秋。
それは夏の蒸し暑さを乗り越えた先にある、涼しさという快楽を貪ることが出来る魅惑の季節。
読書の秋、食欲の秋、芸術の秋、そしてスポーツの秋。あらゆる楽しみが待っている素晴らしい季節。
楽しいことが大好きなゆっくり達も秋の恵みを十分に満喫せんとはしゃぎまわります。
今日はゆっくり達がみんなでほのぼの仲良く遊ぼうとスポーツ大会が開かれることになりました。
~ゆっくりのぽこぽこスポーツ大会~
ズドドドドドドドドドドドドド!
ビュー! ビュー!
「いや~絶好のスポーツ日和だね~まりさ~」
「そうだね~れいむ~(棒読み)」
ビシャアアア! ズババババババババババ!! ビュゥゥゥゥゥゥゥ!!
ゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオ!!
「よ~し頑張って優勝して、賞金かっさらっちゃうぞ」
「れいむすっご~い(棒読み)」
たすけてぇぇぇぇぇ!! かぜがあああああ!! とばされるぅぅぅぅ!
だれかわたしのからだをさがしてきてください~!!
「ところで何でわたしが天則やると体力ギリギリで逃げ回ってるときに限って台風になるのかな? ガードできねぇっての」
「日頃の行いが悪いんだろうね~(棒読み)」
台風。
それは秋の風物詩のひとつ。
学校を休みにして中高生に感謝される一方、
大学を休講にして単位を危うくするために大学生からは疎まれるこの自然現象。
なによりも秋におけるイベントの天敵です。
この日、れいむとまりさがゆっくりスポーツ大会に参加しようと意気込んで、
どうせ台風は途中で温帯低気圧に変わるだろうと楽観して会場へむかったところ、着いた途端に生憎の台風直撃。
勢力を保ったままの台風が速度を速めた結果がこれでした。
せっかく楽しみにしていたスポーツ大会なのにどうしようと、
れいむとまりさをはじめとするゆっくり達は体育館に避難して、外の悪天候を見て途方に暮れています。
「え~生憎の悪天候ですが、スポーツ大会は行ないます。ゆっくりしていってね~」
そんなゆっくり達に希望の光を照らすように、体育館内でアナウンスが流れました。
SofTalkボイスは淡々と状況を説明していきます。
「けれどもスペースの関係で一競技しか行なえません。残念ですが、そこは天候の都合なのでご了承下さい。ごめんね~」
観衆がざわめきます。
「そのかわり~全ての競技の賞金を一競技にまとめる事にしました~」
ゆ~と歓声があがります。
ひとつひとつの競技の賞金、それらが一まとめになるということは一攫千金のチャンス。
ゆっくり達の目が期待に輝きます。
「面白そうじゃん。まりさも参加してみたら?」
「ん~、いいかも。スポーツ苦手だけど大会に参加してみよっかな~」
「そういえばまりさは普段、スポーツは見る派なんだよね」
れいむが確かめるように声をかけます。
「うん。わたしはどっちかっていうと見るほうが好きかな。むしろスポーツ観戦が趣味のひとつなのかも、テレビでやってたらよく見るし。まぁ、ミーハーだなってことは自覚してるけど……」
「へ~、まりさってわたしと同じだね
※ スポーツ観戦 生活の掛かっている選手達に向かって酒を呑みゲラゲラ笑いながら高みの見物を決め込むこと
」
「そんなに下卑た趣味じゃないよ! 言い方が悪すぎだって!」
「スポーツ観戦って楽しいよね、特に野球。乱闘の瞬間やら最終回で逆転された投手の落ち込みっぷりやら」
「野球はそんな楽しみ方をするスポーツじゃない! あやまれ! 野球選手にあやまれ!」
「特に
高校野球が好きなんだ~。ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」
「れいむが言うと嫌な意味にしか聞こえないよ!」
「ひとりはみんなのために♪ みんなはひとりのために♪ ひとりのために♪ ひとりのために♪ 甲子園の土を持ち帰り~~――」
「一生モノのトラウマだよ!」
※甲子園 お土産は土。ご飯に振り掛けて食べるとうまい。
「話を戻すよ! いい! わたしは練習でたくさん努力して、応援してくれるゆっくり達の声に応えようと、試合で苦しさに耐えて頑張るゆっくりの姿を見るのが好きなだけだよ!」
「わたしもそれ~。練習でたくさん努力して、応援してくれるゆっくり達の声に応えようと、
試合で苦しさに耐えて頑張るゆっくりの姿を見るのは好き」
「そうそう、それなんだよれいむ――」
「何よりも試合のとき酸欠やプレッシャーや肉弾戦で苦しんでいるゆっくりを見るのが好き。
要約するとゆっくりが苦しんでいる姿を見るのが好き」
「キミいっぺん死ねばいいと思うよ!?」
れいむとまりさがそんな言い争いを繰り広げているなか、アナウンスは淡々と流れ、
そしてついに賞金を賭けた激しい戦いが繰り広げられるであろう、運命の種目が告げられます。
「競技はゲートボールです。ゆっくりがんばっていってね~」
まりさは安心しました。ゲートボールみたいなほのぼのとした競技なら室内で楽しく出来る、と。
「体育館でやれよ! なんで室内で出来る競技を外でやるんだよ! 雨降ってんだよ!」
「しゃーないじゃんまりさ。体育館はゆっくり達でギッチリ一杯だから競技やるスペースないし」
れいむとまりさは体育館のすぐそばに造られたゲートボールコートの中にいます。
率直にいうと外です。台風真っ盛りです。雨です風ですついでに何故か雷です。
ヒートアップしたまりさは湯気を立てて怒り続けます。
「それにボールすら用意してないってどういうことだよ! 競技でゲートボールやるって決めてるんだったらちゃんとボールぐらい用意しろって!」
「まりさったらキャラ変わってるよ~。まぁいいじゃん。ボールの代わりはあるんだし」
「そのボールの代わりが問題なんだよ!」
ボール
↓
______
´> `ヽ、 i^ヽry/`ヽ'_
_,.'-=[><]=.,_ ,'` ⌒ ゙`ヽ
ヽi <レノλノ)レ〉 L(ノ八ノノLiン
ノレ§゚ ヮ゚ノiゝ l、゚ヮ.゚[i.llλ
叫ぶまりさと宥めるれいむ。いつものコンビですが、その姿は普段と異なりました。
れいむとまりさはいつもの人間の頭部程度の大きさではなく、ゲートボール大となっています。
5分前の出来事
_,,....,,_ _
-''":::::::::::::`''-、
ヽ::::::::::::::::::::::::::::ヽ
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7
_..,,,-":::::rー''7コ-‐'"´三三三三`ヽ/`7
`! r-'ァ'"´三三三三三三三三ヾ_ノ パカッ
!イ三三三三三三三三三,. - '
ゞー'´`ー--―'´ ̄`ー-‐'"
| | | | | | | | |
______
´> `ヽ、
_,.'-=[><]=.,_
ヽi <レノλノ)レ〉' どっこいしょっと
ノレ§゚ ヮ゚ノiゝ
;; -''''"" ̄""''''-;;;
/ ^ヾ:
:/ ,-‐ ; ', `ヽヾ,
i' ´/ /! ハ ハ ! i ',
i ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' 'i
`! !/レi' ( ) ( ) レ'i .ノ
,' ノ !'" ,___, "' i .レ'
ノノ ( ,ハ ヽ _ン 人!
( ,.ヘ ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ
/ ヽ__/ | . | ̄ ヽ_\ イ
ヽ- ー ̄ .|__ ___ よっこらせっと ,__ __| `ー ´ ` 、
./二ニ―-- . |´ | . | ̄`-ゝ 、| ヽ ノ、
.| /| lヽ _/|/\|=─- . | | | --―ニ二 ヽ |
.レl ノ/| ( _) | iゝ、イ人| i^ヽry/`ヽ'_ | ..-─= | |// _ル ヽイ | .|
ノイ . " " . | ( ) .| ,'` ⌒ ゙`ヽ' .|..レ/_ル| . ( ) .| |、..| ||
`ヽ_ 、_...|" ,___,..| | L(ノ八ノノLiン .| ( ).| | ." " 「 ..|.| .|
-ーィ,_ノ ヽ ...|. ヽ _ン| l、゚ヮ.゚[i.llλ .| "" 「 !.| . . 「_,ノ´|
\ ` ||ヽ、 .| | ..L |ヽノ . | | |
,ノ ヽ .| ル` ー ┘ ,イ| | ̄ └. ー"つ
レ ノレ` ー- ┘ └- ´ル | ,/|.| |.|イ.|
「何が悲しくてわざわざ自分の本体をボール代わりにしなきゃいけないんだよ!」
「これはゆっくりゲートボールなんだから気にしたら負けだよ」
「うるせー! 脱いだときおかしいと思ったよ!」
※ ゆっくりゲートボール。ゆっくりが自らの頭から小さい本体を分離して、外装となる残された大きい頭部を遠隔操作することでゲートボールを行なう、ゆっくりスポーツのひとつ。
「何よりもわたしとれいむしか出場選手がいないってどーゆーことだよ! こういうのは普通新たなライバルとか新キャラとかくるもんだろ!」
「だって、みんなお金に目が眩んでないんだよ。賞金をもらうためにがっつくよりもスポーツ観戦をゆっくりと楽しみたいんだよ。ほら、体育館の中見てみ」
.. 、⌒( `ヽ、 、 |
)) `ー' ヽ _))
/:::::::\ /:::::::\ ( (_-──-__,─'ノ ̄
:::/ ̄ヽヽ--──'ヽ' ̄\::\ / ゙、..} 二 {..,─'ヽ`ヽ、
ヽヽ/ / / \`\ |::::| l rr=-, r=;ァヽ )
> / / ヾ ヽ \.|::::| ノ ム___ゝ l (
.,' i | !" | i | |/ ( // _ノ ,,,,,,,,ヽ、ヽヽ ,) ヽ、
l |_L/r=;|ノ|人 r=;_L_|Vヾ ヽ\ 彡 ̄_ノ ヽ、 ̄ミ )
丶ハY( ヒ_] :::::::::::ヒ_ン) | )_) ', ( ´ ̄  ̄` ノ ヽ
ノ J八 ,__, ハ Y ( } `ー─ ---─---─ ' __)
,,. ' "´ ̄`"'' .レハ ヽ ヽ _ン <丶ノ 人( /::;ヽ `(__(___,-── '
. , '´ _,,-======-ノノj,ハ>., _ ,.<Lハ.iヽゝ |:::)''(:\ / _ l
:...r´ r´,、 i´ `ヽ、 、<´ ,,.ィ''i ̄ ̄ノ 7 「:\)\:::\ ....|::/,,, ):::::ヽ/  ̄`Y´ ヾ;/ |
:ノi レ'-ルi λ ,-i-ノi/ _ l 」) )/"""""ヽ ヽ::::::::) | | |´ ハ
レi ,.イ:::r=;,レ::::::V::r;=;、/  ̄`Y´ ヾ;/ | );;./ 「:\( | | |- 'i::::...
.i i イ::!ヒ_,!::::::::::::::ヒ_,! !| | |´ ハ / r ヽ:::::{:::}: ,r':: ;::---:::::::::、:::::::::::::ヽ:::::..
イ!/i ,___, i| | |-‐'i′l r .. /人...人ノ、__ノノノ| /(:: ,イ:::,r':::::::::::::::::::::(:::::::::::::ヽヘ::::..
ノ i iヽ、 ヽ _ン ,.イ i ゝ'i ヽノ人__ノr=;,レ::::::V::r;=;、ノ| (:: .{::::::| :::::人:::::::ト:::,ヽ::::!、:::Y:::::',::::...
..〈/レル`' ー,--,.'´ ルレVノ〉 ヽノノ !ヒ_,!::::::::::::::ヒ_,! !オリ ,'(:ン r(ゝ:::((ノ,r=;,ヽノ_ノ.r;=;、\::゙i):::):::::....
. / _ l ( ::| " ,___ 7)ノ (:: 「',::::::リ. ! ヒ_,!:::::::::::ヒ_,! ) )::!::、::人:::....
::::../  ̄`Y´ ヾ;/ | ( ::人 ヽ _ン // (:: ):). (:(_''' ,___, '''_人: )( : :):::::..
::::.| | |´ ハ ( ::) >.、_ ,.イ/ (:: ( ハ:ゝ ) ヽ _ン ( `(_ (:::::...
:::...| | |-‐'i′l .... ( ::) <´ ,,.ィ''i ̄ ̄ノ 7 「:\ (:: ノ .) ( >.., ______ ._イ):( ) ヽ::::...
. / _ l 〈/レル/レ/´:i:::::::::::::: l |レノルレノVルノ:ノ
/  ̄`Y´ ヾ;/ | / _ l
| | |´ ハ ::::../  ̄`Y´ ヾ;/ |
| | |-‐'i′l ::::.| | |´ ハ
:::...| | |-‐'i′l
※ スポーツ観戦 生活の掛かっている選手達に向かってゲラゲラ笑い酒を呑みながら高みの見物を決め込むこと
「お金以上にマズイもので目が眩んでるよ! 東京湾よりも濁ってるよ!
まるでカ○ジの鉄骨渡りを見物している金持ち達のような目してるよ!」
「そんなことないよ~。純粋に選手達のことを応援してるんだよ~。声援を送ってくれるよきっと~みんな死ねばいいのに」
「ちょっ、れいむも本音出てるよ! 本音! …………ねぇれいむ、そういうキミもスポーツ観戦が好きなんでしょ? なのになんで高みの見物をしないのさ?」
「いや、この大会に勝たないと今月の生活費ないから」
「何臨時収入を目当てに生活費使ってるのさ!?」
「しょうがないじゃん。どうしても欲しいものがあったんだよ」
れいむはしれっと答えます。
「何に使った!? 答えによっては友達としてシバくぞ!」
「エロ同人とアニメDVDだよ! 文句あるか!」
「大アリだぁ!」
もちもち、ぷにぷに。
れいむとまりさの激しい肉弾戦が始まりました。
「なによりもれいむ! 何でわたしを勝手にエントリーしたんだよ! キャンセル出来ないんだよ!」
「だって誰も参加しないと大会自体、賞金自体無かったことになるじゃん。それにわたしだけ台風の中試合やるのって嫌だし、まりさも道連れだよ」
「よしそのケンカ買った! こうなったら絶対に負けてやんないから! これに懲りたらその能天気な頭に餡子の代わりに味噌でも詰め込むんだね!」
怒っているまりさはれいむにキツイ返事をします。
そして「味噌」の一言はれいむにとってスィッチでした。
「……そんな言い方はないんじゃないかなぁ、まりさ。わたしの頭の中に文句があるとはいい度胸してるじゃん」
「なにさ、本当にことなのに。その甘い餡子をほじくって、代わりに塩辛い味噌でも入れて真ゆっくりにでもなるんだね」
外装をパージして、互いに向き出しの本体となったれいむとまりさ、
そして気質は台風、それはガチンコの殴り合いを象徴する気象。
「(ブチッ)ねぇまりさ、ちょっと泣かせてもいいかな?」
「(プチッ)いいねぇれいむ、久々にリアルファイトといこうか。もちろん泣くのはキミだけどね」
両者共に構え、気合を入れ――
「ゆ~!」
「ゆゆ~!」
互いにむっちりと頬を寄せ合い――
「ゆっゆ~! ゆっくり~!」
「ゆぅぅ~! ゆっくり~!」
あとはもはや肉体言語で語り合うのみ!
「 「 おーしくーらまんじゅう♪ おっされーてなっくな♪―― 」 」
「 「 ン゛ギモ゛ッ゛ヂイ゛イ゛ィ゛! 」 」
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'' -、
/ .. ----------- ヽ .
ノ /'' '' -、 )\ ..
/ / \ \ ..|
/ / ''ヽ ヽ ..|
{ / , } | . 丁度都合よく身体落ちてたし使うね
} .' ..{ { .
ボール{ | __ _____ ______ ! ┌─────┐
(本体) { ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 } j│ │.
↓, { { _ 'r ´ ヽ、ン ,' ,'/└─────┘:
r, __,`ィ-r、'__-イ、.、,_/,'==─- -─==', i' ,." /::/
(,'イゝ、イ^ル/ルン .' -{.i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i ,.' /::/
レii (ヒ],_,ヒン) ||i、 ( レリイi ( ) ( ).| .|、i .|,.' ./::/
L! " ヽ_ン " []ノ i ノ >!Y!"" ,___, "" 「 !ノ i /::/ .
レヽ、___,,,''レル'j ノi:L.',. ヽ _ン L」 ノ| /::/ ...
[__|_|/〉iァ- {..___|_ / | ||ヽ、 ,イ| ||イ| ./::/ : ,ヽ./{ }ヽノヽ :
. [ニニ〉 ,j ! ` レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ /::/ : ノ ノ ヽ / ) } , :
└―' !| '., \ ヽ、_ン´ゝー、l /::/ : 'ヽi ')ヽ oOoノ /{ V } :
!i . !| .λ .ト `{>・<}イ i /::/ : ) ''V 'o. '''' .oノ ノ ノ : 私の体返して……
'トーイl ノヽ、,ト_ノ. /ハゝ ヽ l/´`ヾ : ,>-' '-/ヽ__ノ.-:''::ヽ'ヽ :
ヽ ,.'"ヽ.,__ !.__ゝ,.___ノ 、.___ノィーゝ、__,ハ, : /..-''':r ';' { . ' 'ヽ. :
`ー---'" `'〉ニニニ≫◎≪i /::/ ,イ! : 、_/.::'' r '{::{ \::ヽ ':. ヽ ヽ {ヽ :
.,.「二二二二二コ、 /::イ !,' : ' -{./ /:: 人::::ヽ ヽ::ヽヽヽ:} } (::':ノ :
.ノ --- __,ノ ノ--ヽ /::/ . ̄イ : ノ( (:(::( ノ )ノ '')/ ''\:、ノ: ノ: 入 :
4- ___ --/ /- -ヽ:/-ー'´ : ノノ>)::i ( >//////< )ノ.:) < :
くニニ二二二´人二二二ゝ. : ノノi:|' | | ,___, | |"'|:ノ入 ) :
/ ヽ : )/'人.| | 'ー⌒ー' | | イノV '' :
: ノ>.、____ ,. イヽ :
「なじむ 実に! なじむぞ フハハハハハ フフフフ フハフハフハフハ」
さぁ茶番も終わったことですし、気を取り直してゲートボールの開始です。
幸いにも使われていないゆっくり用の胴体があったので拝借し、
れいむとまりさが交互に使用することになりました。
【ゲートボールのルール】
① 縦20m横25mのコートに第1、第2、第3の3つのゲートがあります
② ボールを打って、これら3つのゲートを決められた方向からくぐらせた後、指定のゴールポールに当てるとあがりです
※このほかに1チームの指定人数や点数制や制限時間などの細かいルールがありますが、今回はタイマンなので除外します。
「よ~し、いっくぞ~♪ ゆっ!」
れいむはスティックを振りかぶってボール(れいむ本体)を叩き、
ペコンと柔らかい音がして、ボールは第1ゲート目掛けて転がっていきました。
「ころころころ~」
ボールとなって転がっている小さいれいむはどことなく楽しそうです。
大雨で水だらけになったコートで、濡れる事を楽しむかのようにキャッキャと騒ぎます。
サイズが小さくなって泥だらけになることにより、童心に帰ったのでしょうか。
「ゆっくりくぐるよ!」
れいむはそのまま第1ゲートを通過。
転がり終わったれいむはまりさにふふんと挑戦的な目を向けます。
「うわ……すっげぇシバきてぇ……小さくなって頭の中身まで小さくなったのかな……」
対するまりさはどこかやさぐれています。
ブツブツと小言を言いながらスティックを勢いよく振りかぶって、そしてボール(まりさ本体)を叩きます。
ぷにっと柔らかい音がして、ボールは第1ゲート目掛けて転がっていきました。
「ころころころ~――ゆっくりくぐるよ!」
れいむ、まりさ共に第1ゲートを通過。
ここまではイーブンです。故にまりさは思います。
『これは先にミスをしたほうが負けだ。だから自分は絶対にミスがないようにしなきゃ』
口を真一文字に結びながらそんなことを考えていると、先行であるれいむの様子がおかしいです。
れいむ(体)は第2ゲートではなく、まりさ(ボール)の方目掛けてれいむ(ボール)を転がしてきました。
ぺこんっ――――ぷにっ
「いてっ、何をするのされいむ? 喧嘩売ってるの?」
れいむ(ボール)がまりさ(ボール)に当りました。まりさがれいむの突然の行動に驚きます。
だがしかしその一方でまりさは『試合中にしょうもないことをして一打無駄にしたよこの饅頭顔。これはもう勝ったなゆっゆっゆ~♪』と黒い笑みを浮かべました。
対するれいむはいたって冷静です。
「よし、スパークショットだ」
「すぱーくしょっと?」
聞き慣れない単語にまりさは口を半開きにして、頭の上にクエスチョンマークを浮かび上がらせきょとんとしてます。
けれどもれいむはそんなまりさを無視して、自らのボールをまりさのボールに密着させました。
そして何を思ったか、その二つのボール(本体)を足の裏で抑えます。
「むぎゅっ! れいむなんでいきなり踏んづけてくるのさ!?」
「だからスパークショットだよ」
「だからなんだよそれ!」
③打ったボールが、コート上の他のボールに接触すると、そのボールに対して【スパークショット】
が行なえます。
「初めて知ったよそんなルール! それでそのスパークショットって何だよ!」
④【スパークショット】とは要するに打者のボールで接触したボールを弾くようにして自分の好きな方向に撃てるというルールです。
「へっ?」
⑤このばあいは打者のボール(れいむ)とぶつかった相手のボール(まりさ)を密着させ、二つとも足のうらで踏んで――
「ねぇれいむ、ちょっとなにしてんのなんでふりかぶってるのまてまてやめていやマジで――」
⑥思いっきり弾き飛ばします。
「ゆっくりしね!」
「くらっか!?」
メメタァ!
れいむはボール(れいむ)に思いっきりスティックを叩き込み、その衝撃によって隣接しているボール(まりさ)は奇声を上げて吹き飛びました。
「わたしの体で何をしてるんですかあああああああああああ!!」と外野が五月蝿いですが当然無視します。
そう、このスパークショット。自分の接触したボールであれば、敵味方を問わず好きな方向に打てます。
味方のボールは有利な位置に、敵のボールは不利な位置に打てるのです。
邪魔な敵チームのボールを外野までブチまけても「合法」です
「いや~、やっぱゲートボールっていったらこれでしょ、スパークショット♪」
れいむはスティックによる打撃を直接受けたのにピンピンしています。
それは例えるなら波紋をまとった打撃を受けたカエルのような、
ラムダド○イバをまとった打撃を受けた人質のような、
斬岩剣二○太刀を受けた○太郎のような、無傷そのものです。
スティックがボール(れいむ)のスゥイートスポットを完全に捉えていたため、衝撃は全てまりさに叩き込まれました。これぞまさしくライジングインパクト。
対するまりさは衝撃で餡子を口から血飛沫のように飛び散らせて呪詛の言葉を吐いています。
「ゆ゛っ……ゆ゛っ…………れいむ……よくも……」
「チッ、生きてやがる」
さぁルールが突然血生臭くなってきました。
良心? 何それおいしいの? ゲートボールの世界は非情なんです。
そんな砂糖をまぶした餡子のような甘さを捨てられないおこちゃまにはゲートボールはできません。
実際れいむはこの戦法を一瞬のためらいも無く使ってきました。
そう、皆さんのおじいちゃんおばあちゃんは虫も殺さないような人畜無害な笑顔の裏でこんな恐ろしいスポーツをやっていたのです。
例えば幻想郷にお住まいの小学生である橙ちゃん(6歳仮名)は
「ゆかりおば~ちゃん、きょうもげーとぼーるがんばってきてね」
と休日の朝に笑顔で家族を見送りますが、その紫おばあちゃん(17歳仮名)は
「ギャッヒャッヒャ!! 弾き飛ばしてくれるわ死にぞこないのBA・BA・A共が! ケ~ケッケッケ!」と藤田和○郎漫画の悪役のような笑顔で高笑いしながら、永琳おばあちゃん(17歳仮名)や、
神奈子おばあちゃん(17歳仮名)とゲートボールという骨肉の争いを日々繰り広げているのです。
ゲートボール場。それは老獪さと残酷さを併せ持つ歴戦の兵士が集う決戦場。
伊達に戦争でメリケン戦闘機共を竹やりで叩き落して生き延びていません。
脱線しかかりましたが場面を戻し、今度はまりさの番です。
「………………」
すっかりコートの外にとびだしてしまい、泥だらけになってしまったまりさ。
無言で佇みながらみすぼらしい姿をしていますが、けれどもその双眸はギラギラと不気味に光っています。
まりさの頭の中は一つの考えで支配されていました。
『こっちもやり返せばいいんだ』
ゲートボールの醍醐味、それは憎しみの連鎖。
れいむとの距離は大分開いているため、
まりさがスパークショットを行なうためにはれいむにボールを当てなければなりません。
天候は台風。コートは水溜りでボールが動かない状態。大雨で視界は最悪。
それでもまりさは外す気がしませんでした
先ほどの一撃に対する恨み。それをやり返すためには死んでも死にきれません。
ぺこんっ――――ぷにっ
「YUUUUUUUUUUU!!」
まりさが吼えました。念でれいむのボールに自らのボールを当てたのです。
そして得るのはスパークショットという死刑執行権のチャンス。
まりさの顔が邪悪に歪みます。
まりさのボールはれいむのボールに密着して、足の裏で両者(本体)を踏み、大きくスティックを振りかぶります。
そう、今こそ天誅を下すとき。
「勝った! 死ねぇっ!」
「あすとろん」
カキーン
「………………………………………………………………」
「おぉこわいこわい」
「…………あぁそうか、そういうことか。わかったよれいむ」
まりさはれいむが何故自分の体をボール代わりにすることを嫌がらなかったのかわかりました。
そう、れいむは昔懐かしのネタあすとろんを、ゆっくりの体を鋼鉄に変える技を習得していたのです。
そのためゲートボールで自らをボールにすることなど全く苦にならないのです。
スパークショットが効かないのです。
「…………死ねばいいのに」
「おっけ~……やってやる、やってやるよ……こうなりゃもうヤケだよ……鉄だろうがダイヤモンドだろうが砕いてやる…………」
それから先は死闘でした。
ぷに
ゴスッ!
カキーン
メメタァ!
ぷにっ
ぺこん
カキッ……
ぷにっ
ぺこん
メメタァ!
ガキッ
両者のスパークショットの応酬によって、段々ゲートから遠ざかっていきます。
最初こそあすとろんが使えるれいむが優勢でしたが、まりさのその覇気とも言える気迫が次第にれいむの鋼鉄の体にダメージを与え始めました。
だがしかしそれでもれいむは怯えず、それどころかニヤリと好戦的な笑みを浮かべます。
その笑みには相手の実力を称える意味合いがあったことですが、れいむ自身としても無意識によるものでした。
そしてそれを見て同じく笑うまりさ。その心情はれいむと同じです。
互いの体はもうとっくに泥にまみれの傷だらけ、満身創痍なその姿は汚らしいはずなのに、見るもの全てにどこか気高い美しさを感じさせます。
両者にあるのは絶対に負けられない。勝利の二文字以外は何も要らない。
ただひたすらに勝ちたい。そんな想いです。
まりさは悠久に続く戦いの中、れいむへの憎しみが段々薄れていくのを感じました。
確かにれいむは外道ですが、全力を尽くして戦ってくるその心意気があります。
そんなれいむには一つの信念がありました。
何をしてでも勝つ。
その姿勢は時には卑怯者の烙印を押されるかもしれません。
ですが待ってください、必死に戦う選手を前に「負けてもいいや」という気持ちで手を抜いて戦うことこそが侮辱なのではないでしょうか。
そしてれいむは「何をしてでも」とは言っても、決してまりさが全力を発揮できないようにする類の外道な手はつかっていません。
よく一流の選手が「いい試合をしようと頑張ります」という言葉を言うことがあります。
それは勝てない試合に対する保険ではありません。
いい試合をするということはその選手ひとりでは、あるいは片方のチームのみでは決して不可能。
戦う相手が全てを解き放って向かってこないと、一方的なつまらない試合で終わってしまうのです。
そのような勝利よりも、互いに全てを出し切った接戦そのものの方が選手達にとって時には価値を見出される場合もあるのです。
そういった意味ではまりさはれいむに感謝の気持ちを持ちつつあります。
対するれいむも、元々は賞金が手に入ったらまりさにご飯でもおごってあげようかと思っていたのに「味噌」の一言に怒ったがために気が付いたら喧嘩し、気まずさのあまりヤケッパチになってしまったのですが、今となってはそんなことすっかりどうでもよくなりました。
両者は今はひたすら、生涯に数えるほどしかないような、自らの全てを出し切れる試合を存分に楽しむことのみを考えています。
そんな歯を食いしばって戦う選手達の姿を、体育館から見ている観客達はビール片手に固唾を飲んで見守ってました。
延々と続く肉弾戦の中、いつしかまりさは目覚めます。
スパークショットの際、れいむからカップへ繋がる白銀のライン、シャイニングロードを。
そのときのまりさには、パットの神が宿っていました。
カコーン!
「やったああああああああ! 入ったアアアアアアア!」
おめでとうおめでとう。
まりさのカップインに拍手が巻き起こります。
難しい長打のパットコースだったのに一打で決めたその姿、それはまさに神業。
全力を出し切った両者だからこそ、この境地に至れたのです。
観客達もつまみを食い散らかしながら称えています。
雨は一層酷くなったので、これにてスポーツ大会は閉幕しました。
れいむとまりさは失格になりました。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__ _____ ______ :::: ゜.::::::::::::::::::
::::::::::::゚.::::::::: ::::::::::. .::::::::,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 ::::::::::::: ::::::::::
:::::: :. .:::::。:::........ . .::::::'r ´ ヽ、ン、::: ::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,'==─- -─==', i ::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::。::::::....i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |::::::::: . ..:::::::::
:::::::::::::::::...... ....:::::::゜:::::::::レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||:::: ゜.::::::::::::
:. .:::::。:::........ . .:::::::::::::::::! _!"" ,___, "" 「 !ノ i |::::::: . . . ..::::
:::: :::::..キラッ☆彡:::: ::::: ',. L」 ノ| .|::::: ...:: ::::::::::
:::::::::::::::::: . . . ..: :::: ::: : ヽ、 ,イ| ||イ| /... .. .::::::::::::::
::::::...゜ . .::::::::: ::: ル` ー--─ ´ルレ レ´::::::::........ ..:::::::
_,,....,,_ _人人人人人人人人_
..,,-''":::::::::::::`''>れいむーーー!!!<
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7
_..,,-"::::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7
"-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ
,i!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ
( `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ
y' ノ !'" ∪ ,___,∪"' i .レ'
ノノ ( ,ハ ヽ _ン 人!
( ( ,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ
- 合間合間に挟んである地の文に、時折本当にマトモな事が書いてあるんだけど、
それ以上に当たり前になっている事が異常すぎて吹く
ゲートボールのルールも含め、凄い世界だ………
れいむは何だかんだでまりさの事が大事なのね
入り組んだAA含め、大作お疲れ様です
面白かった! -- 名無しさん (2009-11-21 13:35:56)
最終更新:2009年11月25日 23:27