ゆっくりもんすたあ 第三話後半-2




 カザハナとトキハをつなぐ道。
整備もあまりされておらず森の中に石畳が並んでいるだけの道に、氷蛹美月はゆっくりボールを握りしめて目の前の存在を見据えていた。
「………………こ、このゆっくりは……」
 今彼女の目の前には一つのゆっくりがいる。
そのゆっくりは身長が180以上で筋骨隆々と彼女が求めていたゆっくりに似ていたが表情はゆっくりとは思えないほど禍々しかった。
瞳も血走っていて理性的なものが一切感じられない。その体から放たれる狂気に美月は少しおののいていた。
「……………コハァァァァ…………」
「ぱちゅりーにはみえない……何なの………」
 獣のように唸る目の前のゆっくりを見て美月は危険を感じとり、腰につけていたゆっくりボールを握りしめた。
「戦うのはそんな得意じゃないんだけど………いけぇ!」
 それでも相手は見逃してくれそうには見えない。美月は仕方なく自衛のために自分の手持ちゆっくりを繰り出した。
「わふん」
 ボールから出てきたのは白い毛と犬耳が特徴的なゆっくりもみじ。
最初は意気揚々としていたが目の前の巨大なゆっくりを見た途端、しっぽを振って美月にすがりよってきた。
「こらっ!いぬじろう!ピンチだから戦いなさい!」
「ぼくにはむりだよ、わん」
「頑張れ負けるな僕っ子よ!にゃー!」
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」
 敵の咆哮が森中に響き渡り、美月ともみじは毛を逆立てて恐れ慄く。
いままで楽天的だった美月もこの時ばかりは涙目にならざる負えなかった。
「いけ!いけ!いぬじろう!はやくやっつけちゃえ!」
「う、うう~~~わんわん!」
 もみじのほえる!
しかしあいてにはきかなかった!
「きしゃー!」
 吠えるのが効かないのを知るともみじはすぐさまそのゆっくりに噛みつこうとする。
それに対して敵ももみじを踏みつぶそうとしたがもみじは驚異のスピードで敵の後ろに回り込み敵の足にかみついた。
「コアアアアアアア!チュウボスメ……コノワタシニカナウトオモッテカ!」
 ようやく言葉らしい言葉を発したかと思ったら敵はすぐさま足を大きく振ってもみじを振り払う。
けれどもみじは全く怯まず、美月の指示のままに続けざまに敵に攻撃していった。
「もみじ!きりさけ!」
「わあん!」
「グアアアア!」
「つづいて電光石火!」
 もみじの攻撃は微量ではあるものの敵の脚部に着々とダメージを与え続けている。
ゆっくりもみじは特殊系が低い代わりに素早さと攻撃力が高い。だからこれほどの身長差があっても対等に戦うことが出来るのだ。
「このまま、やりつづければかてる!」
「いぬじろう!油断しないでね!」
「わかっているよ!」
 その後も美月の指示によってもみじは過敏に動き回り敵を翻弄していく。
ただ別に美月のトレーナーとしての腕が特別にいいわけではないし、このもみじが特別に強いわけではない。どちらも並の範疇を超えていないのである。
けれどこうしてかわし続けることが出来るのは二人は無意識的に互いを理解しているからだ。
 美月はもみじに出来ないことを指示しないし、もみじも美月が指示しやすいように場を作っている。
ただそれだけのこと。でも並大抵のことでは出来ないことである。
「グオオオオオ!!」
「おそいよ!そのにくじゅばんはだてかい?」
「よっしゃいけいけ!」
 敵が弱り始めたのを見てもみじは調子に乗って攻撃を強めていく。
だがそれに合わせるように敵のゆっくりはもみじの攻撃を受けながらも構え始めた。
「コ、コ、コアアアアアアアアアアア」
「!いぬじろう!相手の様子が変!」
「だいじょうぶだね!近接戦闘ならもみじはまけないよ!」
 確かに、相手が格闘戦しかしてこない脳筋のゆっくりであったらもみじの機動力で難なくかわすことが出来ると二人は敵の行動や見た目からそう判断していた。
しかしもし、そのゆっくりがどのゆっくりの亜種か知っていたらそんな思い違いはしなかっただろう。
「………………!ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
 その叫びとともに敵の手から放射状に弾幕が放たれ、全く弾幕に対策をしていなかったもみじは避けるすべもなく吹き飛ばされてしまった。
「!もみぃぃぃぃぃぃ!!」
「いーちゃあああああああああああああああん!!!!」
 美月はすかさず吹き飛んでくるもみじを体で受け止める。だが全ての勢いを殺すことが出来ず美月にも衝撃が残ってしまった。
「ぐ、ぐぅ……だいじょうぶ?いー」
「ちゃんとなまえで呼んでよ…………うう」
 美月はまだ立つことが出来るがもみじは弾幕そのもののダメージでもう戦うことが出来ない。
仕方なく美月はもみじをボールに戻し、腰に着いているもう一つのボールに手をかけた。
正直この相手に慣れていない子を出したくはない。けれど敵は悪意を剥き出しにしながらこちらに狙いを定めていて到底逃げられそうもなかった。
「初めてだけど……いけるよね!いけぇ!」
 そう言って美月は最後のゆっくりボールを投げる。
その中からは今日捕まえたばっかのみのりこがとびだした。
「ふぅ、ゆううつよ……」
「みのりこ!お願い!今ならアイツも弱ってるはず」
「舐めないでよね、私だって一面のぼすなんだ、か、ら………」
 みのりこは目の前の敵を見るとすぐに驚き震え始める。だけどみのりこはもみじみたいにその巨体に怯えているわけではないように見えた。
「あ、あ、あ、あ……………」
「…………………………カハアアアアアアアアア」
 敵はみのりこの姿をとらえると怪しげに口元を綻ばせ、そのまま掴みかかろうと一直線に突進してきた。
「いやああああああああああ!!!」
 みのりこは涙目になって何とか紙一重で敵の攻撃をかわす。
その後も敵は攻撃を続けていくがみのりこはただただぴょんぴょんと逃げ回ることしか出来なかった。
「みのりこ!攻撃しなきゃ終わらないよ!」
「ぶええええええええええん!ごめんなさあああああああああああああああい!」
「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
 あちこち逃げ回って最終的にみのりこは美月の胸の中へと飛び込んでいった。
「あ!みのりこ!え、ええと」
 美月はすぐに引き離すべきか悩んだが、その一瞬の隙に敵は美月の方に狙いをつけて突進してきた。
相手は長身の筋骨隆々だが脚も同じように長く、美月にはもう避けるだけの時間は残されていなかった。
「あ、あ、あ…………」
 こんな所で終わりたくない。私はまだ会ってないゆっくりがいっぱいいるんだ。
だから、誰か、助けて。
「いやああああああああああ!!!」
 観念して目をつぶった瞬間、美月は横からの衝撃を受けて大きく地面を滑る。
攻撃を受けて死んだかと思った。だが痛みが少ないのに違和感を覚え目を開けてみると敵が今まで自分が立っていた場所を通り抜けているのが見えた。
「……………………」
「危なかった………」
 不意にそんな声が近くで聞こえ美月は体を起こす。
そこにはれいむを抱えた紅い髪の男の子が雄々しく立っていた。
「え、ええとシュン君……」
「あ、え、いや、あ、そうだ。これ忘れてったよ」
 瞬はポケットから蒼い模様がついたゆっくり図鑑を取り出し美月に差し出す。
この時ようやく美月は自分の持っているのが自分の図鑑でないと気付き、恥ずかしそうにカバンの中から図鑑を取り出して瞬に渡した。
「あ、ゴメン……慌てちゃったから……」
「いやいや、いいのいいの。こっちだって……」
 と、そんな会話しているうちに敵のゆっくりが二人のところへとのしのし戻ってくる。
瞬はそのゆっくりの表情のあまりの醜悪さに驚いたが、怯むことなくすぐに図鑑でその敵について調べた。




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            ,イ  /  /  ,ハ!   /  !  _!_ i ! Y  グルルルル……ミナゴロシ
           '、!,イ   ,'  /´___!_ i  ハ _ノ_`ハ/ ノ
           ノ ',  レ、 ィ='‐ 、 _ノレ'r,ェ=x^i i、.;
              ( ソ'´  V{、 o -;}:.:.:.l'´:{ o ニ ハヘノ
          y'´   !  =ミ'ーz=シ:.:|:.!:.:.ゝt-イ ノハ
         ,'  !   , ヽ、_,=ケi.:.:.:〉:.:l:」:.:.:.ラヘ:.:.),ハ  !
         '、 ゝ、ノ   )ハVツ:.:.:.:.:.:.:,、:.:.:.:.ハ:l,ッノ ソ-、
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はかいの しょうどうに めざめ すべての すれを はかいしようとしている さいきょうさいあくの ゆっくりしずは
きめぇ丸のびーむでも はじきかえすほどのにくたいをもつが がったいしたありす丸の ごくぶとれーざーにはかなわなかった
はかいのしょうどうっていったけど いもうとさまとは あまりかんけいはない


「ゲェーーーーーーーーーッッッ!!こいつしずはなのか!?」
「ええっ!?うそぉ!ということは………」
 美月は今自分が抱えているみのりこを覗き見る。
みのりことしずはは姉妹の関係であり、このみのりこはこの場所で捕まえたのだ。目の前のしずはと関係があると思うのは当然だろう。
「うっうっ………ぬけがけしてごめんなさいぃぃ」
「ミノリコ…………コロスコロスコロスコロス!!!」
 橙子と同じくらい憎しみが籠った呪詛をしずはは何度も何度も繰り返す。
やはりこのみのりこと一緒にいたしずはだった、しかし瞬は思い返す。初めて見たときあのしずははこんな姿ではなかったと。
「うう………ねえさんなんて姿に………」
「ミスチーヲカリツヅケタアト、モトノバショニ カエッタトオモッタラ アナタガイナイジャナイ!ヨクモヌケガケヲシテクレタワネ!!
 ワタシノココロニ ニクシミガミチアフレタワ!!ソシテ キヅイタラコノスガタニナッタノヨ!!!」
「ゆっくりの進化のメカニズムはよく分かってないから………こんなこともあるのね……」
 恐らく進化のきっかけは憎しみによるものだろう。
しずはは体から溢れんばかりの悪意を放ち美月に向かって歩みよる。
「コノスガタナラ フユダッテ ハルダッテ ナツダッテ ハカイデキルノヨ!デモソノマエニ ミノリコ!!!!キサマヲコロス!!!」
「させるかっ!」
 みのりこに襲いかかろうとするしずはに対し、瞬は手に持っていたれいむをしずはに投げつけた。
それによってしずはは少し怯むが倒すまでにはいかない。けれど興味の対象は瞬とれいむに切り替わったようだ。
「……ク、クククク」
「なんかきもちわるいよ………」
「コノニクタイサエアレバ ユックリーグヲセイハスルノモカンタンヨ!イマナラカンタンニツカマッテアゲルワ!サアドウスルノ!?」
 進化してもしずははしずは、自己主張の癖は治っておらずそんなことを瞬に向かって叫びだす。
で、その瞬はと言うと。
「やだ、キモい」
 その一言で一蹴した。
「………………………………ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
 当然のようにしずはは激昂し、れいむに向かって掴みかかる。
しかしもみじまではいかないにしてもれいむもそれなりの機動力を持っている。
それにまちょりーと戦った経験もあってかしずはの攻撃を難なくかわした。
「ゴアアアアアアアアアアア!!!!」
「よし!一度距離を取るんだ!そこからオウレイフウカノンを打て!」
 瞬の指示通りにれいむはしずはから距離を取って、かぜおこしの体勢に入る。
だけどしずはも同じように何かの体勢に入って二人は少し警戒した。
「あれは私のもみじを倒した攻撃!すぐに避けて!」
「ゆっ!?」
 それを聞いてれいむはすぐにかぜおこしを放とうとしたが、警戒したため一歩遅れしずはの弾幕を避けられなかった。
「ゆ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」
「れいむ!!!」
 しずはの弾幕を受けてれいむはもみじの二の舞を踏むように大きく吹き飛んでしまった。
瞬はれいむを掴むことが出来ず、吹き飛ばされたれいむを追って森の中に入っていった。
「うう、あれは姉さんの必殺技『メイプルストーム』……別名狂いの落葉」
「メイプルストーム?」
「ええ、とがった落ち葉であらしを起こす技……ねえさんが人気が欲しいからって必死でおぼえたわざなの」
「つまり、リーフストームの落ち葉版というわけね」
 みのりこは頷いて一粒の涙を落とす。技の練習に付き合っていたみのりこはあの技の威力を知っている。
だからきっとあのれいむもダウンしてしまうに違いない。
そう思ってみのりこは悲観的になるが美月の表情はなぜか明るかった。
「じゃ、問題無いよ、にゃおん」
「え?」
「サア!ミノリコ!アキノアイダ ツチノナカデクラスジュンビハ デキタカシラ?」
 邪な笑みを浮かべしずはは美月に向けてメイプルストームを放とうとする。
だが美月は避けようとしない。彼女は信じているからだ、あの紅い髪の少年を。
「うおりゃああああああああ!!!」
 そんな叫び声とともに森の中かられいむが飛び出してきてしずはの腕にぶつかっていく。
それのせいでしずはのメイプルストームは美月を狙うことなく森の中へと飛んでいった。
「!!ア、アレヲクラッテ ナゼタッテラレル!!」
「へん!れいむを舐めないでね!!!」
 さっきから散々ぶつかったおかげでれいむも元の球体型に戻り、自信ありげにしずはの前に立ちふさがる。
そして瞬も体中にはっぱをひっ付けながら森の中から戻ってきた。
「……………なんで、何で姉さんの必殺技を受けてあんなぴんぴんに………」
「……だってあれは草タイプの技だから」
「え?草タイプ………?」
「そうだよ、草タイプの技は飛行タイプのれいむには効果が今一つなの。
 それに、あんな大がかりな技連発できるものじゃないでしょ?もみじの時よりも威力が落ちてるよ」
「………………あ」
 あの技を練習していたときしずはは一発一発にそれなりの時間を空けて放っていたことをみのりこは思い出した。
あれは別にサボりとかではない、間を空けないと十分な出力にならないからであったのだ。
 もうしずはは三発もあの技を放っている。もう技としての威力はほとんどないに等しいだろう。
「グ、グオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「よし!れいむ!オウレイフウカノン!!」
「ゆっ!!!」
 瞬の指示に従ってれいむはリボンやもみ上げをフルに使って風を大きく巻き起こししずはにぶつけた。
だがしずははまちょりーと違い、風の乱流の中でもしぶとく耐えていた。
「クハハハハハハ!ワタシハ シンカシタノヨ!ジャクテンノ ワザニタエラレルジシン ダッテアルワ!!」
「…………………………」
 しずははそう言ってれいむの技を今も耐え続けているがそれを聞いて美月は少し疑問がわきあがった。
「…………………どう見ても格闘入ってるよね」
「うん、多分。今の姉さんのタイプは草格闘よ」
「じゃあ…………………四倍じゃない」
「ギョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!」
 まるで催眠が解けたかのようにしずはは風の乱流に巻き込まれ、まるでギャグマンガかのように森の奥まで吹き飛んでいった。
そのあっけない退場に瞬もれいむも目を点にせざる負えない。
「……………………………あ、勝ったんだ」
「勝ったんだね、うん。びっくりしたよ」
 でもまだ全然頭の整理が出来ないのでとりあえず瞬はれいむの頭をなでてみた。今日は色々苦労かけたからそのお詫びのつもりだ。
「…………………シュン君……」
「ミヅキさん」
 本来ならただ図鑑を返せば良かっただけなのだがちょっと余計なことが入ったから瞬は美月の呼びかけにどう反応していいか分からない。
なんか頭の中では『笑えばいいと思うよ』というセリフが思い浮かんだ。笑ったからなんだってんだ。
「はは、じゃまたいつか」
 結局にへら笑いしてれいむを抱えながら瞬はこの場を立ち去ろうとする。
だけど美月に肩を掴まれそのまま顔を向かい合わされてしまった。
「…………かっこいいね、シュン君は」
「え、ええと。僕は何も………そう!れいむだよ!戦ってくれたのはれいむだよ!」
 目を合わせるのが気恥ずかしくなって瞬は目の前にれいむを構える。
「………どこまでも、れいむたちに迷惑かけるこむすめだね!まだれいむはあのときのことわすれ」
 ちゅっ。
「……………………………」
「…………………………え?」
「そうだね、れいむちゃんのおかげで助かったよ。だからこれはお礼のつもり」
 れいむの右頬に薄いキスマークが彩られ、誰もが言葉をだすことが出来ない。
そして爆発するようにれいむの体中からプシューと水蒸気が噴き出した。
「…………べ、べつにこんなものでこころうごかされないんだからねっ!」
「典型的なツンデレセリフだ」
 その後しどろもどろになってさらには目も回してしまうものだから瞬は仕方なくれいむを脇に抱えた。
「あの………ミヅキさん」
「あ、シュン君にはちょっと………男の人とやるのも恥ずかしいし」
 その一言で瞬は言いようもなく落ち込む。彼だって男の子、自分のゆっくりに先を越されちゃプライドもずたぼろだ。
「…………そうだ!」
 そんな瞬を見かねて美月は自分の腰に付いているゆっくりボールを瞬に差し出した。
「きっとシュン君なら大事にしてくれるって信じてる。だからこの子をシュン君に預けるよ」
「え…………?」
 そんなことしていいのだろうか。でも人の好意を蹴るのも気分が悪かったのでとりあえず瞬はそのボールを受け取った。
「ええと、中のゆっくりは?」
「押してみてからのお楽しみ~にゃあ!」
 言われるがままに瞬はボールのボタンを押すが、開口しても中のゆっくりは出て来ることはなかった。
拍子抜けしたが突然美月が抱えていたみのりこが光に変わりボールの中に吸い込まれていった。
「…………………」
「横取りしちゃってごめん、でもシュン君ならみのりこを大事にしてくれるよね」
 そんな風に美月は笑顔になり瞬はその表情に引き込まれていった。
「……私お母さんのお手伝いで図鑑を集めるためにこうして旅してるの。
 でもそのせいで自分のゆっくり達はあんまり強くならなくて、いつも傷つけちゃう」
「…………………」
「今回のことも私のせい、私もシュン君見たいに強くならなきゃ」
「僕はそんな強くないよ」
「強いよ、多分」
 多分か。でもそれが一応的確だと思う。
「…別れのときは辛いけど、また会えるのかな?」
「会えるといいね」
「それじゃ、本当にありがと」
 そう手を振って美月はトキハ方面へと足を進める。
進む方向が同じなら、きっと二人はいつか会えるだろう。
橙子さんは氷蛹と関わったら送金止めるって言ってたけど、僕はこの繋がりを大切にしたい。
 そうしみじみしながら瞬は渡されたゆっくりボールを見て大きく掲げた。
「ゆっくりみのりこ!ゲットだぜ!!」
「ゆっゆゆ~!」
 そう高らかに宣言し、瞬はドキドキしながらボールの中からみのりこを出した。
「ふ~秋らめずに頑張った結果がこれよ!姉さんに勝ったのよ!あっはっはっは!!」
「…………………あ、あの」
「あ、それではこれからゆっくりさせていただきますみのりこです!どうぞよろしく!」
 みのりこは丁寧にぺこりと礼をするが瞬はその前の前のセリフが気になってしょうがなかった。
とりあえず瞬は右手にれいむ、左手にみのりこを載せる。で、この体勢となったら。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
「じゃ、これからもよろしくな、みのりこ」
「ええ、分かっているわ、でも……………」
「でも?」
「……………姉さんしつこいからこれからも追ってくるかもしれない………その時はよろしく!」
 ーーーえ?あの、今なんと?
「は、はたらかないですむとおもったのに!この疫病神!」
「しつれいね!わたしは豊穣の神よ!」
 そう言い争う二人を見て微笑ましくもあり、また見てて疲れてきた。
とりあえず仲間がいっぱいなのはいいことだ。
これからもこの愉快なゆっくり達と頑張っていこう。



 ゆっくりもんすたあ 第三話 終わり









 森影橙子博士のゆっくり講座~第一回~

橙子「どうも、オレンジTIE研究所の主任森影橙子です!太眉ブームめ呪ってやる!」
真黒「橙子博士の助手をしております四識真黒です」
橙子「というわけでこのコーナーは話に出てきたゆっくりをそれなりに解説しちゃいます!」
真黒「と言っても研究所にはゆっくりが一匹も……」
橙子「こんなこともあろうかと外でゆっくりをスカウトしてきたわ、換気も十分だし問題無いわよ」
真黒「はぁ……道理で空気がきれいだなと」
橙子「というわけでカモン!ゆっくり!」
まちょりー「MUKYU----!!」
真黒「………………………えっと、なんか僕よりも背の高いドレス着たナマモノがいるんだけど………」
橙子「この子はゆっくりまちょりー、ゆっくりぱちゅりーが長い間筋トレして進化した姿よ」
真黒「こんなゆっくりどこで捕まえてきたんですか!」
まちょりー「むきゅう、かつて私はとあるトレーナーの元でバトルを繰り広げていたわ。
      けどその人が遊ぶ金欲しさで悪事を始めて、私もそのトレーナーに赤ちゃんのころから育ててもらった恩があるから手伝ってしまったのよ。
      でも悪事は続かないもの。そのトレーナーがとうとう警察に突き出され、私は主を失ってしまったわ。
      で、そう放浪しているうちにこの人にスカウトされたの。」
橙子「だそうよ」
真黒「ドラマがあるんですね……意外です」
橙子「それではゆっくりまちょりーについて!まちょりーはこのように筋肉がしっかり付いてるから攻撃、防御ともども高いわ。
   でもその代わり魔術の腕が落ちてて特殊攻撃、特殊防御が落ちてるの。でももともと高かったからそう苦労することはないわ。
   一番問題なのは体力よ。こんな肉体になっても体力の方はあんまり成長してないのよ」
まちょりー「かたじけない」
橙子「だけどやっぱりこの体の大きさはとんでもないアドバンテージよ。これほど巨体なゆっくりはそうそうない。
   人間と力比べしたらもしかしたら勝てちゃうかもね」
真黒「橙子博士、何でいきなりビニールテープをリングのように張り巡らせるんですか」
橙子「じゃ、実験してみましょう!橙リング!ヘビー級ゆっくりまちょりー!」
真黒「ちょっと!!」
橙子「続いて~藍リング!フライ級ブルーグラスまくろ~~!」
真黒「ゲェェェ!!僕ですか!というか何故橙と藍………あっ!!絶対負けるのをわかってて!!」
橙子「つーん」
まちょりー「それでは手合わせするわよ!むっきゅーーーー!!!」
真黒「ぎゃああああああああああああ」


橙子「というわけで人間VSゆっくりはゆっくりの勝利に終わりました。
   こんな風に常識ではありえないことでもゆっくりは平気でやってのけます。そこが不思議ですよね……
   それを突き止めてくのが我らオレンジTIE研究所!また来週もゆっゆっくり!」
まちょりー「むっきゅーーーー!!」
真黒だったもの「」

  • しずは進化しすぎだろwマチョリーも進化したらソコマンドーに進化するのかな? -- 名無しさん (2012-07-03 22:06:59)
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最終更新:2012年07月03日 22:06