【2010・11年冬企画】「後で使えるかも」と思ってとっておいた箱を使う機会は実はあんまりない-2



~☆~


さなえが思いついたこの作戦は、思いのほかうまく行った。
受付に並ぶゆっくりや人間には台車にのって運ばれる大月は
ただの荷物にしか見えなかったし、
ゆっくりさなえもここで働く従業員にしか見えなかったからだ。
ゆえに、大月とさなえはあっさりと受付の中に通じる出入り口にたどり着いた。


「…いよいよだな…ここまで長かった。」

「ええ、本当にそうですね…。」


実際の所は二時間位しか立ってないのだが、二人には何時間にも及ぶ大冒険に思えるのであった。
とにかく、大月達はその出入り口から受付の中に入り込んだ。
流石大型ホテルというべきか、受付の中はホテルの鍵やタオル等を閉まっておくロッカーが所狭しと並べられている。
カウンターにいる受付の人間やゆっくりパルスィたちは、さなえと大月の存在に気づきもせず、必死に来客の対応をしている。

「とりあえず、受付の人に話しかけて部屋の鍵を開けてもらいませんと!」

そう言って、早苗は受付の方に向かおうとする。

「いや、ちょっと待て。」

そんなさなえを大月が呼び止めた。

「何ですか?いきなり呼び止めて。」

「カウンターなんかに直接行ったら騒ぎになるだろうが!こういう時はあっちから来てもらうんだ!」

「はぁ、そうですか?しかし受付の方から来てもらうといわれたって…。」

さなえはそう言って辺りをキョロキョロ見回す。
…すると、出入り口付近にスイッチが一つ。
スイッチの上には張り紙があり、張り紙にはこうかかれている。

”用があるならスイッチを押しなさいよ妬ましい!”

「…凄いですね、張り紙にまで妬ましいと書くなんて。」

パルスィたちの妬ましぶりにもはや感動すら覚える早苗さんであった。

「どうでも良いから早くしてくれ。」

その感動をばっさりと行く大月。
とにかく彼にせかされてさなえはスイッチをポチッ、と押すのであった。


ブブブブブブブブ!


    (((     __,,.. -─- 、.,_   )))
  (((    ,::'´       `ヽ  )))
  (((  ,::'´           `ヽ  )))
  (((  ,'               ヽ )))
  ((( /      /、  ィハ   、_; ! i ゝ  )))
  ((( i  /  ハ `;、,レ レ 、_;、人丿   )))
 ((( 丿   レヘ i'::( ◎)ilililili( ◎)ハ  ヽ  )))
 ((( /     くl |:::::::::::::::::::::::::::::::::lヽ  |  )))
 ((( i      ハ ヽ、:::::::::::::::::::::::ノ i ノ )))
 ((( ヽ     `V>=-rパルスィノ  )))
  ((( `ヽ人人,.ヘ:::::::::::::::::::::::::::::ヽ  )))
   (((  ., -イ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\ )))
    ((( /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ )))


と、受付にいたパルスィが突然派手に震えた。
「キャッ!?」
隣に居るパルスィがいきなり派手に震えたので、受付嬢が驚いていると。

「全く、こんな忙しいときに呼び出しなんて妬ましい…。」

そう言ってパルスィは頭の上をペコンって叩く。
すると震えが止まった、どういう仕組みなのだ。

「誰?こんな時に空気を読まない奴は。」

そう言って受付のパルスィがさなえと大月の所に向かう。
「どうも、忙しい時に呼び出してすみません、パルスィさん。」
さなえはやってきたパルスィに向かってそう挨拶する。

(ん?知った顔なのか?)

(ええ、一応私もここで働いてますから。)

ヒソヒソとそんなやり取りを繰り広げる大月とさなえ。
そんなやり取りを繰り広げた大月は(じゃあ別にあの従業員から服まで奪う必要なかったんじゃあ…)と思ってしまった。

「…貴方、何ブツブツ呟いているのよ妬ましい。」

そんなさなえに向かってパルスィがそう話しかけてくる。
さなえはパルスィが話しかけてきたことに気づいてハッ、と顔を上げる。

「あ、家、貴方に頼みたい事があるんですけど…ちょっとこの箱を見てください。」

「箱?」

さなえに言われてパルスィは視線を下に下げる。
大月も箱から顔だけ出してパルスィとコミュニケーションを図ろうとするが…。

「…ん?」

しかし、顔を出したとたん大月はその瞳をきょとんとさせてしまった。

「………!」

なぜなら、箱から除いてみたパルスィの顔は明らかに青ざめていたからだ。

「…?どうしたんですか?パルスィさん、そんな顔をして…?」

さなえもパルスィの様子がおかしいことを疑問に思い、そんな質問を投げかける。
…パルスィは、青ざめた顔でこう言い放つ。

「どうかしてるのはあんたの方よ…!


       、       /⌒ヽ, ,/⌒丶、       ,
       `,ヾ   /    ,;;iiiiiiiiiii;、   \   _ノソ´
        iカ /    ,;;´  ;lllllllllllllii、    \ iカ
        iサ'     ,;´  ,;;llllllllllllllllllllii、    fサ
         !カ、._  ,=ゞiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!! __fカヘ.
       /  `ヾサ;三ミミミミミミ彡彡彡ミヾサ`´ 'i、
       i'   ,._Ξミミミミミミミ彡/////ii_   |
       |  ;カ≡|ヾヾヾミミミミミミ、//巛iリ≡カi  |
        |  iサ  |l lヾヾシヾミミミミミ|ii//三iリ `サi  |
       |  ,カ ,カll|l l lヾリリリリリ川川|爪ミミiリllカ、カi  |
        |  ;iサ,サ |l l l リリ川川川川|爪ミミiiリ サi サi  |
        |   iカ ;カ, |l l リリリリ川川川川l爪ミミilリ ,カi カi  |
       |  iサ ;サ, |リ リリ川川川川川l爪ミミiリ ,サi サi  |
       |  iサ ;iカ, | リ彡彡川川川川|爪ミミiリ ,カi :サ、 |
       ,i厂 iサ, |彡彡彡彡ノ|川川|爪ミミリ ,サi `ヘ、
      ,√  ,:カ, |彡彡彡彡ノ川川|ゞミミミリ  ,カi   `ヾ
     ´    ;サ,  |彡彡彡彡川川リゞミミリ  ,サi
         ;カ,  |彡彡彡彡リリリミミミシ   ,カi
         ,;サ,   |彡彡ノリリリリミミミシ    ,サi
        ;メ'´    i彡ノリリリリリゞミミシ     `ヘ、
       ;メ      ヾリリリリノ巛ゞシ       `ヘ、
      ;メ        ``十≡=十´         `ヘ、
                 ノ    ゞ


 そんなでっかいG、受付の中に入れるんじゃないわよ!」


「…は?」

「何を言ってるんだこいつは?」


さなえと大月は目の前のパルスィの言葉に、一瞬きょとんとしてしまった。
「とにかく、そのゴキブリをとっとと受付の外に出しなさい!」
パルスィは脅えながらさなえに向かってそう言ってくる。
その脅えっぷりは普通じゃない。
パルスィはまるで、何かおぞましいものを見るような目でダンボールを睨みつけている。

「何言ってるんですか?これ、タダの段ボール箱ですよ?」
そう言ってさなえはパルスィに向かってダンボールの乗った台車を近づけさせる。

「ちょ!私に近づけないで汚らわしい!」

パルスィは一歩一歩後ずさりしながらそう言った。

「一体どういうことですか?」

さなえはパルスィの行動に首を傾げるばかり。

「…よく解らんが私の入っている段ボール箱がこいつにはでかいゴキブリに見えてるようだ。」

「ハァ!?何でですか!?」

「そんな事言われても私にはさっぱり解らん!」

大月もさなえも混乱している。
まさか、ダンボールに残されていたある妖怪の力の所為でパルスィにはダンボールがゴキブリに見えているなんて思ってすら居ない。

「とにかく、あんたがそいつを排除しないというのなら、私が力づくで排除するわ!」

パルスィがそう言うと同時に、背後から何かが二匹飛び出した!

「妬ましい!」

「妬ましい!」

「妬ましい!」

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   ;ヽ、ノハ ハ __,./,) ヽ)__;人丿 (
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現れた二匹も同じくゆっくりパルスィ。
最初からいたパルスィも含めて、三匹のパルスィが現れた。

「な、何だ!?」

「色々省略して合体!」

そして、三匹のパルスィが光に包まれる!


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          ヾヽ、__,.-'´   ̄`丶.,
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           /           ヽ ヽ
            /    | |    ヽ    i  l
         ,'   ! 」_!, | l 、__ _メ   |  |
         _レヽ| l7(ヒ_]\!´ ヒ_ン) l | ,!-ーk
         "-.、レ |'"  ,___,  "/ ! | |,,-''´|`
         └ノイ∧.  ヽ _ン ∠ノ  ヾ   ヽ______
       __l /ヾ! i`>ーr---イ/ ノノ|ノ´` `―― ´     ̄ ̄ ` _ー_ 、
   ∠  ̄-' ̄  {<-_--- ―‐'7, ニニ/     , -----―_‐'二二 -‐ ′
   ` ーァ ┬- _`77ヽ>ー―-_‐!, -‐V\ ----7´|==‐ ´
     / ,、 !  /|_ヘ l  ̄!   ∠ -ヽ_/{  l!  / /i !
      ! l l l /、/ /.〉〉 -〉  \_ _l_! ヽ l ̄/ / j l_
    | | l l_/_,〈.フ// //lヽ-',. - ヘヽ  !〈-./ / //‐`- 、
   ノ_レ/ハ /! 〈/_ イ/` '´   /ヽi  V /_〈/, 二二ニ` ー 、
  / / く_ j l! |/ハ_/!!    /   | l / ,-/  ! ̄! ̄\ \`ヽ\
  !∧    ! /、ハ{、_ -!!  /z -‐ 7! l!〈,/ /  !>、\  \ \>'
  !トiヘ、   X/ \三〉、 /   _ = 'イヘヽ!./  ∧  \ ー 、 \ \
   {スlヘ\レ〈   /´  /_ = ´´/{イ/ `|/  /` l     \ \_\-\
    ヽ´丶l  〉‐ ´  _´!  ,.イ| l └ーイl_ /\ \     \   \ \
     _ |/\!_ ,_-'三/ l/  l ト l   _, |    \ ヽ      \  \ \
    l > 、!    〈     |.ハT  ̄  |      ヽ_ 〉― ヤ    \  \、 \
     l   /ー ´/`!    l  ヽl  /ヽ-vァー ´  |, イ´      丶、ヽ\ヽ、
     l /, ---く   /       |`l  /, L!    / \         \l \!
       Vヘ /  `ヽ、        ヽl //ヽ!  /
       /     /          lイ  |. イ
       ,′   /          | l    l
        !  _, /              l l     /
      | ̄ V   _              l l   ,′
        !__.  ヽ.イ l           l l  l
     /  l   / /            トl‐ ´|
      /   l / /            l !   !
    L - 7L!イ              |_l_ 、ヽ
   / _/ ー'              | |  | |
     ̄                     } !  V
                            | |  ハ
                        lヽ!/  〉
                           l !  /
                        ヽ!/


そして、光が収まると、そこには人間大サイズのロボットが立っていた。

「ジェラシックゆっパルスィミニ!ここに光臨!」

ロボはポーズと共に、こう言い放った。

「ジェラシックゆっパルスィだと…!?まさかこの目で見れるとは!」

大月は現れたロボットを見て興奮気味にそう叫ぶ。

「知っているんですか?大月さん。」

「ああ、かつてホテルを壊滅させた張本人とか何とか…
 まさかこの目で見れるとは…!」

「興奮する気持ちはわかりますが、今はそれ所じゃないみたいですよ?」

さなえはそう言って目の前にいる人間代のロボットを見据えた。

「人数不足が原因でサイズは小型になったけど、それでも目の前の害虫を破壊するには十分よ!
 いけっ!リトルバスターコレダー!」

そう言うと同時にミニロボの両手が展開する!


ズバババババババババババババ!


そこから発射されたレーザーは全て寸分の狂いも無く、大月の入っているダンボールに向けられた!
「げっ、まずい!おい!今すぐ後退するんだ!」
大月はさなえに向かってそう叫ぶ。

「緊急避難!」

しかしさなえは大月が叫ぶ前に既に逃げ出していた。
勿論、大月は放って置いて。

「って、判断はやっ!」

これには大月も驚きを隠せない。
「これで終わりよ!」
パルスィロボが叫ぶと同時に、発射されたレーザーは全て大月の入ったダンボールに着弾した!

ドッガアアアアン!


「ギャアアアアアアアア!」


大月は爆風と共に思いっきり吹き飛ばされた!


~☆~


一方、こちらは受付カウンター。
「ひぃ、ひぃ…パルスィさんの奴、何時になったら戻ってきてくださるのかしら…。」
さっきまで二人で対応していたのが一人に減ったため、受付の対応速度は格段に遅れていた。
対応していた受付嬢も限界に達し、目を回し始めていた次の瞬間。


ドガアアアアン!


受付の中の方から大きな爆発音が聞こえた。
「え?何ですの今の音は?」
受付嬢は突然の爆発音に動揺する。
そして、それはお客達も同様だった。

「な、何だ?今の音は?」

「まさかいわゆる一つの自爆テロって奴じゃないよね?」

「おいおい、大丈夫なのかよ…安全だって聞いて予約したのに。」


「お、お客様、安心なさいませ!今のはいわゆるアレ…あ、アレでございます!」

受付嬢が慌ててお客様をなだめ様としていたその時だった。


「ぁあああああああああああああ!」


ドガアアアアン!


この間、約1秒。
上から落ちてきた大月はカウンターをぶち壊して地面に頭から突き刺さるような形で倒れこんだ。


「え?」


「うわああああ!?上から全裸のおっさんが降ってきたぁ!?」

「こいつか!?こいつがテロの主犯なのか?」

いきなり上空から降ってきた大月をみてゆっくりも人間もパニック状態に陥っている。
みんな警察だ、消防だ、と騒ぐ中、受付嬢は目撃してしまった。


気絶している大月のタオルがめくれ、

その隙間から見えてしまっている。

…その、男の…アレを。


「…いきゃぁああああああああああああああ!」


受付嬢は始めて見るあれを見て反射的に絶叫、
そしてそのまま大月を全力で殴り飛ばした!



ガッシャーン!



大月は殴られた勢いで出入り口の窓を突き破り、そのまま外へと飛び出してしまった。





~☆~



「…むにゃ?」

何だか騒がしい気がしてむらさはゆっくりと目を覚ます。
寝ぼけなまこで彼女はゆっくりと部屋を見渡した。
…部屋に異常は無い。
何故か先生の姿が何処にも見当たらない、…たぶんトイレだろう、とむらさは納得した。
ふと、枕元においてある置時計に目をやる。
時計は十二時を回っていた。

そう。

十二時を回っている。

それすなわち、日にちが変わったと言う事だ。

「…あ、年が明けたんだ…あけましておめでとう、ムニャムニャ…。」

むらさはそう呟くと、満足げな顔をして深い眠りにつくのであった。





終わり

  • てゐ魂からそのまま飛び出てきたみたいないつものテンションが楽しかったw
    同じホテルの中で、こうした光景が一角で繰り広げられていたと思うと色々面白い
    特にあの早苗さんが従業員としているのだと思うと…… -- 名無しさん (2011-01-15 13:26:55)
  • さなえさん黒ぇw 会話が軽快で面白いねw
    取りあえずおっさん乙です -- 名無しさん (2011-01-24 17:45:18)
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最終更新:2011年01月24日 17:45