…あ、また来たんですか、本当に、貴方達は物好きですね。
さて、皆さんきめぇ丸のことは…そうですよね、ごそんじですよね。
ここに来る以上、ゆっくりの事は少しは知ってるはずですから。
…じゃあ当然、あのゆっくりの事もごそんじですよね。
…え?誰かって?
ほら、きめぇ丸のモデルともいえるあのゆっくりですよ。
…誰?って、マジですか?
…本来ならきめぇ丸は彼女の影のような存在のはずだったのに。
何だか、すっかり影と光が逆転してしまったようですね。
とにかく、今回のスポットライトは彼女に当てられます。
それでは、そろそろ四回目の公演が始めるとしますか。
おっと、初めて見る方に例のご注意を。
この作品は「銀魂」をゆっくりでパロディ化したものです。
この公演に出てくるゆっくりにロクなゆっくりはいません。
また、酷い目に合うゆっくりもいます。
それらを許容できない方は席をお立ちになってください。
それでもかまわない方はそのまま席にお座りください。
それでは、始まり始まり。
てゐ魂 第7話「本物と偽者の違いなんて解らない人にはどうでも良いことだ。」
全体的に紅葉色の、巨大な屋敷。
この屋敷こそが、かの有名な胴付きゆっくり商人姉妹、秋姉妹が住む屋敷、秋屋敷である。
秋の特産品の密売によって巨額の富を築いたこの姉妹の周りには常に黒い話が渦巻いている。
今日も屋敷の一室で秋姉妹が黒い密談に花を咲かせていた。
「姉さま、そろそろ第3工房で密造マツタケが栽培完了するわ。」
「そう、じゃあなるべく早く箱詰めをして売りさばきなさいね。」
「ふふ、マツタケの香りがするシイタケでこんなに大もうけ…。」
「私たちって、ホントに悪ね。」
そう言って、しずはとみのりこ、二人のゆっくりが不気味に笑いあう。
その様子を天井から見守っている二匹の胴無しゆっくりが居た。
「…やはり、最近巷を賑わせている偽秋の味覚品はここが出所だったのね。」
「ボイスレコーダーで証拠は取れました!早い所ここは引き上げましょう!」
そう言って一方のゆっくりが、尻尾の先に取り付けたボイスレコーダーを取り出した。
「そうね、見つかる前に急ぎましょう!」
そう言って天井裏に潜んでいたゆっくり達はその場を去ろうとする。
…が、その時。
フミッ!
焦っていたのか一方のゆっくりがもう一方のゆっくりに生えていた尻尾を踏みつけてしまった。
「…あいたぁあああああああああ!?!?!?!?!?」
踏みつけられた方のゆっくりは、大声で絶叫してしまった。
その声は言うまでもなく、下に居た秋姉妹の耳に入ってしまう。
「!?今の声は!」
「曲者!」
しずははそばに飾っておいた槍を掴むとそれを天井に突き刺した!
バキッ!バキバキイッ!
何と、槍が刺さった衝撃で天井が崩れ落ちた!
この屋敷の耐震強度が気にかかる所である。
「うわああああああっ!」
それと同時に、ゆっくりが秋姉妹の目の前に落下して来た!
犬耳と尻尾が特徴の、白い髪のゆっくりもみじだ。
しずはは何故かそのゆっくりを見て、首をかしげる。
「おかしいわね、天井裏からは二匹のゆっくりの気配がした筈なのに…。」
と、その時みのりこが大声で叫ぶ。
「姉さま!あっち!外の方!」
みのりこはそう言って、窓の外を指差した。
外は庭になっており、その庭には大きな池がある。
その池の中心にある大岩の家にそのゆっくりは立っていた。
しかし、夜という事もあって、その姿はまだ目視できない。
「あの一瞬で、あそこまで移動したというの?」
「貴方、一体何者よ!」
秋姉妹が問いかけてくる。
そのゆっくりの姿が、やがて月明かりに照らされ始める
「秋の味覚を密造するとは、お上を恐れぬ悪行行為!
貴様の事をたとえ神様が許しても、この正義の始末屋が許しはしない!
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ム /;:> ヽ _ン ";';::::/:::::::::/
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レ'"´ ル"レ
裁いて見せよう、始末屋あやちゃん!ここに見参!」
まるでカラスのような鮮やかな黒い髪、
そのてっぺんに乗せられた、赤い特徴的な帽子。
月明かりに照らされて姿を現した、そのゆっくり―あやは名乗りを上げた。
「…何だ、きめぇ丸の偽者か。」
その姿を見て、しずははそう呟いた。
あやはそれを聞いて、思わずずっこけそうになり、岩の上から池に落ちそうになった。
「な、何ですか!偽者って!」
「いや、事実でしょ、あんた達ってきめぇ丸のいる所に現れて「私の偽者出すのやめろよ。」って言ってくるゆっくりでしょ?」
「アレは真実を伝えてるんです!きめぇ丸は何処からか現れた私の偽者で・・・。」
「だから、偽者はあんたのほうでしょ?」
「違う!偽者は私ではなく…!」
暫く秋姉妹と口論していたあややだったが、やがて、彼女に対して背を向けた。
「…畜生、自分達もオリキャラとか呼ばれてるくせに言いたい放題言いやがって。
大体、きめぇ丸より私の方が先に出てたんだぞ。
それなのに、いつの間にかきめぇ丸のほうがメジャーになりやがって…。
きめぇ丸合同誌?ハン!私のスピンオフの癖にすっかりメジャーじゃねぇか畜生!」
…そんな事をブツブツと呟いていた。
「まぁとにかく、貴方、そんな所で愚痴っていていいのかしら?」
と、しずはがあやにそう言った。
「それ、どういう意味よ。」
当然、あやはそう問いかける、その質問を受けて秋姉妹の口が不敵な笑みを浮かべる。
「だってその池。」
突然、あやにいる池の水面がザバアッと持ち上がった。
,,r‐―--x,,_,_、 ,,r‐―--x,,_,_、 ,,r‐―--x,,_,_、
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「にちょりを沢山潜ませていたのよ。」
「う、うわぁあああああああああ!?」
水面に現れた沢山のにちょりを見てあやは思わず絶叫してしまった。
「さあ!にちょり達その侵入者を捕まえなさい!」
「捕まえたものにはきゅうり一年分よ!」
きゅうり一年分!
それを聞いて、俄然やる気を出したにちょり達は一斉にあやのいる足場に上り始めた!
全身がふやけ、まるで水死体のようなにちょりが岩場を登ってくる様は、そりゃあ正にホラーとしか言いようのない光景だった。
「くそ!そう簡単には捕まらないわよ!」
バサアッ!
あやはそう言うと、背中にしまってあった二対の黒い羽を広げた!
この翼はれみりゃはふらんに生えている羽と違い、飛行可能という凄い羽だ。
にちょりが岩場に登ってくる前に宙に舞い上がったあやは秋姉妹の方を見つめる。
いや、違う、正確には秋姉妹ではなく、秋姉妹の後ろで倒れているもみじを見つめている。
「まずはもみじを救出しなくては…もみじ、今行きますよ!」
「あやさん!駄目です!今の状態でその力を使ったら…!」
もみじはあやにそう忠告するが、あやはもみじに近づこうと超高速で飛行する!
そして、そのまま窓から部屋に突入しようとしたその時!
ドガアッ!
物凄い音と振動が、秋姉妹の部屋に響き渡る。
…秋姉妹が辺りをキョロキョロ見回してみても、あやの姿は何処にも無い。
「…?あのゆっくり、この部屋に突撃したはずなのに…。」
「何処に消えたって言うのよ!」
「むぎゅ…。」
あやが突入しようとしていた窓の外から、何か声が聞こえる。
秋姉妹は窓から上半身を乗り出して、辺りをキョロキョロ見渡す。
「…げ。」
秋姉妹はあやの姿を発見した。
彼女は窓から3mほど横にずれた地点で壁にめり込んでいたのだ。
「い、痛い…目測を誤った。」
壁にめり込んだまま、あやはそう呟いた。
要するに、秋姉妹のいる部屋に突入しようとしたのは良いが、突入角度がずれてしまって壁にめり込んだという訳だ。
「ちょ、この窓はかなりデカイのに目測を誤ったって…。」
みのりこが呆れ顔でそう言った。
彼女の言うとおり、この部屋の窓はかなりでかく、しかも部屋には明かりが付いている。
よほど適当にやらない限り、目測を誤るなんてことはまずない。
あやは壁からその身体を引き離すと、フラフラと秋姉妹の前まで飛んでいく。
「と、とにかくまずはもみじを返してもらいますよ!悪徳商人秋姉妹!」
あやは秋姉妹を正面に見据えてそう言い放った…筈だった。
「…あんた、そっちにはにちょりしか居ないわよ。」
しずはのツッコミ通り、あやは秋姉妹に背中を向けて、池から上がってきたにちょりの方を見つめていた。
いきなり真剣な表情を向けられて、見た目に似合わず恥ずかしがりやなにちょりはかなり戸惑っている。
「ああ、暗闇の中では何も見えない、明日も見えない!」
「何も見えないって、どれだけ見えてないのよ!」
「ああ、あやさんは重度の鳥目だから、夜に飛ぶのは止めておけって散々言われていたのに…。」
右往左往しているあやを見てもみじは深いため息をついた。
「まぁとにかくチャンスね!あの変なゆっくりを捕まえなさい!」
ザザアッ!
「ゆっくり!」
「ゆっくり!」
「ゆっくりしていってね!」
しずはが大声でそう叫ぶと庭のあちこちに隠れていたゆっくりが姿を現した!
あやは庭の真ん中で大量のゆっくりに囲まれてしまった!
「くッ、囲まれましたか…!」
「さあ!そこのゆっくりを捕まえなさい!」
「ゆっくり~!」
ゆっくり達は一斉にあやに飛び掛る!
「そう簡単に捕まりません!」
ごぉっ!
あやは大声でそう叫ぶと、ゆっくり達の手を逃れて一気に上空へ上昇した!
「くそ!これだけのゆっくりに狙われたら、逃げるしかありませんね!」
上空に逃れたあやは庭に一杯のゆっくりを見てそう考えた。
そして、改めて、秋姉妹の部屋の中にいるもみじの方を見て、こう言った。
「もみじ、待っていてください!必ず助けに向かいますから!」
「あやさん…。」
「三十六計逃げるに如かず!」
あやは大空を舞って秋屋敷から逃げ出した。
「クソッ!逃げられたわ…一体どうすれば良いの姉さん!」
みのりこは焦った様子でしずはに問いかける。
そんなみのりことは正反対に、しずはは妙に余裕の表情だ。
「そんなに慌てなくて良いわよしずは、こっちには人質が居るんだし、アイツはすぐに戻ってくるわ、
その時にゆっくり捕まえればいいのよ。」
「…そ、それもそうね。」
「私達の秘密を暴くようなやからは、皆ただではすまないのよ…。」
そう言って秋姉妹はもみじの方を見てニヤニヤと怪しい笑みを浮かべた。
もみじはその視線に恐ろしいものを感じながら、もみじはこう呟いた。
「…あやさん…私は貴方を信じてますからね。」
…で、その後その呟きより更に小さな声でぼそりと。
「…でもあやさん、せめてあの台詞はちゃんとこっちを見て言って欲しかった…。」
実はさっきあやがもみじだと思ってみていたのは…またしてもにちょりだったのだ。
「さっきのゆっくりまた私達を見ていたね。」
「もしかして気に入られたのかな…ポッ。」
「…同族ながら思うけど、その顔で頬を染められると…何だか気持ち悪いね。」
~☆~
秋屋敷から逃げ出したあやは、ゆぶき町の空を高速で舞っていた。
あやはこれからの事を、高速で飛びながら考え始める。
「くそ、この私とした事がらしくないヘマをしてしまいました…。
証拠のボイスレコーダーだって彼女に持たせたままですし、何としても秋姉妹からもみじを取り戻さないと…。
でも、相手だって馬鹿じゃない、警備を更に強化することは目に見えて明らかでしょう。」
「…と、…て!」
「とりあえず、協力者は必要ですね…ツテで見つけられれば良いんですが…。」
「そこのゆ…り!ど…欲しいんだど!」
「ですが相手は秋姉妹、一筋縄では・・・。」
「どいてぇええええ!ぶつかる~!」
「え?」
ふいに耳に入ってきた声に、あやは顔を上げた。
「うわあああああああああッ!」
そこには、凄い顔をしながらつっこんでくるうーぱっくの姿があった。
「あ。」
思わず声が出てしまった頃には、もう遅い。
どっすう~ん☆
あやとうーぱっくは、お互いに派手に正面からぶつかった!
「ああああああああああ!」
うーぱっくは中身の宅配物をぶちまけながら遥か上空にぶっ飛んでいく。
一方のあやは落下地点にあった一軒家の屋根を突き破り、そのまま部屋の中へ倒れこんだ。
「う、よそ見しながら飛ぶのは止めた方が良いです…ね。」
あやはそう呟くと、そのままばったりと気絶してしまった。
~おはよう~☆~
そんなこんなで夜が開けて。
ゆぶき町にも朝が来る。
「・・・ん、ふぁあああああ・・・。」
万屋てゐ!!の押入れで寝ていたてんこも、起き上がって背伸びしている。
てんこは押入れから出ると真っ先にてゐの部屋に向かった。
目的は一つ、熟睡中のてゐを起こすためだ。
「てゐ。朝が来たからもう起き上がるべきそうすべき。」
そう言っててんこはてゐの寝ている部屋の扉を開ける。
・・・次の瞬間、てんこは扉を開けたままのポーズで固まってしまう。
「う~てゐさん、おはようさんなんだど~☆」
と、そこへれみりゃが挨拶しながら万屋に入ってきた。
家には言ってすぐにれみりゃは扉を開けた姿勢で固まっているてんこを発見する。
「う~てんこちゃん、何で動かないんだど?」
てんこはその姿勢のまま、ギギギ…と何だかぎこちなさそうに右手を動かし、自分が見ている部屋を指差した。
「…確かその部屋って、てゐさんが寝ている部屋のはずだけど?」
れみりゃは、何だ?と思いながらも、てんこの股の間から部屋の中を覗いてみた。
…部屋の中ではてゐが座布団の上に敷いた毛布の上で寝ていた。
…が、てゐとは別になんだかきめら丸に似ている黒髪の胴無しゆっくりがてゐに寄り添うようにグッスリしていた。
「…誰だどぉおおおおお!?」
そのゆっくりを見て、れみりゃは大声を上げてしまった。
「…うう、昨日飲みすぎた所為で頭ががんがんするから大声出さないで…。」
そこでてゐがゆっくり目を覚ます。
目を覚まして最初に視界に入ったのは、固まっているてんこと、これでもかというくらいショッキングな表情のれみりゃであった。
「…?何、二人とも凄い顔してるの?」
疑問に思っているてゐはほっぺに妙にぷにぷにした触感があることに気がついた。
「…??」
てゐは触感の正体を確かめるために横の方を向いてみた。
……てゐは自分の隣でゆっくりが寝ていることに始めて気がついた。
「……えぇえええええええええええ!?」
てゐは驚きの声を上げて、そのゆっくりから離れた。
あまりに予想外の事で、全身から冷や汗が出ている。
「て、てゐさん、そのゆっくりは何処の誰なんだど~!?」
れみりゃはパニック状態でそう問いかけてくる。
「い、いや!知らないよこんなゆっくり!?」
てゐもパニック状態でそう答える。
「…じゃあこのゆっくりは何ですか!?死にたく無いなら正体を教えるべきそうすべき!」
てんこが物凄い勢いでてゐに問いかけてくる。
「ま、マジで知らないんだけど…。」
てゐは戸惑いながらもそう答えるしかない。
「じゃあ何で見知らぬゆっくりとグッスリしていたんだど?」
「…そういえば昨日は居酒屋で呑みまくってからの記憶が無いなぁ…。」
「それってどういう事ですか?」
「酔った勢いで行きずりのゆっくりを家に引き込んでしっぽりやっちゃったのかも。」
「…ちょ!?それって!?」
「下ネタは止めろと行っているサル!」
「…ああ、何か頭痛が更に強くなった気がする。」
万屋3ゆっくりがそんな事を話し合っているうちに、てゐの傍で眠っていたゆっくりが目を覚ました。
…が、彼女の事などほったらかしで言い争っていたてゐ達は彼女の目覚めに気がついていない。
(…?えーと、何ですかこの状況。)
そのゆっくりは、覚醒直後のまだはっきりしていない頭で状況の整理を始めた。
(確か私は、秋屋敷を脱出して、空を飛んでいて…その途中でうーぱっくと衝突事故を起こして墜落したはずなんですが・・・。)
ゆっくりは天井のほうを見る。
天井には、自分が墜落した際にあいたであろう、大きな穴が開いていた。
(なるほど、屋根をぶち破ってこの家に墜落しちゃったわけですか。)
続いて、なにやら言い争っている3匹のゆっくりの話を聞く。
「お前最低だな、酔った勢いで自分の家に見ず知らずのゆっくり連れ込んだのかよ。」
「い、いやいや!?確かに私は酔ってたけど、いくら何でも見ず知らずの女をホイホイ誘い込むなんて…。」
「言い訳は見苦しいど、確たる証拠がそこで寝ているんだど~。」
…三匹の話を聞いて、今何が起きているかそのゆっくりは理解する。
墜落した自分は天井をたまたまあそこにいるうさ耳ゆっくりの傍へと墜落した。
で、あそこにいる変な帽子をかぶった胴付きゆっくりと変な羽が生えた胴無しゆっくりは
うさ耳ゆっくりの傍で寝ていた自分を見て、酷く誤解している真っ最中という所か。
(う~む、ここは私も弁解した方が良いのでしょうか?)
そう考えていたゆっくりだが、ふとうさ耳ゆっくりのほうを見てちょっと待てよ、と考えを改める。
あのうさ耳ゆっくり、並のゆっくりではない。
幾重もの死線を潜り抜けてきたそのゆっくりは、そのうさ耳ゆっくりが秘めているポテンシャルを一目で見抜いたのだ。
(…これは、上手く利用できるかもしれません。)
そのゆっくり…あやは、ニヤリと笑うと、早速行動に移った。
「…ん。」
あやはまるで今起きたかのように背伸びして小さな欠伸をする。
「!」
「あのゆっくり、もしかして起きたのかど?」
てゐ達は一斉にあやの方を見やる。
あやは寝惚けなまこでてゐ達の方をボーっと見つめている。
「え、え~と、れみりゃはれみりゃだど!ゆっくりしていってね!」
「私はてんこ!そしてそこにいるお前をここに連れ込んだ最低なゆっくりがてゐだ。」
「ちょ!てんこ!それは何かの間違いだって!ねえ、あんたあたしとは何も無かったよね!寝てただけだよね!」
てゐは焦った様子であやに話しかける。
…突然、あやが涙目になった。
「え?」
いきなり泣き出したあやを見ててゐが訳の解らないといった顔をしていると。
「ひ、酷い…あんな熱い夜を過ごしておいてそんな事言うんですか。」
「えぇええええええええええ!?」
あやの言葉を聞いて、てゐの顔色は真っ青になった。
「やっぱりてゐはやっていた!最低なゆっくりだった。」
「てゐさん最低だどぉ~!」
れみりゃとてんこから非難の声が上がる。
「いや違うからね!こいつの言ってる事はでたらめだから!」
「何言ってるんですか、何だったら昨夜の事を私が解説しましょうか?
それこそ、官能小説のごとく、濃厚で色っぽく…。」
ガラッ。
, \, -─-- 、.,_
,.i (ヒ_] ,___, `ヽ,. /
./ ヽ _ン ヒ_ン )
_,./__,,. -‐ ''"´ ̄ ̄`"'' .、`ヽ,ー:'
,. ''"´ /´ / ;' ! ;`ヽ,ヽ、
'.、 .;' ', i ´ハ_ _ハ ノ メ !,!ヽ,.ヽ.
`Y i Vレ'7;__,.!/ V !__ハ ハノ., ',ノ';
_ノ i=ハ ' (ヒ_] ヒ_ンハ.ノi i
`.>' iX|⊂⊃ ,___, ⊂⊃ノ!レノ
∠._ ノ |=ヽ、 ヽ _ン ノ!i レ
,.ヘ,) | |>,、 _____, ,イ| |
' | !>;`ヽ、「、,ハ.| |
「その役割は私が引き受け…。」
「スペルカード!」
ドガアッ!
「あぁああああああああ…。」
窓から入ってきた諏訪小僧をてゐは弾幕で吹き飛ばした。
「…アレ、この間サイバー天狗ポリスに逮捕されたような気がするんだが?」
「そう言えば今朝のニュースで諏訪小僧が脱獄したとか何とかのニュースがあった気がするど。」
「やっぱりこの国のサイバー天狗ポリスは無能だった。」
「とにかく、貴方と私は熱い一夜をに過ごしました、それは間違いないです。」
「あ…う…。」
言葉に詰まるてゐ。
酔っ払っていたため、昨夜の記憶が無い以上、反論なんて出来るわけが無い。
そんなてゐに対して、あやは頬を染め、恥ずかしげにこう言った。
「こうなった以上…責任、とってもらいますからね。」
「…せ、責任?」
てゐはその言葉に嫌な予感を覚えたのであった。
~☆~
「~~~♪~♪~~♪」
キッチンではあやが鼻歌交じりで料理を作っていた。
てゐ達はリビングであやの料理の完成を待っている。
「…え~と、何でこんな事に?」
てゐは困惑の表情でれみりゃとてんこにそう問いかける。
「全てはお前のいい加減さが招いた事なのは確定的に明らか。」
「どうするんだど?責任取れってことはやっぱり結婚しろと言ってるんじゃないの?」
「…だろうね、あのあやってゆっくり、すっかり新婚気分だもん。」
「あなた~料理が出来ましたよ~。」
と、あやが料理をトレイに載せて運んできた。
しかし大量の料理を乗せたトレイを頭に載せているため、その足取りはフラフラだ。
「うわ、大丈夫かな、アレ。」
てゐが不安げにそう言うと。
ガッ。
その時、キッチンとリビングをつなぐ敷居をまたごうとしたその時、あやはバランスを崩してこけてしまった。
「あ。」
トレイに乗せてあった料理は宙を舞い、れみりゃの方へと飛んで行く。
バシャアッ!
「ギャアアアア!あつうッ!あつうッ!」
哀れ、れみりゃはできたてホヤホヤの熱々料理を頭からかぶり、その場にのた打ち回ることになった。
「おいぃ!?これはちょとシャレにならんでしょ!?」
「てんこ!氷水を今すぐ持ってきて!!」
「痛いど~!ヒリヒリするど~!」
てゐ達はパニック状態になる。
「…やっちゃった☆テヘ。」
あやはウィンクして舌を出してこう言った。
「テヘって何だど!ウザイキャラ作ってるよこのゆっくり!」
てんこに患部を冷やされながられみりゃはあやに対してツッコミを入れた。
と、その時、押入れが開いて何者かが顔を出す。
「おぉ、なにやら良い匂いですな。」
万屋のマスコット、きめら丸だ。
「あ、あれは…。」
あやは押入れから現れたきめら丸をジッと見つめている。
「腹ごしらえ、腹ごしらえ。」
きめら丸はそう言ってキッチンに向かおうとする。
恐らく、キッチンにはまだ料理が残ってるんだろう。
シュンッ!
しかし、その進路をあやが阻んだ。
「…何ですかあなたは?」
,、
/ハ\
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八:::::/|::::irr=-,:::::::::::r=;ァ |:/:::::::::::::! くソ
! ヽ;ハ|::7" /:::!::::::::/:::::;ハ
ム /;:> 'ー=ョ' ;';::::/:::::::::/
_ノ´:::::ヽ、, |::/::::::::::::/
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レ'"´ ル"レ
「悪いけど、お前のメシねえから!」
あやはきめら丸に向かってそう言い放った。
その口調には、明らかに憎悪の念がこめられている。
「すみません、そこを通してくれませんか?お腹がすいてしんでしまいます。」
「うるせぇ!偽者なんか夕べの生ゴミで十分だ!」
「おぉ、酷い酷い。」
キッチンに向かおうとするきめら丸を、あやが巧みにブロックする。
一進一退の攻防である。
「…何やってるの、あれ。」
「そう言えば、あや族ときめぇ丸種って何か仲が悪いって聞いたことあるど。」
そんな事を行っているてゐとれみりゃをよそに、あや対きめら丸の戦いは続いていた。
だが、そんな戦いに乱入者が現れる。
「おいぃ?いい加減にしてくれませんかねぇ。」
てんこだ。
彼女はあやに対して怒りの表情で話しかけてきた。
「何ですか、いきなり。」
「きめら丸が苛められたことで俺の怒りが有頂天に達した。
この怒りは暫く収まることを知らない。」
「何ですか?きめら丸なんて偽者中の偽者ですよ!
本物である私の方が格上のはずです!」
「お前頭悪いな、きめら丸は身体がでかいし鼻も効く、
本物より優秀な偽者がいるって言葉を知らないのかよ。」
あやとてんこの間の空気がドンドン悪くなっていく。
「何、あの嫁と姑の争い…。」
「あ~もう!てんこもあんたもいい加減にやめなって!」
てゐはそう言っててんことあやの争うを止めに向かう。
「おぉ、うまいうまい。」
きめら丸はあやとてんこが争っている隙にあやの作った料理を食べていた。
~☆~
さて、場面は一気に変って夜の街。
ある建物の前でてゐが誰かを待っていた。
「…あいつ、こんな所で待たせて何のつもりなのかな。」
ここで一気にシーンを飛ばしたので、訳の解らないであろう読者の為に説明しよう、
朝の大騒ぎが収まった後、あやはてゐに対してこう言って来たのだ。
「あの、てゐさん、ぜひあなたにあって欲しい人がいるんですが。」
「ん?誰にさ。」
「とりあえず、丑三つ時にゆぶき町のハズレで待っていてください!」
「ちょ、だから誰にさ!」
てゐの質問に答えもせずに用件だけを一方的に伝えると、あやは一旦万屋から出て行った。
てゐは待ち合わせなんてほったらかそうかな、とも考えたがすっぽかすとアイツが何をしてくるのか解らないので
しぶしぶ待ち合わせの場所で待っているというわけだ。
「うう、寒い……いい加減に来てほしいな…。」
身体を震わせながら、てゐはあやの到着を待ち続ける。
「あやややや!お待たせしました。」
暫くして、ようやくあやの声が聞こえてきた。
「いや~すみません!ちょっと野暮用で遅くなってしまいました!」
すまなさそうにてゐにそう話しかけてくるあや。
しかし、てゐはそんなあやを冷たい眼差しで見ていた、何故なら。
「…それ、私じゃないよ。」
「プルプル!僕、悪いスライムじゃないよ!」
あやはてゐにではなく、通りすがりのスライムに話しかけていたからだ。
「…あ、す、すみません!私酷い鳥目でして暗闇の中だと何も見えないんですよ!」
「どれだけ酷いのさ、私とスライムなんて一頭身位しか共通点が無いよ…。」
てゐはあやを見て何とも不安な気持ちになっていた。
「…で?私をこんな所で待たせて何のつもりなのさ。」
「いえ、私達これから一緒になるんですから親に挨拶くらいしなくちゃいけないでしょ?」
「…あ~そういえば…。」
てゐ本人としては不本意でも、あやと結婚する羽目になった以上、
当然親に挨拶くらいはしておかなくちゃいけない。
「…で、あんたの両親は何処に住んでいるのさ。」
「あ、そこの建物に住んでいますよ。」
そう言ってあやはてゐの背後にある建物の方を見た。
そこには、紅葉を思わせる屋根の色をした、巨大な建物があった。
「な、で、デカッ!」
「通称秋屋敷、ここが私の実家です。」
あやはニコニコ顔でてゐに向かってそう言い放つ。
そのニコニコした表情の裏であやはこう考える。
(良し、後はこのゆっくりさんを囮にして秋屋敷の中枢に再度忍び込むだけです!
もみじ、今すぐ助けに行きますからね…!)
こうして、てゐはあやに利用されて秋屋敷へと突入する羽目になりました。
果たして、捕らえられたもみじ、そしててゐ達の運命やいかに!?
第7話終わり
- ゆっくりあやときめぇ丸族との確執って確かにあってもおかしくないな -- 名無しさん (2009-09-06 21:17:58)
- 「悪いけど、お前のメシねえから!」にお茶吹いたw
ゆっくりあやのせいでパソコンが危なかったw -- 名無しさん (2009-09-06 23:17:30)
- マツタケの栽培ってそれだけですごいと思う。これも本物より優れた偽者か。 -- 名無しさん (2011-02-05 15:39:18)
最終更新:2011年02月05日 15:39