アテンション
この小説は、銀魂のパロディです。
出て来るゆっくりがロクな奴じゃなかったり、
ゆっくりが酷い目に合う描写があります。
それらを毛嫌いする方は、干渉をお控え下さい。
てゐ魂 第十話「めんどくさくても背負わなくちゃいけないものがある。」
何時の記憶か。
死屍累々のゆっくりの死体の中を一匹のボロボロのゆっくりが歩いていく。
その背にあるのは重症のゆっくり。
「大丈夫!?もうすぐ仲間の所に戻れるから、ゆっくり頑張れ!」
そのゆっくりは背中の仲間に励ましの言葉を駆け巡りながら、地獄絵図としか言いようの無いその場所を進んでいた。
「…もう、いいよ…ゆっくりここで下ろしてね…。」
「何言ってるのさ!ここで死なせるわけにはいかない!」
「…良いんだよ、まりさはもう助からない。」
「そんな事言うんじゃないよ!絶対助かる助かるから!」
「…相変わらず、嘘をつくのは得意だね。」
「…え?」
「…結局、みんな死んだ、誰も守れなかった、何も守れなかった。
お前言ってたじゃないか、みんなを守る、傷つけさせない…どうしようもない、嘘つき。」
「な、何を言ってるのさ…。」
そのゆっくりは戦慄する。
目の前に広がるゆっくりの死体の山、それが動き出してこっちに向かって来る。
「何でお前だけがゆっくりしてるのさぁ…。」
「れいむ達は今でも苦しんでるんだよぉ…。」
「痛いよ、痛いよ、痛いよ…。」
銃弾でぶち抜かれて体中が穴ぼこだらけになったゆっくり、
体の半分が吹き飛んで、種族の分別なんてつかないゆっくり。
何か巨大なものに潰されたのか、体か潰れて餡子がはみ出ているゆっくり。
そんなゆっくり達が起き上がり、ズリズリと引きずるようにこっちに向かってきた。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき…。」
みんな、ゆっくりに向かって口々にこう言い続ける。
「ひッ…わ、私は嘘をついたつもりじゃ。」
そのゆっくりは恐怖の感情で思わず一歩あとずさる。
その時だった。
背負っていたまりさが、そのゆっくり―てゐの耳元で呟いた。
「…ここまで追い詰められて、まだ嘘をつくんだね、てゐ。。」
「うわぁああああああああああああ!」
てゐは凄い叫び声を上げて目を覚ました。
はぁ、はぁ、はぁ…。
前身汗まみれになったてゐはゆっくりと辺りを見回した。
「…ここは、何処?」
てゐは意識がはっきりしないまま、状況の整理を始めてみる。
…どうやらどこかの旅館であることは確かなようだが、詳しい事は解らない。
身体には布団をかけられている。
そして全身に包帯が巻かれていて、背中がヒリヒリと焼けるように痛い。
「…あ、そっか、私はアイツに切られて…。」
そこまで分析しててゐはみょんの斬撃にやられて重傷を負った事を思い出した。
れみりゃとてんこを連れ去られたことも。
「…くそ!」
その事を思い出したてゐは思わず歯噛みしてしまう。
・・・さて、最後に残された疑問は何だか体が動かないことだ。
重傷を負ってる所為ではない。
なんていうか、こう、上から何か重石をかけられているような…。
「くっ!この!」
てゐは身体を左右に揺らしてみた。
ゴロン!
すると、てゐの上から何かが転げ落ちた。
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…テルヨフだった。
「何で上に乗ってるんだぁあああああ!」
ドガアッ!
てゐはテルヨフを思いっきり体当たりで吹き飛ばした!
「…あ、イタタタタタタタ…。」
背中の激痛が強くなり、思わずてゐは蹲ってしまった。
ガラッ。
「な、なんですか、今の凄い音は…。」
と、近くのふすまが開いてむらさが現れる。
むらさとてゐの目があった。
「…お、起きた!先生!かぐやさん!てゐさんがおきましたよ!」
てゐが目を覚ましてるのを確認して、むらさはフスマの向こう側に向かってそう叫んだ。
「何!?本当か!?」
フスマの向こう側から大月がなだれ込んでくる。
そして、てゐの無事を確認して大月は、安堵の笑みを浮かべた。
「…なんか、心配させたみたいだね。」
てゐは耳を自分の頭を掻きながら、申し訳がなさそうに行った。
「そりゃそうよ、目の前で切られたんですもの、心配しないわけが無いでしょ。」
と、むらさでも大月でもない声が聞こえてくる。
「…どうやら意識は取り戻したみたいね、まぁ、あなたはここでくたばる様なゆっくりじゃないでしょうけど。」
そう言いながら現れたのは、美しき黒髪を持つゆっくり、かぐやだった。
「いや~あんたのお陰で助かったよ、あんがとてるよ。」
「全く、人一人ゆっくり二匹抱えて逃げ出すのがどれだけ大変なのかわかってるのかしら?
それと、私はてるよじゃ無くてかぐやよ。」
この二匹にとってはいつも通りのやり取りが繰り広げられた。
「…なぁ、ずっと聞きたかったんだが、このゆっくりはあんたの知り合いか?」
と、大月がてゐにそう問いかける。
「ん?まぁね。」
「…何なんだこのゆっくり?正直こいつがどうやって私達を助けたのか今でも理解できないし、
素性も何だかはっきりしないし。」
「こいつ?ぶっちゃけ指名手配犯。」
「しっ!?」
むらさと大月がかぐやから思わず離れてしまう。
「…ちょっとてゐ、あんまり人を不安にさせる事を言うんじゃないわよ。」
「あたしは事実を言ったまでだよ、てるよ。」
「かぐやよ!…心配しないで、あんたがてゐの仲間だって言うのなら手出しするつもりは無いから。」
「そ、そうですか…。」
それを聞いてほっと胸をなでおろすむらさと大月だった。
「…で、あたしも一つ疑問に思っていた事があるんだけど。」
今度はてゐがかぐやに問いかけてくる。
「あら、何かしら?」
「…あんた、何で観客に混じってあんな所に潜んでいた訳?」
「…潜んでいた、だと?」
大月が驚きの反応を示す。
「気づかなかったの?こいつが義体をつけて観客席に混じっていたの。」
「…ま、混じっていたんですか?」
大月とむらさは地下で行われていたオークション会場を思い出す。
あの時、観客たちはステージを囲んでかなりの数がいた。
自分たちは観客の中にゆっくりが混じっていたことに気づかなかったのに、このゆっくりは観客の中にこいつが混じっていたのに気づいていたというのか…。
「…先生の観察眼も、まだまだみたいですね。」
「…むらさ、少し黙ってくれ。」
内心悔しい大月であった。
「てゐは、ゲスマフィアと言うものを知っているかしら。」
「!?」
「ゲスマフィアだと!?」
「…ゲスマフィア、いきなり凄い名前が出てきたね。」
ゲスマフィア
裏世界で轟く、組織の名前である。
人間、ゆっくり、両方の世界でつまはじきにされたチンピラたちが一同に集まり、
いつの間にか裏世界に轟く巨大な勢力にへと変貌したものである。
とにかく金のためならあくどい事は何でもやる組織で、
その名を出すだけで震え上がるものも居るのだとか。
「私はこの港町でゲスマフィアが身寄りの無いゆっくりを集め、それをゆっくり好きのセレブに
高額で売りさばいているという情報を得たの、で、単身もぐりこんでゲスマフィアの尻尾を
掴もうと思ったわけよ。」
「はぁ、あんた胴付きゆっくりばかり相手にしてるのかと思ったら
そんな連中まで相手にしていたの?」
「私はこの町をゆっくりがゆっくり出来る町にするために活動してるのよ、
あいつらは名前どおりのゲスの集まり、監視しておくのは当然なのよ。」
「…で、私達はその会場にうっかり潜り込んじゃった訳ですね。」
むらさはそう言って青ざめる。
可愛いゆっくり専門とは言え、世界中を回っているむらさと大月、
彼らのことは、割と耳にしているのだ。
「…ホントはあそこであいつらを一網打尽にするはずだったんだけど、
あんた達が乱入した所為で全ておじゃんよ。
見てよこれ!」
てるよは怒りながらテレビのリモコンに手をかけた。
テレビではニュース中継を遣っている。
「警察が突入した時点でもぬけの殻になっており、
現在はこの倉庫の持ち主である諏訪小僧(??)に事情聴取中です。
, \, -─-- 、.,_
,.i (ヒ_] ,___, `ヽ,. /
./ ヽ _ン ヒ_ン )
_,./__,,. -‐ ''"´ ̄ ̄`"'' .、`ヽ,ー:'
,. ''"´ /´ / ;' ! ;`ヽ,ヽ、
'.、 .;' ', i ´ハ_ _ハ ノ メ !,!ヽ,.ヽ.
`Y i Vレ'7;__,.!/ V !__ハ ハノ., ',ノ';
_ノ i=ハ -‐‐ ー- ハ.ノi i
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∠._ ノ |=ヽ、 ヽ _ンU ノ!i レ
,.ヘ,) | |>,、 _____, ,イ| |
' | !>;`ヽ、「、,ハ.| |
諏訪小憎は「私は彼らが持ってきたろーりん全巻セットにつられて倉庫を貸してやっただけ
あんなことをやってるはと知らなかった」と、述べており、
事件とは無関係、と主張しており…。」
ここでテレビの電源を切る。
「あんたの所為で何もかも台無しなのよ!
あいつら、撤収するときは証拠の一つも残さず撤収する、警察があそこを調査しても
ゲスマフィアにつながる証拠は出て来ないわ。」
「え、え~と…。」
「済みません…。」
思わずかぐやに謝ってしまったむらさと大月だった。
「…あいつら、大丈夫かな。」
ふと、てゐが空を見上げてそう呟く。
「…あいつらって、御連れのゆっくりの事ですよね。」
てんことれみりゃが連れ去られたことを思い返しながら、むらさはてゐに話しかける。
「…あいつらは、私が守ってやらなくちゃいけなかったのに…結局、守れなかった。
私はまた嘘をついたんだ。」
「お、おいおい何ネガティブなことを言ってるんだよ。」
物凄くネガティブな表情のてゐを見て、大月は何とか励ましの言葉をかける。
しかし、効き目は薄そうだ。
「…てゐ、あんたまだ過去の事引きずってるのね。」
「私は昔から嘘つきだ、仲間を傷つけさせない、守って見せる、
あいつらと一緒に胴付きゆっくりと戦おうとした時、私は仲間たちに向かってこう言った…
結局、その決心を守ることは出来なかった。
皆死んだ、私は嘘をついたんだ。」
「…。」
「もうこの背中にどれだけのゆっくりの魂を背負ってんだかわからない、
そいつらはみんな口々に私の事を嘘つきだと言ってくる。
結構つらいんだよ、嘘つきだといわれ続けるの。
もうこれ以上背負うのはもう勘弁だ、そう思っているのに…
気が付いたら、また余計な荷物を背負ってる…どれだけ天邪鬼なのかね、私は。」
てゐは皮肉交じりにそう呟く。
「…ま、それはしょうがないんじゃない?捻くれ者なのはあんたの性分なのよ。」
だいぶまいってる様子のてゐを見てかぐやはため息混じりにそう言った。
「目の前で困っている連中を見捨てようとして何やかんやで助けちゃうめんどくさいゆっくりがあんたなのよ、
しかも、あんたの周りには何の因果か次々のめんどくさい人が集まる。
自分にその気が無くても、要らん荷物を背負ってしまうのはもう、あんたの運命としか言いようが無いわ。」
「…てるよ、あんた何が言いたいの?」
「…そうね、私はあんたと違うからストレートに物事を言わせて貰うわ、
ここで愚痴ってる暇があったら、自分に出来る事をやれ!
死んでいった仲間達だってそれを望んでいるわ!
その代わり、あんたがどうしようもない事にぶつかったのなら、私が手助けしてやるわよ!」
怒鳴りつけるように、そう、かぐやは叫んだ。
そんなかぐやの言葉を聞いて、てゐは思わず笑ってしまう。
「余計なお世話をあんがと、てるよ。」
「かぐやよ!いい加減ちゃんと呼びなさい!」
そうだ、自分に出来ることはある、
奪われたもんは、取り返してやれば良い。
てゐはいつもの調子を取り戻していた。
「…やれやれ、なんかこの国に来てからは一癖も二癖もあるゆっくりにあってばかりだな。
そのくせ、可愛いゆっくりはどこにも居ないと来たもんだ。
まったく、何のためにこの国に来たんだか。」
大月はそう言いながら自分のカメラを磨き始めた。
「…可愛いゆっくり?」
と、かぐやが大月の言葉に反応する。
「先生はこの雑誌のカメラマンをしているのです。」
むらさはそう言って月間ゆっくりラブをかぐやに手渡した。
「ぶほあっ!」
手渡した途端、かぐやは凄い勢いで砂を吐いた。
「きゃあっ!?」
「ゴ、ゴメン、雑誌からでているあまあまオーラに触れたら思わず…。」
「…ウチの雑誌は砂の生産機ですか?」
むらさはリアクションに困っている。
「…ま、とりあえず一つだけ言える事があるわ、この国でこの雑誌に載せられるような可愛いゆっくりを探すのはかなり難しいと思うわよ。」
「え?何でですか?」
かぐやの言葉にむらさはそう問いかける。
「この国のゆっくりは、昔からゆっくりしてないもの。」
その答えは実にシンプルだった。
「この国は胴付きゆっくりの力で優れた文明を手に入れた。
でも、その結果、生活を豊かにした貢献者である胴つきゆっくりは次第に体の無いゆっくりを見下すようになった。
その格差社会は、胴付きゆっくりと胴無しゆっくり達の戦争を引き起こした。
その戦争は終わったけど…相変わらず、胴付きゆっくり達は胴無しゆっくりを見下してる。
本来、ゆっくりの魅力はゆっくりしている時に最大限に発揮されるものよ、
この国のゆっくりにはそれが無い、ゆっくりしたい時にゆっくり出来ない、
だからこの国に、可愛いゆっくりなんてものは居ない。
ゆっくりするために、生きるために今を足掻いているゆっくり達がこの国に住んでいるのよ。」
「…何か聞けば聞くほど、この国は俺たちの故郷に似てるな。」
かぐやの話を聞いて、大月がそう呟いた。
「…かもね、私達は文明の発展で素晴らしい力を手に入れた同時に、大事なものを忘れてしまった所も似てるわ。
…案外、ゆっくりと人間って限りなく同じものから進化したものなのかも。」
「何処からどう進化が分かれれば、饅頭とタンパク質の塊に分かれちまうのさ。」
てゐが思わずツッコミを入れる。
かぐやはクスリと笑ってこう言った。
「さあ、神様の気まぐれじゃない?」
「…まぁ、そんな事より、今はどうやってあいつらの所在を突き止めるかだけどさ。」
「仲間になってくれるって言うのならウチの部下たちを動かしても良いけど?」
「あんた、さっき困ってるときは力を貸してあげるって言ってなかったっけ?」
「物事には、代価というものが必要なのよ。」
何となしに、いつもの調子が戻ってきたその時だった。
ピシュンッ!
何処からとも無く、矢が放たれる音が聞こえる。
ドスッ!
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…次の瞬間、矢がテルヨフの脳天に見事に刺さっていた。
「て、テルヨフ!?」
「お、おい!何か脳天に刺さってるけど、大丈夫なのかこれ!?」
「だ、大丈夫・・・だよね、結構深く刺さってるけど大丈夫だよね!?」
脳天に矢が刺さってるにも拘らず、テルヨフは血を一滴も流さないので生きているのかどうかも解らない。
…と、その時テルヨフの手が動き、脳天の矢を抜いた。
「う、動いたってことは、生きてるって事で良いのかな…。」
それでも、不安を隠せないてゐ達であった。
テルヨフはかぐやにその矢を手渡した。
「…あ、これ鏃に何か巻き付けてある。」
かぐやはそう言って鏃から紙を抜き取る。
広げてみると、どうやらこれは何かの手紙のようだった。
かぐやは手紙を見ていると、段々その表情が険しくなる。
「これ…ゲスマフィアからの手紙よ!」
「え!?」
それを聞いたてゐはかぐやからその手紙を奪い取った。
てゐは手紙を読んでみる。
内容はこうだった。
「
お前達の仲間はこっちで預かった。
返して欲しければお前達が握っている証拠と交換だみょん。
港に止められた黒い船で待ってるみょん
PS.警察に連絡したら人質の命は無いと思うちんぽ
ゲスマフィア みょん。」
「…証拠と交換?」
「何のことでしょうか?」
手紙の内容に首をかしげるてゐとむらさ。
と、その時大月はピンと来る。
「オイ、もしかしてお前が撮った…。」
「あ…。」
むらさも気づいて自分のカメラを取り出した。
あの時、あの光景を収めようと、むらさは夢中で写真を取った。
これが警察に流れれば、ゲスマフィアの尻尾を掴む証拠にもなる。
それはあいつらにとっても、望ましくないことだろう。
「…あれま、手紙には親切にも地図まで載っているよ。」
「これは手間が省けたわね。」
「…で、どうするんだ?」
「聞くまでも無いでしょ。」
てゐは迷いの無い、真っ直ぐな目でこう言った。
「取られたもんは、取り返す!」
~☆~
さて、港町の波止場の外れに止められた黒ずくめの船。
名目上は貨物船として登録されているが、その実態はゲスマフィアの秘密基地。
悪の巣窟である。
「…う~☆とんでもない事になっちゃったど…。」
「…。」
「…流石のてんこも、この状況には参ってるようだど…。」
「おいぃ、縛りが甘すぎます、もっときつく縛ッテ!」
「…余裕綽々ですかそうですか。」
てんことれみりゃは縛られた状態で船の看板にいた。
てんこの方はまだマシだが、れみりゃは全身簀巻きになっているので酸欠の恐れがある。
見張りの人間が、ジッとてんことれみりゃを見張っていると、そこにみょんがやってきた。
「…オイ、ちゃんと見張っているのかみょん?」
「心配しなくてもちゃんと見張っているよ。」
「こいつらは証拠を取り戻すための大事な人質みょん、その時までは大事に見張ってるみょん。」
「ヘイ!かしこまりました!」
そこへまた別の人がみょんの元へとやってくる。
「みょん様、船内のオークション会場に客が集まりました。」
「そうか、じゃあ急いで向かうことにするみょん!」
「…正直さっきの時よりも客の集まりは期待していませんでしたが、思いのほか集まりました。」
「奴らも高い金を出してワザワザここまで来たみょん、ゆっくりの一匹も買えずに帰る訳には行かなかったみょんね。」
「随分と馬鹿な連中ですね…まぁこっちとしては喜ばしいことですが。」
「まぁ、リスクを犯してまでまた集まってきたお客だみょん、丁寧に相手してあげねばいけないみょんね。」
みょんはそう言うと、軽くウィンクの練習をして、オークション会場に向かおうとした。
…と、その時だった。
「みょん様!奴らが来ました!」
また別の男が、みょんにそう報告してきたのだ。
「…どうやら予定が変わったようだみょん、お前、みょんの代わりに司会をやるみょん!」
みょんはオークションの報告をしてきた男にそう指示を出した。
「えぇ!?で、でも俺はあんたみたいに可愛らしく司会するなんて…。」
…男はもじもじしながらそう答える。
「…気色の悪いことを想像させるなみょん!普通に司会をすれば良いみょん。
とっとと早く行け!こっちをこれ以上イライラさせるなみょん!」
「は、はい!」
みょんに怒鳴られた男は甲板に設置された出入り口からオークション会場に向かう。
それを見送ったみょんは、船と波止場をつなぐ階段の方に視線を変えた。
…いた、あの時写真を取っていたセーラー帽のゆっくりとごつい体格の男だ。
男とゆっくりが階段を登って甲板に上がっていく。
…うさ耳ゆっくりが居ないのは気になるが…あの深い傷だ、助からなかったと思うほうが自然だろう。
看板に上がった男とゆっくりは甲板の上でみょんと対峙した。
その周りでは人間たちは男とゆっくりを見張っている。
何か怪しい行動をしたら即刻、男たちを始末するためだ。
張り詰めた緊張感で、ゆっくりと男の額に冷や汗が流れた。
ガタン!
と、突然船が派手に揺れた、
それと同時に船は港から離れていく。
「オイ、何のつもりだ?」
男はみょんにそう問いかける。
「陸に付けっぱなしだと、色々不都合があるみょん、…それより、例のブツは持ってきたみょんか?」
前置きは無用とばかりにみょんは男にそう問いかけた。
「そっちこそ、人質は無事なんだろうな。」
「勿論だみょん。」
みょんは視線で男に指示を出す。
「ほら、早く来い!」
「ちょ、痛いど~!」
「こっちはまだ物足りないんですがねぇ…。」
「黙ってろ!特に胴付きの方!」
男はすぐさま、てんことれみりゃを連れてくる。
「…さあ、写真をすぐに渡すみょん。」
「…その前に人質をこっちに渡すみょん。先に人質を渡したら隙を見て逃げられてしまう危険性があるみょん。」
「い~や、写真を渡したらお前達が何をするかわからねぇ、人質が先だ!」
「いいや、写真が先だみょん!」
「人質だ!」
「写真だみょん!」
人質を先に渡せ、写真を先に渡せ。
男とみょんはそんなやり取りを延々と続ける。
…その時、傍でジッとしていたゆっくりーむらさは男ー大月にアイコンタクトを送った。
(先生、こんなので時間稼ぎがホントに出来るのですか?)
(むらさ、私を信じろ、私は出来る限り時間を稼いで見せる!)
…大月はこんな事を言ってるが、元々可愛いゆっくり専属のカメラマン、
子供のゆっくりをあやす事はあっても、こんな緊張感のあるやり取りには慣れては居ない。
「…てゐさん、あなた達を信じて良いんですよね…。」
むらさは不安げにそう呟いた。
- なぜゆっくりLOVEをみるとみんな砂を吐くんだ? -- 名無しさん (2011-02-05 16:05:16)
最終更新:2011年02月05日 16:05