てゐ魂 第十六話-1

えーと、前回私は万屋は年末にも拘らず仕事が無い、と言いましたね、
それとは正反対に年末どころか一年中忙しいゆっくり達もいます。
え?それは何処かって?
今回の話を見れば解ります。


お約束の前口上です。

この小説は銀魂のパロディです。
登場するゆっくり達にロクなのはいませんし、
ゆっくり達が酷い目に合う描写があります。


それらを許容できないという方は席をお立ちに。
許容できる方はそのままお楽しみください。


てゐ魂、第十六話「警察は眠らない。」


ゆっくりの国の中心街には様々な国の大使館がある。
勿論、大使館では他所の国から来た人間やゆっくり達が、色々と外交努力を行っている。

…さて、その幾つもある大使館の内の一つではなにやら物々しい雰囲気が漂っていた。
大使館のあちこちで胴付きゆっくりがきつい目つきで巡回しているのだ。
まるで、誰かを探しているかのように。

「…こっちも異状無しね。」

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公安⑨課のまとめ役 レティもこの巡回に参加していた。
彼女は他のゆっくりよりも念入りに、慎重に辺りを巡回している。

「こっちは問題ないみたいだし、今度はこっちを見張りましょう。」

そう言ってレティが踵を返したその時だった。


ドガアンッ!


「ぐはあっ!?」

いきなりレティの後頭部に痛みが走った。
そのまま前のめりに倒れるレティ。
だが、起き上がるのも早かった。

「くう…い、一体何なのよ…。」

後頭部をさすりながら起き上がるレティの目の前に何かが転がってきた。
それは、どう見ても野球のボールだった。

「…なんでこんなもんが飛んできたのよ…。」

レティはそう言ってボールを拾い上げ、考えをめぐらせた。
外で野球を遊んでいたチビゆっくり辺りが放り込んだのか?
…いや、無い、この大使館の周りに野球が出来るほど広い空き地は無かったはずだ。
じゃあこれは何処から飛んできたのか?
レティは必死に考える。
そして、その答えが頭に浮かんだ。

「…あいつら。」

レティは野球ボールを握り締め、額に青筋を走らせて何処かに歩き出した。


~☆~


ただ今6回裏、チルノーズの打席。
ゆうぎーズの切り札、剛速球のまりさの球に翻弄されたチルノーズは
ツーアウトツーストライクまで追い込まれた。
しかし、ここに来て、れいむの打席が大爆発した。

「よっしゃあ!ホームランだよ!」

ボールがはるか彼方に飛んでいったのを見てベンチの仲間達がガッツポーズをとる。

    /^\/?ヽ_ ,.
   /  / /   ノ`'''ヽ
   . / /, イ´ ̄    _'ヽ、
   ヽr゙/       、  、 ヽ〉
    i イ  レ\ ハノ! /i  i
    イ レイ (ヒ_]   ヒ_ン)ハヘ| n⌒i
   ノ  〉 i""  ,___,  " iハ _,,.! ノ
   ハ. i ハ、   ヽ _ン   人|´ /
  i\レヘハレへ〉'=r--r='i´Vヽy'´
  ヽ、,_`ヽ,r'´ `T T  i  ノ
  <   ̄〉、___ノ  |  Y/
   >_/ /〉-━┷━、!_ゝ
    `(⊆ノ/ /  !   ハ
      くヘ,.へ_,.へ__,.ヘ,.ヘ
       `'r、__ハ___ハ__!ン
        ト_ン   ト_ノ

「よくやった!後で一杯おごってやるよ!」

チルノはジャンパーに帽子といういかにも監督といういでたちで打席のれいむに激励を送る。
そのれいむは1塁、2塁、3塁と周り一周して戻ってこようとしている所だった。
しかし、れいむがホームベースを踏もうとしていたその時だった。

ゴオッ!

ドガアッ!

「ぐはあっ!」

何処からとも無く飛んできた野球のボールが、れいむの顔面にめり込んだ。
「ぐはあっ!?」
れいむははるか彼方に吹き飛ばされる。

「あ、アウトアウト~!」

審判役のまりさが大声でそう叫んだ。

「あ~!」

その様子を見て思わず立ち上がるチルノーズの面々!
その視線は一斉に審判に向けられる。


「ちょっと待って!今のがアウトなんて可笑しいよ!」


そう言って審判に近寄っていくチルノーズの面々。


「え?でもホームベース踏むまでにボールが当たったから・・・。」

「その前にホームランになったでしょ!」


もめ始める審判とチルノーズ。
場は一気に騒然となった。


「そもそも、あのボールは何処から飛んできたのさ!」


誰ががそう言ったその時だった。


「…私が投げたんだけど?」


冷たく、透き通った声がその場にいた胴付きゆっくり達の耳に入った。
「…こ、この声は…。」
恐る恐る、声のした方に皆が振り向いてみる。



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そこには怒りに顔面を歪ませたレティの姿がそこにあった。
全員、固まった。
その表情は全員「やべぇ、見つかった」的な表情をしている。
レティはそんな表情をしている胴付きゆっくり達は無視して、一匹のゆっくりに歩み寄った。


「チルノ!何やってるの!」

レティはちるのに向かって大声で怒鳴った。
思わず怯むちるの。

「レティ!何であたいだけに怒鳴りつけるのさ。」

「アンタが野球やろってたき付けたんでしょうが。」

反論するチルノにレティはそう即答した。
「大事な仕事の真っ最中にみんなして野球やってるんじゃないわよ!
 しかも他所の国の大使館のど真ん中で!」

「良いじゃん、他所の国の大使館だよ?
 そんな所で野球なんて滅多に出来ないじゃん!」

「だからそんな所でするんじゃないって行ってるのよ!
 ああもう!こいつは放っておくとこんなことするから大妖精に見張りを頼んでいたはずなのに!」

「ああ、大ちゃんならあそこで


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   ト、  ,. '"´          `'| !/'⌒ヽ./  
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 、,ノレ'ヽ,アヽ!、:7/ム / /::i     Y      /
ヽ、    /   i::〈/ヽ、,〉、,/:::/      i_,,. -‐''" 
  `' ーi     _,!レ'‐‐ヘ|':::::::r!__,!ー- 、.,_/ト、    
   /`Y`'"´|:::::::i:o:::::::::::::'7   /ン'   \   
.  ,.'    !┌┰─┰─┬┐    /ヽ、     ヽ. 
 /__,,.. ''"|│┃  ┃  ││  /、  `''ー----`' 

ポケモンのコンプリートを目指してるよ。」

見ると、離れた所で一人大ちゃんがゲームボーイをやっていた。

「クソ!またサファリパークでラッキーに逃げられた…。」

大妖精はゲームボーイpoketを片手にガックリとうな垂れている。
って言うか、DSでハートシルバーとか出ている御時世に今時初代の赤緑である。

「だから、仕事ほったらかしてるんじゃ無いのよ!!」

レティは大ちゃんに向かって足元に転がっていた野球のボールを投げつけた。
ボールが大ちゃんの後頭部にめり込んだのは言うまでも無い。

「まぁまぁレティ、ストレスが溜まってるからってイライラするんじゃない。
 こういう時こそゆっくりはゆっくりするんだ。」



                   /|
                   ,':::|
                  "'!::::|
            ┏━━━|☆|━━━━\
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         ┏━┻┓   |:::::::::|      ┃
         ┗━━┻━━━   ━━━━┛
         ∠、   /  メ !ゝ‐イ /  ト、   \__
          /   // _\/   レ、/ Yト、>   \
        /  _, イ o゚((●)) ((●))゚o \ ,「| ̄
        ´ ̄ ̄ | |"  (__人__)'    |V  |
             /∠\  `⌒´     /!>   |
            /  ∠  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/_>  .|

怒り心頭状態のレティに話しかけてくるゆうぎにレティはこう言った。
ゆうぎは今、監督が被りそうな帽子を被り、TENGAの上にジャンパーを羽織っている。
えぇ、こっちも完全に監督風の井出立ちですが何か?

「あんたらがふざけまくってるから私がゆっくり出来ないんでしょうがぁああああ!」

レティ、その内胃潰瘍で倒れそうである。

「皆様こんな所で何やっておられるのですか?」

と、レティの後から誰かが話しかけてきた。
レティが振り向くと、そこには初老の人間の男が立っていた。

「あ、す、すみませんセバスチャンさん。」

レティはセバスチャンの姿を見てぺこりと頭を下げる。

「お嬢様を守らねばならないあなた方がその仕事をほったらかして何しておられるんですか、あなたたちは…。」

セバスチャンはどれがどう見ても野球であそでいたのは一目瞭然なチルノたちの様子を見て溜息をついていた。
「すみません、私の監督不届きが原因です…あんた達も!いい加減にバッドやグローブを置いて仕事に戻りなさい!」
レティはセバスチャンにまた頭を下げた後、後ろにいる自分の部下たちに向かってそう怒鳴りつけた。

「えぇ~?」

「明らかに不満そうな声を上げるんじゃない!」

レティが更に怒鳴りつけると、⑨課の面々は大使館の中庭に勝手に作った野球場を片付け始めた。
レティは改めてセバスチャンのほうを見る。

「すみません、ふがいない部下ばかりで……でも大丈夫!お嬢様は絶対に反逆ゆっくりの面々からお守りします!」

「お願いしますよ、お嬢様はわが国の首相の娘でございます。
 他所の国でトラブルにあって国際問題に発展したらあなた達も困るでしょう?」

「ええ、そのことは十分に承知しているつもりです。」

ことの起こりは一週間前、この大使館に送られてきた一通のメールだった。


「このメールは予告状だよ!
 今この国に遊びに来ている首相の娘、「オ=ジョウ=サマ」はゆっくりをペットにすると言う馬鹿なことをしようとした!!
 これはゆっくりに対する侮辱に他ならない!
 だから天誅を下すよ!娘さんは国に帰らないでじっとしていてね!

 反逆ゆっくり代表として ゆっくり1192296番が筆をとりました。」


これを見た大使館の面々は・・・文面が微妙にふざけていた所為か、ただのイタズラだと思って
そのメールを消去してしまった。
しかし、その後も同じ内容のメールが送られてきた上に
ついこないだ、なんとトラック形スィーがこの大使館に突っ込んで来た。(運転手のまりさはすぐに逃げた、現在も指名手配中
人間たちにはまりさ達の微妙な見分けが付かないため、捜査も難航中である。)
このことにいたってようやく大使館の人間もマジで首相の娘の命が狙われていることに気づき、
こうして公安⑨課に首相の娘の警備をお願いしたのである。


「…そう言えば、その警護対象のお嬢様は今何をしているのかしら?」

レティはセバスチャンにそう問いかける。
すると、セバスチャンは何かを思い出したような顔をする。

「おお、そうでした!実はお嬢様が何処にもお見えしないんです!
 お部屋でジッとしていて欲しいってお願いしたはずなんですが…。」

「何ですって!?」

セバスチャンからそれを聞いてレティは焦った表情になる。

「まずいわね…!既に反逆ゆっくりにさらわれてしまったのかも…。」

「何ですと!急いで捜索隊を結成せねば!」

「あ、それは大丈夫だと思うぞ。」

慌てるレティとセバスチャンに対してゆうぎがそう言って来る。

「え?」

「どういう事ですかな?」

当然、二人はゆうぎにそう問いかけてくる。
「さっき外に出たいと私に言ってきたから、護衛を二,三人ほどつけてあげたんだ。
 これで万が一狙われても…。」

メリイッ。

ゆうぎの顔面にレティの拳が飛んできた。

「馬鹿なの!?死ぬの!?命狙われてんのに外に放り出すなんてアホが何処に居る!?」

「おぉ、ゆうぎ殿白目をむいておりますな。」

「あんたも呑気なこと言ってないですぐに捜索隊を結成しなさい!」

レティはセバスチャンに向かって大声で怒鳴りつけた。
「は、ハイ!?」セバスチャンはその迫力に思わずビビりながらも人を集めに大使館の中へと向かって言った。

「よし!じゃああたいたちは野球の決着を…。」

「あんたも行くに決まってるでしょうが!」

レティはチルノの首根っこを掴んで大使館の外へと駆け出した。


~☆~


ゆぶき町中央公園


騒がしい町の真ん中にありながらこの公園は穏やかな雰囲気を保っている。
あちこちに置かれた遊具の上でチビゆっくり達が飛んだり跳ねたり。
そして親達はその様子を見守っている。
正に、何処にでもある平和な公園の風景そのものだ。


がさ…ごそ…。


その中心に、明らかに不自然な茂みがあることを覗いては。
不気味な音を立てて動いているその茂みには、一斉にゆっくり達の視線が注ぎ込まれている。
不安も、警戒心と、好奇心が入り乱れた視線だ。
みんな不気味がってその茂みには近づこうともしない。


…と、一匹のチビゆっくりが好奇心に負けたのかその茂みに近づいていく。
ちびゆっくりは茂みに潜り込むと、ゆっくりと視線を上に上げてみる。
…そこでチビゆっくりは見てしまった。


「ハァ…ハァ…。」


何だか怪しい吐息を漏らしながら、ゆっくりウオッチングをしている縦ロールの女の人の姿を。


「うわぁあああああああああああああああああ!?」


ちびゆっくりと叫び声をあげて茂みから飛び出し、そのまま公園を出て行ってしまった。
それをみていた周りのゆっくり達は更に茂みから遠ざかった。


「よくってよ!よくってよ!やっぱりゆっくりウオッチングはれいむとまりさに限りましてよ!」


そう言いながら茂みの間からゆっくり達を見つめているお嬢様。
そのゆっくりの表情が明らかに脅えの表情なのにはまだ気づいていなさそうだ。

「も、もっと近づいて…。」

そう言いながらお嬢様がゆっくりに近づこうとしていたその時。


ガシイッ!

「きゃあっ!?」

何者かがお嬢様の首根っこを掴み、茂みから引きずり出した!
お嬢様は仰向けに倒れてしまう。


「あいたたた…だ、誰ですか!私にこんなまねをする無礼者は!」


「私です。申し訳がありませんね、お嬢様。」


そう言ってレティがお嬢様を覗き込んだ。
いるのはレティだけじゃなく、チルノやゆうぎ、セバスチャンの姿もある。
レティはお嬢様を立ち上がらせると、近くにあったベンチに座らせた。

「お嬢様、一体こんな所で何をなさっていたのですか!」

セバスチャンがお嬢様にそう問いかける。

「見て解りませんか?ゆっくりウオッチングをしていたのでございますわよ。」

お嬢様はさも当然であるかのようにそう答える。

「それは解っております、私が言いたいのは、
命を狙われているのに何をなさっているのかという事です!
大人しく部屋でジッとしていて下さいと言いませんでしたか!?」

「町に出ればかわいいゆっくり見放題触り放題だというのに
 ジッとしていなさいですって!?ああ、セバスチャンは何て残酷なことを言うのかしら!」

…何だかセバスチャンとお嬢様のやり取りは何処まで行っても平行線と言った感じだ。

「ねぇレティ、コイツむかつくから一発殴って良いかな?」

「国際問題になるからやめて。」

何だか物騒なことを言うチルノをなだめるレティ。
一方、お嬢様とセバスチャンの言い争いもヒートアップしていた。

「ああもう!思えばあの船で私達の写真を撮られた時にセバスチャンが奪い返せば
 反逆ゆっくりとやらに狙われ…!」

「…!お、お嬢様!何て事を言い出すのですか~!?」

セバスチャンはお嬢様の口を慌てて塞ぐ。
「…今、気になる事を言わなかった?」
それを聞き逃すようなちるのではない。
ズンズンとちるのはセバスチャンに詰め寄っていく。

「…あ、イエイエ、そんな事より大使館に戻りましょう!
 いつまでもここに居ては危険ですからな!」

ハッハッハ、と笑いながら帰ろうとするセバスチャン。

「え~もっとゆっくりを見て回りた~い!」

このセバスチャンの決定に不満をもらすお嬢様。
そんなお嬢様にセバスチャンは耳打ちをする。

(これ以上怪しまれたらあの時のことがこいつらにばれてしまいます!
 あのスキャンダルが表に出たらあなたのお父様にも迷惑が掛かりますよ!)

(う…それはまずいですわね…解りました…素直に帰ります。)

セバスチャンの言葉を受けたお嬢様は仕方が無い、といった顔で帰ろうとする。
ちるのはそんな二人に疑惑の視線を送っている。


「…あの二人…怪しい!絶対になんか隠してる!」

「気持ちは解るけど今は仕事中よ、私情を持ち込んじゃ駄目。」


レティはそんなチルノにそう忠告する。
ちるのは不満そうな顔をするがそれ以上何もしない。
今問い詰めてもはぐらかされるだけなのはちるのにも解っているからだ。


「それじゃあお嬢さん!一旦大使館に戻りましょうか!」

そうしてお嬢様とレティ達ご一行が大使館に帰る事になった
そして、公園を出て道の真ん中に出たその時だった。



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_,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,'r ´ iゝ、イ人レ/_ルヽ、ン
::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `,'== (ヒ_]    ヒ_ン ).==',
r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  ! i イ    ,___,      ヽイ i
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,'i///  ヽ _ン /// | .|、i .||
`!  !/レi'         レ''i !.          「 !ノ i |
,'  ノ   !  (ヒ_]    ヒ_ン  i . .レ',.           L」 ノ|
 (  ,ハ  ///,___, /// 人!| ||ヽ、       ,イ| ||イ|
,.ヘ,)、  )>,、ヽ_ン  _,.イ  レ ル` ー--─ ´ルレ レ´

「すーりすーり…。」

「す~りす~り…。」

なんと、道の真ん中で胴無しゆっくり二匹が頬寄せ合ってすりすりしているではないか!
「ほう、あれが噂に聞くす~りす~りですかな?」
セバスチャンはそれを見てほうと感心している。

「…確かに冬場は良く見かける光景ね、でもこんな道の真ん中でやるなんて…。」

道の真ん中でそんな事すれば通行の邪魔になる。
故に、道の真ん中ですりすりすると、交通違反という事で厳しく指導される。
だからこの国のゆっくり達は道の真ん中でそんな事はしないのだ。

と、すりすりしていたゆっくり達が震えだす。

「うう、二人だけじゃスリスリしても暖まらないね!」

「誰かもう一人スリスリしてくれないかな…。」

そう言って二匹のゆっくりがチラリとお嬢様の方を見る。
(何、あのあらかサマな誘いっぷりは!)
それを見てレティは確信する。
恐らくあいつらは反逆ゆっくり。
この行為はお嬢様を誘い出すための罠だと!

「お嬢様、あいつらには関わらないで早く行きましょう!」

レティはお嬢様にそう言おうとして彼女のほうを向いた。
…しかし、そこにお嬢様の姿は無かった。

「ゆっくり…スリスリ…。」

お嬢様は既にスリスリしているゆっくり達の方へと歩き出していたのだ。

「ッておい!あんなあらかさまな罠が解らないの!?戻ってきなさい!」

レティは慌ててお嬢様に呼びかけるが彼女の歩みが止まらない。


「そ、そこのゆっくり…も、もしよろしかったら私も一緒にスリスリ…。」

そして、お嬢様がスリスリしていたゆっくりに話しかけたその瞬間。


「…かかったなアホが!」

そのゆっくりの目つきが変わった。
そして、二人のゆっくりは大きく口を開く!


ガチャン!


             ___   _______   ______
             ,´ ,, ''"´ ̄ ̄ ̄ ` "ゝ 、_ イ、
             'r==─-    --─===ヽ、ン、
            ,'  イリiゝ、イ人レル/_ルリ  ', i
           i ル (ヒ_]     ヒ_ン )  ヽイ i |
           レリイ////  ,___,  ///// | .|、i .||
       ,____|___|__|       「 !ノ i |
       |l]l      lニllニl!,  ┤      L」 ノ| .|
       |l]l      lニllニl!,  │      | ||イ| /
        ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| ̄ ̄|       ノ| || |/
              ヽ   └─┘     ノルレ
                `" ー--- ─ "´


その口の中からバズーカ砲が現れた!

「お嬢様!お前の命は頂いたぜ!」


ドガアンッ!


そしてバズーカ砲が火を噴いた!
「え!?」
突然の事に動くことも出来ないお嬢様。
このままではバズーカ砲の直撃を受けてしまう!

「あ、危ない!」

この事態に真っ先に動いたのは…

「!?しょ、所長!?」

公安⑨課所長、ゆうぎだった!


「お嬢様!危ない!」


ドンッ!


ゆうぎは物凄い速さでお嬢様に近づくとそのままお嬢様を突き飛ばした!
これでお嬢様は魂の直撃から逃れることが出来た、
しかし、その代わり…。


ドッガァアアアン!


ゆうぎが、バズーカ砲の直撃を受けてしまった!
「しょ、しょちょうううううう!?」
チルノとレティの絶叫が響き渡る。

「ちッ!しとめ損ねたぜ!」

「ここは撤退だね!」

反逆ゆっくり達はお嬢様が無事なのを確認するな否や、すぐさまその場から逃げ出した。
しかし、今はそれ所では無い。
命を助けられたお嬢様は、呆然とシリモチを付いた姿勢で爆煙を見つめている。
レティもちるのもセバスチャンも、呆然と爆煙を見つめていた。

…と、そのときだ。

爆煙の中から、人影らしきものが現れた。

                  /|
                  ,':::|
             ,  '"´"'!::::|'"´ ̄`' 、
           /      |☆|       \
         , '       !:::::::|        '.、
        /    /   /|:::::::::!  iヽ.      '、
    / ̄| ∠、   /  メ !ゝ‐イ /  ト、   \__>
   |  | /   // _\/   レ、/ Yト、>   \
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「だ、大丈夫か?」

ズタボロになりながらも、ゆうぎはお嬢様に向かってぐっ、と親指を立てた。
バズーカ砲の直撃から、その身を助けてもらったお嬢様のとった行動は…。

「いやぁああああああ!やる夫キモイ~~~~!」

ドゴオッ!

その顔面に、正拳突きをぶちかますことだった。

「ぐはあっ…。」

「キモイキモイキモイ~!」

鼻血を出してよろめくゆうぎに、お嬢様は更なる乱打を繰り返す!
「ちょ、ちょっとお嬢様!仮にも命の恩人になんてことを!」
セバスチャンは慌ててお嬢様を羽交い絞めにする。

「放して!放しなさいセバスチャン!」

お嬢様はかなり頭に血が上っているのか、錯乱状態に陥っている!
一方、レティとちるのはゆうぎの開放に向かっている。

「所長!所長!ちょっとしっかりして!警備対象からボコられて殉職なんてシャレにならないわよ!!」

「う、うう…レティ、故郷のお袋によろしく頼むと伝えてくれ…。」

「所長~!?」

…結局、自体の沈静化にはかなり長い時間を要したのは言うまでもない。


~☆~


深夜、大使館中庭。

「…何だかすっかり数が減りましたなぁ…。」

中庭へ公安⑨課の様子を身に来たセバスチャンはそう呟く。
中庭を警備するゆっくり達の数が、明らかに減っているのだ。

「ああ、殆どの人が、所長のお見舞いよ…仕事中にやめろって言っても聞かないんだから…。」

そう言ってレティが溜息をつく。

「ハァ、あの方も随分慕われておられるんですね。」

「こっちは大迷惑ですけどね…すみません、警備員の数が減ってはそちらも不安では無いですか?」

「いいえ?むしろ数が少ないほうが、あの時の事を聞かれる確立も減りますし…。」

「え?」

「い、いえ…ゴホンゴホン…。」

慌てて咳き込むセバスチャンを、レティたちを始め、⑨課の面々は疑惑の視線を向ける。

「と、とにかく明日の朝にはお嬢様は国にお戻りになられる、それまでしっかりと警備してくださいよ!」

セバスチャンはそう言うと、慌ててその場から去って言った。
セバスチャンがその場から居なくなったことを確認して、⑨課の一人が口を開いた。

「こんなゆっくり出来ない仕事もうやだよ!ボイコットしておうちでコタツにあたろうよ!」

「こら!アンタ仕事中に何を言い出すのよ!」

いきなりな事を口走った部下に対してレティが怒鳴りかける。

「そうは言ってもさ、あのお嬢様を守る気になれない、モチベーションが上がらない。」

「そうだぜ、それにあのお嬢様、ゆっくりオークションに出ていたって噂があるんだぜ!
 あの態度じゃあその噂は本物だぜ!反逆ゆっくりに狙われても文句は言えないんだぜ!」

「ちょっと、敵の肩を持たないの!」

「何より、身体を張って守ってくれたゆうぎ所長に対して
 キモイなんていう奴なんて守る気になれないよ!」

「そうだそうだ~!」

とにかく文句を良いまくる公安⑨課隊員達。
その様子を見てレティは思わず頭を押さえる。

「完全に士気ががた落ちね…まいったわ…。」

そう言って溜息をつくレティは気づかなかった。
今この場に、チルノの姿が何処にも無いという事に。


~☆~


「ふう、あのゆっくり達、完全にやる気を無くしておりますな。
 この調子じゃあお嬢様を守りきれるかどうか…。」

そう言いながらセバスチャンはティーセットを片手にお嬢様の部屋の前までやってきていた。
「お嬢様~お茶が入りましたよ~。」
そう言ってセバスチャンはお嬢様の部屋のドアをノックする。

…しかし、返事が無い。

「……?お嬢様~?」

セバスチャンが呼びかけてみるが、返事は無い。
セバスチャンはドアノブに手をかけてみた。
…鍵は掛かっていなかった。


「お嬢様…?」


セバスチャンは恐る恐るドアを開けてみた。
…部屋の中にお嬢様の姿は見えない。
しかも、なにやら荒らされていて、窓が開いていた。


「…お嬢様~!?」


セバスチャンは、一瞬で状況を理解した。
お嬢様が何者かにさらわれたと言う事実に。


~☆~
後半へ

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最終更新:2011年02月08日 16:12