ダークネス マンティス ファイターズ

※前半少し鬱気味なので多少注意です


 ごろごろと無様に転がり、壁に全身を打ち付けたが、不思議と痛みは無かった。
 臆する事無く、自分をこんな暗い部屋に押し込んだ人間達を睨みつけて何かを言いたかったが、
早くも、重そうな扉は閉ざされていた。

 「出して!!!」

 それでも諦めず――――全身を使って扉を叩いたが、不自然なほど強固な造りで、声が外に
届いているのかも怪しい。

 「出して!出してよ! ここから出して!!! こんな所にとじこめるなんてどういうつもり!!?」

 恐怖を紛らわすためだった。
 自分自身の身に起こった出来事の整理がついていないのに、こんな密室に監禁されたのでは、
本格的に気が狂ってしまう。
 ただただ、抵抗する事は正気を保つためのなけなしの手段だった。
 叫び続け、全身も流石にだるくなった所で、一息ついてしまうと―――――この暗い部屋の奥に
―――――先客が居る事にきがついた。

 「そんな事をしても無駄だよ!!!」

 はっきりとは見えないが、寝そべった頭に何か孤を描くような突起物が、鼠のディフォルメの様に
付着され――――いや、頭しかない。 手足も、胴も無い。
 人間の頭にしては不自然に丸っこく、やや大きめなものが、隅の寝台に横たわっている。

 「そのドアはどんなに抗っても開かないし、破壊はできないよ」
 「??」
 「Code NO;052 Mei-lingと、Code NO;022 Utuhoだけが、一度穴を開けたことがあってけど、ここは
  核シェルター並の造りだよ。君の力じゃ無理だ」

 「Yukkuri」だった。

 そう――――数年前から突如として、都市部を中心に、全国に出没し始めた、全く謎の生物の一群。
いや、生物かどうかも怪しい。普段は名称どおり、ゆっくりしている割に、接近すると異様な速さで
逃げるため、捕獲に成功した例が無いのだ。
 何か愛嬌と同時に、小憎たらしさをたたえた笑顔を浮かべた、一抱えほどのアジア系(中には
西洋人の顔もある)の少女の生首が、ただただいたるところに漂い、横たわっているだけで、何も
行わない。
 発せられる言葉は、たった一言。 ――――【Yukkuri site ittene!!!】
 種類は今の所確認されているのは全72種。
 おそらく―――――この部屋で横たわっている「Yukkuri」は、「Nazurin」と呼ばれる、鼠のような
耳と尻尾を持った奴だろう。
 特に、というか人間に対しての危害は全く無いため、ほぼ日常の風景として、人間には受け入れられ
てしまった感があったのだが・・・・・・

 ここまで近くで見ること、こうして「Yukkuri site ittene」以外の言語を発するのを見たのは初めてだった。

 「あなた・・・・・・『Yukkuri』?」
 「――――おかしな事を言うね。ここに連れてこられたんだ。そろそろ現実を受け入れたらどうだい?」

 脳天に冷たい針金を突き刺されたような衝撃が走る。
 そうなのだ―――――こんな身近に、「yukkuri」と接するのは初めてではない。
 正確に言うと――――――


 朝、目が覚めると、自分自身が「Yukkuri」になっていたからだ。


 正気を保っているのが不思議なほどの、恐ろしい現実が再び襲い掛かる。
 この部屋から出られたところで、この信じられない自分の体は、元には戻らないだろう。

 ベットの中で、頭だけの生物になっている事に気がつき――――絶叫していると両親がやって来て、同じく呆然と
立ち尽くしていると、程なくして―――――警察がやってきた。
 有無を言わさず連れられた。
 何故、あんなにも良いタイミングで、手早く機動部隊までやってきたのか、よく解らないが、徐々に見えてきた。
 ゆっくりの増殖と共に、不気味な数のデータがあった。
 鼠か何かに例えられるほど、周辺で増え続ける「Yukkuri」と共に、年間の行方不明者が、尋常ではない勢いで
増加して言ったのだ。
 対象は、主に10代の少女から、40手前まで幅広い年代層の女性と、何故か20代前後の男性のみ。
 それ以外共通点は無し。
 勿論、正体不明の「Yukkuri」との関連性を立証できる者などいなかったが、当然噂話には登る。


 「失踪した連中は、『Yukkuri』に変身してしまったのだ」
 「何者かがばらまく『Yukkuri電波』(ウイルス説もある)が、特定の人間を『Yukkuri』に変えている」
 「政府はその事を知っている。というか、政府が黒幕であり、『Yukkuri』を密かに回収している」
 「宇宙人の工作である」


 見透かしたように、「Nazurin」は言った。

 「色々噂もあるけど、かなりいい線を言っているものがある。実際、私もここに来る前は、ジェームズクック大学の
  3年生だった」
 「じゃあ・・・・・・・・・・」
 「政府が裏で動いているのは、この状況を見れば解るだろう――――論より証拠。壁を見なさい」

 暗かった部屋が突然明るくなったかと思ったら、横側の壁が開き、そこには大型のスクリーンがはめ込まれていた。

 「向こうからの連絡は、これを通じて行われるよ」
 「ずっと・・・・・・出られないの?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 画面に映し出されたのは、砂漠。写真で何度か見た、ディサポイントメント湖も見える。ギブソン砂漠か。
 砂漠だから、当然見晴らしは良い。
 湖がなかったら、他と区別などつかないはずだ。
 だから―――――そこに駐留している、軍隊が殊更異様に見えた。
 更に、それらが包囲しているもの―――――は、「歪み」だった。
 空間にできている。
 見えない壁があって、そこがひび割れているかの様。

 「――――ワームホー・・・・・ル?」
 「詳しいね。いや、SF脳か?とにかくその通りだよ」
 「これは・・・・・・なんのSFX・・・・・・?」
 「そんな訳あるか・・・・・・・・」

 「Nazurin」の声は寂しげだった。

 「現実だよ、何もかも」

 カメラは、その「歪み」にズームインしていく。
 そして、その内側が僅かだが映った。


 「う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 首だけでそのまま転がり、胴も無いのに、軽く嘔吐した。
 それほど、映像は衝撃的だった。

 「何・・・・・・・・・・・・・・・・?あいつら・・・・・?」
 「宇宙人か、はたまた異次元人か・・・・・・・・そんな事はあまり関係ない。確実にいえるのは、人類史上
  最悪の敵って事だろう」

 想像を絶する醜悪な怪物・・・・・部分部分は人間や現実の動物に近いものがあるが、その構成、配置、
大きさ、全てが見ただけで生理的な嫌悪感を抱かせる、信じられないほど不気味な生物達が、そこにいた。
 今までに見ただけで嘔吐しかけたのは、TVで見た風呂桶一杯のゴキブリの群れだったが、あれはまだ
本当に吐くには至らなかった。
 目だけは、人間と同じものが無数についていたが、そこにこめられているのは、痺れるような憎悪。一点
それだけで、人が殺せそうな怨念

 「今は、あのワームホールは開ききっていない。ただ――――少しずつでは歩けど、確実に広がっているんだ。
  止める手段は勿論無い。あのワームホールの仕組み自体が解明されていないからね」
 「それと『Yukkuri』と何の関係が・・・・・?」
 「戦うためさ!」

 こちらに背を向けたまま、「Nazurin」は立ち上がった。


 「ここは―――――あの次元を超えてやってくる怪物と、戦うための戦士を養成するための場所なんだよ!!!」
 「冗談じゃない!!!」


 突然自分が異形の存在に変えられた事だけでも絶望しているのに、拉致監禁され、おまけにあんな恐ろしい
存在と闘わされる!? 馬鹿げている

 「私だって最初はそう思ったさ!!!でも、仕方が無いんだ!!! あいつらと闘えるのは、私たちしかない!!!」
 「――――何で・・・・・・私達が・・・・・・・・・・・・?」
 「今まで、ただただゆっくりするだけの『Yukkuri』達を散々見てきただろう?彼女等は、ゆっくりするばかりで、人間だった
  頃の自我はどこかになくなってしまうんだ」
 「それは・・・・・・そうだろうけど・・・・・・・・・・・

 だが、自分達は違う。

 「私達は選ばれた存在なんだよ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 「あのワームホールと、『ゆっくり電波』だか、『ゆっくりウイルス』だかがどう繋がっているのか  は解らないけど、これは
  人類に課せられた試練なんだ」

 自我が残されているからか?
 しかし、それだけでは・・・・・・・・・・

 「だから、現実を受け入れるんだ ――――そう、 Code NO:005――――――」

 何となく、解る気がした。



 「『Rumia』!!!」



 金髪のおかっぱ頭と、 どこか無骨なリボン
 時折、夕暮れにふわふわと浮かんでいる事の多いゆっくりだ。

 「全72種類確認されている『Yukkuri』の内、各種に1体ずつ、変身前の記憶を残している個体が確認され、政府は
  その保護と研究にあたった」
 「その――――72体の内に、私もあなたも、この壁を壊したMei-lingやUtuhoも含まれている訳?」
 「私は最初期に発見されたみたいだった。まだ発見されていない奴もいると思うけど、ほぼ揃ってるわ」
 「でも・・・・・・闘うなんて・・・・・・・」

 元は、ただの女子高生だったのだ
 そうただ・・・・・・・・・

 「だから、現実を見るんだ。  ――――――解放するんだよ、 あなたの、 本当の能力を・・・・・・・・」

 本当の・・・・・・・

 「ここは、そのための施設だ。私も協力しよう。 でなければ、この世界が終わってしまう」

 能力・・・・・・・・・・

 ――――元々薄暗かった部屋が、また更に一気に暗くなった。
 まるで、闇の純度を高め、凝縮したかのよう。
 もう、「Nazurin」の姿も見えない。


 「私の能力・・・・・・・・・・・」
 「辺りが暗くなった・・・・・・・・・これが・・・・・・あたなの・・・・・・・・・・・・・・?」
 「――――本当の事言うと、気がついてた」


 中学に入る直前からだ。
 昼夜を問わず、自分の意志で、一定の自分の周囲に、光を完全に遮断してしまう能力があることに気がついたのだ。
それはまさに、「闇を操る程度の能力」

 そして――――


 「感じるんだ・・・・・・自分の中の『獣性』を・・・・・暗くなると、自分も周りがみえなくなるから使わないけど、時々押さえが
  きかなくなる、この衝動を・・・・・・・暴力性を、どこかで試したくて、仕方がなくなるの・・・・・・」
 「解るさ。ここに来る奴等は、皆そうした能力と、暴力性を秘めているんだ」
 「私は・・・・・・・・怖い!!!  いつか、この能力が暴走して、歯止めがきかなくなるんじゃないかって!!!」
 「だからこそ、その能力をあの化け物達にぶつけるんだよ!!!  きっと、その日のために授かった能力だと思うんだ!!!」


 こんな事は――――誰にも相談できなかった。
 彼女は、いや、「Rumia」は、初めて、ここに来て、涙を流した。
 こんな状況だったが、それは、安堵の涙だったのかもしれない


 「ありがとう・・・・・・・・・できるかどうか解らないけど・・・・・・・・私もできる限り闘ってみたい」
 「ああ・・・・・・・そうこないとね」
 「よろしくね、『Nazurin』」


 と――「Nazurin」の声色が軽く変わった


 「誰が、『Nazurin』だって? あいつと一緒にしないで欲しいね」
 「ち、違うの?すると、もしかして『Hina』?」
 「申し送れた――――私は」


 闇の中でも、はっきりと見えるほど、彼女は近づいてきた。


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  > 亜空の瘴気 Kamakiri-ko(仮)です! <
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  「・・・・・・・・え? 何・・・・・・?」



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      ( /'ヽ ヽ//ヽ  )       /::/ヽ:ヽ
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  /       r       人_/  _,ノ
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   | ノ (ヒ_]    ヒ_ン., '::::::::ヽ、//::/     >素手ゴロ上等 Code NO:070Kamakiri-ko(仮)です!<
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  (  人   ヽ _ン  ‐'´::::::::::::::;//::/\‐-、
   ''''ヽ >.. ..,_ラ ':::::::::::::::: ;∠/::/ \_}  ゙ヽ
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  腕が生えた・・・・・・
  暗くてよく見えないが、おそらく胴体も・・・・・・・・
  てか、(仮) って何だ?


 「あ、あなたは何の能力を・・・・?」
 「私は、論より証拠。ここでなら存分に発揮できる」







          __               ,....-─-、
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      ヽ::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::/
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     /       r       人::::::::::::::::::::::::,,'i:::::::::::::∠く
     ノヽノ__ノ-;ノ人ハ__/_」_ヽ_ヽ___::::::::::::::::::,,-''゙ |:::::::: l
      | ノrr=-,:::::::::::r=;ァ )Y! (' ::::::,,-''゙   ,!::::,/) ./
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     (  人   ヽ _ン   / |   )::\ ゙ヽ:::::  /
      ''''ヽ >.. ..,____,,,.. .イ/ノ / /,///.イ   
       ,!            ,   |ヾ''\
         {  i       / ノ-=ニ|/ /
       },,,,}       〉,,,}   |' <゙
       !、        ,   //
        ヽ、      (  .ノ゙~
        f゙' ,,‐~ー-- f゙ i゙~
        ~''゙       '゙'゙'~

  「な、なんておそろしい!!! しかも耳が変わって『Nazurin』に変身を・・・・あくまで『Nazurin』に!!!」
  「でも、この場合カマキリって部分ドコに行くんだろうね?」
  「自分で言わないでくださいよ・・・・・・・」
  「あと、『ホームヘルパー2級を取得できる程度の能力』とか持ってる奴がいる」




 その後

 ワームホールから這い出してきた宇宙人とは、交渉の結果、月面にて麻雀対決でけりをつけることになり、
Code NO:028;Kene と、Code NO:048;Remiria Code NO:016;Yukari が何とかしてくれました。

 闘い終わったら、何か人間に皆戻っていました



  • 小泉元総理はゆっくり化して麻雀を打ったんだろうか? -- 名無しさん (2009-11-01 12:30:05)
  • 前半のシリアスと中盤の突き放される感じとラストの投げやりっぷりの起伏にワロタw -- 名無しさん (2009-11-01 13:33:23)
  • カマキリ子懐かしいなw -- 名無しさん (2009-11-01 14:52:16)
  • 凄いシリアスで捲し立てて、最後気持ちいいくらい分投げるなww主人公役に立ってないじゃないですかw -- 名無しさん (2009-11-01 16:37:38)
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最終更新:2009年11月01日 16:37