てゐ魂 第十話後編


さて、所変わってこちらは船の中で行われているゆっくりオークションの会場。
世界各国からやってきたセレブたちが
世間ではご法度のゆっくり密売オークションで異常なほどに盛り上がっていた。


「ハイ!ロットナンバー6番!赤ちゃんゆっくりの詰め合わせ一ダースは63番が5000万円で落札!」


「いやッほ~可愛い赤ちゃんゲットじゃああ!」

「キィイイイイイッ!また逃してしまったわ!セバスチャン!」

「お嬢様、次があります、落ち着いてまいりましょう。」


セレブたちの悔し泣き、歓声と共に、赤ちゃんゆっくりがつめられた檻がステージの奥へと引っ込まれる。
ゆっくりは後で、落札したお客さんの元に渡されるというシステムだ。

「…さて、次の商品に参りましょう!ロットナンバー7番!」

先ほどみょんに司会を任された男が大声でそう叫ぶ。


……。

………。


…しかし、何時まで待っても商品が運ばれてこない。
いつもなら、商品として檻に入れられたゆっくりが運ばれてくるはずなのに。
「…あれ?」
男が疑問に思った次の瞬間。

バタン!

突然、ステージの照明が消えた。
「!?!?え、え!?」
いきなり照明が消えたことで驚く司会者。
観客達も、ざわめきの声を上げている。


カッ!


と、今度はステージの中央に、スポットライトが当てられる。
観客の視線が、一斉にそこに集まる。
やがて、ステージが競りあがり、そこから二匹のゆっくりが現れる。



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「どうも~蓬莱ウサギで~す。」

現れたのは、蝶ネクタイを身につけたてゐとかぐやだった。

「な、なんだなんだ!?あのゆっくり、何処から湧いてきたんだ!?」」

司会者は突然現れたゆっくりに驚きを隠せない。
てゐとかぐやは呆然としている司会者と観客に向かって喋り始めた。

「え~申し訳がありません、こちらで手違いがあって、次の商品の登場まで暇が出来てしまいました。」

「そういうわけなんで、暫くの間、ゆっくりの町の新鋭お笑いコンビ、蓬莱ウサギの漫才をお聞きください。」

「…手違い?そんな話は聞いて…。」

司会者が何か言おうとしたがその前に観客たちが喋りだす。

「ゆっくりの漫才だって?聞いてみたい聞いてみたい!」

「オモシロイ話を聞かせてくれよ!」

「うさ耳ゆっくりはぁはぁ…。」

みんな、目の前に現れた漫才コンビゆっくりに興味津々らしい。
(…ちッ、仕方ねぇ、漫才をやらせてないと客からブーイングがきそうだしな…。)
そう考えた司会者は成り行きに任せることになった。

「…で、では次の準備が出来るまで蓬莱ウサギの漫才をお楽しみください!」

それだけ言うと、司会者はステージから降りて会場を抜けた。
倉庫で何が起こったのかを確認しに向かったのだ。
そんなこんなで、観客の期待の視線の元、蓬莱ウサギの漫才が始まるのであった。


「え~我々ゆっくりは饅頭ですね。」

「…えぇ~そう、そうですね…。」


…と、そこでかぐやが言葉に詰まる。


「あれ?てるよどうしたの?」

「…どうしよう、ネタが思いつかない。」

「え!?」

「てゐ、あなた良いネタ無い!?」

「いや、急に言われても思いつかないって!」

「ああもう!ぶっつけ本番で行こうって言ったのはてゐの方でしょ、何か考えてよ!!」

「漫才で行こうって言ったのはてるよの方じゃん!何か自信満々だからネタ位考えてると思ったのに!」

…何だかいきなりグダグダである。
「…ぷっ!!」
と、その時観客の一人が笑い出した。
「え?」
てゐとかぐやは一斉に観客達の方を見る。

「おもしろいぞお前達!」

「良いぞ!もっとやれ!」

…どうやらてゐとかぐやのやり取りが意外にウケたようだ。
「…な、何だか知らないけど笑ってる?」

「チャンスだよ!てるよ、ここで一発でかいのをドカンと!」

てゐはそうかぐやにふった。
これが無茶ブリなのは言うまでも無い。

「え?え~と…。」

どうしたら良いか解らないかぐや。
「早く!場の空気がさめないうちに!」
しかもてゐが早く、早くとせかしてくる。
悩みに悩んだ末に思いついたネタは…。


「…鼻毛。」


自分の自慢の長い髪の毛を人間なら鼻があるであろう位置に持って行ってかぐやはそう言った。



「……。」


…一気に場の空気が冷えた。
いくら観客達がゆっくりラブな連中であろうと限度ってもんがある。
ああ、観客達の寒い視線がかぐやに突き刺さっていく…。


「…痛い。今までのゆん生の中で、一番…。」

鼻毛のポーズをしながら涙を流すかぐやには、どこか哀愁のようなものが感じられた。

「…ゴメン、あたしも痛いと思っちゃった、でもさ…。」


てゐは観客達に視線を向けて…そしてこう言い放った。

「…痛いのは、こいつらも同じだよね。」



「…え?」

「何言ってるのよ、このゆっくり。」

観客側から、ざわめき声が聞こえてくる。
「かわいそうな境遇のゆっくりを購入することでゆっくりを助けた気分になっている自分に酔いしれる。
 ナルシストで身勝手な偽善者だよ、こいつらがゆっくりを手に入れたとしても、
 どうせ可愛がるのは最初だけですぐに飽きて周りの人にでも押し付けてるんだよ。」

「な、何だと…。」

「ちょッと!私は純粋にゆっくりの事が大好きだからここに出てるんですのよ!」

「そうだそうだ、勝手な事を言ってるんじゃない!」

観客達がてゐに向かって反論を飛ばす。
てゐはそんな観客達に向かってこう言い放った。
「…ゆっくりが大好き?違うね、あんた達が好きなのはゆっくりじゃない。


 ゆっくりを愛でている、自分自身だよ。


 あんた達がゆっくりをワザワザ大金出してまで購入するのは、ゆっくりに大好きとか言って欲しいからでしょ、
 ゆっくりに頼られてることで、自分を優位に立たせたいからでしょ、
 そんな自分に酔いしれたいだけでしょ。」

「…き、貴様、口を慎め!」

「ゆっくりだからって何言っても許されると思ってるの!」

段々、観客達の言葉に棘が出てきているのが手にとって解る。
どうやら、てゐの言葉は的を得ているようだ。

「てゐ、あまり事実を言ってあげないほうが良いんじゃないの?」

かぐやが後ろでてゐに向かってそう呟く。
「まぁまぁ、良い機会だし、こういう奴にはバシッと言ってあげた方が良いって。」
そういうと、てゐは観客たちに無かってトドメの一言を言い放った。

「さて、何か良いたい事はあるかな?醜いエゴにまみれた人間の皆さん。」

この一言で観客達はぶち切れた。

「…テメェ、もう我慢の限界だ!潰す!貴様を潰す!」

「俺達を何者だと思ってるんだ!ゆっくりの癖に生意気言ってるんじゃねぇ!」


「セバスチャン!」

「ハッ…!」

「…今のうさ耳ゆっくりの言葉…何だかゾクリと来たわ。」

「えぇ!?もしかしてM?Mですか!?」


・・・何か一部予想外の反応があったが、観客達は概ねてゐに対して殺意の言葉を投げかける。
そこに居たのは先ほどまでのゆっくり愛好家集団ではない。
人間の、醜い本性をむき出しにした怪物達だ。


「…あ~あ、本気で怒ってるわよ、あんた言い過ぎ。」

かぐやはこっちに向かって悪意の言葉をぶつけてくる観客達を見てどうするのよ、といった雰囲気で呟く。

「あれま、珍しく本当の事を言ってあげたのに、何でこんなに怒ってるのかね。」

「あれだけ罵倒されたらそりゃキレるでしょ。
 見ても、今にも私たちに襲い掛かりそうよ、どうするのよ。」

「平気平気。」

てゐがなんとも呑気そうにそう言った次の瞬間。


ドォオオオオン!


何処かで大きな音が鳴り響き、そして派手に部屋全体が揺れた。
いや、ゆれたのは部屋ではない、船だ。
船全体が、派手に揺れたのだ。


「すぐそれ所じゃなくなると思うからね。」

「…あ、なるほど。」


てゐとかぐやはこれでもかと言うほど邪悪な笑みを浮かべた。


ちょっと時間は戻って、船の倉庫。
「…な!?」
商品の様子を身に来た司会者は呆然とした。
先ほどまで、商品のゆっくりを入れた檻で一杯になっていた倉庫。
それが、ものの見事に空になって居たのだから、それは呆然とする。
中央には、縛られた男の仲間が横たわっている。

「お、おい!大丈夫か!?」

男は慌ててその縛られた仲間を解放した。

「…お、お前か…。」

「オイ、商品は何処に言った?一体何があったんだ!?」

「しょ、商品はあそこにいる奴がみんな持って行った…。」

そう言って、仲間がある一転を指差す。
男は、仲間が指差した方を見た。


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…何かいた。

「な、何だ!?」

男が呆然としていると、そいつは滑るようにその場を去っていく。
そして、そいつがいた場所には…。


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    r‐'´,-、,..-ヘ \―`、
  /レ'´ ´/ ̄`ー--、_ i-、
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「…!」

「に、逃げろ~!」

男と仲間が部屋を脱出するのと、爆弾岩が轟音と共に破裂したのは、ほぼ同時だった。



~☆~


甲板での男とみょんの交渉は難航し、ついにみょんの堪忍袋の緒が切れそうになった瞬間に、それは起こった。

ドゴァアアアアッ!

「!?」

「な、何だみょん!?」 

派手な爆発と共に、船全体が派手に揺れた。

「こ、これは!?」

「もしかして、てゐさん達が…。」

派手な揺れに驚きながら、むらさと大月が犯人について考える。
一方、れみりゃの方も突然の揺れにパニックを起こしていた。

「う、うわあああ!一体何事だど!?」

派手な揺れに周りの人間達もれみりゃのパニックに陥っている。
…しかし、この場で冷静なゆっくりが一人。
てんこはこの状況を利用して、とっさに行動に移した!

「おりゃあっ!」

縛られたままのてんこはそのまま一番近くにいた人間の男にソバットを放った!

「ぐはあっ!?」

ソバットをまともに食らった男はそのまま倒れる。

「フンッ!」

てんこはすぐさま全身に力を込めた!

ブッチイッ!

てんこを拘束していたロープが音を立てて吹き飛んだ!

「あ!見ろ!人質が!」

「クソ!逃がすか!」

解放されたてんこを見て他の人間達がてんこに襲い掛かる!
てんこはすぐに腰の緋想の剣を抜いた。

ザシャアッ!

すれ違いざまに向かってきた男達に切りかかる!

ブシュウッ!

男達は血を噴き出してその場に崩れ落ちた。
「お前、調子に乗った結果がこれだよ。」
てんこはそう言うと、今度は簀巻き状態のれみりゃに向かって、剣を振り下ろす。

スパッ!

簀巻きがズタズタに切り裂かれ、れみりゃは拘束状態から解放された。
「う~…やっと新鮮な空気が吸えるど…。」
れみりゃはそういって深呼吸をする。
やっぱり簀巻きは相当苦しかったようだ。

「お二人とも、こちらへ!」

と、向こう側からむらさの声が聞こえてくる。
見ると、むらさと大月が丁度てんこ達の反対側で脱出の準備をしていた。
むらさが縄はしごを海の方へと下ろし、大月がかぐやから渡されたであろう、空気入れを使って救命ボートを必死で膨らませていた。
「クソ!中々膨らまないものだな、救命ボートって!」

「早くしてください!何かこの船、傾いていますから!」

むらさの言うとおり、あの爆発の後、船は徐々に傾いている。
多分、爆発でどこかの壁が吹き飛んで水が入り込んできているのだろう。
「てんこちゃん!急いだ方が良いみたいだど!」

「言われなくてもそのつもりだ!」

れみりゃとてんこは意を決して大月達の所へ走り出した!
パニック状態を起こして辺りをアタフタと逃げ回る人間たちの間をすり抜けて大月達の所へと二匹は駆け抜ける!

「よし!あと一息…!」

「そうは行かないみょん!」

しかし、むらさ達の所まであと一息といった所であのみょんの声が聞こえてきた!
てんこが上を見上げて見ると、そこには口に咥えた刀をれみりゃ達に向かって突き刺そうとするみょんの姿が!

「しねぇ!」

みょんの刀がてんことれみりゃの身体を貫こうとしたその時!
「させるかぁ!」
何者かがみょんに向かって体当たりを繰り出した!

ドガアッ!

「くっ!」

体当たりを受けたみょんはそのまま弾かれるようにてんこ達から離れた所に着地する。
「ふっふん、さっきのリベンジをさせてもらうよ。」
そう言ってみょんの前に現れた一匹のゆっくり。
ウェーブが掛かった黒髪と長いうさ耳、
まごう事なき、てゐであった。

「て、てゐさんやっぱり生きてたんだどぉ~!」

「やっぱりヒーローは本当にピンチのときに偶然通りがかるもの何だなと実感した!」

「いや、偶然じゃないからね。」

てんこの言葉にてゐはツッコミを入れる。
で、更にてゐは大月達に向かってこう言った。

「ゴメン!倉庫で爆発を起こして船に混乱を起こすつもりが船底まで吹き飛ばしちゃった!
 あんた達は先にここを脱出して!」

「え…?」

「ちょッと待て!お前はどうするんだ、それとかぐやってゆっくりも居た筈だ!」

てゐの言葉を受けて大月がそう叫ぶ。
てゐは、ジッと、目の前に居るみょんを見る。

「…あたしはコイツをぶちのめさなくちゃいけないしね。
 後てるよのことは心配しなくて良いよ。」

「無茶だ!あんたの怪我はまだ癒え切って居ないだろうが!」

「ゴチャゴチャうるさい!早く行け!守りながら戦うのは結構しんどいんだよ!」

「だからってな!」

「オイ、救命ボートを膨らます手が止まっているんですが?」

突如、てんこが大月に話しかけてきた。
「え?」
いきなり話しかけられて大月は戸惑いを隠せない。
その両手の救命ボートはいまだ機能を果たせるほど膨らみきっていなかった。
「ちょッと貸してくれ。」

「あ、ああ…。」

大月は言われるままにてんこに救命ボートを渡す。
てんこは空気吸入口に口をつけると、そのまま。

「ふんッ!」

ボンッ!

と、一息入れただけで救命ボートを膨らませてしまった。
「ま、マジかよ…。」

大月はてんこの凄まじい肺活量を目の当たりにして呆然としてしまった。

「これくらい出来ないとヴァナの地では暮らせない。」

てんこはどうだと言わんばかりの態度でそう言うと、救命ボートを海に放り投げた。
「よし!急いで船から離れるど!」
れみりゃはむらさがセットしたはしごを降りて救命ボートに乗り込んだ。

「おい!お前らあのゆっくりを置いていく気か!?」

大月は看板から救命ボートのれみりゃに呼びかけた。

「…残っていたら、てゐさんはどうしてもれみりゃ達に気を取られて負けてしまうかもしれないど
 そしたらみんなあのみょんにやられておしまいだど!」

「で、でも、あいつを置いて行くなんて…。」

「オイ、ゴチャゴチャ迷ってる暇があったら今すぐ船から離れるべきそうすべき。」

「え?」

てんこはそう言って大月の首根っこを掴みむらさを小脇に抱えた。
「てんこ イン ザ スカイ!」
そして、そのまま救命ボートに向かって飛び降りた!

「えぇえええええええええ!?」

「ちょ、ちょっとぉおおおおおお!」

バシャーン!

てんこ達が着地した衝撃で救命ボートが激しく揺れる。
「て、てんこちゃん、もっとそっと降りて欲しいど…。」
衝撃で救命ボートが破れるのではないかと内心ヒヤヒヤしたれみりゃであった。
「よし、ここはもうカカッととんずらで逃げるべきそうすべき!」
てんこはオールをこぎ始める。
救命ボートが動き出し、船から離れていく。
船はかなり沖に出ていたが、波止場は近い、船旅はすぐに終わるだろう。

「…あの、ホントによかったんですか?」

「ん?何だど?」

「てゐさんの事、置いていってしまった事です。」

「…本当の事を言うなら、私もてゐの加勢をしたい気持ちなのは確定的に明らか。」

「じゃあ、何で…。」

「…れみりゃもてんこちゃんもまだまだ未熟だど、雑魚の相手ならとにかく本物のつわものが相手では
 れみりゃたちは却って足手纏いになるだけだど…。」

そう呟くれみりゃはどこか悔しそうな顔をしていた。

「…あのてゐってゆっくり、大丈夫なんだろうか…。」

大月が不安そうな顔でそう呟く。

「あんたに心配されなくても、てゐさんは絶対に勝って帰ってくるど!だって…
 てゐさんはどんなときでもゆっくり出来る、本物のゆっくりなんだから!」


~☆~


その頃、甲板の上のてゐはというと。

「…ぶえッくしょんっ!」

「みょ、みょんッ!?」

思いっきりくしゃみをしてでかい鼻水を流していた。
…何だか、れみりゃの信頼を思いっきり棒に振ったような光景だ。

「い、いきなりくしゃみをするんじゃないみょん!」

「いや~誰かが私の事を美人だって噂してたのかな?」

「…鼻水たらしているお前の何処が美人だみょん。」

みょんはてゐにそうツッコミを入れる。
てゐは鼻から垂れた鼻水をすすって元に戻した。

「…こんな奴にウチの商売を邪魔されるとは…!」

「まぁ、悪事が世に栄えたことは無いってことだよ。」

「黙れみょん!こうなったらお前の首をぶった切って、上にもって行かなきゃみょんもタダじゃすまないみょん!」

「首をぶった切るって、あたしゃ元々首しかありませんが~?」

てゐはピョンピョン跳ねてケラケラ笑う。
みょんの額に怒りの四つ角が浮かび上がる。

「…切る!元がわからぬぐらいに細切れに切ってやる!」

みょんはそう言ってカードを取り出し、刀に突き刺した!
刀にカードのオーラが伝わっていく!

「しねぇえええええええええええ!」

みょんはてゐに向かってその刀を振り下ろそうとした!
「させるか!」
対するてゐは…なんとみょんの懐に一気に飛び込んだ!

ブチュウッ!

「!?」

てゐはみょんの刀の柄の部分に噛み付く!
…みょんも、刀の柄の部分を口で咥えて刀を持っている。
つまり…


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丁度てゐとみょんはお互いに口付け合う形になるのである。

「…!は、離れろ貴様!」

「おや?何で頬を赤らめてるわけ?もしかしてファーストキッス?」

「…!そ、そんなわけ無いだろう!」

「お~照れちゃって、ウブ何だからもう。」

…お互い刀を柄を加えている状態だと言うのに、良くしゃべれるものである。
…そんな状態のてゐを、離れた所から銃口が狙っていた。

「あのゆっくり野郎め、タダじゃおかねぇ…。」

それは、先ほどオークション会場でみょんの代わりに司会をしていた男だった。
倉庫の爆発の影響か、頭が半分ほどアフロになっている。
「あの頭を吹き飛ばしてやるぜッ!」
男がてゐの頭に狙いを定めて引き金を引こうとしたその時だった。

シュルッ!

男の首に、何か黒くて細長いものが絡まった。
男の首が、一気に絞まる。

「ぐはっ!?…。」

男は白目を抜いてあっという間に気絶してしまった。
銃は男の手から滑り落ちて甲板の上に転がった。
「ふう、神聖なゆっくり同士の決闘に、人間風情が茶々入れるんじゃないわよ。」
そう言って現れたのは、かぐやだった。
先ほど男の首に絡みついたのはかぐやの髪の毛だったのだ。

「ふう、これで全員かな。」

かぐやはそう言って後ろを振り向いた。
後ろにではあちこちに伸びた黒い髪が船に乗っていた悪い人間たちを締め上げていた。
…今のかぐやの姿は妖怪とか、そう呼ばれたとしても差し支えの無い状態になっていた。
「邪魔者は全部倒しておいたわ、後はがんばりなさいな、てゐ。」
かぐやはそう言うと、髪に絡みついた人間達を、次々と海に投げ捨てていった。


「ん、んっ!」


「ん、ん~っ!」


てゐとみょんの刀の奪い合いが続いている。
…何度も言うがキスしているのではなく、刀の奪い合いだ。

「い、いい加減離れろ!何だか…その…!」

「どうしたの?もしかして感じてきちゃった?」

「…いい加減にしろぉ~!」

「そいじゃトドメと行きますか!」

ニュルン!

みょんの口の中に何かが入ってきた!
「!?!?!?!?!?!?」
動揺したみょんは思わずてゐから離れてしまう。
勿論、刀からも。

「…し、しまった!」

みょんがそう思ったときにはもう遅い、
刀はすでにてゐの元へと渡ってしまった。

「いやぁ~やっぱり舌を入れるのは効くね、うん。」

てゐは刀を咥え直しながらそう言った。
刀にはまだスペルカードが刺さっており、その刀身にはオーラが纏っている。

「さ~て…そいじゃあ…お返しいっ!」

てゐが気合を入れると、刀身のオーラが更に高まった!


「待宵反射衛星斬」


てゐが刀を大きく振り下ろした!
それと共に発生した斬撃がみょんに襲い掛かる!


「うわああああああああ!?」


ズバアッ!


みょんは巨大な斬撃をまともに食らってしまった!
そして、そのまま船外へと吹き飛ばされ海へと落下する。
…暫く待ったが上がってこない、溺れたか、それとも別の理由からか。
「よし、いっちょ上がり!」
確かなのは、この勝負、てゐの勝ちだという事だけだ。
…さて、問題が起きたのはこの後だったりする。

ズバアッ!

いきなり船の船体に切れ目が入り、真っ二つに割れ始めたのだ!
「げ、さっきのスペルカードの威力半端じゃなかったみたい…。」
そう、さっきの斬撃はみょんだけじゃなく、この船までぶった切っていたのだ。
結果、ただでさえ沈みかけていた船の沈下速度が更に加速する。
「うわわわわ…コリャ早い所脱出しないと!」
てゐがそう言って慌てていたその時だった。

「てゐこっちよ!脱出の準備は済ませているわ!早く乗りなさい!」

てるよの声が、聞こえてきた。
「さっすがてるよ!準備が良いねぇ!」
てゐはそう言うと、こんな所は早い所おさらばだと言わんばかりにてるよの声のする方に向かった。


~☆~


「…え~と、何か沈む速度が速くなってるんですけど、大丈夫ですか?」

波止場に無事にたどり着いたむらさは遠くで沈んでいく船を見ながらそういった。
さっき、派手な光が見えたかと思ったら、その次の瞬間には船が真っ二つになってしまった。
「う~…流石にあれはまずいかも知れないど…。」
れみりゃも沈む速度が更に速くなった船を見て、不安になってきたその時だった。
「…あれは!?」
てんこは船のある方からこっちに向かって進んでいく何かを目撃する。



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「…てるよ、何か乗り心地悪いよこれ。」

「我慢しなさい、テルヨフも頑張ってるのよ。」

それは、テルヨフに乗ったかぐやとてゐさんだった。

「て、てゐさ~ん!」

てゐの無事を確認し、れみりゃは歓喜の声を張り上げた。
そうこうしている内に二匹のゆっくりを乗せたテルヨフは波止場に到着した。

「やっぱりてゐは無事だった、凄いな~あこがれちゃうな~。」

「てゐさ~ん!心配したんだど~!」

てんことれみりゃは実に嬉しそうにてゐの元へと駆け寄る。
てゐは駆け寄ってきた二匹に対して…。

ギュ~!

自慢の両耳で、れみりゃとてんこのほっぺたを思いっきり引っ張った!

「て、てゐさん!?痛いど~!」

「おいぃ!?いきなり暴力は反則じゃないですか!?」

思わず、叫び声をあげるれみりゃとてんこ。
「心配したのはこっちの方だよ!全く、二人が余計な事をしなければこんなめんどくさいことにはならなかったのにさ!!」

「あいたたた!ゴメンだど~!」

「謝ります、ごめんなさい!」

そんなてゐ達の光景をじっと見つめる大月達。

「ホントに帰ってくるとはな、大した奴だ。」

「…まぁね、伊達に白ウサと呼ばれていた訳じゃないのよ。」

かぐやはそう言いながら近くの倉庫の鍵を開ける。

「あ、かぐやさん!」

「船に捕まっていたゆっくり達はこの通りに無事だよ!」

倉庫の中にはかぐやの仲間達が、オークションの商品になっていたゆっくり達を見張っていた。
開放されたゆっくり達は、みんなまだ、状況を把握し切れていない様子である。

「へぇ、やっぱりてるよの仲間も手伝っていたんだ。」

ようやく、二匹をつねるのをやめたてゐが倉庫の中を見渡してそう呟いた。

「そりゃあの数のゆっくりを運び出すにはどうしても人数が要るしね、
 ついでに言うならあそこでオークションに参加していたセレブたちの写真も撮影済みだし、
 重要そうな書類もあの船から全部持ち出したわ、
 これで、ゲスマフィアのオークションもおしまいね。」

かぐやはそう言ってフフンと笑った
これでこの国がゆっくりが本当にゆっくり出来る国に一歩近づいた。
そのことが嬉しいんだろう。

「ところでてゐ、私はこれからこのゆっくり達の引き取り先を探そうと思うんだけど…
 あなたも手伝ってくれる?」

と、かぐやはてゐにそうお願いしてくる。

「…あのさ、忘れてるかもしれないけど、私、重症なんだよ。
 これ以上動き回らせないで。」

てゐはそう言って背中の包帯を見せる。
包帯は餡子が滲み出ている、さっきのみょんとの戦いでまた傷口が開きかけたのだろう。

「…あ、そうだったわね、何か怪我してる割にはピンピンに動いているから忘れてた。」

「…その怪我でよくまぁ平然な顔して立っていられますね…。」

「いやぁ、ホントは立っているのも辛いんだけどね…。」

「相変わらず、見栄を張るのは大の得意分野って訳ね。」

かぐやはそう言って呆れた顔になった。
…と、今度はてゐは大月の方を振り向いた。
「で、とりあえずアンタはこれからどうするの?」

「私か?とりあえず予約しておいたホテルに泊まって朝一番の便で国に帰るつもりだ。
 元々その予定だったんだからな。」

「ふ~ん、じゃあ、とりあえず私は帰って良いかな。」

「…傷の事もあるし、とっとと帰った方が良いんじゃないか?」

「じゃあお言葉に甘えて。」

てゐはそう言って波止場から出ようとする。
そんなてゐの後をてんことれみりゃがついていく。

「てゐさん!帰る途中にぷっでぃん☆を買って行くんだど~!」

「…そんな余裕があると思ってるの!?馬鹿なの!?」

「…言ってみただけです、うまい棒で良いです…。」

「(財布を見る)…うまい棒さえ買えるかどうか解らない…。」

「すみませんてゐさん、私をおぶってくれませんか?(眠気)」

「ちょ!胴つきのあんたを背負えるわけが…って圧し掛かるな~!傷に、傷に響く~!」

「ZZZZZZ…。」

「しかももう熟睡!?コイツ、どれだけ神経が図太いの!」

そんなやり取りを繰り広げながら帰っていくてゐ達を大月達は見送っていた。
ふと、むらさはこう呟く。
「あ~あ、今回は散々な取材でしたね、結局目的の可愛いゆっくりの写真は取れなかったし。」

「まぁ、な、しかし無駄に終わったわけじゃない。」

「え?それはどういう事ですか?先生。」

「可愛いゆっくりは取れなかったが、もっと良いものが取れた。」

そういった大月の手には、いつの間にかカメラが握られていた。



一週間後、人間の国で月刊ゆっくりラブが発行された。
表紙を飾っていたのはなんとてゐ達であった。




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           ン^ヽ:>.、.,___   ,.イ::::/::::::ハノ        ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ


「…アイツ、いつの間にこんな写真を。」

「今号の表紙はあなた達で飾らせてもらいました!」
そんな手紙と共に万屋に送られてきたその雑誌の表紙を見て複雑な顔をするてゐ。
「何か知らないけど、今月号はその写真のお陰で売り上げが倍に伸びたらしいんだど~。」

「へぇ、それなら本と一緒に謝礼も送って欲しかったな。」

「…どうせてゐさんに謝礼を送っても、ぜんぶどんべぇに消えちゃうど。」

「…それ、どういう意味?」

睨みつけてきたてゐに対して、れみりゃは思わずすくみ上がってしまった。


今までの可愛いゆっくり達の戯れとは何かが違う、しかし確かにゆっくりしているその写真は
ゆっくり愛好家だけではなく、多くの人々に注目されることになる。






第十話終わり




  • 盛りだくさん過ぎて何からコメントするか迷うな
    とりあえずろーりん全巻もらえるんだったら倉庫のひとつやふたつは貸すのは当然
    よって諏訪小増は悪くないかと
    その他ではもじもじする司会の男や万能っぷりを発揮するテルヨフやら意外に凄い大月やら
    脇が光るのが魅力的だったな
    そして何よりも
    <ゆっくりを愛でている、自分自身だよ。
    このくだりってすごく深い事言ってるよなぁ…… -- 名無しさん (2009-09-30 00:58:09)
  • 全くだね
    愛でなんて言葉は全然見なくなったが、これは自分とあまり切り離し過ぎて考えるとよくないかな、と思い、
    少し読んでて辛かった。
    こういう気分こそ次に生かしたけいけどな……飛躍して言えば、恐ろしく現実にたくさんの事に当てはまる話だわ

    ただ最後のAAが凄く良い出来だったのと、その写真が広く評価された ってのが色々な意味で大きな救いさね -- 名無しさん (2009-09-30 01:11:27)
  • ようするにわざわざかわいこぶらなくても一生懸命生きてるゆっくりは可愛いってことで -- 名無しさん (2009-09-30 01:17:49)
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最終更新:2011年02月08日 14:53