~☆~
ズドォオオオオオン!
でかい音と激しい振動。
この二つの出来事は、乗客席を激しく動揺させた。
「おいぃ!?今のは一体何なんですか!?」
てんこが大ミミズにそう怒鳴りかける。
大ミミズの向こうにいるハッカーは、怪しい笑みを浮かべながらこう言った。
「へ、へへへ…そう怒るなよ、ブリッジをぶっ飛ばしただけだよ、ドカーンってな。」
「何ですって!?」
思わず叫んでしまうCAぱちゅりー。
「ぶ、ブリッジを爆破したって!?」
「そんなことしたら、この船、落ちてしまうんじゃあ…!」
ハッカーの言葉とともに、観客たちに動揺が奔る。
「落ち着いて、落ち着いてください!まだ墜落すると決まったわけじゃありません!」
パニックにはさせまいと、CAぱちゅりーが乗客たちに呼びかける。
しかし、動揺はドンドン大きくなっていて、パニックになるのは時間の問題だった。
「…へへへへへ…お前達なんか、永遠にネットの海で彷徨ってればいいのさぁ!へへへへへへへへ!」
いやな笑い声を上げ続ける大ミミズ、
ズバンッ!
その大ミミズを、てんこは真っ二つに切り裂いた。
「ちょ、てんこちゃん!何してるの!」
思わずれみりゃがてんこに向かって叫ぶ。
「ゴメン、あまりに頭がヒットしすぎていた。」
てんこはそう言って頭を下げた。
周りでは乗客たちがパニックに陥っていた。
「うわああああ!落ちるうううう!墜落するぅううううう!」
「パラシュートは何処!?緊急ハッチはぁあああ!?」
とにかくあちこちでそんな叫び声が聞こえてくる。
「お前らあ!落ち着けといってるだろうが!」
そんなゆっくり達を半ばキレ気味のCAぱちゅりーが力づくで押さえていた。
「た、大変なことになっちゃったど…。」
れみりゃは顔面蒼白でそう呟く。
この状況の打開策を考えるが、全くもって思いつかない。
「…こんな時、てゐさんならどうする…ってそう言えばてゐさんは!?」
と、そこでさっきからてゐの姿が見当たらないことに気づく。
まさか逃げたのか?と思い、椅子の背もたれの上に登って辺りをぐるりと見回す。
…てゐの姿はすぐに見つかった。
まるで何かを探すように、辺りをキョロキョロしながらパニック状態のゆっくりの間を駆け抜けて居たのだ。
「てゐさん!あんた一体何をしているのかど!?」
れみりゃはそう叫ぶと、椅子から椅子へと器用に飛び移りながらてゐの元へと向かう。
一方のてゐは、れみりゃの呼びかけにも気にせずに、辺りをキョロキョロ見回している。
「う~ん、あいつがいればこの状況を打破できると思うんだけど…あっ!」
と、彼女は発見した。
乗客席の端の端、
その席を包んでいる、不自然なまでの黒い丸を。
てゐはその黒丸を見つけるなり、凄い勢いでその黒丸へと駆け寄った。
「お~い!今すぐ起きろー!」
てゐはその黒丸に向かって呼びかける。
しかし、返事は無い。
「…Zzz。」
代わりに返って来たのは心地よい寝息。
「…寝てるよ、この状況で…いや、この状況でグースカ寝れるゆっくりなんて、あいつしか居ない、か。」
そう呟くてゐの元へ、れみりゃがやってくる。
れみりゃはてゐにこう問いかけた。
「てゐさん、一体何しているどか!?って言うか何だど!?この不自然な黒い丸は!?」
れみりゃは頭の羽で黒い丸を指差してそう質問してくる。
「これ?闇。」
「…ハイ?」
思わず聞き返すれみりゃ。
「だから闇だって、日の光が一切差し込まない漆黒の闇、
程よく涼しいから、快眠には欠かせない一品。」
「イヤイヤイヤ!てゐさん!言っている意味が解らないど!」
「わからなくても別に良いよ、問題はこの闇じゃなくて中に居る奴だから…
…ああもう、こうなったら無理矢理にでも起こしてやる!」
ズボン!
てゐはそう言うと、何と闇の中に自分の耳をつっこんだ!
「て、てゐさん!?」
突然のてゐの行動に驚くれみりゃ。
「おいぃ!?一体あいつは何をしているんですか!?」
いつの間にか、てんこもれみりゃの後ろにやってきていた。
てゐはというと、後ろに居るれみりゃとてんこの呼びかけも無視して、闇の中でその耳をモゾモゾ動かしている。
…やがて、耳が何かを掴んだような動きをする。
「よし、掴んだ…よッ、とぉおおお!」
てゐはそのまま力任せに耳を引っ張った!
ずるッ。
闇の中から、一匹の胴付きゆっくりが引きずり出された。
「う、うわあっ!?」
れみりゃとてんこは思わず一歩後ずさる。
てゐは引きずり出したゆっくりを床の上に横たわらせる。
「び、ビックリしたどぉ、中から何か出て来たどぉ…。」
そう言いながら、れみりゃはそのゆっくりを顔を覗き込む。
,. '"´ ̄ ̄`"'' ヽ、/ヽ、__
/ //`ー∠
/ , ヽ!_/ヽ>
i / i !__ ハ ハ-‐i- 「__rイ´',
! i /.ゝ、 レ' /ハ |/ .i
レヘ/ i (ヒ_] ヒ_ン ) ! | |
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.| 人. ヽ _ン .| | i |
レヘハ>.、.,___ ,.イヘ,/ヽ.ハ/
,.ィV二ヽ.
/7∞!::::::ハ
./ !:: ̄:::::/'´ !
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,くヽ、〉--:〈 .____.!
`し'/:::i::::::::!__ンヽ、
そこで、れみりゃは気がついた。
そのゆっくりの顔に、見覚えがある事に。
「おーい!こんなときに呑気に寝てるんじゃないよ!るーみあ!」
てゐは耳でるーみあの頬をビンタする。
ビンタで頬を真っ赤に晴れ上がらせながら、そのゆっくりはゆっくりと目を覚ました。
「…ん?後五分…。」
再び眼をつむろうとしたゆっくりの頬を今度は耳で引っ張る。
「ム、むにーいたいみたい。」
「いい加減目を覚ませ!お前状況わかってんのか!」
バチーン!
てゐは耳でゆっくりの頬を挟み込むようにビンタをぶちかました。
「…ん?お前は一体誰なのか~?」
「久しぶりだねぇ、るーみあ、あたしの顔に見覚えはあるだろ?」
てゐは頬を真っ赤に腫らした金髪のゆっくり―るーみあにそう問いかけた。
るーみあは寝惚けなまこでてゐの顔を見つめ…やがて。
「…ああ!お前もしかしててぬなのかー!?」
てゐの顔を見て、大声でそう叫んだ。
そして今度はるーみあが、両手でてゐを持ち上げる。
「久しぶりだなー!てぬ!元気にしてたかー!?
まだ反逆ゆっくりやってるのか~てぬー!てるよは元気にしているのかてぬー!」
そう言いながらるーみあはてゐのほっぺを両手で揉みしだく。
「…てい。」
てゐはそんなるーみあの両目に耳で目潰しをかました。
「ぐはあっ!」
思わず両目を押さえ、てゐを話してしまうるーみあ。
てゐは華麗に着地した後、るーみあに向かってこう叫んだ。
「るーみあ!相変わらずマイペースにも程があるでしょ!
あと人の名前を間違えるな!私はtewiであってtenuじゃ無い!」
「え~どっちも同じじゃん、てぬ。」
るーみあは両目を擦りながらてゐにそう反論した。
「同じじゃ無い!発音から文字の形まで色々違うから!」
てゐは凄い勢いで怒鳴りかかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
と、その時、機体が更に激しく揺れた。
明らかに、不安定な状態になっている。
「おっと、こんなやり取りをしている場合じゃ無い!
るーみあ、再開早々悪いけど、こっちに来て!」
てゐはそう言って耳でるーみあの足を掴む。
「え?てぬ一体何を言って、うわあああああっ!」
そのままてゐはるーみあを強引に引きずった。
るーみあはてゐに引きずられる形で無理矢理連れて行かれる。
「アツ!後頭部アツッ!後頭部ハゲル!ちょっと待っててぬ!」
るーみあは必死でてゐに呼びかける。
「説明している時間は無い!とにかくブリッジに来て!」
てゐはそう言って更に引きずるスピードを上げる。
結果、摩擦熱が更に大きくなり、後頭部の辺りから何か煙が上がり始める。
「ちょ、燃える!絶対これ燃える!スピード落としてなのか!」
るーみあが訴えるがてゐは立ち止らない!
そのままてゐはブリッジに続くドアまでるーみあを引きずっていった。
「え、えーとてんこちゃん、状況飲み込めてる?」
「全然解りません。誰か教えて下しあ。」
残されたゆっくり二人は、ただ混乱するばかりであった。
~☆~
「ダイビングヘッドバッドォ!」
ドガアッ!
ブリッジに続く最後のドアを、てゐは回転しながらの頭突きで強引にぶち破る。
「てぬ~いささか乱暴すぎるんじゃないのかー?」
後ろではるーみあがそんな事言っているのをてゐは無視する。
てゐは突入したブリッジ内を見回した。
…一言で言うなら、そこは惨劇だった。
まるで部屋中をひっくり返したようにあちこちに物が散乱しており、
その中央には、残骸が煙を上げて燃えていた。
…その残骸がどう見ても掃除機にしか見えないのはスルーしておこう。
「う、うう…。」
呻き声が聞こえる。
声は、いかにも艦長が座ってます、と言った雰囲気の椅子から聞こえてきた。
,′ .' ノ ノ
廴 ___‘ー‐ ´__ 彡'
く_ノ ...._つ
`_つ..`¨.フ. .
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./ ヽ _ン ヒ_ン )
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'.、 .;' ', i ´ハ_ _ハ ノ ♯ !,!ヽ,.ヽ.
`Y i Vレ'7;__,.!/ V !__ハ ハノ., ',ノ';
_ノ ♯i=ハ ' ( _] [ ンハ.ノi i
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∠._ ノ |=ヽ、 ♯ ヽ _ン ノ!i レ
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' | !>;`ヽ、「、,ハ.| |
近づいて見ると、そこには一人の胴付きゆっくりが黒コゲで座っていた。
「おい、ちょっとアンタ大丈夫!?」
てゐはそのゆっくりに問いかける。
そのゆっくりは、首だけをゆっくりとてゐの方へと向ける。
どうやら生きては居るようだ、すぐに手当てが必要なのは確実だが…。
そして、そのゆっくりは力なく喋り始める。
「…何処の誰かは知らないけど、来てくれたのはせめてもの幸いだ…。」
「ちょ、何不吉な事言ってるのさ。」
「…アンタに頼みがある。」
そのゆっくりは、懐から一枚の紙を取り出した。
爆発から必死で守ったのだろう、その紙は端が焦げているだけで殆ど無事だった。
「何、これ。」
「その紙を…もし無事にこの船から脱出できたら…私の経営している会社に届けてほしい。」
「え?」
「そして、私の後を次いで完成させてほしい…。」
そのゆっくりの言葉を聞きながらてゐはその紙に目を通す。
…てゐの表情が急に渋いものになる。
「『らめぇ、うなぎプレイは新境地なのぉ』…これは間違いなく、AV業界に旋風を巻き起こす作品になる!」
「てい。」
ビリビリイッ!
てゐは渡されたその紙を、それはもう遠慮なくビリビリに破いてしまった。
「ゆがーん!お、お前なんという事を…!」
てゐが紙をビリビリに破いたのを見たそのゆっくりは、黒コゲから真っ白になってしまった。
「ちょ、真っ白になったけど大丈夫なのか~?」
「まぁ死にはしないでしょ。」
てゐはそう言うと、椅子から降りてブリッジの捜索を始める。
「はぁはぁ、やっと追いついたど…。」
「おい、OIてうぃ!一体何がどうなってるのか教えるべき!」
と、レミリアとてんこも続いてブリッジにやってくる。
てゐのほうはと言うと、ブリッジについていた台座型操縦桿を動かしていた。
「クソ!全然動かない…こりゃあ完全にいかれちゃってるねぇ…。」
どれだけ動かしても、何の反応が無いことを確認して、てゐは台座から飛び降りた。
「て、てゐさん、何をしてるんだど?まさか船を操縦しようとしてるんじゃないよね?」
れみりゃはてゐにそう問いかける。
てゐは実にはっきりとこう答えた。
「もしかしなくてもそのつもりだけど?」
「おいィ!おまえ、こんなデカイ乗り物を操縦したことあるのかよ!」
今度はてんこがそう問いかけてくる。
「ある訳無いに決まってるでしょう、まぁ一応私が操縦するつもりは…。」
「…う、うう…今まで気絶してたのか?」
「れいむ…川の向こうで死んだおばあちゃんが飛び跳ねているのを見たよ…。」
と、ブリッジの隅のほうでそんな声が聞こえてきた。
てゐ達は一斉にブリッジの隅のほうを見つめる。
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そこにいたのは、爆発を浴びた所為か黒コゲになったゆっくりれいむとまりさの姿があった。
肌が程よく焼けている事以外、このゆっくり達に大きな外傷が見られない。
「…ん?うわ!何だお前達は!」
目を覚ました二匹のゆっくりの内、まりさの方がすぐにてゐ達の姿を発見する。
「うちらはレスキュー隊です、あなた達を助けにしました。」
てゐは何の躊躇も無く、そのゆっくりに対して嘘をついた。
勿論、これ以上パニックにさせない為の嘘なのは言うまでも無い。
「え?私達は別にレスキュー隊じゃあ。」
「おりゃあっ!」
バキイッ!
空気を読まないるーみあちゃんには首筋耳チョップを食らわせました。
「うおッ!、い、一瞬、川の向こうで知らないれいむが飛び跳ねているのが見えたのか~。」
「それは多分れいむのおばあちゃんだね。」
…何か話が脱線したが、ここは無理矢理軌道修正を行うとしよう。
「と、とにかく、お前達は私達を助けに来たって事でいいんだな?」
「おっしゃるとおりでございます。」
操舵手まりさの問いかけに、てゐはそう答える。
「でもまぁ、この船に乗っているゆっくり全員を助けるとなると、流石に一筋縄には行かなくてね、
なんとか操縦してどっか安全な所にこの船を着地させようかと思ったけど、舵はホラ、この通り。」
てゐの視線の先には、壊れてしまった台座型の舵が。
「うわああああああ!船の舵が!」
「こ、これじゃあ船を操作することはできないよ!」
壊れた舵を見たゆっくり二人は思わず叫んでしまう。
「ハイハイ、そこで慌てないで。」
てゐはそんな二人をなだめながらこう問いかけた。
「で、ちょっと聞きたい事があるんだけど、この船には、何か緊急用のシステムとかってあるの?
例えば、予備の操縦システムとか。」
その質問を受けて、まりさとれいむは顔を見合わせる。
「…まりさ、この船に緊急用のシステムってあったっけ?」
「…う~ん、そんな都合の良いシステムなんて積んでなかったような…あ。」
「どうしたのまりさ?」
「レスキュー隊さん、緊急システムとか、そういうのとかとはちょっと違うけど、こういうのならあるぜ!」
まりさは何か思い出したような顔をすると、ブリッジに向かって走り出す。
そして、お下げでコンソールのボタンを押すと、ブリッジの中央から何かがせり出してくる。
「こ、これって…!」
せりあがって来たのは、海賊漫画では欠かせないデザインの、車輪型の舵であった。
「へぇ、こんな物まで付いているのかい、この船は。」
てゐはその舵を色々な角度から眺めている。
「元々この船は人間の国の船を大改修して作られたものだからな、
だからこんな物まで付いているのさ。」
「へぇ、れいむはこの船で長年クルーをやってるけど、こんなものが付いてるなんて始めて知ったよ。」
「でもこれは使えるど!こいつを使って早速アンタが舵を…。」
「…いや、それは難しいかもしれないな…。」
『え?』
操舵手まりさの言葉に、れみりゃ達は目を点にする。
まりさは、舵の前に近づくと、こう質問を投げかける。
「…お前達に率直な質問をする、コイツの操縦がまりさにできると思うか?」
その質問を聞いた全員が、さっきのまりさの言葉の意味を理解してしまった。
まず、舵のある位置がちょうど人間の胸の高さにある。
操縦するのが人間なら問題は無いだろうが、操舵手まりさは胴無しゆっくりだ。
少なくとも、舵に捕まるには自分の身長の7倍くらいの高さまで飛ばなければいけない。
なんとか舵につかまれたとしても、今度は操縦が大変だろう。
車輪タイプの舵なので、回転に振り回されて捕まるのだけでも一苦労、
口やお下げを使うにしても、着陸に絶対必須の微妙な操作が出来るとは思えない。
「そっかそういう事かど、胴無しのゆっくりはこのタイプの舵は操縦できないんだど…。」
「そういう事だ、まりさが無理してこの舵を操縦しようとしても、目を回すか振り落とされるのが目に見えてるんだぜ。」
操舵手まりさがそう言うと、周囲の空気が何だか少しだけ重くなったような気がした。
「それだったら私が操作すると言うのはどうですか?」
と、次の瞬間、てんこがビシいっ!と手を挙げた。
「お前もレスキュー隊員の一員か?」
そのてんこに対して操舵手まりさがそう問いかける。
「私は古代から居る通りすがりのレスキュー隊員だべ。
私ならこの舵を簡単に操作できる、まぁ見てな。」
てんこは自信満々にそう言って舵を握ろうとする。
「…いや、てんこ、アンタは操作しちゃ駄目。」
しかし、その前にてゐが舵の前に立ちはだかる。
「おいぃ!てゐ!いきなり何を言っているのか解らないんだが!?」
「むしろソレはこっちの台詞、あんたが操縦したら舵を壊しちゃうのが目に見えてるよ!」
てゐはてんこに向かってそう言い放つ。
「その意見にはれみりゃも賛成だど。」
れみりゃもてんこの後でウンウン頷いていた。
「…お前らの言葉で私は深い悲しみに襲われた…。」
てんこは体育座りで地面にのの字を書き始めた。
そして無常にも、落ち込んでいるてんこの事は無視されて話は進んでいく。
「…じゃあ一体誰が舵を取るんだぜ?」
まりさの問いかけに対して、てゐはあるゆっくりにたいして視線を送る。
「…出番だよ、るーみあ。」
「…ほえ?」
いきなりそんな事を言われた為か、るーみあの目が点になっている。
「ほえ…じゃないよ!何の為にお前をここに連れてきたと思ってるのさ!」
てゐはるーみあにズズイッと近寄って行く。
「…ああ!なるほど、そういう事だったのか~!」
そこで、るーみあがポン、と手を叩いた。
「そういう事?…操縦できる?」
「このタイプなら腐るほど操縦したことがあるよ!任せとけなのかー!」
そう言うと、るーみあはトテトテと舵にまっすぐ…
向かわずにコンソールに向かって走り出した。
そして、コンソールのボタンを勝手にいじり始めた。
「ちょ!お前!舵はこっちだぜ!そっちを弄ったって…。」
まりさがあわててそう言うと、るーみあがまりさの方へと向いてこう言った。
「はいはい、落ち着いて、まずは設定を変えなきゃ。」
「…は?」
まりさはるーみあの言葉に目を点にする。
走行しているうちに、るーみあの目の前に、まるでパソコンのキーボードのようなパネルが現れる。
「墜落中って言うのは普通に飛んでる時とは状況が違うからね、だからコンピュータ管制を少し弄くってやる必要があるんだよ。」
そう言うと、るーみあはすごい勢いでキーボードを叩き始めた。
一流のピアニストを思わせるその指裁きは正に神以外の何者でもない。
ブラインドタッチも様になっている、作者的にちょっとうらやましい。
「…設定を緊急着陸用に組み替えました。」
そうこうしているうちにモニターから突然声が聞こえてくる。
どうやらプログラムの組み替えはうまく言ったようだ。
「よし、後は舵を操作するだけなのかー。」
るーみあは満足げにそう呟くと、コンソールから離れた。
勿論、その目的を果たすためである。
るーみあが光の速さで目的を果たすのを、れみりゃ達は呆然とした様子で見送っていた。
「な、何なんだど、あのゆっくり…。」
「れいむ達でさえ難しくってそのままにしている船の設定をいとも簡単に書き換えてしまうなんて…。」
「…あいつにとっちゃあ、戦艦の設定変更なんてそんな難しいもんじゃないよ。」
そう言ったのはてゐだった。
「…て、てゐさん、あのゆっくりは…いったい何者なんだどか?」
れみりゃは羽でるーみあを指差しながらそう問いかけた。
てゐは不敵な笑顔を浮かべてこう言った。
「…あいつはさ、見てのとおり普段はなーんにも考えてないただの馬鹿なゆっくりさ、
だけど、ひとたび舵を握れば一流の船乗りに早代わり。
あいつの乗り物の操縦テクニックには昔、何度も助けられたものさ。」
「昔…ってまさかあのゆっくり!?」
れみりゃはるーみあの方を見る。
「人呼んで【船乗りルミアバット】…あいつの腕は今も鈍っちゃいない!」
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「よ~し!それでは出発しんこ~う!」
「…馬鹿なゆっくりなのも変わっていないみたいだな。」
てんこは冷ややかな目でるーみあ(と艦長)を見ながらそう言った。
「お前何最低な操縦桿握ってるのさ!」
即座にてゐがるーみあの後頭部に蹴りをぶちかます!
「お、おぉ~…。」
かなり効いたのか、るーみあは後頭部を抑えてうずくなる。
そして、すぐに立ち上がると、てゐの方を向いてこう言った。
「てゐー今のは効いたぞー!酷いじゃないかイキナリー。」
「これは酷いはお前の方だろうが!お前はそれを握ってどこに向かおうとしていたんだ!いろいろな意味で!」
「何って、船を操縦するつもりだったんだけど?」
「あれで操縦してもヘブン状態に行き着くだけじゃないか!艦長だけが!」
そんなてゐとるーみあのやり取りを見てれみりゃ達は全員で思う。
『駄目だ、こりゃ』と。
「やっぱりあいつらは当てにできねぇ、私が舵を取るしか無いのは確定的に明らか。」
てんこがそう言って舵を手に取った。
「駄目だど!舵を壊す気かお前は!」
それをれみりゃが必死で舵にしがみ付く!
「おいぃ!舵を渡してくれませんかねぇ!」
「それだけは絶対にできないど!」
そして、れみりゃとてんこの舵の奪い合いが始まった。
その様子を見て、るーみあが舵に近づいていく。
「お前たち落ち着いたほうがいいよ、こういうとき、舵の奪い合いになって舵を壊しちゃうのはお約束のパターンなのかー。」
そう言ってるーみあが舵まで位置、二歩のところまで近づいたその時だった。
コケッ。
るーみあは何にも無いところで躓いてしまったのだ。
「お、おわあっ!」
こけてたまるかとるーみあの手は宙を掻く!
ガシッ!
るーみあの手は何かを強くつかんだ!しかし!
バリバリバリイッ!
その何かは凄い勢いで敗れてしまい、るーみあは結局うつぶせに倒れてしまった。
跡に残されたのは、服の切れ端をその手に持ったままうつ伏せに倒れたるーみあと、
目を真ん丸くさせているてゐ達と。
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ヽ_ri 人 ヽ _ン ヽ 人 '、
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ヽ_ ノ ヽ |
ヽ |
るーみあに服を破られて、上半身すっぽんポンになってしまったてんこであった。
「…おぉおおおおおおおおおおい!」
怒りに駆られたてんこは、握っていた舵を思いっきり引っこ抜き――
どっがああああ!
そのままるーみあに向かって叩きつけた!
「ぐ、ぐはあっ!」
血を撒き散らしながらるーみあは壁に激突する勢いで吹っ飛ばされる。
「こ、この私にセクハラ行為とは本能的に短命タイプでしょう…?」
そう呟いたその直後、てんこは気づいた。
周りの連中が、絶望的な表情になっていることに。
ふと、自分の手を見ると、その手には、今しがた引っこ抜いた、舵が握られていた。
そう、てんこが怒りに任せてぶち壊してしまった舵が。
「な、なるほど、こういうパターンかぁ…ぐふっ…。」
壁にめり込んでいるるーみあは虫の息でそう呟いた。
その直後、その場にいたゆっくりはてんこを除いてこう叫んだ。
『てんこぉおおおお!お前何してくれてるんだぁああああああ!』
電脳空間航行船 うー戦艦。
遭難決定。
続く
- おお……
胴体の有無の設定が、久々良い感じに働いて燃える展開―――と思ったら最低だw
普通に怖い状況の中、いつものやり取りが面白いけど、これは次回が気になる。
ハッカーの人間とルーミアとがどんな関係なのか、両者どんな決着が見られるのか他の市です -- 名無しさん (2010-08-25 21:54:20)
- やっちまったw
これからどうするんだこいつらw -- 名無しさん (2010-08-27 07:26:38)
- 台の上で身体を傾けて操作って言うのなにげに斬新 -- 名無しさん (2011-02-02 17:19:47)
最終更新:2011年02月02日 17:19