ここは魔法の
森のゆっくり集落
外敵も少なく餌も豊富な平和な森の中、
沢山のゆっくりが人間と接する事も無く誰にも迷惑をかけずにゆっくりと暮らしていた
そのゆっくり集落のゆっくり集会場
そこでは森のゆっくり達が集まって、最近仲間内に広まっている噂について語り合っていた
『恐怖の館』
ゆっくり達にそう呼ばれている建物が人間の里にあると言う
そこでは毎日のように沢山のゆっくり達が運び込まれ、
そこに住む恐ろしい人間によって様々な手段と道具で凄惨な目に会わされていると言う
そこからは毎日悲痛な叫びがこだまし続け、ゆっくりの悲鳴が途絶える事はないという
『恐怖の館だけには近づいてはいけない』
それがゆっくり達の合言葉であった
「ゆゆゆゆゆっ!!!」
「ゆっくりこわいよぉお」
森のゆっくり達はガタガタと震えながら口々に恐怖の声を上げる
大人達は子供達に人里に近づかないように言い聞かせ、若者達は友達同士で人里の怖さを噂する
こうして『恐怖の館』の噂はゆっくり達に急速に広がっていった
「ゆっ!アレが『恐怖の館』なんだぜ!」
森のゆっくり集会から数日
一匹のゆっくり魔理沙が噂の館の近くにやって来ていた
魔理沙は好奇心旺盛なゆっくりであった
魔理沙は怖がる森の仲間達を尻目に、一人果敢にも館の調査にやって来ていたのだった
その館を注意深く観察し続ける魔理沙
確かにその館は他とは違った異様な雰囲気を漂わせていた
無機質に白い外壁に、周囲に漂うおかしな臭気
『恐怖の館』にふさわしい佇まいであった
そして、噂通りにり多くの人間達が、次々と泣き喚くゆっくり達を館の中に運び込んでいた
これは噂は本当だ
魔理沙は中で行われているであろう凄惨な状況を想像して思わず生唾を飲み込んだ
周囲を探った魔理沙は、もっと良く調査しようと建物に接近し、一階のベランダに乗り窓から室内を覗き込もうと試みる
しかし、そこで予想外の出来事が起こった
なんと、中にいた一人の男と目が合ってしまったのである
「ゆゆっ!!?」
魔理沙は慌ててその場を跳ねて逃げ出した
が、余りに慌ててしまった為に、ベランダから落ちて全身をしこたま打ち付けてしまった
「ゆ、ゆうぅう」
デコボコの地面に落ちてしまった魔理沙は、体中に細かい傷を負い所々から餡子がにじみ出ていた
そしてその様子を見ていた男がドアから飛び出してきた
身長はゆうに180センチを超える大男
悪魔の司祭が身に着けていそうな白い衣服を身にまとった異様な井出立ちだった
魔理沙は何とか逃げようとするが、打ち付けた体の痛みから満足に動く事が出来ない
絶体絶命
魔理沙は凄い形相で駆け寄ってくる男を見て、これから起こるであろう出来事に恐怖した
それから数十分後
魔理沙は『恐怖の館』の中で、先ほどの白衣の男と差し向かいでお茶など飲んでいた
ベランダから落ちた際の怪我は、男の手によって治療され既に綺麗に直っていた
「ボクは動物やゆっくりのお医者なんだよ」
男は言った
男の言う通り、その館には里に住むゆっくりを飼っている人間達が、
次々と飼いゆっくりを持ち込んでは治療を依頼していた
病院では痛い事や怖い事をされる事が多いため、多くの飼いゆっくり達は過剰なくらい怖がり泣き叫んでいた
実際の治療がちょっとした針を刺したり、少し縫ったりする程度の簡単なものであってもだ
大切に育てられた飼いゆっくり達は、痛みや恐怖に対してとても脆いのである
何の事は無い『恐怖の館』の正体は、ただのゆっくり病院であったのだ
魔理沙は噂の真相を知ってすっかり脱力してしまった
「ねぇお兄さん」
診療もひと段落し、男と二人でお茶を飲んでいた魔理沙は、向かいに座っている男に話しかけた
魔理沙は、自分達の仲間の間でこの館がどう言われているのかを伝えた
せっかく仲間達を直してくれていると言うのにおかしな噂のせいで悪者扱い
男が何だか可哀想に思えてきたのであった
男は大男で確かに見た目は恐ろしげだが、とても穏やかな物腰をした優しい人間であった
「怖がられたりするだけならやってても嫌なんじゃないかだぜ?辞めたくないのかだぜ?」
魔理沙はこの男が悪く言われる事が納得いかなかった
「ボクが恐れられているのは良い事なんだよ」
男は不思議な事を言い出した
「野生の動物達はあまり人間に近づくべきじゃないんだよ。だからボクが恐れられているなら好都合
魔理沙も森に帰ったら仲間達に『あそこは怖いんだ』って伝えてあげて欲しい」
男はそう言って紅茶を一口飲む
「実は森のゆっくりに『恐怖の館』の噂を広めていたのはボク自身なんだからね」
男は魔理沙にイタズラそうな眼差しを向けてニッコリ微笑んだ
『恐怖の館には近づくな』
その日から森のゆっくり達の恐怖の館伝説は更に広まった
「野生動物と人間の適度な関係を保つのも動物を直す医者の仕事なんだよ」
恐怖の館の噂が広まるのを見て、
別れ際に聞いたゆっくり医者の言葉を思い出し魔理沙は一人微笑んでいた
- 人と自然の距離って難しいところだね -- 名無しさん (2010-11-27 19:06:51)
最終更新:2010年11月27日 19:06