・・。」
ディケイネはそう思いながらも、その黒い球の元へと近づいていった。


しゃれにならないほどデカイ。


間近でケガレの核を見たディケイネは、思わずそう思ってしまった。


「・・・まさか・・・自ら敵地に飛び込んでくるとはな、破壊の使者よ。」

しかも、その核が突然喋りだした。

「うわ、こいつも喋った!しかも口調が隔絶!」

「これだけからだがでかいと、脳みそも相当でかくなるようだな……。」

ディケイネも、よりひめも、ケガレが喋ることには驚いているようだ。
しかし、ならば聞いてみたい事があるとディケイネは考えていた。

「ねえ!月の都に攻め込んできた馬の化け物が私の事を見て世界を滅ぼすとか、言ってたけど、あれはどういう事なの!?」

ディケイネは核に向かってその質問を投げつける。

「…言った通りだ、貴様はいずれ、世界を滅ぼす…。」

「いや、だからそれが解らないんだって!そもそも私がどうやって世界を滅ぼすの!」

「解らん…だが貴様はいずれ世界を滅ぼすことになるとあのゆっくりが…!」

「…!?何、あんたにそんな事を吹き込んだゆっくりが居るってこと?迷惑な話ね。」

「いずれにせよ、世界が滅べば我も滅ぶ…だから貴様を、ここで潰す!」

ゴオッ!

核が言い終わると同時に、黒い触手がディケイネに向かって伸びてきた!
不意を疲れたディケイネは、避けることが出来ない!

バシイッ!

「し、しまった!」

ディケイネとよりひめは、黒い穢れの上に叩き落されてしまった!
衝撃でれみりゃの姿から元の姿に戻るディケイネ。
そんなディケイネに向かって黒い触手が襲い掛かる!

「く!スペルカードで!」

ディケイネはすぐにメダルを取り出して反撃に移ろうとするが・・・。
「あ、あれ!?」
メダルをいれてあるポシェットが何処にも見当たらない、
見るとちょっと離れたところに、ポシェットが落ちている。
叩き落された時にポシェットを落としてしまったのだ!

「く、くそ!」

慌ててポシッェトを取りに行こうとするディケイネ!
しかし、ディケイネがポシエットを取りに行こうとするより早く、黒い触手はディケイネの目前まで迫っていた。

「クッ!」

ディケイネは自分の身体が触手に貫かれることを覚悟して、その眼をつむった。


ガキインッ!


金属にぶつかった様な、変な音がする。
そして、自分の身体には全く痛みが走っていない。
「・・・・?」
ディケイネは疑問に思い、ゆっくりと目を開いてみた。

「・・・大丈夫みたいだな。」

ディケイネの目の前に、黒い触手を身体に突き刺したよりひめが立っていた。
よりひめが身体を張って、黒い触手からディケイネを守ったのだ!

「ちょ、よりひめ、身体にいろいろ刺さってるんですけど!?」

「心配するな、中身をチタン合金に替えた、皮は貫通してるが中身は貫通していない。」

言われてみれば、触手はよりひめの身体に突き刺さっているが、どれも突き刺さっているだけで貫通はしていない。
触手は、よりひめの身体から抜けて引っ込んでいく。
それと同時に、よりひめはその場にへたり込む。
確かに、身体は貫いていないが、それでもダメージはあったようだ。

「ああもう!無茶して!」

ディケイネはポシェットを拾うことも忘れてよりひめの元に近寄る。

「…フン、まだまだ元気なようだな。」

「それよりあんた!何て無茶を!」

「言っただろう?貴様を…死なせるわけには行かない…と。」

そう言うとよりひめはゆっくりと立ち上がる。
「…何故だ?何故貴様は自分の身を犠牲にしてあいつを守った?
 ゆっくりとはゆっくり出来ないことは決してやらない生き物じゃないのか?」
ケガレの核は理解できないといった様子でそう問いかけた。

「一度決めた事は最後まで貫き通す…それが出来ないゆっくりは死してなおゆっくり出来ないのだ。」

「…理解不能だ。」

「…そういえば貴様はこいつが世界を滅ぼすと吹き込まれてこいつを始末しようと思ったんだったな、
 わが身可愛さにこいつを殺そうなんて考える貴様には理解不可能な考え方だろうな。」

そういってよりひめはディケイネを守るようにケガレの核をきっと睨みつける。

「私が立っている限り!こいつには絶対傷つけさせん!」

「よりひめ…。」

「…ならば、貴様を潰してからゆっくりこいつを始末させてもらう!」 

先ほどとは比べ物にならないほど巨大で鋭い触手が形成される!
黒い触手はそのまま凄い勢いでよりひめに向かって飛んでいった!

・・・フニャ。

しかし、よりひめに突き刺さる目前で勢いをなくし、まるで空気の抜けた風船のように地面に落ちた。

「…え、一体何が起こってるの!?」

「な、何だ、力が……力が抜ける……!」

核は急に苦しみ始める。
「な、何だ、誰かが・・・誰かが私に何かしているのか!?」
核の真下にホログラムのようなモニターが映し出される。
そのモニターには驚くべき光景が映し出されていた。


~☆~


「皆さん!力をあわせてケガレを浄化するのです!」

「うぉおおお!みんな!よりひめ様をお助けするんだぁ~!」

「おおおおおおおおっ!」

大ケガレの縁に当たる部分では、月のゆっくりによる大ケガレの洗浄作業が行われていたのだ!
とよひめの指示の元、レイセン率いる月のゆっくりたちが全員掛かりで大ケガレの洗浄を行っている。
中には大怪我をして、包帯が痛々しいゆっくりもいる。
しかし、そのゆっくりも自らの怪我を押して大ケガレの洗浄を行っていた。




「ゆっ!ゆっ!ゆっ・・・ふう、もうきゅーけいしていいか?」

「まだちょっとしか洗ってないよ!れいむも頑張ってるんだからまりさも頑張ってね!」

「な、何でこんな事に・・・。」




れいむもまりさも、モップを使って大ケガレの洗浄に参加している。
全力で洗いまくってる月のゆっくりと比べれば、スピードはとろすぎるが・・・まぁこいつらにしては良く出来ている方だ。


「ゆーびぃ!吸って吸って吸いまくれ~!」


「ゆ~!」


「…無事で居なさいよ床次 紅里!あんたに死なれたらそれはそれでちょっと寂しいんだから!」


ディエイキもゆーびぃを複数召喚してケガレを吸わせ続けている。
月のゆっくり達によるケガレの戦場作業の勢いは留まることを知らなかった。

「…ねぇ、レイセン。」

とよひめが全力でケガレ洗浄中のレイセンに問いかける。

「…何ですか、とよひめ様。」

「お互い、都で大人しくしてろといわれたのに、ものの見事に約束を破っちゃったわねぇ。」

「…そう言えばそうですね。」

「後で怒られるかしら、よりひめに。」

「怒られるのは確定でしょうね……でも……私は例え怒られても、よりひめ様を助けに行くつもりでした。」

「あら、奇遇ね、私もよ。」

「……。」

「……。」

「ゆぷっ!」

こんなゆっくり出来ない状況で、二人は思わず笑い声を上げてしまった。



~☆~



「な、何故だ・・・あいつら何故そろいもそろって私に逆らう…!?」

大ケガレの核は自分を洗浄しているゆっくりの大群を見て、信じられない表情をしていた。
自分より弱い存在であるはずのゆっくりが諦めもせずに何故立ち向かう!?
大ケガレには理解できない光景だった。


「…簡単さ、こいつら全員、頭の固い頑固者だからさ。」


その答えを言ったのは、他でもないディエイキだった。
よりひめと共に、力強く大ケガレの核を睨みつける。

「ボロボロになっても私を守り抜くと決めたよりひめ、例え後で怒られると解ってもよりひめを守るためにやって来た月のゆっくりたち。
 一度決めたことはそれこそテコでも動かさない、時にはその所為で迷惑をかけることもある、
 ………だけど、その鋼の意思は、何者にも動かすことが出来ない!」

ディケイネの前に光りが3つ形成される。

「誰にも壊すことが出来ない鋼の『信念』……お前みたいな軟弱物に壊せると思わないで。」

そう、信念。
一度決めたことは意地でも守り通す、鋼の意思・・・。
その意思こそが・・・ディケイネに新たな力を与える!


カッ!


激しい光に見舞われ、ディケイネの目の前に新たな3つのメダルが現れた。
月のゆっくりの信念がディケイネに新たな力を与えたのだ。

「よりひめ、やるよ!」

ディケイネはよりひめにそう呼びかけた。

「ああ、この身体、貴様に預ける!」

大声で答えるよりひめ。
ディケイネは現れた3枚のメダルのうちの一つをペンダントにはめ込んだ!

「ファイナルフォームライドゥ! ヨヨヨリヒメェ!」

ペンダントから声が聞こえると同時に、よりひめの身体が光に包まれ、そして変貌した。


全長がディケイネの祐に10倍はある巨大な刀。


これがよりひめの秘められた力、その名も『綿月の大太刀!』


「覚悟しなさいよ!この刀に切れないものなど、あんまりない!」

「…何だ、その曖昧にも程がある表現は。」

「地上で流行のきめ文句。
 まぁとにかくあんたはぶっ潰しちゃうから!」

そう言ってディケイネは巨大な刀をケガレの核に突きつけた!
「フン!そんなもの、叩きおってくれるわ!」
ケガレの核の周りに無数の黒い触手が出来上がる!
今にもディケイネに襲い掛かりそうなほど、いきり立っている!

「…甘いね。」

それを見て、ディケイネは不敵な笑みをこぼした。


ズババババババアッ!


「な、何!?」


ケガレの核は驚きの声を上げる。
生成した触手が、地面から生えた無数の刃に叩き切られたのだから。
無論、これも綿月の大太刀の力である。
「ここまできたら素直に止めを刺されなさいっての。
 まぁ、そんな訳だからいきなり行くよ!」


「ラストスペルライドゥ!ヨヨヨヨリヒメ!」


その言葉と同時に、綿月の大太刀が巨大な刃に包まれる!
ディケイネはケガレの核の真上に飛び上がり、刀を振りかざした!


愛宕様「カクヅチの一閃」


「いっけえええええええええええ!」


ディケイネは綿月の大太刀を振り下ろし、ケガレの核を一刀両断した!

「ギャアアアアアアアアアアアアア!」

真っ二つにされた核はそのまま炎に包まれる!
それと同時に、巨大なケガレの海にも火が広まっていく。
あっという間に、大ケガレは地上においても殆どないほどの暑い日に覆われたのであった。


・・・え?そんな事したらケガレの海のど真ん中に居たディケイネまで火の海に包まれるんじゃないかって?
それは大丈夫、デイケイネの周りだけ火が及ばなかったから、
ご都合主義の塊なんです、この炎。


「…終わったな。」

よりひめは元の姿に戻り、ディケイネに向かってそう言った。

「そうだね。」


燃え盛る大ケガレを見て、二人は勝利を噛み締めるのであった。


~☆~


・・・さて、この燃え盛る大ケガレを、別の場所で見ていたゆっくりが一人、
探偵物語の主人公がかぶるような帽子を深くかぶっていて正体はわからない。
だが、燃え盛る大ケガレを見て、そのゆっくりは軽くしたうちをしていた。

「…破壊の使者、ディケイネ…やはりアイツを生かしておく訳には行かない…!」

そういった次の瞬間、そのゆっくりの姿は消えていた。


~☆~



静かの海のそばに立っている紅里のお部屋。
その出入り口の前にれいむとまりさが立っていた。
その向かい側には、れいせんと綿月のゆっくりが居る。

「…ホントにもう行ってしまうのですか?」

「うん、名残惜しいけどお別れだよ!」

「もうじき宴が始まる、お前達には宴の主役として出て来てもらいたいのだが…。」

「ホントはまりさ達だって宴会に出たいぜ!だけど…。」

「…何か、お姉さん、ケガレが言ってた事を引きずってるから…。」

「…ケガレが言ってたこと…世界を滅ぼす…か。」

ケガレ達は世界を滅ぼすゆっくりであるディケイネを倒すために、月の都に攻め込んだ、
もしかしたら自分が居なければ月の都も被害を出さずにすんだのかもしれない。
紅里がそう考えていてもおかしくはない。

「全く、失礼なこと吹き込む人が居た物だね!」

「おねーさんは怖いところがあるけど、世界を滅ぼすほど悪魔じゃないんだぜ。」

「それは間違いないね!」

「……あいつに伝えておいてくれ、月の都はお前達をゆっくり歓迎する、
 いつでも遊びに来てくれ、とな。」

「ゆっくり理解したよ!」

そういって部屋に入ろうとしたれいむとまりさ。
……と、
そこで玄関から出てきた紅里と鉢合わせした。


「あれ?おねーさんどうしたの?」

「やっぱり宴会に出るの?」


「…れいむ、一つ聞きたいことがあるんだけど。」

紅里は冷たい口調でれいむに問いかけた。

「ゆ?」

「冷蔵庫に保管しておいた食べ物、この部屋から出ている間に何から何までなくなってるんだけど・・・これ、あんたの所為でしょ。」

「ゆ、ゆゆ!?何の事!?れいむしらないよ!?
 まりさが食べちゃったんじゃない!?」

「まりさは私と一緒に居たからアリバイがある。
 アリバイが無いのはあんただけだよ。」

「…あ、そういえばよりひめさんたちが宴会に誘ってくれたんだった。」

そういってれいむはこっそり逃げ出そうとする。
そのれいむの頭を紅里がガッシと掴む。

「…本日の説教タ~イム。」

「うわああああああ!おねーさん許してぇ~!」

れいむは紅里に引きずられて部屋の中に入って行った。
「…そ、それじゃあ縁があったらまた今度!」
残されたまりさもそそくさと部屋には言っていく。
まりさが部屋の中に入ると同時に、よりひめの前から部屋が消えた。


「……え~と、何だ、このコメントしづらい空気は……。」


よりひめは背筋に少しだけ冷たい物を感じたのであった。











第9話、終わり!


第10話に続く








オマケ、今日の伝子


ケガレがさって、復興が進んでいる月の都。
その中央にある、月の都の象徴月の宮殿。


「あっはぁ~~~ん。」


その宮殿の一室から、妙に色っぽい声が聞こえてきた。
その一室とは、月の宮殿の大浴場。

「はぁあ…良いわ、良いわよ、もっとあらってぇ…。」

大浴場では伝子が月のゆっくり達に全身を洗われていた。
彼女の表情は正に至福の表情で、だらしが無いッたらありゃしない。

「あの~お姉さん、私たち、いつまで洗っていればいいんですか?」

「私の気が済むまでよ…ああッそう、そこもっと丁寧に洗って…。」

「あれ?何か泡がピンク色に…ってこれ、お姉さんの鼻血が混じってる!?」

「この世界に来て本当によかったぁああああああああああ~~~~~ん。」



…ちなみに伝子はのぼせと鼻血の出すぎでまたも医療室に運ばれたのであった。




書いた人 かに



NEXT>>>第10話 いない英雄(脚本→→sumigi氏)


  • うさ耳ゆっくり(月のゆっくり)のアイデアといいかわいらしさといいたまりません! -- 名無しさん (2009-07-26 12:16:14)
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最終更新:2009年08月24日 21:40