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れみりゃの育児奮闘記
「…ふぅ」
「う~…う~…」
…別に変なことをしている訳じゃないぞ。
俺とれみりゃは散らかった部屋の掃除をしているだけだ。
家に帰ってきたばかりで動きたくはないが、片付けなければ足の踏み場もなかったくらいだから仕方がない。
その犯人(?)は今はぐっすりと眠っている。
「…う~…まんまぁ~…さくやぁ~…むにゅむにゅ…」
清々しいくらいに気持ちよさそうな寝顔だな。
人がこっちでお前の後片付けに苦労しているってのに。
ま、生まれてまだ2日目だから仕方ないのだろうがな…。
「う~…おにいさ~ん…これどこにおけばいいのぉ~?」
「ああ、それは…ここに置いておいてくれ」
「う~…」
れみりゃもさすがに疲れているのだろう。
先程から動作の一つ一つがいつも以上に危なっかしい。
床が非常に乱雑になっているということもあって、何度も転んでしまったり。
それでも泣き言一つ言わない辺り、親として責任を感じているのかもしれない。
それはともかく、片付け終わらない事にはとてもゆっくり出来そうもない。
疲弊した体に鞭を打ち、俺は再び体を動かし始めた。
「終わったな…」
「おわったぞぉ…」
何とか部屋を片付け終わった俺とれみりゃ。
といっても、爽快感というものは俺にもれみりゃにもなく、残ったのは疲労感だけだった。。
それはともかく腹が減ったな。
「れみりゃ、今日はミルクプリンを…って、おい。どうした?」
俺はれみりゃの姿を見て驚いた。
れみりゃが涙を流していたからだ。
「うっ…うっ…ぐすっ…」
しかもいつもとは違うすすり泣き。
これには俺も動揺してしまった。
れみりゃが泣く時はいつも大声を上げて泣くからだ。
「おにいざ~ん…」
れみりゃが泣きながら俺の名前を呼ぶ。
何故泣いているのだろうか。
俺がちびりゃを怒るとでも思っているのだろうか。
注意しなければいけないとは思うが、それは出来る限りれみりゃに任せるつもりだった。
俺は四六時中一緒にいる訳でもない。
それに、れみりゃが親なのだから。
そこまで考えたところで、れみりゃの鼻声が再び俺の耳にまで届いた。
「でみぃ…ばんばぁにぃ…なでづど…がなぁ…」
鼻声だったせいで聞き取りづらかったが、れみりゃが何を言いたいのかは理解できた。
れみりゃは自信をなくしているのだ。
自分が本当に親になれるのかを。
…俺も親になったことなどない。
実際のところは親というものは俺にもよくわからない。
だが、部屋の中の物をぽいぽい投げていたちびりゃを注意していた時のれみりゃの姿はまさに親と呼べるものではなかったのだろうか。
…泣いていたけど。
まあとにかく、このままじゃ話しにくいことこの上ない。
「れみりゃ、ちょっと来い」
「ぐすっ…ぐすっ…う~…」
俺は床に胡坐で座り、れみりゃを呼ぶ。
れみりゃは涙を流しながらもゆっくりと俺の方へ歩いてくる。
そして、れみりゃが俺の至近距離まで寄ってきた時、俺の両腕がれみりゃの体を捉えた。
簡単に言えば、れみりゃを抱きしめたのだ。
「れみりゃ、泣け。泣いてすっきりゆっくりしよう」
れみりゃを俺の方へ引き寄せる。
れみりゃの顔は俺の胸へとすっぽり収まった。
俺はれみりゃの背中を摩りながられみりゃに出来るだけ優しく話しかける。
れみりゃが安心できるように。
「う…ううっ…うああっ…」
れみりゃの涙の勢いが強くなる。
ダムが崩壊するかのように。
「うああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
れみりゃはついに大声を挙げて泣き出した。
俺は泣いているれみりゃの背中を摩る。
何だか知らんが、ガキの頃は母親にこうされれば安心できたんだよな…。
俺はれみりゃが泣きやむまでずっと背中を摩っていた。
小一時間経った頃
「ぐすっ…ぐすっ…おにいざ~ん…」
涙の勢いは多少弱くなってきた。
少し落ち着いてきたのか、れみりゃが不安げに話しかけてくる。
何も不安になることなんてないんだけどな。
俺はれみりゃの背中をぽんぽんと軽く叩く。
「なんだ、れみりゃ」
れみりゃが顔を俺の胸から放し、俺の顔を見上げる。
その顔は、まだ涙は止まっていないが、先程よりは大分マシにはなったな。
「う~…れみぃ…まんまぁにぃ…なれるのかなぁ…」
「…れみりゃの考える…まんまぁってのはどんなもんだ?」
『まんまぁ』って言葉は想像以上に言いにくい。
主に羞恥心的な意味で。
だが、今は四の五の言っていられない。
「…よくわからないぞぉ…でもぉ…れみぃはぁ…まんまぁになれないんじゃないかなぁ…って…」
…というか、冷静に考えればこれは俺にもかなり責任あるよな…。
れみりゃにちびりゃの教育をぶん投げてしまったのだから。
親だから大丈夫だろう、とれみりゃに甘えてしまった。
これからは俺ももっと積極的にちびりゃに話しかけていかなければ。
かつてれみりゃにそうしたように。
「れみりゃ、最初は誰だって上手くは行かないんだ」
「でもでもぉ…れみぃは…」
「それにお前一人で背負う必要はないから。俺も一緒にやるから」
真っ先にれみりゃにぶん投げた奴が何を言っているのかと言われるかもしれないが…。
すまん。
マジで反省してる。
「ごめんな、れみりゃ」
「う~…どうしてぇ…おにいさんがあやまるのぉ…?」
れみりゃには俺が何故謝るのか分からないようだ。
では、わかるように説明しないとな。
「俺もお前に甘えていた。ちびりゃのことをお前に全部任せてしまった。ごめんな」
「う~!!れみぃがぁ…まんまぁだからぁ…れみぃががんばらなきゃいけなかったのぉ…」
いつの間にか、親の自覚というものがこんなにもあったんだな、と感心する。
しかし、ここでれみりゃにぶん投げてしまってはダメだろう。
「れみりゃ…俺はお前もちびりゃも家族だと思っている」
「う~…れみぃ、おにいさんがなにいいたいのかわからないぞぉ~?」
「家族なら…助け合っていかなきゃいけないんじゃないか?」
ゲロ以下の臭いがしそうなセリフを吐いたことでなんだか恥ずかしくなってきた。
しかしここで恥ずかしがっても仕方ない。
それに大の大人が恥ずかしがるのはキモすぎる。
ええい、ままよ!
「…れみりゃは俺のことを家族だと思ってくれていなかったのか?」
「そ、そんなことないぞぉ!で、でもぉ…おちびちゃんのことはぁ…まんまぁのれみぃがやらなきゃいけないぞぉ…」
俺の意地悪な質問にれみりゃは慌てる。
思っていたより頑固だな。
親の自覚というものがそうさせるのか。
うーん…じゃあ言い方を変えるか。
「れみりゃ、俺にも手伝わせてくれ。あくまで親はお前だ。お前がちびりゃのことで困っていたらちびりゃではなくお前を助ける。これじゃダメか?」
元よりれみりゃに主体としてやってもらわねばならない。
言い方を変えただけの話だ。
「う、う~…わかったぞぉ………ごめんなさい…おにいさん…」
「ん?」
まさか謝られるとは思っていなかった。
むしろこっちが謝る方だと思っていたし。
「おへやのものをぽぉ~いしちゃったことと…あと…れみぃがまんまぁとしてうまくやれなくて…おにいさんをゆっくりさせられなかったぞぉ…ごめんなさい…」
ああ、そうか。
れみりゃが俺の協力を拒んだのは、親の自覚もあるだろうが、俺に迷惑かけたくないというのもあった訳だ。
れみりゃが気を使えるようになったのは嬉しいが…何だか悲しくもある。
水臭い話だ。
「れみりゃ、俺達は家族だ。俺がお前に甘えてしまったように、お前も俺に甘えて良いんだ。親になったからって何もかも急に出来る訳じゃないんだ」
「う~…」
れみりゃは親というものに強い憧れを抱いていたのだろう。
親なら一人でも子供をしっかり育ててあげられる、と。
しかし、現実はそう上手くはいかなかった。
その理想と現実の差がれみりゃを苦しめ、自信を奪っていったのだろう。
れみりゃは俺の言葉に難しい顔をしてしまう。
何やら考えることがあるのだろう。
しかし…恐らくれみりゃも晩飯は食べてはいないだろう。
そんな状態で考えても良い考えが浮かぶとは思えなかった。
「よし!れみりゃ、とりあえず飯にしよう!」
「う~?」
「ぷっでぃん食べよう!ぷっでぃん!」
「う、う~♪ぷっでぃ~ん♪」
れみりゃは『ぷっでぃん』という言葉を聞いて笑顔になる。
うん、相変わらず可愛い笑顔だ。
やっぱりれみりゃには笑顔でいてほしい。
そうじゃなきゃ俺がゆっくり出来ない。
「う~♪ぷっでぃ~ん♪」
「そうだ、ぷっでぃんだ、ぷっでぃん」
そんなことを話しながら、俺達は飯を食うべく立ち上がった。
「あれ?」
俺は冷蔵庫の中を見て、プリンの数に違和感を感じた。
れみりゃの3食の食事+3時のおやつは基本的に1食プリン1個だ。
(ちなみに、プリンはカスタードプリン以外にも色々な種類は置いてある)
ちびりゃがどれだけ食べるか分からなかった為、暫定的にれみりゃと同じプリン1個ということをれみりゃには指示しておいた。
だから、今日の朝の状態より朝・昼・おやつの分でプリンは6個減っていなければならない。
(ちなみに、ちびりゃは俺が家を出る頃はまだ寝ていたし、れみりゃはちびりゃと一緒に食べると言っていた)
だが、今の冷蔵庫の中のプリンの数を見る限り、どう見てもその半分の3個しか減っていなかった。
プリンの数は毎日数えているからな。
すぐにわかる。
「おい、れみりゃ…お前、ちゃんとプリン食べたのか?」
俺が質問をすると、れみりゃは下を向きながら手をもじもじさせ始めた。
この反応をするという事は…こいつ食ってないな?
俺は思わず溜息をついてしまう。
「れみりゃ、ちゃんと食べなきゃダメだろう。親になったからってそんなことする必要はないんだぞ?」
「ちゃんとたべたのぉっ!!」
「でもなぁ…プリン減ってないじゃないか」
れみりゃは必死に主張するが、プリンの数は明らかに3個しか減っていない。
れみりゃは「う~…」と唸っていたが、やがて観念したかのようにぼそぼそと話し始めた。
「おちびちゃんがぁ…たべきれなくてぇ…れみぃがそのおのこしを…」
呆れた。
きちんと食えば良いのに。
いや、出産をしたばかりだから体も多少弱っているはず。
だから食わなければいけないはずなのに。
俺はれみりゃの頭をこつんと叩く。
「うぁっ!」
れみりゃは帽子の上から手で頭を抑える。
その目は軽く涙目になっている。
かなり軽く叩いたつもりだったが…それでも痛かったか。
というか痛くなきゃ意味ないしな。
「…いっだいぞぉ…」
「お前は出産したばかりで体が弱ってる。医者にも出産後を一番気を付けるように言われたんだから、遠慮せずに食え。ちびりゃのお残しと合わせて2個食べていいから」
「う~…わかったぞぉ…」
何だかな。
れみりゃの成長は実感できるのだが、一歩引いている様にも感じるな。
「ミルクプリンにするか?さっき買ってきたばかりだけど、お前これ好きだっただろ」
本当は賞味期限が古い順番から食わなきゃいけないのだが、たまには良いだろう。
「う~♪しろいぷっでぃ~ん♪しろしろぉ~♪ほわほわぁ~♪」
俺はれみりゃに自然体でいてほしいんだがなあ。
それは俺の我儘なのだろうか。
「しろしろぉ~♪あまあまぁ~♪うまうまぁ~♪」
れみりゃがよだれかけを付けてミルクプリンを食べて満面の笑顔を浮かべているところで思い出したことがある。
俺、ちびりゃの分のよだれかけ買ってないじゃん…。
れみりゃのよだれかけを付けようとしても、サイズはまるで違うし。
先程までは気付かなかったが、改めてちびりゃの服を見ると、微かに黄色く汚れていた。
これは間違いなくカスタードプリンの残骸だろう。
恐らくれみりゃが食べさせたおかげで汚れは少なくはなったのだろうが、それでも全く汚さない、というのは無理だっただろうな。
…ダメダメじゃん、俺。
軽く自己嫌悪になる。
明日は土曜日だ。
ちびりゃのよだれかけとか代えの服とか色々買いに行かなきゃな。
「ごちそうさまでしたぁ~♪」
れみりゃが満面の笑顔でごちそうさまをする。
そして後片付けをしに台所へ消えていくその後ろ姿を、俺は見つめながら考えていた。
あの笑顔を守れるようにしなきゃな、と…。
「で、だ…」
「う?」
「『ぽいぽいボール』は使わなかったのか?」
後片付けから戻ってきたれみりゃに俺は質問をする。
目の前にいるれみりゃも、来た当初は部屋の中の物を『ぽぉ~い』としてしまった経験がある。
俺は最初、『ぽぉ~い』を禁止させようとした。
しかし、なかなか収まらなかった。
そもそも、医者に言わせれば『ぽぉ~い』を禁止すること自体が危険らしい。
『ぽぉ~い』というものは胴付れみりゃ種にとって癖のようなもので、それを禁止するという事はストレスの増加につながるからだ。
そこで必要になったのが『ぽいぽいボール』だ。
玩具メーカーが考えた商品で、胴付れみりゃ種用に作られた物だ。
れみりゃ種の不器用な肉まんハンドでも持ちやすい大きさで、材質はぬいぐるみに近い。
あの柔らかさなら、窓ガラスや家具に当たっても傷が付かないだろうな。
『ぽぉ~い』の対象をこのボールだけにしてしまえば、れみりゃもストレスが溜まらず、部屋の中も汚れず、まさに一石二鳥の結果が導き出された。
いや、中にはこれを使って人間と胴付れみりゃがキャッチボール等をして遊ぶこともあるらしいから一石三鳥かな。
…確かに、ちびりゃ用の『ぽいぽいボール』も買っていなかったが、あれってそれぞれに必要なんだろうか。
一応、さっき部屋の中の物と一緒に転がっていたので全く使っていないという事はないとは思うのだが。
それらを考えた結果が、先程の質問だ。
「う~…『ぽいぽいぼーる』だけをぽぉ~いしてっておちびちゃんにいったんだけど…」
れみりゃはまた泣きそうな顔になった。
先程の光景を思い出しているのだろう。
「おちびちゃん…『ぽいぽいぼーる』だけならゆっくりできないって…おへやのなかのものを…ぐすっ…」
れみりゃの言葉に混じって鼻水をすする音が聞こえる。
ああ、そうか。
『ぽいぽいボール』だけなら満足できなかったってことか。
正直言ってそれは思いつかなかった。
目の前にいるれみりゃの場合は
「れみりゃ、ぽぉーいしたくなったら、この『ぽいぽいボール』だけをぽぉーいしなさい。そうすれば部屋の中も汚れずに済むから」
「う~…これはぽぉ~いしてもいいのぉ?」
「これだけならな」
「う~♪ぽぉ~~~~い♪だっぞぉ♪」
と、このような会話だけで『ぽいぽいボール』以外はぽぉーいしなくなったようで、部屋の中が突然汚れることはそれ以来なくなった。
だから『ぽいぽいボール』一つあればすぐにそれ以外の物は『ぽぉ~い』しなくなると思っていた。
「う~ん…そうだな…」
俺はちびりゃへの注意を考える。
いや、やはり俺からちびりゃに注意することは出来るだけ避けたい。
親はれみりゃなのだから。
俺ではない。
もし俺が下手に親代わりとなって中途半端に口を出すと、それは親子関係に響くことにもなるだろう。
俺のやることは、あくまでれみりゃの手伝いに過ぎない。
自分の場合を思い出す。
自分の場合は、こういう時に親になんて言われてきたかを。
う~ん…。
そうだ!!
「れみりゃ、良いこと思いついた」
「う?なぁ~にぃ?」
「今度ちびりゃが『ぽいぽいボール』以外をぽぉーいしそうになったらこう言うんだ。それをぽぉーいするとお化けが来て食べられちゃうぞ~って」
子供には結構有効なんだよな、これ。
場合によっては、大人になっても習慣付けられてしまうこともあるとか。
まあそれは人間の場合だが、恐らくゆっくりにも通じるだろうと思っていた。
「お、おばけ…だっぞぉ?」
現に、目の前のれみりゃが怯えている。
自身も色々な物を『ぽぉ~い』した経験があるからだろうが。
「ああ、お化けといっても本当に来る訳じゃない。だけど子供はそう言われれば恐くなって辞めるようになるはずだ。一度で聞かなくても、何度でも言ってみろ」
「う、う~…。わかった…ぞぉ…」
何だか歯切れが悪い返事だな。
れみりゃ自身どこか納得できない部分でもあったのだろうか。
なら違う案も考えてみるべきだろうか…と考えていたその時。
「まんまぁ~♪れみぃおなかすいたどぉ~♪」
俺とれみりゃの耳に平和そうな甘えた様な声が聞こえてきた。
「おちびちゃ~ん♪まんまぁだっぞぉ♪」
満面の笑顔でちびりゃの元へよたよた走っていくれみりゃ。
先程まであんなに悩んでいたというのに、やっぱり子供は可愛いんだろうな。
「う~♪まんまぁ~♪れみぃぷっでぃんたべたいどぉ~♪」
ちびりゃは駆け寄ってきたれみりゃに抱きつく。
こちらも満面の笑顔だ。
「う~♪う~♪まんまぁがぁ♪ぷっでぃんもってくるぞぉ~♪ゆっくりまっててねぇ~ん♪おちびちゃ~ん♪」
「う~♪う~♪ゆっくりまってるどぉ~♪」
そう言って、れみりゃはちびりゃの体を離し、プリンの入っている冷蔵庫までよたよた走っていく。
「う~♪ぷっでぃ~ん♪ぷっでぃ~ん♪」
ちびりゃが『ぷっでぃん』という言葉を連呼する。
そこまでプリンが気に入ったんだな。
ところで、れみりゃ種って何故プリンをぷっでぃんと呼ぶのだろうか。
愛称か?
と、そんなどうでもいいことを考えているうちにプリンとスプーンを持ったれみりゃがちびりゃの元へ戻ってきた。
「おちびちゃ~ん♪ゆっくりおまたせだっぞぉ♪まんまぁとぷっでぃんのとうじょうだっぞぉ♪」
「う~♪まんまぁ~♪ぷっでぃ~ん♪」
喜び合う2匹の親子。
微笑ましい光景だよな。
「あ~ん♪だっぞぉ♪」
「う~♪あ~ん♪だどぉ♪」
れみりゃがスプーンでプリンを掬い、それをちびりゃの口へ運んでいく。
そのうち、ちびりゃにもスプーンの使い方を教えねばなるまい。
今はまだ産まれたばかりだから仕方ないが、いつかは親からも自立しなければいけないのだから。
「う~♪ごちそうさまだっどぉ♪」
「う!?もういいのぉ?ぷっでぃんまだあるぞぉ!?」
「まんまぁにあげるどぉ♪れみぃはいいこだからぁ♪まんまぁにぷれぜんとだっどぉ♪」
何回か食べさせているうちに、ちびりゃは満腹になったようだ。
まあ、無理矢理食わせても仕方ないよな。
こっちで調整してやらねばいかん。
「れみりゃ、そのプリンはとりあえず置いておいていいぞ、ちびりゃの優しさに感謝しような」
「う…う~…わかったぞぉ…おちびちゃ~ん♪ありがとうだっぞぉ♪なぁ~でなぁ~で♪」
「う~♪きもちいいどぉ~♪まんまぁ~♪」
俺の声にれみりゃは安心してプリンをテーブルの上に置き、れみりゃはちびりゃの頭を手で撫で始める。
微笑ましい光景が横で繰り広げられている中、俺は余ったプリンを回収する。
ちびりゃが食べる量がどんなものか知らなければいけないからだ。
…大体ちびりゃが食べたのは半分ちょっとくらいか。
今度からは量を調整して出さなければいけないだろう。
後でれみりゃにもそれを教えなければ。
と、そんなことを考えていると
「ぽぉ~い♪だっどぉ♪」
「う~!おちびちゃ~ん!ぽぉ~いしちゃだめだっぞぉ!!」
そんな声が聞こえてきた。
俺は2匹の方を振り返る。
そこには床に転がったスプーンがあった。
恐らく、そのスプーンを『ぽぉ~い』したのだろう。
だが、俺はまだスプーンを拾わない。
ここでスプーンを拾ってしまえば、ちびりゃは勘違いしてしまうだろう。
自分が『ぽぉ~い』しても、俺が片付けてくれるだろう、と。
「おちびちゃん!!この『ぽいぽいぼーる』いがいはぽぉ~いしちゃだめだっぞぉ!!」
「う~!!れみぃはもっとぽぉ~いしたいどぉ!!ゆっくりできないどぉ!!」
禁止されればやりたくなるというものなのか。
それは人間でもゆっくりでも同じなんだな。
「う~!!おちびちゃん!!」
れみりゃが気合の入った声を出す。
俺から言わせれば可愛いだけなんだが、それでも怒っているように見せているつもりなのだろう。
「う?まんまぁ~…?」
ちびりゃはそんな親の姿に怯える。
初めて聞く気合の入った声だからだろうか。
「『ぽいぽいぼーる』いがいをぽぉ~いするわるいこはぁ…もけーれがきてぎゃお~!!たべちゃうぞぉ~!!ってなるぞぉ!!」
両手を頭上に上げながら叫ぶれみりゃの声だけが部屋の中に響く。
『もけーれ』って何だ?
れみりゃのアレンジだとは思うが…。
「もけーれこわいどぉ~!!!!!!」
ちびりゃが大声で泣き始めた。
おお、やはり効果はあったようだな。
自分の考えに自画自賛してしまう俺。
「まんまぁももけーれこわいぞぉ~~~!!!!!」
れみりゃも大声で泣きだす…って、オイ。
いや、言い出しっぺのお前まで何故泣くんだよ。
お前は何がしたかったんだよ。
「「うぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!もけーれこわぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」」
お互いを抱きしめ合いながら大声で泣くれみりゃとちびりゃ。
俺は『もけーれ』って何なんだろう、と思いながらその光景を呆然と見ていることしかできなかった。
どうしてこうなった…?
…あ、スプーン拾わなきゃ。
後書き
このシリーズは書きやすいですね。
皆さんの需要があるかどうかはわかりませんが。
そろそろれみりゃ以外も書いてみたい…とも思っているのですがね。
希望を言えば守矢か永遠亭辺りを。
冬企画は最初は冒険記で行こうと思っていたのですが、こっちになりそうな気もしてきました。
ちなみにまだ書き始めてもいないです。
- ああ…… 癒されます。
気負うことなく、ゆっくりなが~く続けていただきたい。 -- syu (2011-01-11 22:06:01)
- すてきだ。
-- 名無しさん (2011-01-12 10:21:37)
- れみりゃはどうしてこう、子供っぽい仕草が似合ってしまうのか -- 名無しさん (2012-06-27 09:38:59)
- もけーれってなんだ?
-- 名無しさん (2013-02-02 13:37:06)
- もけーれもわからないとは…
モケーレ・ムベンベだろ?(マジレス -- 名無しさん (2013-11-27 03:29:33)
最終更新:2013年11月27日 03:29