『ゆっくりしていってね!!!』略して『ゆっくり』。
僕とこの頭だけの不思議な生物との交流はまだ始まったばかり。仲良くなれたかというとちょっと?と思う程度だ。
でも新たなるゆっくり、みのりこが仲間になってくれたおかげで僕の心はこれ以上ないくらい弾んでいる。
僕のトレーナーとしての道はここからはどんどん進んで行く、どこまでもこのゆっくりたちと共に。
?「しずはがやられたようだな……」
?「ふん、やつはこのぐんだんのなかでもさいじゃく……あたいさいきょー」
?「人間ごときにまけるとはHardの面汚しよ……」
第四話「逆襲のHard軍団!?」
旅もそろそろ慣れてきたころ。
ゆっくりトレーナーとしての旅を続ける僕はジムリーダーが構える次の町コウマへと続く道を進んでいく。
その道中僕たちは通りすがりのゆっくりトレーナーに声を掛けられ絡まれて、ついでに勝負を挑まれたのであった。
「いけっ!れいむ!たいあたり!」
「ゆっくりぶつかっていくよ!!」
とはいえ僕だって一介のゆっくりトレーナー、断る義理も理由もない。
それにあのしずはを倒したことで今の僕達はノリに乗っている、今なら負ける気がしない!
「どっかーーーん!!」
「ゆぎゅう!」
「ああ!僕のてゐが!!」
れいむのたいあたりは相手のてゐに見事に決まり、てゐはそのまま目を回してダウンする。
この様子だと戦闘不能だろう。相手のトレーナーはすぐにてゐを自分のゆっくりボールに戻した。
「よーし、これで僕の勝ちっと」
「ま、まった!!こっちはまだゆっくりをもってるぞ!」
おっとそうだった、ちゃんと相手のゆっくりを全員倒さないと勝ったことにはならないんだたっけな。
だが調子に乗っているれいむに向かうところ敵なし!と、言いたいところだけど………
「よし!れいむ戻れ!」
「ゆゆっ!?どうして?」
「いや、こいつの実力を試してみたくなってな」
そう言って僕は腰につけていたもう一つのゆっくりボールを手に取る。
昨日仲間になったばっかのみのりこの実力、見せてもらおうではないか!
「いけっ!ゆっくりみのりこ!!」
「秋らめないわっ!!」
僕がボールを投げるとボールの中からみのりこが飛び出す。
一対一のシングルバトルだがれいむはボールに戻りたくないようなので僕はれいむを両腕で抱えあげた。
「うっ!見たことないゆっくりだ!それじゃいけっ!めーりん!!」
「それってどういうことよ!」
何故かみのりこが相手に攫みかかろうとしているがトレーナーバトルではダイレクトアタックは認められてないので大人しくしてもらおう。
僕がいきり立つみのりこを押さえている間に相手は次のゆっくりを繰り出した。
「じゃおおおおおおおおおん!!!!」
「お、このゆっくりは……」
初めて見るタイプのゆっくりなので僕はすかさずゆっくり図鑑を開いてみた。
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, '"´ ____/ヽ.__ ヽ.
i \ 龍. / i.
,ゝ. 、 |,/\| ノ_,ノ,
.,':::::`"''::ー`ーー--─::::::''::"´:::::ヽ.
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|:::::|:::::|:::::;イ -‐‐ ー- |-!ヘ;」
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|::::::::::::::::i:::〈:>,、 _____,'J,.イ::;{、_;!
|::::::::i::r´ ̄〈::Yヽ ---イ-、ヽ〈Yノi
|::::::::i/ }ンゝ ヽ(><)、 }><{ ゆっくり図鑑 NO,017 めーりん
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ねることが だいすきな ちゅうかまん つうしょう ちゅうごく
いぜんは 12じ ちょうどに ねむれる とくぎを もってた
たくさん あだなを つけて もらってる にんきもの
図鑑の画面ではぐっすり眠る姿が映し出されているが実物はやたらじゃおじゃお言いながらはきはきしている。
まぁ何もかもデータ通りじゃないだろう、そう思って僕はすぐにバトルに集中した。
「よしっ!みのりこ…………ええと」
しまった、こいつを捕まえるとき一方的に攻撃してたからこのみのりこが一体どんな技を使えるのか全然わからない。
その躊躇いが隙を生んでしまったが相手のめーりんはその隙の間も何もせずじっと構えていた。
「……防御型……か?みのりこ!お前一体何が出来る!?」
「え、ええと、の、のしかかり!!」
「じゃあそれでいこう!いけっ!のしかかり!」
隙の恩恵にあずかり僕はすぐに命令を出し、みのりこは勢い良くジャンプしてめーりんに襲いかかった。
「くらえっ!さんだーなんとかあたーーっく」
「じゃお……じゃおーーーん!!!」
重力の力も加わってみのりこの圧し掛かりはめーりんの真上にクリティカルヒットした。
これが私の力だと言わんばかりのしたり顔をするみのりこだったが、扁平状になっていためーりんが突然元の形に戻りみのりこを吹き飛ばしたのだ!
「きゃあああん!!!」
「みのりこっ!!」
突然体が浮き上がったのでみのりこは受け身が取れないまま勢い良く地面にぶつかり、目を回して動かなくなってしまった。
いや、でも浮き上がったのはせいぜい数十センチ程度だ。気絶するには至らないはず!
「カウンターだじゃおん!ダメージは倍返しだよ!」
「ば、倍返し!?」
よく見るとめーりんはまだ少し扁平のままでダメージを受けていることが分かったが、みのりこはその倍のダメージを喰らったというのか。
ダメージを二倍にして返すなんてゆっくりの技とはなんと奥深いのだ。物理的にあり得るのだろうか。
「ゆ、ゆぅ……」
「みのりこ!大丈夫か!?」
「ええ……油断したわ」
戦闘不能になってしまったのかと思っていたがみのりこは目を覚ましゆっくりと起き上がる。
しかしどこかふらふらしておぼつかない様子をみるとやはりあのカウンターは相当堪えたようだ。
「これじゃ下手に接近戦しかけるのは命取りね…」
「他に何かないのか?」
「ふふ、あるわよ。とっておきのが……」
ふてぶてしい笑顔を見せてみのりこはじりじりとめーりんとの距離を詰めていく。
それに対してめーりんは再び余裕の表情で何もせずじっと構えていた。
「どっからでもかかってこい!返り討ちにしてやるぞ!」
「ゆふふ、それはこれを見てから言いなさい!!」
そう言ってある程度までめーりんとの距離を取ると、みのりこは突然飛び上がって帽子から何枚かのはっぱを取り出す。
そしてめーりんに狙いをつけそのはっぱを勢いよく投げナイフのように投げつけたのだ!
「はっぱカッターーーー!!!」
「な、なにぃ!?」
どれだけ強固に身構えていたとしてもこうした遠距離攻撃を綺麗に反撃することは出来ないはずだ。
めーりんも回避行動を取ろうとするがやはり技の出を見てからでは遅く、構えを解いた時にはもうカッターは目の前まで迫っていた。
「いっけええええええええええええ!!!!」
「じゃ、じゃおおおおおおおお」
そのままカッターはさくやさんのお仕置きのように額に刺さって行くかのように思えた。
だが、みのりこのはっぱカッターはめーりんの額に当たったものの刺さることなくポインと跳ねて地面に落ちていった。
「………あれ?」
「あっ……勢いが足りなかった」
足りなかったって言ってもめーりんとの距離は所詮二メートルほど。どんだけ力がないのだと言いたくなる。
もしかしたらさっきのカウンターでみのりこがやられなかったのはパワーが足りなかったからとでもいうのか!?
「い、今がチャンス!!めーりん!けたぐり!!」
「じゃおん!!」
あの一撃で倒せると過信しすぎていたのかみのりこは無防備のまま落下していき、着地の瞬間を狙われめーりんの攻撃をもろに喰らってしまった。
「ゆぅぅぅ~~~!!」
「みのりこぉ!」
めーりんの攻撃によってみのりこは大きく吹き飛び、何回か地面を跳ねた後に再び地に伏した。
打撃によるダメージはそれほどでもない。だが吹き飛ばされたときに地面と何回も擦れたため帽子も肌もかなり傷ついてしまったようだ。
「ゆ、ゆぅぅぅ……わたしは……まだ」
「駄目だ!そんな怪我じゃ戦わせられない!」
「いや意外と大丈夫だって私体力自身あるしそれに人気も、あ~しまわないで~」
何か余計なことを言っていたようだが気にせずに僕はみのりこをゆっくりボールに戻す。
そして後ろで待機させておいたれいむを戦場へとほおりこんだ。
「やっぱれいむの力が必要みたいだね!!」
「油断するなよ!めーりん!」
めーりんは再び反撃の構えを取りれいむの攻撃に備える。
先ほどのれいむの戦いを見たからかこちらの動きを結構警戒しているようだ。だがそれにも付け入る隙はある!
「れいむ!オウレイフウカノン!!!」
「ゆっくりわかったよ!!」
れいむのリボンから送られる風を受けてめーりんは吹き飛ばされはしなかったものの反撃のための体勢が著しく崩れる。
今こそ攻撃のチャンス、僕は全身全霊を込めてれいむに指示を出した。
「いっけえええ!!れいむ!!たいあたり!!」
「ゆっくりぶつかっていくよ!!!」
「じゃおおっ!?」
れいむは一気にめーりんとの距離を詰め、その勢いのままめーりんに突撃する。
だが流石防御型、めーりんはれいむの一撃で吹き飛ぶことなく破れかぶれに両もみ上げでれいむを突き飛ばした。
そしてそれを追撃しようとめーりんはすぐに体勢を整えてれいむへと一直線に向かっていった。
「ゆぅっ!!しまった!!」
「いや!いい距離だ!れいむ!オウレイフウカノン!!!」
めーりんが攻撃するのが先か、れいむが攻撃するのが先か、その一瞬の勝負は僕らが先手を取った。
相対速度のこともあってめーりんは風の影響をより大きく受けて吹き飛んでいく。そして地面に落ちた時にはめーりんはもう目を回して動かなくなっていた。
「め、めーりん!!!」
あたふたして相手のトレーナーはめーりんに駆け寄るが、バトル中にトレーナーが気付けするのは反則だという事を思い出したのか彼はめーりんの前でまごまごするしか出来なかった。
そして三分が経ちめーりんは未だ目を覚まさない。これはもう勝負がついたと言っていい。僕の勝ちだ。
「う、ううう、負けたー」
「ええと、それじゃ賞金とかかな……」
初めての賞金受け取りで少々不安だったが相手はめーりんをボールに戻すとすぐに僕に賞金を渡して気恥ずかしそうにどこかへ立ち去ってしまった。
中々こなれたところがあるのを見ると結構負けてるのかなとか思ってしまう。そう思うと少し切なくなってきた。
「とりあえず勝ちは勝ちかぁ」
「ゆっくり誉めてね褒めちぎれ!!」
「分かったよ、いーこいーこ。よ~しよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」
れいむを思う存分撫でてその柔らかさを堪能したところで僕はれいむを傍に置き、ボールからみのりこを出した。
結構傷が残ってて見てるだけでも痛々しい、なので僕はスキンシップも兼ねて支給品の傷薬を塗ってやることにした。
「ゆぅぅ、私はまだ戦えたのにぃ、うひぃシミルゥ」
「そんなこと言っても無理はさせられないよ」
それにしても傷薬を吹きつけていくたびに傷がどんどん塞がっていく光景はある種のスプラッタのような凄まじいものがある。
ゆっくりへの疑問と恐怖を思い浮かべているうちに大体の傷が塞がったので次に僕はみのりこの髪と帽子をセットしてあげた。
「ゆんゆんゆ~ん」
「動くなって、はは」
みのりこの可愛げな様子が見れて少し楽しいが横でれいむが何故かつまらなそうな顔をしている。
それを直接的に表すかのように僕が髪の毛のセットが終わらせるとれいむはもみ上げをパンパンと叩き、僕達に向かってこう言い放った。
「はい反省会をはじめま~す」
「へ?反省会って一体何を」
「そいつだよ!さっきの戦いは何だったのさ!!」
れいむはもみ上げでみのりこを指さし激昂する。
まぁ確かにいい戦いではなかったけれど、初戦だったんだし大目に見てあげるべきではないだろうかと僕は思う。
「なんなのあのはっぱカッター!射程短すぎだよ!」
「ゆぅ、私は豊穣をつかさどるから葉っぱを操るのはにがてなのよ!そう言ったものは姉さんの分野だし……」
「言い訳がましい!!」
その後もれいむはがみがみと嫌み皮肉愚痴批判不人気飯がまずい僕の髪の毛がちくちくするネタがないし時間もないと何分にもわたってみのりこに言い聞かせる。
正直ここまで怒るのは少しやり過ぎだろう。でもその分みのりこに対して期待と言うのもあったのかもしれない。
とりあえずこのままにしておくのも気分が悪いので僕は右手にれいむ、左手にみのりこを抱え自分を壁にするようにして出発した。
「ちょっと!話はまだだ、まだ終わらんよ!」
「いい加減にしろよ!強くなったからって偉そうに」
少し戒めようと僕はれいむを強く叱るが、それでもれいむのみのりこに対する文句は止まらず少しづつ気が滅入りそうになる。
確かに僕だってみのりこの弱さに失望したさ、でも見捨てるほどじゃない、才能はあるはずなんだ。
「………確かに私は姉さんの手伝いばっかで自分を磨くことはあまり出来なかった……だからこんなに弱いのよ」
「みのりこ……」
弱弱しいみのりこの口調に少し不安になる。やっぱり身に合わなかったとか言って僕達から離れたりしないだろうか。
でもそんな心配は杞憂に終わった。
「だから強くなればいいんでしょう!?やってやるわよやってみせるわよ!」
ふっきれたというかぶち切れたよう強い口調でみのりこは僕越しにれいむに喰ってかかる。
れいむもその言葉にみのりこと同じくらい強い口調で言い返した。
「あっそう!だったらさっさと強くなってね!!」
「分かりましたよ!シュンさん!今から私戦います!」
「わ、分かったけど戦う敵が……」
と言いかけたところで都合よく進行方向にある茂みがごそごそと揺れ動いた。
それを見るとみのりこはすかさず僕の腕から降り、意気揚々として攻撃態勢に入った。
「さあ!かかってきなさい!!」
元気が出たのはいいのだがマチョリーとかジェノしずはなどの強すぎるゆっくり、もしくは普通の野生動物が出てきたら大変だろうなぁ。
そうなった場合、意地になって戦おうとする可能性があって少し怖いのだが茂みからは至って普通のゆっくりナズーリンが顔を出した。
やせいのナズーリンがあらわれた!!!
と言うところだろう。ただし、そのナズーリンは体の至る所に傷を負い足がおぼつかない様子だったが。
「え、ええと」
「あっ!なずーりんじゃない!!!五面中ボス型の!どうしたのよ!」
知り合いなのかみのりこは先ほどの闘志をどこかにほっぽり心配そうな表情でそのナズーリンに近づいていった。
正直僕はそのみのりこの行為に少し安心を覚える。流石に瀕死の相手を痛めつけるのは気が引けるものだ。
「うう、や、やつらが、再び……やってきて、私達を……ぐっ」
「やつらって……まさか!!!」
「そうだ……姐さんが……いなくなったから……再び活動を……」
「なんてこと!!」
なんだか二人で話が進んでいるが僕とれいむは状況が今一つかめずきょとんとするしかなかった。
でもみのりこの表情を見る限り、並々ならぬことが起こったくらいは想像できる。
「下手したら……人間の方にも……被害が…………うっ」
「なずー!?……気絶したみたいね」
「一体何が起こったんだ?」
「奴らが……Hard軍団が再び……ゆっくりしてる場合じゃねえ!」
そう言って気絶したナズーリンを木の下でゆっくりさせるとみのりこはわき目も振らず森の奥へと駆け抜けていく。
まだ傷も治ったばかりなのだから一人で行かせるのは危険だ。僕もすぐにみのりこの跡を追っていった。
「……これは」
「ひどいね」
みのりこを追い続けていくうちに周りの景色がどんどん変わっていくのに気付き、僕たちは愕然とした。
舗装された道はタイヤのようなもので抉られて、木々はなぎ倒され草は派手に切り刻まれている。
これほどの広範囲破壊活動、現実目の前に広がっているがどうしても信じられなかった。
「ば、ばいく戦艦だよ!イクさんだよ!!この世はバイク乗りの楽園になったんだぁーー!!」
「いやVのことは分からないんだ」
知ってるのはXや種あたり、後はGジェネレベルの知識だ。
関係ある話や関係ない話をしながら走っているうちに僕はようやくみのりこの姿を見つけ足を止める。
その辺りも道中と同じく酷い有様だった。もうここまでくれば現実として認識するしかない。
「みのりこ!一体何なんだ!これは!」
「ゆっ……奴らが来るかもしれない!気をつけて!」
みのりこはそう言って僕らに注意を呼び掛けるが、その『奴ら』とは一体何なのだ?そいつらがこの大破壊を生みだしたというのか?
多大な緊張がこの荒れた森に広がっていく。そして森の奥から耳をつんざくような不快な音が多重に聞こえ始めた。
「く、来るっ!!」
「うわあああああ!!!」
森の奥から猛スピードで三つの物体が飛び出し、僕は思わずその場に屈みこんでしまった。
三つの物体は同時に音楽を鳴らしさらには物凄いエンジン音とドリフト音をたて、それらが重なり合って酷い不協和音となる。
けれどそんな中、不思議なことにとある妙な音だけはその爆音にかき消されず耳に残った。
「スィー?」
恐る恐る目を開けてみると三つの妙な物体が辺りのものを蹴散らしながら縦横無尽に駆け抜けていた。
それは直方体の箱のようなもので側面に四つのタイヤがくっついている非常にシンプルなデザイン。その上にはサングラスをかけたゆっくりが生意気そうにゆっくりしていた。
「Hard軍団!!いい加減大人しくしなさい!!!」
「へん!なにかとおもえばあきしまいの芋うとのほうじゃないか!!」
「あたいたちになんかようか!?」
「ここを通りたかったらもみじ達をたおしていくんだな!!」
よく見ると変な物体に乗っているゆっくり達は何の変哲のないゆっくりである事に気づく。
ならばなんとかなるかもしれないと思い情報収集も兼ねて僕はゆっくり図鑑を開いた。
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i::〃::{ハ_ハ_,!V ハ レ'、i l::│::::::::i|
i:iソル ⌒ ,___, ⌒ 从|i::::::::::i
i:::::::i /// ヽ_ ノ /// ソ:::::::::::i
i:::::::ヽ、 ハ:::::::::::/
ヽルmm.っ、.,____ノmm:ハ_ハ丿
/'' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ ゆっくり図鑑 NO、124 きすめ
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あたま いがい かくれてる はずかしがりやの TENGA
くびから したが どうなっているか ふめい。 けれども
なまくびだけ じゃないよね そんな いきものが いるわけがない!
, へ
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,. '"´ /::::::::i:::::::::::::ト 、
, ' '´`ー-'----┘ `ヽ.
/ / _!__ ! , ', '.、
∠.,,_ ,' ´/___ハ /! ,!、 ; ',\
| ` i ,ィ´ レ' レ'r!、/ ! |-‐'
'、 ! /,!'、(ヒ_] ヒ_ン ハ!
i. ヽ. V ハ''" ,___, "'!ノ
ハ, )ヘ`ヽゝ、 ヽ _ン 人|
,' ヽ. _V>ソ`; ー-r='i´/ ゆっくり図鑑 NO,111 もみじ
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あやと はたての ぺっとの いぬまんじゅう
ひろしま めいか もみじまんじゅう との かんけいせいは うすい
ひょうめんじょうは きょうりょく かんけい だったらしいけど
かんぬしに かんけいを ひていされて ねたが なくなってきてるぞ
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> ゆっ⑨りしていってね!!! <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
T ̄ ̄\ ン ̄ ̄´ ア
〈 cl¬/フ |
ゝ ー  ̄ ̄ ` ‐ 〉
/ ` く
/ ! ! ; i 、 ヽ
| ハ ,ハ /!. /;、 '; i |
丿 !,`メ ∨ .i// ヽ ,ハ! 〈
´1,ハ(ヒ_] ヒ_ン ),レi ! |
トレ"" ,___, "" / i I i |
丿| l|、 ヽ _ン :' ,' .l レ'i (
V| レヽ、 ! .ハ.丨 .I ノ ヽ
レ/Ⅴ ` ー-─ ´レ' レノ レヽノ ヽノ ゆっくり図鑑 NO,015 ちるの(よーよーむver)
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ふゆに れてぃと いっしょにいる こおりの ようせい
まわりは ゆきだらけなのに なぜか いちめんの ちゅうぼすに ぐれーどだうん
いみもなく みちゆく ひとに けんかを うるぞ
「なんという中ボスラッシュ」
けれどこいつらが森を破壊し尽くしたというのなら油断はできない。
僕は一歩踏み出してみのりこと並び、そのゆっくり達と向かい合った。
「ああ?なんだ人間?もしかしてつかまっちゃったの?そんなちんけなやつに」
「髪あかっ、そめてんの?キャラづくりなの?」
「何その服だっせぇ」
「…………おいみのりこォォォ……こいつら一体何なンだァァァァ?」
中ボス三人組の心ない罵倒に流石の俺もキレた。どこでもいいから屋上来い、ゆっくりでも容赦しねぇぞ。
「あ、ええと、こ、こいつらはHard軍団……み、道行く人に襲いかかる厄介なやつらよ」
「ハァァドォォ???」
と、みのりこが僕を見て酷く震えているのに気付き俺、いや僕は少し気を落ち着かせた。
あんまり威圧を与えちゃいけない。これじゃ僕が悪役みたいじゃないか。
「とにかく!!こんなことはもうやめろよ!森を荒らすなんて無意味!無駄!とにかく非生産的だ!!!」
僕は一応正義感のおしつけじゃない正論を吐いたつもりだが中ボス三人組はそれに反論するかのようにエンジン音をふかせ僕達に威嚇した。
「あばれたりないんだよッッ!!あのしずはが解散を宣言して以来ずっとキスメたちは日陰ものさっ!」
「でもあのしずはももういないッ!これからは中ボスらしくみちをじゃましてやるゥ!」
「しずはだと?」
こいつらあのすっごくおぞましかったしずはの仲間だったのか。
そう言えばしずはも中ボスだったようなそうでもないような、よく覚えていない。
しずはがいなくなったせいでこいつらが暴れ出したというのなら僕にも責任がある。だからなんとかしないと。
「お前らそんなこと言ってこれからも人に迷惑かけ続けるつもりか!?」
「あ?もみじ達Hard軍団はそんなこと気にしねぇ、人気が出るまで一年中暴れてやる!」
「もう姉さんの真似ごとはやめなさいよ!!このバカ!」
「アタイは馬鹿じゃねぇーーー!!」
みのりこも声を荒げて中ボス三人組に詰め寄っていく。
自分の姉の仲間だけど、いや、だからこそこのような非道な行いを許すことが出来ないのかもしれない。
しかしその説得も中ボス三人組は聞く耳もたずといった様子で結局空回りに終わった。
「ゆぅぅ……姉さんがいたころはもっと誇り高かったはずなのにぃ」
「みのりこ、言ってもダメならやるしかない」
あいつらも通りたければ倒してみろとか自分からほざいてたんだから丁度いい。
みのりこの特訓にもなるし憂さ晴らしにもなる。先ほどのことはもうオコッテナイケドネ。
「そんじゃあいつらをぶっ倒すぞ!!いけえええ!!れいむぅぅぅ!!!」
「さっきからずっと空気だったよ!!」
こうして再び戦いが始まった。
3対2で人数的には不利だけどれいむがいればなんとかなるだろう。あいつも結構ツンデレなところがあるからしっかりとみのりこのサポートをしてくれるはずだ。
「そんじゃこっちもいくよぉ!!」
「「ヒャッハー!!!」」
かなり連携が取れているようで三人はその掛け声に合わせて同時にこちらへ向かって突進してきた。
……あのへんな物体に乗りながら。
「お、おまえら!降りて戦えよ!!」
「しったこっちゃねえ!きすめは体桶だからのらねぇとうごけねぇんだよ!」
中ボス三人組が乗っているスィーと妙な音を出している四輪の物体はそれほどゆっくりしていない速度で僕達に向かってくる。
それに立ち向かおうとみのりことれいむは互いの髪をからめてぎっちりと体を固めあった。
「れいむはそのままみのりこの移動サポートを!真横にさけたら至近距離からカッターだ!!」
「「ゆっくりわかったよ!!」」
例え避けられなくても質量のスクラムで相手のシンプル車両を止めて敵のゆっくりを吹き飛ばすことが出来るはず。
そう思って二人は相手のシンプル車両を待ち受けていたがその避ける直前という所でシンプル車両は大きく跳ね上がり二人の頭上を飛び越えていった。
「な、なにぃ!?」
そのまま方向転換して背後から攻めるつもりか。
けれどそのシンプル車両、ええいスィーと音を立ててるからスィーでいいや、スィーはスピードを緩めることなく寧ろ加速していく。
そしてその先にあるのは。
「むこうずね!!」
「アゴォォッ」
僕だった。
キスメの乗ったスィーの角が丁度弁慶の泣き所に当たり、痛みで僕はその場を転げ回る。
というか冷静に状況を判断してる場合じゃねぇ!!痛い!めっちゃ痛い!
「て、て、ててめえらとととととれーなーににダイレクトアタックすするるなんてて」
「ああん?指揮系統を潰すのは立派な戦略じゃねぇか」
「おおいやだいやだ。人間がつくったルールを野生におしつけるなんて」
「3対3でむしろじょうきょうはよくなったんじゃないのぉ?」
飄々とした中ボス三人組の物言いに激しい憤りを感じるが言われてみれば確かにその通りなのである。
ゆっくりバトルにおけるルールは全てトレーナー間でのみ適応される。それを完全に失念していたとしか言いようがない。
「ぐ、ぐぐぐ……れいむ!みのりこ!離れずに単独撃破を狙え!」
それでも痛みに耐えながら僕は最低限それだけを二人に伝える。
スィーによって相手の機動力は高くなってるため迂闊に一人になるのは危険だからだ。
けれど痛みでもう状況がうまく判断できない。だから僕は二人にその一つの命令しか伝えることが出来なかった。
「うおりゃああ!!」
「とぉぉ!!」
それでも二人はよく戦ってくれている。
二人は僕の指示のままに二人一緒でもみじの乗るスィーを難なくかわし、次に襲ってきたキスメを二人がかりの圧し掛かりによってスィーから叩き落とした。
自分の脛を痛めつけたキスメを倒してよくやったと僕は内心ほくそ笑んだが、もみじとちるのは二人を挟み撃ちにするように突進していった。
「よけろぉぉ!!!」
「うおおおお!!!」
右に避けるか左に避けるか意見が違ってそのまま敵の攻撃をを受けてしまうのではないかと危惧したが、二人は互いに頷きあうと勢いよく右にジャンプしていく。
これで回避できる。それに上手くいけばスィー同士ぶつかって同志討ちを狙えるはずだ。
「く、くぉぉぉ!!!」
「よけろぉぉぉ!!」
二つのスィーは互いにハンドル(?)を回し擦れ合いながらもなんとか全面衝突を避けた。
相手のペースは乱れまくり、これなら勝利も目前と思ったその矢先であった。
「うらあああ!!くらええええ!!」
「「うわあああ!!!」」
回避して気が緩んでいたれいむとみのりこに向かってちるのがすれ違いざまに氷の息吹を吹きつけたのだ。
それほど強力な攻撃には見えなかった。けれどみのりことれいむは体中霜だらけになり寒そうに肌を寄せ合いながら口をガタガタ震わせている。
「ささささささささぶぶさぶぶうう!!!」
「ぎゃーーー!!ふゆがぁ!冬が来るぅ!!!」
「ふ、二人とも!!!」
この二人の寒がりようはあまりにも異常だ。
もみじは二人が動けないこの隙を狙い、スィーを方向転換させて二人を思いきり吹き飛ばしていった。
「ゆぅーー!!!」
「ふゆがぁーーーー!!!」
「おまえらあああ!!」
衝撃のせいで絡んでいた髪が解け、二人は離れた場所にぽてんぽてんと愉快な音を立てて落ちていく。
この状況で孤立なんかしたら恰好の的ではないか、それに妙な体勢で不時着したせいか怯んで動けない状況になってしまっている。
二人が痛めつけられるところなんて見たくもない。だから僕は痛みを必死にこらえ、二人を回収しようとスィーが駆け巡る場へと走りぬけていった。
「うおおおおおお!!!ふたりともぉぉぉ!!!」
「うっしゃあああ!!」
ちるのの凍える風、もみじのひっかきを受けながら僕はようやくれいむを掴んだ。
しかし僕がみのりこのもとへ向かおうとする前にキスメが転がりながらみのりこの元へと近づいて行ったのだ。
「この不人気がああああああ!!!」
「まちやがれえええええ!!」
意外にもキスメは僕の足よりも速く転がりこの足ではどうしても遅れを取ってしまう。
キスメはみのりこから一メートルくらいの距離まで来ると方向を変え頭を桶の中に収納して大きく飛び上がった。
「うりゃあああああああ!!!ロケットずつきィィィ!!!」
「ん……ゆ!?」
キスメが落下する直前にみのりこは目を覚ましたようだがこの距離はもうかわせないだろう。
どうすればいいんだ、落ちる前にキスメに何かぶち当てれば……
「ま、マスコットキャラだからってノーマッドみたいになげるなんてすんなよ!」
「流石にしねぇよ!」
いつの間にかれいむの方も目を覚ましていたようだ。
せめて僕が盾代わりになればと思ったが、そう事は上手くいかず痛みで足がもつれ、僕はその場に転んでしまった。
「み、みのりこ!!!」
「うおりゃあああああ!!!」
「くっ!!!こいやああああ!!」
キスメの攻撃が今にもみのりこに迫る。
けれどみのりこは全てを覚悟したのか避けようともせずその場に鎮座し、キスメの攻撃をゆっくりとした表情で待ち受けたのだ。
「なっ!こ、この!」
「ふっ……私は秋神のいもうと!!なめんなあああああああ!!」
キスメの頭は勢いよく桶から発射されみのりこの頭と激しい音を立てて衝突した。
一瞬だけ、時間が止まったかのようにキスメとみのりこの体は静止する。そしてキスメの体は重力に引かれるようにどさっと地面に落ちた。
「みのりこ……」
「私は……弱くなんかない」
そう言い残すとみのりこは目を回してその場に倒れる。
僕はすかさず立ち上がりみのりこを掴んで追いつかれないように森の中へ駆け込んで行った。
敵の一人は倒したが、こちらは一人軽傷に一人戦闘不能。確実に僕達の負けだ。
何気に初めての敗北だった。でも僕は敗北なんかより、自分のゆっくりが傷ついたことにしか気が回らなかった。
「あ~敗走なんてみっともねー」
「仕方ないだろ……そういう時もある」
運悪く僕達はトキハ方面に逃げ込んでしまい結局コウマへ行くことは出来なかった。
とりあえず僕はみのりこを治療しようとトキハのメディカルセンターまで訪れていたのであった。
「ふぅ、あそこでちるのの攻撃さえ受けなければなぁ」
「まぁいわゆるタイプってやつだよ。飛行タイプや草タイプは氷タイプの攻撃によわいのよ」
勉強になるがそれをゆっくりに教えられるのはどうかと思う。
とりあえずみのりこの治療が終わるまで僕達は近くのソファーでゆっくりするしかなかった。
「倒すべきはやっぱりちるのか」
「だねぇ、でも他の二人も侮っちゃいけないとおもうよ」
確かに、キスメのあのロケット頭突きは一撃必殺級だしもみじのあの素早い攻撃は避けづらそうだ。
キスメもみのりこの治療が終わるころには復活しているだろう。中々事態は良い方向には向かないものである。
僕は手足を伸ばし体の調子を整えた。
「……ふぅ」
「足のちょうしはどう?」
「もう痛みは引いてるよ、れいむの方はどうだよ」
「レンジでチンしたら治ったよ!」
ああ、霜が付いてたからね。うん。ほっかほかで触ると気持ちいいわぁ。
「……焼き芋のような暖かさだよ」
焼き芋という言葉から連鎖するように僕はみのりこのことを思い返す。
触ると気持ちよくて香ばしい匂いがいつも僕を楽しませてくれた。それなのに僕は彼女を碌に鍛えぬまま戦場へほうりこんでしまって。
後悔しかない。今はただ無事を祈るだけである。
「ツッコめよ!!」
「え?ああ」
何を突っ込んだらいいのか分からないまま時間は過ぎていき、ようやく治療が終わったのかみのりこが台に運ばれて戻ってきた。
少し包帯はつけているもののすこぶる元気そうで、僕はその姿を見て酷く安堵した。
「みのりこぉ!!」
「秋穣子復活ッッ秋穣子復活ッ!!」
「いえ~い帰ってきたわよぉ!!」
みのりこは包帯を振り切って勢いよく僕の胸に飛び込んできた。
焼き芋の臭いが周りに散らかってとても気分がいい。ああ可愛いなぁ、ほんと。
で、そんな風にみのりこを長い間撫で撫でしているとれいむが不機嫌そうな顔になって両もみ上げをパンパンと叩いた。
「はい、今回の反省会はじめま~す」
「またかよ」
もう愚痴を聞くのは嫌だから投げ飛ばしてやろうかと思ったけど、れいむはどこか真摯な表情で僕はそうしてやろうとする気力が失せた。
「……ひとつにかたまるのはいい考え、でもそれだと実質的に3対1になるとおもうよ」
「そうだな……それでちるのの攻撃を纏めて喰らっちゃったんだよな、けれど孤立するのはもっと危険だぞ」
意外と真面目なれいむの話に僕は戸惑いを覚えながらも反論をする。
とりあえず前のような愚痴吐き大会にはならなそうだ。
「だから戦いを2対1と1対1の比に分けるんだよ!!れいむが2でみのりこが1、これならなんとかなりそうでしょ!」
「………なるほど、いやでもそれは難しいぞ」
相手は高機動のスィーを乗ってヒット&アウェイ戦法を定石にしている。
元々分散している相手を規定数に分散させるのは容易ではないはずだ、僕がそう言うとれいむは酷くしょんぼりしたような表情になった。
「ゆぅ……これしかないとおもったんだけどなぁ」
「ちるのの攻撃さえ気をつければいいから二人で頑張ってくれ」
「いえ……その戦法……とってもいいわ!」
先ほどからずっと黙々と話しを聞いていたみのりこが突然そう声を張り上げたので僕達は驚きおののいてしまった。
「い、いいってなにか打開策でも思いついたのか?」
「ええ、問題はあのチームワーク、それをつぶせば戦いを分けることはできるわ」
みのりこの言うとおりだがそのチームワークをどうやって潰せばいいのか、そもそも僕達はまだあの中ボス三人組のことをあまり理解していない。
「……なぁみのりこ、Hard軍団って一体何なんだ?」
「昔のはなしよ、姉さんがまだ普通だったころの話……」
あのしずは、ジェノしずはになってからそう日は経ってないんじゃないかと言いかけたが話が進み始めたので僕は仕方なく突っ込むのをやめた。
「人気を得るためには力が必要、そう思って中ボス仲間を集めて作ったのがHard軍団なの。
発足した当時は中ボスらしく通行の邪魔をしてたけど……今のようにスィーに乗って三人がかりのリンチなんてしなかったわ」
リンチなんて人気者がやる事じゃないからなぁ。それでみのりこは色々幻滅してたわけか。
「それなりの規律があってそれなりの誇りがあった。あのころは結構充実してたのよ」
「じゃあなんで解散したんだ?」
「トレーナーのゆっくりになった方が人気になるって考えたからよ」
すっごく自己勝手な理由だな。
「それで姉さんは解散を宣言したけど他の二人はそりゃあ不満だった、でも姉さんはこの森のボスみたいなものだったから勝手に行動できなかったの」
「でもしずはがやられちゃったから」
「新たなメンバーを加えて再活動した……ということよ」
これで大体のことは分かった。
後はチームワークを乱す方法を考えるだけだ。元々荒くれ集団だというのならそう難しい話ではないはず。
「彼女らのことは私がよくしっている。だからその役目はわたしに任せて」
「そうか、それじゃあさっきと同じようにれいむといっしょにお願」
「いえ……私一人にやらせてちょうだい」
僕の言葉をさえぎりみのりこは強い口調でそう言った。
一人でやるということはあの三人の攻撃を一身に受け止めることになる、そんなこと病み上がりのみのりこに許可できるはずがないではないか。
けれどみのりこは僕のそんな制止も聞かず自分ひとりでやると言ってやまなかった。
「これは私達秋姉妹の不始末よ、だからその妹である私が責任を取らなきゃならないの」
「でもそれじゃあ」
「お願い、これは私のプライドとも関係があるの」
あんなチンピラ中ボスごときに遅れを取るだなんて恥さらしもいい所。
そう呟いてみのりこは僕に向かって深々と頭を下げた。
僕は許可を出すか否か激しく迷っていたが、れいむの『いいじゃん、やらせてあげたら?』的な表情を見てやるせなくなり折れた。
「わたしをしんじなさい!」
「分かった、任せるよ」
「それじゃ行くよ!!」
れいむの誠意のいい掛け声を受けて僕らはメディカルセンターを発った。
みのりこもれいむも僕の頼もしい仲間。ずっとずっと信じていこう。
最終更新:2012年09月19日 08:44