てゐ魂十九話前編

今日はとことんついてない日だ。
相も変わらず仕事は来ない。
気晴らしに言ったゆっくりけっと場では見事に大負けする。
お金も無くなったので、宛も無く外をフラフラと彷徨い、
目に入った公園でうまい棒でも齧りながらゆっくりするかと入ってみれば。



                                       ,.,> - 、
                                       ,._イ ´    \
                                    ,.イ/         ,\
                                  / /         '; \
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                                .iーイ  ,   lヽ N/ヘ  ~'ト、_/  
                                 / イ、ノ\| レ' r=ァVi   ヽ  
                                !、 l rr=-       /   ヘ  
  、‐-.、  ,. ''´  ̄ ̄ ¨` ‐-..._                トl     ー=‐'   /    ハ  
  ヽ;::::`<\          ` ヽ、            〈 ',         レヘ, /レ',イ
   ぃ:::;:::'ヽ、i__,へ.._____,へ.____ノ_,ノト、____          V ヽ          人ルレ'
   く.ヽ!:::i:::::::`::::;ーr-<__,..-t./::::::::::;::;:ミ゙           レ~`ヽ 、_  __ - く
   .|:::ト::ハ::::!:_!_::|::::i::i:::::i::::::i:::::!::::::r'´/))   ,.へ、        / ./ /.|   !、 ヽ
   |::::!::!::::ハ__レ、!ハ:N::::i..__ハ::::`ト<ヱ〉  ,.、' /    /⌒\_/ / /  |  | ヽ ハ
   |::|::|l:::| (ヒ_]     ヒ_ン) .i:::::::i:::::::|-‐''"´ ,シ'     /  へ  \__ノ ノ  ∧  |  ヘ.ヾ_/⌒\
   ヽ;::リ/! ' ∪ ,___, ∪ "'|::::::i:::::::!‐--‐''´    _ノ   / _/⌒\ _ _/   / ノ  i\ \ノ⌒\ ヽ、
    ル:ヽ:ト、.  ヽ _ン    ノ!::::ハ::::::! `゙`ー-─t‐‐-、 イ<_ノ⌒\__ノ<_ノ  \_フ\_フ_フ
     ハ::N:>、. _____ ,. イ .|::::ハ::::N `゙''ー- ...,,__〉__ノ


「フフフフフ、要求を呑みませんとこのちぇんに私の足を齧らせますよ。」

「うわああああん!らんしゃま助けてよー!」


「や、やめろー!猫にするめは食べさせたらいけないてんこー!」

何か変な場面に遭遇すると来たもんだ。



…あ、席についている皆さんにはいつも通りの忠告。



この小説は「銀魂」のパロディです。

でてくるゆっくりにロクなゆっくりはいません。
後、先ほどのようなゆっくりが酷い目に合うシーンも出て来ます。
それらを許容できない方は席をお立ちになってください。
許容できる方はそのままどうぞ。



てゐ魂第十九話「タコだろうがイカだろうがどうでも良い!」


「…何これ。」

てゐはふらりと立ち寄った公園で変な光景に出くわした。
ゆっくりがちぇんをゆっくり質に取っている、といえばちょっとシャレにならない犯罪光景になるであろう。
ただし、ゆっくり質を取っているのがきめぇ丸みたいな顔をしたイカ。
そしてそのゆっくり質であるちぇんに突きつけられているのがナイフとかの類ではなく、そのイカの足。
傍から見れば…いや、じっくり見てもシュールとしか良いようの無い光景だった。


「…見なかったことにしよっと。」


てゐは今自分が見た光景を見なかったことにして公園から出ようとする。
「…あ!そこに居るのはてゐさんじゃ無いかてんこ!?」
しかし、世の中そう甘くは無い。
てゐの姿を見かけたらんがゆっくりらしからぬスピードでてゐの前へと回り込む。


「てゐさん!ちぇんがピンチだてんこ!何とかして欲しいてんこ!」


らんはてゐに向かってそうお願いした。
「…えーと、状況が良く解らないし、やっぱり無視して良い?」
てゐの返事は非常に冷たいものでした。

「そんな事言わずに助けて欲しいてんこ!このままじゃあちぇんがイカの足を食べてしまうてんこ!」

それでも諦めずにらんはてゐにそうお願いする、

「…別に、好きなもん食わせれば良いじゃん。」

「お前は基本的なことが良く解ってないてんこ!ちぇんは猫だからイカの足は有毒極まりないてんこ!
 早くしないとちぇんがトイレの住人になっちゃうてんこぉおおおおおお!」

「らんしゃまぁああああイカの足が口の周りをついて気持ち悪いよー!」

大声で叫びまくるらんしゃま夫妻。
「…帰りてぇ…。」
てゐは心底そう思っていた。

「おぉ、私の要求を聞いてくれませんか?
 聞いてくれないとちぇんにイカの足を食べさせますよ?有毒なんですよ。」

イカなんだかきめぇ丸なんだか良く解らないものはてゐ達に向かってそう言い放つ。

「要求ねぇ…一体何の要求なんだか。」

てゐがそうイカみたいなきめぇ丸に問いかける。
するとイカきめぇ丸はこう問いかけてきた。

「おたくら、どっちかスィーを持ってませんか?」

「…スィーなら私の愛用の奴が公園の前に止めて歩けど。」

そう答えたのはてゐの方だった。

「それに私を乗せてください、私は今すぐに行かなければいけない所があるのです。」

「へぇ、一体何処に行く気なのさ。」

てゐがイカみたいなきめぇ丸にそう問いかけたその時だった。

ピーポーピーポーピーポーピーポー

何処からか聞こえてくるサイレンの音。



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             , '´     __     `ヽ、,ヘ
          くヽ_r'_ヽ 、 ,、_) ヽ ,______r'´イ´
          ['、イ_,-イ、ゝ,_, ,イ_,-,_ゝヽ、__〉   
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「警部!脱獄犯のいかす丸はこの公園に逃げ込んだようですよ!」

「相手は人質を取っているようよ、慎重に行きましょう。」

どうやらこっちに向かって警察たちがやってきているようだ。
「…ちっ、時間がないようですね。」
イカみたいなきめぇ丸はそれを聞いて舌打ちをする。

「さあ!早く私を連れて行きなさい!でないとこのゆっくりに私の足を食わせますよ!」

「わぷ!」

イカみたいなきめぇ丸は自らの足の先をちぇんの口に突っ込んだ。
「う、うわあああ!まずいてんこ!」

「こりゃ、警察を呑気に待ってたらちぇんが白目をむく羽目に陥るねぇ。」

てゐはやれやれと言った表情で溜息をつくと、軽く口笛を吹いた。

┌──┬──────────┐
│   │                │≡≡3
│   │                │≡≡3
└──┴◎───────◎─┘

スィーという音と共にてゐの愛用のスィーが姿を現した。
てゐはスィーの上に乗り込む。

「ホラ、急いでるんでしょ、早く乗りなよ。」

スィーの上からてゐはイカみたいなきめぇ丸に呼びかけた。

「おぉ、感謝感謝。」

イカみたいなきめぇ丸はちぇんと一緒にスィーに乗り込んだ。
「ちょ!?ちぇんは離してくれないのかてんこ!?」
ちぇんと一緒に乗り込んだイカきめぇ丸を見てらんは慌ててそう問いかけてくる。

「当たり前じゃ無いですか、人質を手放したら私は何をされるかわかったもんじゃ無いですよ。」

イカきめぇ丸はそう言いながらちぇんの口からイカの足を出してやった。
「ぷはぁ…。」
ちぇんの口からイカの足が糸を引いて取り出される。
なんかエロイ、その光景を見ててゐはそう思った。

「だったららんも乗り込むてんこ!」

そう言ってらんはスィーの後の方に乗り込む。
「いたわ!いかす丸よ!」

「どうやらあのスィーで逃げるつもりのようですよ!」

「発進する前に捕まえるのよ!」

その時、刑事ぱちゅりーとこぁが公園へとやってくる!

「ちいっ!早く出発しなさい!でないとあなたにも私の足を食わせますよ!」

「いや、あたしにそんな事しても意味無いでしょ。」

てゐはそう言いながらスィーの操作を行っている。

「急発進するからどっかに捕まっててと、えーと…。」

「いかす丸です。」

「あ、いかす丸ね…とにかく危険だからどっかに捕まってて、らんとちぇんも!」

「わ、わかったよー!」

てゐに言われてちぇんとらんはスィーに備え付けられた取っ手にしがみついた!

ブォン!

瞬間、スィーは凄い勢いで急発進した!

「うわあっ!」

「おぉ、これは予想外!」

「ふ、吹き飛ばされる!?」

急発進の反動で吹き飛ばされそうになるらんたちだが、取っ手に捕まっていたお陰で吹き飛ばされることだけは防げた。

「きゃ!?」

スィーは凄い勢いでぱちゅりーとこぁの横を通り過ぎる!
とっさに横に飛んでスィーをかわす二匹のゆっくり!
それを尻目にてゐたちを乗せたスィーは公園を飛び出していった。

「し、しまった!いかす丸を逃がしてしまいました!」

焦るこぁの横でぱちゅりーが無線機を取り出した。
パチュリーは無線機越しに周囲に居る部下たちに伝える!

「応援を要請するわ!なんとしても脱獄犯いかす丸を捕らえなさい!」


~☆~


「こら~!待ちなさ~い!」


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てゐ達を乗せたスィーの後から大量のパトスィーが追いかけてくる!

「おぉ、しつこい!しつこい!」

大量のパトスィーを見て舌打ちをするいかす丸。

「助けてー!」

「てんこー!」

らんとちぇんはスィーの後ろに立ってパトスィーに助けを呼びかける。
しかし、スィーとパトスィーの差は一向に縮まることは無い。

「おわっと!」

と、次の瞬間スィーのタイヤが何か硬いものでも踏んだのか車体が大きく揺れる!
「うわあっ!?」
その反動でらんの身体が大きく跳ね上がり、スィーの外へとはじき出される!

「ひぇー!落ちるー!」

「らんしゃまー!」

ちぇんはとっさにらんの尻尾に噛み付いた!
これで何とか最悪の事態が避けられたかと思いきや・・・。

スポン

なんと、ちぇんが噛み付いた尻尾が抜けました。

「えぇえぇええええええええ!?」

自分の尻尾が着脱可能という事実を今知ったらんは、驚きの絶叫を上げる。
って言うか、このままだと道路の上にころがり落ちてしまう!

「く…なんおぉおおおおおおおおお!!!

ガブっ!

らんは咄嗟にスィーのフチに齧りついた!
「ふぃ、ふぃふぃいゅいぱつ…。」
スィーの端に噛み付いてしがみつくという危険極まりない状態だが、
とりあえず、道の上で餡子塗れになって転がるという自体は避けられた。

「…あ、これスィートポテトだ、おいしー。」

その頃ちぇんは自分の旦那の尻尾のおいしい秘密を堪能していた。

「ふぃ、ふぇん、たふぇけふぇ…。」

「待っててらんしゃま、これ食べたらすぐ助けるよー。」

ちぇんはそう言ってスィートポテトを食べている。
「ふぁ、ふぁるふぇふふぁふぁふたふぇふぉふぁっふぇふぇ。」
そう言って必死でスィーにかじりつくらんであった。

…と、その時だった。
「…ん?なんだろあれ?」
てゐは道の先に何か黒い塊があることに気づいた。
目を凝らし、その黒い塊の正体を確かめる。

「そこまでよ!そこのスィー止まりなさい!」

なんと、前方にパトスィーで作られたバリゲートが!
こpのまま進んだらまず間違いなくバリゲードにぶつかってしまう!

「あれま、挟み撃ち!?」

目の前のバリゲードにびびるてゐ。
その時、いかす丸が大声で叫んだ!

「あそこの横道に入ってください!」

「え?」

そう言われててゐは前方をよく見る。
確かに、バリゲードのちょっと前に横道がある。
しかし道幅はスィーで通り抜けるにはちょっと無理がある程度の幅だった。

「…あそこはちょっと…。」

「無理でもやってください!」

いかす丸はズズイッとてゐに近づいてそう言った。
やっぱり間近で見ると、酷く迫力顔だ。

「…ハイハイ、解りましたよ。」

てゐはハンドルを切って急カーブし、そのまま車体をわき道に捻じ込んだ!

ガリガリガリガリ!

やっぱり無理があったのか、スィーの側面部分が壁に削り取られていく!

「うわあああああああ!大丈夫なのこれ、スィー壊れない!?」

「ふぇええええええええん!!!!」

あまりの不安でらん夫妻は涙目になっている。
ちなみにらんはスィーの角に噛み付いている所為でちゃんと喋れていないが、ちぇえええええん!と叫んでいる。

「うわっ、やっぱここを抜けるのはちょっと無理があったか。」

修理にいくら掛かるんだろ…。がりがり削れていくスィーの側面を見ながらてゐはそう考えていた。
やがて、広い道へとでる。こっちにはパトスィーの姿は何処にも見受けられない。

「右に曲がってそのまま真っ直ぐでお願いします。」

いかす丸はてゐにそう指示を出す。
てゐは素直にその指示に従った。

「し、死ぬかと思ったてんこ…。」

らんは何とかスィーの上に戻ることに成功していた。

「あ、らんしゃま、スィートポテトおいしかったよ~。」

「ちぇん、他に言う事は無いのかてんこ…。」

スィーの上に戻ってきたらんに対するちぇんに対する返事にらんは少しだけ泣きそうになった。
いかす丸はというと、自分の私物なのか懐中時計をじっと見つめている。

「ふう、何とかギリギリで間に合いそうですね。運転手さん、もっと飛ばしてください。」

いかす丸はてゐに向かってそうお願いする。
そんないかす丸にてゐはこう言った。

「…一つ質問して良い?」

「なんですか?」

「アンタ、脱獄犯でしょ、脱獄して人質とってさ、そんなに更に罪状が重くなりそうなマネをしてまで
 一体何をしようとしてるのさ?」

「そ、そうだてんこ!ちぇんを人質にとってまでアンタ何がしたいんだてんこ!?」

いかす丸は暫くの間黙っていたが、やがて口を開く。

「…私は、何が何でも今日の午後十時に行かなくてはいけない所があるのです、今、その時間にその場所にいけなければ、私は深い後悔に見舞われるでしょう。
 生きている意味を見失うかもしれません。」

「…だから絶対そこに連れて行けってこと?」

「ハイ、それが済んだら通報でも何でもしてくれて構いません。」

いかす丸は真剣な表情でそう言った。

「…面白そうだねぇ。」

「?」

「ホントは隙を見てあんたをどうやって振り落とそうか考えていたんだけど、そこまでの覚悟を持って何処に向かおうというのか、ちょっと興味がわいてきたよ。
 今日は良いことなんか一つも無くてさ、面白いものを見せてちょうだいね。」

スィーの移動速度が更に上がる。

「ちょ!?てゐさん!?まさか脱獄犯の酔狂に付き合うつもりかてんこ!?
 って言うかこの流れ、明らかにらん達まで巻き添え決定!?」

「まぁまぁ、良いじゃん、良い退屈しのぎにはなるんじゃない?」

「じょ、冗談じゃ無いてんこ!らんはこれからちぇんとおうちに帰って鍋をする予定だったてんこ!
 ちぇん!お前もこのままおうちに帰れないのはイヤだろ!?」

らんはそう言ってちぇんの方へと振り向く。

「あら、こんな時間にどうしたの?え?取引先が契約を承諾してくれないですって?
 契約内容は…う~ん、それはちょっと私でも首を縦に振るかどうか悩むわね…。」

ちぇんは携帯で仕事の話に没頭していた。

「って今自分の身に起こっている事より仕事の話を優先するの!?
 凄いよ、サラリーマンの鏡だよちぇん!」

らんは泣いて良いのか感心するべきか複雑な心境に襲われた。
そんならんちぇん夫妻を無視してスィーはスピードを上げる。

「さ~て、行き着く先は天国か地獄か!お楽しみって所だね。」

てゐ達を乗せたスィーは目的地に向かって一直線であった。

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最終更新:2011年01月29日 15:17