ゆっくりきょうしゅうじょ2

今日から授業が始まる。身支度を整えて、電車に乗って出発した。これも仮免許を取ったら車で行くことになるんだろうな。
(注:仮免許取得者は教習や試験のとき以外に車を運転してはいけません。ちゃんと正式な免許を取ってから楽しいドライブをしましょう。)

「本日も、電鉄急行鉄道をご利用いただきましてありがとうございました。まもなく、新守矢、新守矢です・・・」

教習所の最寄り駅が近づいてきたので、降りる支度をした。
いつも思うのだが、この「スクール学園高校」みたいな名前の鉄道会社は何なのだろうか。

「新守矢では、後ろの車両のドアは開きませんので、お降りのお客様は、前の車両の一番前のドアから・・・」
「あ、こっち後ろじゃん。」

迂闊だった。
この路線は途中でスイッチバックをするので、最寄り駅で乗ったときと教習所の前で降りるときとは列車の向きが違うのだ。
そのうえワンマン列車なので、駅によっては後ろの車両のドアが開かない。それをすっかり忘れ、前の車両に乗ってしまっていた。
みんなもローカル線では要注意だ。



「むっきゅ、やまぐちさんずいぶんはやいのね。」

受付のぱちぇが目を擦りながら本を読んでいた。
見たところ、ぱちぇの担当する原付免許の受講生徒の名簿の様だ。

「ちょっと早く起きたんで。ついでに中をもう少し見ておきたくて。」
「あ、そういうことね。ゆっくりまっててちょうだい。」

すると、ぱちぇがおもむろに電話をかけ始めた。内線だろうか。

「そんなやまぐちさんのためにがいどさんをよんだわ。ゆっくりまってましょ。」
「用意周到ですね・・・」
「けっこういるのよ、そういうにんげんさん。」

やっぱりいるんだなぁ、と少ししみじみした。
しばらくすると、別のゆっくりがやってきた。

「やまぐちさんだねー、ゆっくりついてきてねー。」
「あ、はい。」

探検科、と書かれた名札をつけたちぇんがやってきた。
とりあえず言われるがままについていくことにした。



「ここからさきはがっかのときのきょうしつさんだよー。」
「ここはしちょうかくしつさんだけどあまりつかわないよー。」
「ここをでるとじつぎきょうしゅうのときにつかうどうろだよー。」
「ここはじしゅうしつさんだよー。がっかしけんさんにそなえていつでもべんきょうができるようにいつもあけてるよー。」
「ここはしみゅれーたしつさんだよー。さいきんはあまりつかわないかなー。」
「つかれたときはこのぶれいくるーむさんでゆっくりしていってねー。」
「・・・追いつくのがやっとなんですが・・・」

流石はちぇん、かなり足が速い。最早追いつくのがやっとで説明は頭に入っていない。

「それならもういっしゅうするー?」
「・・・勘弁してください。」



「どれかひとつくじさんをひいて、そのくじさんにかかれたきょうしつにむかってね。」

クラス決めのようだ。適当にくじを引いてみる。
・・・R、と書かれていた。そんなにクラスがあるのか。さっきちぇんを追いかけてたときに見た限りだとそんなに数はなさそうだったが、奥に階段でもあったのだろうか。

「びーくみさんね。つきあたりからにばんめのきょうしつさんにはいってちょうだい。」

Bですか、これ。どう考えてもRにしか見えない。書いたのは誰だろうか。
とりあえず言われた教室へ向かうことに。



「あ、となりですか?」

教室に行き、自分の席を確認して着席すると、床に届くほどの虹色の長い髪の少女が顔をのぞかせた。
座席表で確認してみた。横浜市(よこはま いち)さんというらしい。

「ということは、あなたが横浜さん?」
「はい。山口さん・・・でよろしいですか?」
「かまいませんよ。あ、どうぞ。」
「ありがとうございます。」

すっごい可愛い娘(こ)が隣なんて俺はついてるな。今年は大吉かもしれない。
そう考えてると、教官が入ってきた。



「ゆっくりしていってください!」

このゆっくりは・・・さなえか。

「とりあえずこのぷりんとるいをくばっておきますね。」

そう言い、さなえが左から順にプリントを配布していく。
手元に来たので、後ろに回してからプリントを読んでみた。

「・・・なんだ、これは。」

以下、プリントから抜粋したものだ。

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免許を取得するに当たっての余剰知識
以下の項目は、頭に入れておいても得も損もしないことです。
  • ターボレンジャー、カーレンジャー、ゴーオンジャーには積極的に車線を譲るようにしましょう。
    暴魔やボーゾック、ガイアークなどを追跡している可能性もあります。
  • シグナルマンとは友好的な関係を築いておきましょう。
  • 脚力をつける際はボーゾックのOOオネエに協力してもらうとよいでしょう。
  • 妖精がちらちらと見えて気になる場合は、ターボレンジャーの仲間になるとよいでしょう。

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とりあえず、このプリントを作った人は表に出ようか。
ターボレンジャーなんて懐かしすぎる。

「このびーくみのがっかたんとうのさなえです!ゆっくりめんきょをとりましょう!ではさっそくはじめますよ!きょうかしょのろくぺーじです!」

ちょ、教官、早いです。




「こうつうきそくさんは、ほこうしゃさんやくるまさんなどがどうろをあんぜん・えんかつにつうこうするうえでまもるひつようのあるきょうつうのやくそくごとです!
 なので、こうつうきそくさんをまもることはしゃかいでいきていくうえのきほんであって、こうつうきそくさんをまもらないひとはくるまさんをうんてんするしかくはないといえます!
 どうろをつうこうするときは、こうつうきそくさんをまもることはもちろん、まわりのほこうしゃさんやくるまさんのうごきにちゅういして、あいてのたちばになって{おもいやりのきもち}をもってつうこうすることがたいせつです!・・・・・・ぜぇー、ぜぇー・・・」
「・・・先生飛ばしてるわね、ここまで読み始めてから無呼吸よ。」
「授業中に倒れられたら大変だな。」

教官、無茶しすぎです。途中で呼吸しないで一気に読もうとしないでください。死んじゃいます。段々顔色が青くなっていってますし。

「また、ふひつようなきゅうはっしんやぜぇー・・・きゅうぶれーき、えんじんのからぶかしなどをさkぜぇー・・・こうつうこうがいをすくなくするようtぜぇー・・・
 つとめなければなりませ・・・ぜぇー・・・くらー・・・」
ばたん。


「「「「きょ、教官ーーー!」」」」

さなえは顔を紫色にして、目を回しながら黒板前に倒れこんだ。
その刹那、生徒の絶叫が教室中、いや、教習所中に響き渡った。


「がっきゅうへいさだなんて、たいへんね。すこしまえまでにゅういんしてたからね、さなえは。」
「初めてですよ、教師が倒れて学級閉鎖だなんて。」
「私も。先生が道に迷って休みになったときはあったけどね。」

結局、授業は中止、別の日に振り返られることになった。いつになるかは現在教官会で相談中とのこと。

「それじゃあ、きをつけてかえるのよ。でんしゃさんがすいてるうちにはやくおうちにかえったほうがいいわ。」
「ありがとうございます。では、また来週に。」
「じゃーねー。」

俺と横浜さんは教習所を出て、駅へと向かった。



「あ、私は新西行寺だから山口君とは反対方向なんだ。」
「みたいだね。俺は魂魄中央だから上り線だし。」

駅で切符を買って、列車を待っているときのことだった。唐突に横浜さんがそう切り出してきた。

「それじゃ、これからしばらく、お隣よろしく。」
「・・・ああ、よろしくな。」

そう言い合い、ちーっすの合図でお互いの列車に乗った。





「あ、こっち後ろじゃない。」
「俺も今朝やったな、それ。」

ワンマン列車は前の車両の後ろドアから乗りましょう。

  • スクール学園高校とかw


    ネタだよなw -- マーボーカー (2009-10-16 03:44:20)
  • ゆっくりって呼吸したっけ? -- 名無しさん (2013-10-14 12:37:33)
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最終更新:2013年10月14日 12:37