菜園とゆっくり

これなら明日には収穫できるな
庭の一角に作った菜園でトウモロコシの出来を確認しその出来に思わずにんまりと笑みを浮かべる

焼いて食べるか蒸して食べるか贅沢な悩みに上機嫌で次のキュウリの一角に移動する。
たっぷりと良く熟れたキュウリの収穫を始めその収穫量に むぅ と唸りをあげる。
今年のキュウリは豊作でここ最近は毎日、朝昼晩の3食と3時のおやつに必ず食べている
河童の次くらいにはキュウリは好きだとの自負があるが流石に最近ちょっと飽きてきた。

左手に抱えた平篭がキュウリで一杯になったのに満足し、篭を置きに一度母屋に戻ると我が菜園の方から何やら声がする
誰か尋ねて来たのかな?と思ったが、声の質が子供特有の高い声に思えたので
さては、近所の子供でも遊んでいる最中に入ってきたのか?と菜園を覗いたが人影は見当たらない
されども声はまだ聞こえてくるものだから、コイツはかくれんぼでもしているのかと思い至り
せっかくの菜園を荒らされては堪らんと菜園に戻る事にした。

菜園に戻ってみると其処には子供の遊んでいる姿はなく、その代わりに
1尺(約30cm)ほどの黒い帽子を被った生首が2寸(約 6cm)ほどの小さな生首が3匹ほどに話をしている光景であった。
なるほどこれが里で噂になっているゆっくりという生き物かと思い当たり
物珍しさもあった為、暫く眺めて見ようと庭石に腰を下ろした。

「ちびちゃんたち 今日はまりさが見つけた と~っておきのかりばで かりのやりかたをゆっくりおしえるのぜ」
「「は~い♪おか~しゃん♪」」
元気良く声を合わせ返事をする小さなゆっくり達
言葉から察すると親子であろう、笑顔が溢れる姿はとても微笑ましい

「ゆ♪いいおへんじだよ す~りす~り♪」
「ちあわちぇ~」「おか~しゃんだ~いすき♪」
いかんなぁ、ニヤニヤしてるであろう自分の顔を想像し、手のひらで口を隠しその指先で頬を揉み解す

「さぁ ちびちゃんたち まりさがこれからする やりかたをゆっくりみておぼえていってね」
そう言った黒い帽子のゆっくりはトウモロコシの茎に飛びつき
自らの体重を上手く使いゆさゆさと茎全体を揺らし始めた
「「わぁ~おか~しゃん!ちゅご~い!!」」
子供達の歓声の下に茎の揺れはだんだんと大きくなっていく



ポキンと音を立てトウモロコシは根元から折れ
我が菜園からトウモロコシの茎が一本姿を消す事になった
帽子のゆっくりは茎が倒れた時に着地に失敗したらしく
見事な顔面着陸を披露し被っていた帽子も吹き飛ばされてしまった。
あれだけ激しく前後に上下運動をしていたのだから感覚がおかしくなっていたのであろう
それにしてもよくもまぁ揺すっている最中に帽子が落ちなかったものだ
そう思いながら飛んできた帽子を拾い上げゆっくり近づく事にした。

「ゆ・・・ゆぐっ ゆくく ちびちゃんたち まりさのかつやくをみてたのぜ?」
「「おか~しゃんかっこいい!」」
強くぶつけたのであろう、中心が真っ赤になった顔に涙を堪えながら子供たちの方を向く
「さぁちびちゃんたち その髪のはえているふくらみの皮をゆっくりむきむきして食べるのぜ」 
「「は~いおか~しゃん む~き、む~き  む~ちゃ、む~ちゃ、ちあわちぇ~♪」」
子供たちがトウモロコシを食べ始めると親ゆっくりは顔を背け声を押し殺しながらボロボロと泣き始めた

「おか~しゃんは ちゃべないにょ?」
親ゆっくりが一緒に食べれない事を疑問に思ったのかヘアバンドをした子ゆっくりが親に近寄る
「ゆぐっ ま゙り゙ざは お゙な゙がいっばい゙だがら゙ ゆっぐ ゆっ ちびちゃんはゆっくりたべてね」
心配をさせない為だろうか?話の途中で自分の涙声に気が付き、無理やりそれを押し込むと
ヘアバンドの子にむかって微笑をむけトウモロコシを食べるように促した。


驚いたな、中身は本当に餡子なのか・・・
近寄ってみて解ったが、親ゆっくりがその場を動かなかった理由は
あの見事な顔面着陸の際の痛みに耐えているだけではなかったようだ
胴体(でいいのか?)の下の部分(人間の顔なら頬から顎にかけて)が裂けてしまい
中身の餡が見えてしまっている傷口から察するに衝撃で古い傷が開いたのだろう
以前友人が『ゆっくりは小麦粉で傷を埋めることが出来る』と酒の席で話していたのを思い出し
家にあるのは中力粉だけだったが大丈夫か?と思いつつ治療を申し出ようと声をかける

「ゆ!おにいさん!お帽子返してね!!」
こちらを向いたゆっくりから返ってきた言葉は
自らの傷の事ではなく、私が手に持っている黒い帽子の事だった

涙目ながらも頬に息を溜め、風船の様に膨らんでこちらを威嚇?してくる
その様子に何故か激しく胸の中をかき乱され動悸に襲われる(例えるなら子供の頃に隣の家のお姉さんに感じた動悸に似ていた)
地面に落ちた時に飛んで来たんだよと弁解しながら帽子を被せる

「まりさは落ちて顔なんてぶつけてなんかいないのぜ!かれいに着地したのぜ!ゆっくりりかいしてね」
強がるゆっくりにゴメンゴメンとあやまりその頭をなぜる
「ゆっくりりかいしたならいいのぜ おにいさんをゆるしてあげるのぜ」
照れたのだろうか、頬を染める姿に謎の動悸はさらに激しさを増した

「まりちゃもなじぇなじぇしちぇ~」「ありしゅも~」
その様子を見ていた子供たちが近寄り、甘えた声で擦り寄ってくる
その様子に鼻から出る情熱と砕けそうに成る腰を抑えつつ順番に頭をなぜる

「お詫びに怪我の手当てをさせてくれるかい?」
怪我で動けないであろう親ゆっくりを抱き抱えながら頭をなぜると
「おわびにあまあまくれるなら おにいさんのお家でゆっくりしてあげてもいいのぜ」
との答えが返ってきたので「ありがとう」とお礼を言い、ゆっくりの子供たちも抱えた腕の中に入れる
甘いお茶菓子は何が残っていたかと思い出しつつ抑えられずに口からでた言葉は

「きゅうりが余っているんだ、これから毎日一緒に食べるのを手伝ってくれないかい?」



  • おにいさん甘すぎるだろw -- 名無しさん (2009-08-18 20:27:42)
  • 少しは叱れよw ・・・マジで叱る事が出来ないと躾にならんぞ -- 名無しさん (2009-08-19 04:12:39)
  • 躾って‥、庭先に妖精さんが居たから仲良くなったとかそういう話でしょ。
    子供二人が可愛すぎ、GJです。 -- 名無しさん (2009-08-19 09:47:07)
  • ここ最近は、畑に進入するゆっくり、ってテーマが全くと言っていいほどなかったから、久しぶりにオールドファッションな「可愛いけどお馬鹿で生意気な野生動物」って、表現がちょっと見ててハラハラするのよねww テーマ自体はよくあったので、最初期のSSを読んで参考にするといいかも -- 名無しさん (2009-08-19 10:16:33)
  • お叱りしなかったのは、とうもろこしが、いっぱいあるから気にならなかったのかも?
    お庭がどのくらい大きいのかが、解らないのですけれど
    沢山きゅうりが収穫できるくらいだから、大きいのかな?
    大きい畑をお世話できる人ならきっとやさしい人なのだとおもいました。
    -- ゆっけのひと (2009-08-19 21:05:44)
  • 多分趣味で菜園してるのかな、ならこのくらいは許容範囲さね。
    まりさも畑での経験が色々あるみたいだし… -- 名無しさん (2009-08-20 02:00:15)
  • 続編でまりさが謝り、悪いゆっくりではない事が分かるわけですが
    ここだけを見ると「潰してぇ」というのが正直なところ。
    続編も短いですし、くっつけたほうがよかったのではないでしょうか。 -- 名無しさん (2009-09-15 09:37:16)
  • だからこそ続編が映えるんでない?
    あんま物騒なこと言いなさるな -- 名無しさん (2009-09-15 12:14:29)
  • ゆっくりの行動や言動はわりと丁寧だけど
    『それを見ておにいさんがどう思ったか』がなくてフォローがないからモヤモヤするのかもしれないですね。 -- 名無しさん (2009-09-26 01:12:20)
  • 盗みは犯罪ですぜ妖精といえども
    多少なりとも即座に叱る描写があれば素直に読めただけに
    そこが少々残念かな。 -- 名無しさん (2009-09-26 19:58:23)
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最終更新:2009年09月26日 19:58