てゐ魂第十一話1

皆さん、食中毒には気をつけていますか?
夏場を過ぎたとはいえ、食べるものには細心の注意を払わねばなりません。
例えば…。




「ことひめ!運ぶ途中で落すんじゃないよ!」

「わ、解ってますよ、みまさん…どっこいしょっと。」

「ふう、これで送られてきたものは全部かねぇ。」

「…あれ?その段ボール箱は一体何さ魅魔ばあさん?」

「ん?てゐ達かい。これは遠い親戚が送ってくれたものさ。
 実家で取れたみかんだってさ。」

「みかんかぁ…そんなにあるなられみりゃ達にもちょっと分けて欲しいんだどぉ。」

「…え?これを食べるのかい?」

「…何、その明らかに微妙な表情は、まさか腐ってるわけ?」

「いや、腐ってはいないんだよ、腐っては…ね。
 たださぁ…。」


    .. ─⊆⊇- 、
    /∴        \
   /∴∵━━   ━━ ヽ
  |∴∵⊂■⊃  ⊂■⊃ |
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        ┃┃
      :::::::::┛┗


「…おいぃ!?なんですかこれは!?」

「流石に、こんなわけの解らないものを食べる気にはならなくてねぇ。
 客に食べさせるわけにも行かないし、処理に困ってた所なのさ。
 とりあえず、外に置いておこうと思ってるんだけど、勝手に持って行くんじゃないよ?」

「……。」

一時間後



               ,. -───-- 、_
   ∩___∩  rー-、,.'"          `ヽ、.    /゙ミヽ、,,___,,/゙ヽ
   | 丿     ヽ _」::::::i  _ゝへ__rへ__ ノ__   `l    i ノ       `ヽ'
  /  ○   ○く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、   / `(○)  (○)´i、  先生助けてっ!、
  | U  ( _●_) \::::::::ゝイ,.イノヽ! レ ヽ,_`ヽ7ヽ___>  彡,U ミ(__,▼_)彡ミ   昨日まで動いていたれみりゃが
 彡、    |∪| ,,/r'´ .ィ"レ'( ),  、( ).::`!  i  ハ   ,へ、,   |∪|  /゙       息をしてないの!!
 /  ヽ  ヽノ  ヽ / ! ""  ,rェェェ、 ".::::::::i  ハ   ',/  '    ヽノ `/´ ヽ
 |      ヽ  ..ノ  /l    |,r-r-|  .:::::::ハノ i  ヽ  /       |
│   ヾ    ヾ〈,ヘ   ヽ、 `ニニ´ .::::::::,〈 i  ハ  i  〉 ソ       │
│    \,,__`'  ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ __,,,ノ   |



どうしてこんなになるまでゆっくりしていたんだ!        ,. -‐-、        ,.- 、
                                    /     i      /,   ヽ.
                                   /      ハ├──-//i    i
                    三三三三            ,'      / ソ::::::::::::::::::ヽ、 !    |
    三三                 ,----、 -、     i   /:;:::::::::::::::;::::::::::::::::::ゝ、____ノ
        /;;;'''- .  三三三      {;;;;;;____} __}      〉--' /:/、__;:ィ::ハ::、_;:!:::i:::ハ::〈
三三     {;;;::::::__}      _,.- '' ̄"''ー-;;. ゝ_ン     i::::::::/::::::ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ::::|:Y
   / ̄~ Yヽ:: _ 〉   ,.- ''::::::::::/::::::::: ::.. ヾ.}       ハ:::::::レヘ::i' ( ]    [ ンハソ:::ハ 
  /:::: .::ノ .: }'^〈"    ヽ/:::::::::::::i :::::::::::::::::..:}l        |::::::::ノ:::l:|"   ,___,   l:::::|::ノ 
 {::::: ;;;::::  .::  ヽ_,--、,.,.,/:::::::;;,,,:::::::::::::::;;;;__,イ \__.     ノ:::::::::::::ハヽ、  ヽ _ン  ノ::::i:::(
  >、:::.ヽ   ノヽ、_{_,,,,,}.../::::::::::i ::::::::::::/=l:::: l======、ー  イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ
../:::::: ヽ、\'、____ll________/:::::::、:::,ヽ::::::::{ー--`ー',,,,.,.,.,.,,.,. )) . .!  〈rヘ:::::!::レ´   `y二」ヽレ':::〈
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{::::ミ/;;;;;;l ;;;;;;;;;;;;;;;||;;;;;;;;;;::l::::::::::::::::::: イ::;;;:;:;_,,..-‐'' ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l
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:          ト、
          | ヽ.
       <´ ̄ヽ. |     _,,.. -─- 、.,    ,.. --、_
      _\  ∨-‐<´::::::::::::::::::::::::`><    |`ヽ. /|.  /|
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         .レ' /  ! /// ,___, ////レ'i  /    |  
          / ./ ',   ヽ _ン    //      !
         / / />.、,      / /       ',
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      ,'  .| ./´   ./   `Y| /-!  |    ,'
      !   レ'   ,イ      !レ'  /!  /|    /
      ',    /!/、      ノ  /// ,'    ,:'
       \   /  ト、 \_,. イ  ,.ヘ_´   /   /
:.... . ∧∧   ∧∧  ∧∧   ∧∧ .... .... .. .:.... .... ..... .... .. .
... ..:(   )ゝ (   )ゝ(   )ゝ(   )ゝ無茶しやがって… ..........
....  i⌒ /   i⌒ /  i⌒ /   i⌒ / .. ..... ................... .. . ...
..   三  |   三  |   三  |   三 |  ... ............. ........... . .....
...  ∪ ∪   ∪ ∪   ∪ ∪  ∪ ∪ ............. ............. .. ........ ...
  三三  三三  三三   三三
 三三  三三  三三   三三



「…やっぱり勝手に食べたのかい。
 嫌な予感がして食べなかったのは正解だったねぇ。」

「みまさんの忠告を聞いておけば入院する羽目にならなくてすんだのにねぇ…
 …ところでみまさん。

「何だいことひめ。」

「さっきからお腹が痛いので病院に行ってきて良いですか?」

「やっぱりあんたも食べたのかい…。」



こんな風に迂闊に変なものを食べれば大惨事につながります。
…皆もあから様に怪しい食べ物は口にしないほうが良いですよ。

さて、本編に入る前にいつもの忠告を。


この小説は銀魂のパロディです。
登場するゆっくりはロクな奴じゃありませんし。
ゆっくりが酷い目に合う描写もあります。

それらに抵抗感がある奴は席をお立ちに、それでも構わないと言う方は席に座って続きをご覧下さい。


てゐ魂第11話「マリアリがジャスティスでレイマリが真実なら
        テルレンは一体なんになるのであろうか?」


世の中、どうしようもなく不幸な存在というものが居る。
どんなに足掻こうとも悲劇のスパイラルから抜け出せない、と言う存在はどこにでも居るものだ。
ゆっくりの世界では、正に彼女がそれに当てはまるであろう。


「ハイ、お薬を塗りますから、ジッとしていてくださいね~。」


そう言って看護婦の帽子を被ったゆっくりこあくまは自分の頬に薬をつけ、それをすーりすーりの要領で患部へと擦り付けた。
ただ今、ゆっくり総合病院のベッドの上で看護婦こあくまに薬を塗ってもらっている彼女の名は八雲 らん。
猫耳のような帽子と九本の尻尾が特徴のゆっくりである。
彼女は前回、てんこに黄金の右で殴られた結果、顎の部分が拳型にへこんでしまい、入院生活を送る羽目になってしまったのだ。
しかも不幸はこれだけではない、
らんはついこの間まである旅行会社で働いていたのだが、担当した旅行者を危険な目にあわせてしまい、
「お客さんを安全に旅行させるのがお仕事なのに、危険な目にあわせるゆっくりなんて社員失格だよ!」と、
上司に三行半を押し付けられてしまった。
…早い話、クビになってしまったのだ。


入院したうえ、無職になってしまったらん。
せめてもの救いは、奥さんのちぇんが先ほど、『お見舞いに行くよ!』と連絡を入れてくれたことだ。
らんはちぇんがお見舞いに来てくれるのをうきうきした様子で待っていた。
…が、肝心のちぇんがいつまでたっても現れない。

「ちぇん、遅すぎるてんこ…。」

薬を塗ってもらった所を尻尾で撫でながら、らんはちぇんを待ち続けた。
と、そのとき扉がガチャリと開く。
「!?ちぇん!?ちぇんかてんこ!?」
一瞬ちぇんが来たのかと思っていたらんだったが、現れたのはちぇんではなく、ビニール袋と手紙を持って看護婦こあくまだった。

「らんさん、あなたの奥さんからこれを預かってきたんですけど。」

そう言ってらんのベットのテーブルの上に手紙とビニール袋を置いてあげた。
「…?」
らんは手紙の封を破り、それに目を通した。


らんしゃまへ

  見舞いに行こうと思ったけど、急な仕事が入って
  見舞いに行けなくなっちゃったよ!
  お見舞いの品としてらんしゃまの大好物を持ってきたから
  早く食べて元気になってね!

…手紙にはこう書かれていた。
実はらんとちぇんは夫婦で働いていたのだった。
らんはビニール袋を開けてみた。
…中身はいなり寿司だった、パック詰めの。
しかも、そのパック詰めのビニールにはあるラベルが貼ってあった。


>>「半額」








病院の屋上でらんは妻の見舞いの品であるいなり寿司をもそもそと食べていた。


「入院した上、仕事はクビ、愛する奥さんからの見舞い品ははスーパーの半額セールのいなり寿司…。」


_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
>殺せよぉおおおおお!いっそ殺してぇえええええ!神様はランのこと大嫌い何だろてんこぉ~!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
         _,、○     ∧.
       .,r'´.,r'´ \   ,'  ゙i _,.、○
     ,. イ(,,_,:'    、\V゙i,へ!(,r'´ `゙i
 /|,   ハ, ゙i!     ゙i、,r'`''‐-ゝ´_]_   ',
 ! ゙i  !,へ、.||             `  ',
 | \!    !_.,r'´゙i、,r'7 ̄`7二! ̄'ァ‐-7._゙i
 |,r'゙i、|    !___、,r'´!_、,r'´ ̄   ̄`゛'‐-7 ̄'r
 |   ハ,  、7___、,r'´、  !‐-ハ,   , _!_ ,   `'ァ!
  ゙i   ゙i ! ,r' .,r' !゙iハ(,ゝ、'ァ ゙i /ノ,.ゝ`゙i ',
  \   \!ハ  !゙i ! (◎),  、(◎) '; ! !
   >‐--‐| ゙i. ', 'レ. ""  ,rェェェ、  ""'! !,r'´
 /ン    ゙i. '、.| ',.    │  │  7'/
<´  >   〈  ハ ゙i ト,   `ニニ´   ,.,r'
 `'<.,__,、<\!_゙i、\';イ 、___,.、,.<!゙i.,r'´



絶望のど真ん中でらんが大声でそう叫んだ。
もうなんか、色々な意味で絶望ど真ん中の状態であった。


「八雲さん何してるんですか?」


と、そんならんに話しかけてくるゆっくりが一人。


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彼女の名は白蓮――、
本来ならこの創作wikiの伝統(と筆者が勝手に決めている)に従ってひらがなで呼ぶべきなのだろうが、
あえて彼女だけは漢字で書かせていただくこう。
とにかく、彼女、白蓮はこの病院で看護士として働く胴付きゆっくりであった。

「…あ、白蓮さん。」

白蓮に呼ばれて返事をするらん。
「一緒に病室に戻りましょう、そんな所にいたら風邪を引いてしまいますよ。」

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  ○ヽ、    _ノi`> ヽ.::::((-ナノヽ((ーi-ヾ::゙i:::::::)::):}
  ノ|   くゝ'"´  `    ',!==   ==、.λ!、.:.:;;:人
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  r!-ァ´./ /-/‐| .ハ. i__ ハ ヽ!ゝ.., ______ .イ):( : ). . . . ヽ  
  Y´ / !,'(ヒ_] レ' ヒ_ン ハ  〉/==;イ'´ ̄`ヽ. . . . . .〈
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  ノ ヽ、.ゝ   ヽ _ン  イノ |X:X/二二二イ:i    ハ
   !へ| >.、,_    _,. イ ハ|></:::::::::::::::::イ::::i    / 〉
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そういうと、白蓮はらんをそっと持ち上げる。

「あ、白蓮さん!そこまでしなくても自分で歩けるてんこ!」

抱き上げられたらんは慌てて自分から降りようとする。
「まぁまぁ、あなたは怪我人なんですから遠慮しなくても良いんですよ。」
白蓮はそう言うと、らんを抱いたまま屋上を出てらんの入院している病室へと向かっていく。


「あ、白蓮さんだ!」

「白蓮さんおはよう!今日も美しいですね!」

「白蓮さん!この間腰を痛めたときはお世話になりました!」



すれ違うゆっくり達がみんな白蓮に挨拶をしていく。
胴付き、胴無し、種族など関係無しにゆっくりのお世話をする白蓮はこの病院の人気者だった。

「あ、あの~白蓮さん、もうそろそろ一人でも降りれますから…。」

らんは恥ずかしそうに白蓮にそう言うが…。

「そんな事して、怪我が酷くなったらどうするんですか、早く退院して、奥さんに元気な姿を見せてあげなくちゃ、ネ。」

そう返してきた白蓮に、らんは体の奥から暖かいものを感じていた。
ここん所、ロクなことが無かったが、献身的にお世話をしてくれる彼女には大分救われた気がする。
そんな極楽心地で病室に戻ってきたらん。


「だからあんなの食べない方が良いっていったんだど、てゐさん!」

「うるさいなぁ、アンタ、私より食べていたじゃん!おあいこだよおあいこ!」

「お前ら食事中にうるさ過ぎるでしょ、腹が減っては戦が出来ないという名台詞を知らないのかよ。」

「…食中毒で入院したってのに、良くそんなに食えるんだど…。」

「これだけじゃあ物足りないんですが、おかわり下さいますか?」

「…そこに点滴があるからそれでも吸ってれば?」


病室のベッドの上でギャーギャー喚いている三匹のゆっくりを見てらんは極楽から地獄へ落とされた。

「…な、何で?あいつらがここに居るてんこ?」

「…あ、言うのを忘れてたわ。このゆっくり達は今日から暫くの間この部屋で入院することになったの、
 仲良くゆっくりしていってくださいね。」

「…へ?一緒の部屋?」

…どうやららんの不幸はまだ続くようです。


~☆~


「ふぅ~ん、ここ暫く見ないと思ったらあんた入院してたんだ。」

ベッドの上で転がりながらてゐはらんに話しかけた。
「…そうだてんこ。」
らんは不貞腐れ気味にそう答えた。

「顎が砕けて入院するとは、貧弱ゆっくりらしい話だな…もぐもぐ…。」

「顎を砕いたのはアンタの拳だてんこ!後なんでらんのいなり寿司を食ってるてんこ!?
 それはちぇんからのお見舞いの品だてんこ!」

いなり寿司を食いながら話しかけてくるてんこにらんは思わず怒鳴りかけてしまった。

「でも、これ賞味期限が寿命でマッハだから速く食べないと哀れな腐りものになる。」

「食中毒で入院したのに、何で賞味期限ギリギリのものを食べられるのだど…。」
れみりゃはてんこの神経の図太さにあきれ返っていた。

「…それにしても、同じ部屋になるとはねぇ、偶然って恐ろしいものだよ。」

「こんな偶然、起こって欲しく無かったてんこ…。」

「この調子じゃあまた知ってる人がこの病院にいるんじゃないのか?
 二度ある事は三度あるというのは良くあること。」

「いくら何でもそれは無いと思うど。」

…と、れみりゃがそう言ったその時。


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     /::::::::::::::_::ノ ノ )    ヽ.:::::::_::::::::::::::::;l.'-―‐ ' "´ヽ.
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     |:::::::::::::::::::::_l.    、_)   | V,-,-,-,-(         |ヽ、,ノ
     |:::::ヽ::::::_::::_:l l )     ./∧ーーーー<        |‐'"
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     ヽ::::::::::::::::l:::ー-‐<__フ     /   i.      |  |  ノ
       ヽ、::::::: ̄ ー‐-‐::::::::<!、    l_,,..-< _   /,..-‐''"
        丶.:::::::、;;;;__:::::::::::::::::`_、_l:::::;;::l    ヽ/
            ̄ ̄ ̄ ̄ ' ー ―――-┘'

病室の出入り口の前を、何か見覚えのある物体が横切った。

「…。」

思わず顔を見合わせる万屋ゆっくりトリオ。

「…れみりゃ、今なんか横切らなかった?」

「気、気のせいじゃ無いかど?」

「…いや、私もこの二つの眼で確かに見た。」

「……。」

彼らの間に、沈黙が走った。


~☆~


「テルヨフ、まだ体の節々は痛む?」

ベッドの上で横になっているテルヨフに、かぐやは呼びかける。
テルヨフは無言だが、その体は微妙に震えている。
隣にいたぱちゅりーナースがかぐやに問いかけてきた。

「過剰な運動による全身筋肉痛ね。テルヨフをはじめとした荒巻族は
 ちょっとした運動でも負担になるのよ。
 かぐやさん、ここん所テルヨフにどれだけ運動させていたの?」

「…え~と、船を沈めて、その後胴無しゆっくり二匹乗せて一kmほど水泳を…。」

「常人でもキツイ運動じゃない!まだあと一日ぐらいは安静にしていた方が良いわね…。」

ぱちゅりーナースが物凄い勢いで怒鳴りかける。
かぐやは思わずシュンとなってしまった。

「ゴメンねテルヨフ、私が無理させたばっかりに…。」

かぐやは涙目で、テルヨフの腕に自分の髪を絡ませる。


「まさかあいつまで病院に来ているとは…。」
そんなやり取りを、病室の隅っこでじっと見てめているてゐであった。
出入り口の前を横切ったテルヨフが気になって後をつけてみたらこんな事。
このままかぐやと鉢合わせしたら厄介な事になる。
「…めんどい事になる前に病室にもどろっか。」
てゐが病室に引き返そうとしたその時だった。



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一人の胴付きゆっくりが立っているのが目に入った。
(あれ?確かあれって白蓮って人じゃなかったっけ?)
彼女の事は病院中でよく耳にしたので、すぐにてゐは理解できた。
とにかく、白蓮はかぐやの居る診察室をジーッと潤んだ目で見つめていた。
「あのさ、そんなところでボーっとしてたら通行の邪魔になると思うよ??」
てゐは白蓮にそう話しかける。

「…あ、そ、そうね、ごめんなさい!そういえばナースコールで呼ばれていたんでした…。」

てゐに話しかけられた白蓮は戸惑いながらもバタバタとその場を去っていった。
「…何をやってたんだろ?」
てゐが首をかしげる。
その時。

「恋してるてんこね、あの髪の長いゆっくりに。」

「え?」

後ろから声がしたので振り向いて見ると、そこにはらんが立っていた。





「あのかぐやってゆっくりはテルヨフの付き添いでちょくちょく病院に来るようになったてんこ。」

椅子の上でいなり寿司を食べながららんはてゐにそう説明する。

「実は彼女が来て以来白蓮さんの様子が変だてんこ。
 遠くから彼女を見守るようにたっている姿が良く目撃されるようになったし、
 時々立ち止まっては深いため息をつくようになったてんこ。
 らんの第6感が告げているてんこ!白蓮さんは今!恋をしている!」

力強く力説するらんにてゐが冷たい視線を送る。

「…で、あんたは何が言いたいのさ。」

「らんは白蓮さんの恋を成就させてやりたいてんこ!」

「…ハァ?」

らんの一言でてゐが呆れ顔になる。
その位、らんの言葉が突拍子も無く聞こえたのだ。

「…あんた、何を言ってるのさ?」

「…御代は、この最後の一つのいなり寿司で良いてんこ?」

「要るか。」

「何でたてんこ!これはちぇんがワザワザスーパーで半額セールを狙って買って来たいなり寿司だてんこ!」

「なおさらいるかぁ!何で私がそんなめんどくさいことしなくちゃ行けないのさ」

いなり寿司を押し付けてこようとするらんにてゐは大声で怒鳴りつけた。
そして、そのまま病室に戻ろうとするが、らんはそんなてゐの耳に噛み付いて引き止めようとする。

「アイダダダ!何処に噛み付いてるのさ!」

「お願いだてんこ~!ほんの少しだけ白蓮さんの後押しをしてくれるだけでも良いからさ!」

「わかった!わかったから!離せ!HA☆NA☆SE!」

らんのしつこさに負けて、しぶしぶ承諾してしまったてゐであった。


~☆~


「白蓮さん、アンタてるよの事が好きなんでしょ?一発誘ってやっちゃえよ!」

「え!?や、やる!?」

てゐにいきなりそう言われて白蓮は思わず赤面してしまった。
「ストレート過ぎるてんこぉ!」

ドガアッ!

「ぐはあっ!?」

らんはてゐの背後から高速回転体当たりをぶちかました!
そのまま前のめりで倒れこむてゐ。
いきなりの展開に、白蓮は呆然とその場に立ち尽くしていた。

「あ、あの…。」

10秒ほどしてわれに返った白蓮はてゐ達に話しかけた。
てゐの上に乗っていたらんは白蓮の方へと振り向いてこう言い放った。

「白蓮さん!ひめた思いは解き放った方が良いてんこ!」

「え!?」

「テルヨフは明日にも退院するてんこ!そうなったらもうチャンスは…!」

テルヨフが退院してしまえば、お見舞い目的で病院を訪れていたかぐやももう病院に来なくなる。
そうなってしまえば、チャンスはもう無い。
白蓮はらんの言葉に少々戸惑っていたが…やがて、俯き加減にこう言った。

「…いいんです。」

「え?」

「あの人と私は住んでいる世界が違います…私の思いなんて、あの人は知らないほうが良いんですよ。」

「そ、そんな事は…!」

「私の事は気にしないで、あなた達はあなた達の身体に気をかけてください。」

それだけ言うと、白蓮はその場を去って行った。
「奥ゆかしい子だねぇ、いまどき珍しいよ、あんな初心なゆっくりは。」
らんの下敷きになったまま、てゐはそう呟く。
一方のらんは、何かギリギリと歯軋りしていた。

「これで良いわけないてんこ…こうなったら何が何でも白蓮さんの恋を成就させてやるてんこ!」

「…あんたさぁ、何でそんなにあの白蓮ってゆっくりを気にかけているわけ?」

てゐは呆れた顔でらんにそう問いかける。
らんの答えはこうだった。

「…こんな駄目ならんの精一杯の恩返し、じゃ駄目だてんこ?」

その答えをきいて、てゐはふっ、と思わず鼻で笑ってしまった。
馬鹿みたいに真っ直ぐな目で、そんな答えを言ってのけたらんに。
てゐは背伸びして乗っかっていたらんを下ろすと、らんに向かってこう言った。

「あの子の性格から考えて自分から動こうと思わない限り、何をやっても無駄だと思うよ。」

「…え?どういう事だてんこ?」

「動かすなら相手の方を動かせば良いんだよ。」

「?らんたちであのゆっくりに白蓮さんの思いを伝えれば良いって事だてんこ?」

「そうじゃ無いって、まぁ見ててよ。」

てゐはそう言っていつもどおりの怪しい笑みを浮かべた。

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最終更新:2009年10月29日 16:13