てゐ魂 40話-2




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さなえが驚いて声のした方へと振り向くと、
そこには倒れたままニヤリ顔でこちらを見る触角アリスの姿があった。


「あ、そう言えばこいつの事忘れてたね。」


酷いことをさらりと言うてゐ。
それを無視しながら触角アリスはさなえに向かってこう言った。


「ふふふ…貴方が探している作文とはコレの事かしら。」


そう言って触角アリスは紙の束を取り出した。
…それは間違いなく、さなえが探していた作文だった。


「…!そ、それは!」
その作文を見て驚愕するさなえ。

「ふふふ、隙を見て抜き取って置いて正解だったわ。
 コレで貴方は逃げるわけには行かないわね!」

「な、何ですって…なんて卑怯な!」

怒りのあまり歯ぎしりをするさなえ。
触角アリスはそれを見て満足げな笑みを浮かべる。

「っていうか!そんな事している暇があったらあんたも逃げればよかったのに…!」

逃げるチャンスはいくらでもあったのに
それを全部不意にしてこちらの妨害にでた触角アリスの行動に
てゐとかぐやは完全にあきれかえる。


「ほっほっほ!どんなにいなかモノがデカい顔したところで、
 最後にはとかいはが勝つのよ!ざまーみろ!」


勝ち誇る触角アリス、
そんな触角アリスに向かっててゐはこう言った。


「…あんたさ、何でこの状況で勝ち誇れるわけ?」


周りは敵だらけ、完全に逃げ場なし。
この状況でしょうもない事して勝ち誇れるんだから
神経が図太いとかそんなレベルじゃない。


「致し方ありません…その触角を引きちぎってでも
 その作文を取り戻します!」

「この触角にかけてこのとかいは、負けはせん!」


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二人はやる気満々で戦いの構えをとっている。
「いや、あの、戦う相手間違ってるよ二人とも。」
てゐが二人に向かってそう言っても、もはや馬耳東風。
完全に二人の世界に入っている。


「いきますよ!うぉおおおおおおお!」

「とかいはぁああああああ!」


そして二人がぶつかろうとしたその時だった。


ドォオン!


突然、上空から砲撃音がしたかと思うと、
上から大型の砲弾が降ってきた!

「え?」

触角ありすとさなえは目の抜けた顔で上空を見る。


ドガァアアアアアアン!


次の瞬間、粉塵巻き上げて起こる大爆発!

「キャアッ!?」

さなえは爆風に驚いて後ろに吹き飛ぶ。

「ぁアアアアアア…。」

触角アリスは砲弾が直撃したらしく、
全身黒こげでおもいっきり上空に吹き飛ばされた。


「な、何!?今の爆発は!」

「かぐや!上からなんか降ってくる!」


てゐは上を見上げながらそういった。
上空に見えるは、こちらに向かって落ちてくる無骨なシルエット。


ズォオオオオオオン!


そいつは激しい粉塵を巻き上げて大地に着地した。


「う、うわ!?」

「ああもう、今度はいったい何が…。」


次から次へと起こるイベントに頭の整理がついていかないながらも、
てゐ達は天から落ちてきたそいつの姿を見た。


そいつはゴツいキャノンを背負っていた。

そいつは重量感ある無骨な体つきをしていた。



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       く  \/|>-‐──-- 、.,
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  (ヽ ∨´\:|::へ、      /:::::::/:::/ ` )iii:| |||ll___/;;:: )
  (乂_∠丿,レへ:::`>r-‐∠::__;:イ_(lll)/  l 7rf ニ ヘ /
    ̄      ̄     ゙!:::::  l::_;:_;;;::::   |。 ∪ ニ ノ
                ` _「庁L___,,,.___,⊥ノ丶 ̄
                    kl皿rk=-l;;:: \ :\
                   / /  / _..,-\  :\.\
                   / /  /冫^ ::6)\ 厂`ヽ、
                  ´.<,,_`ヽソ_,´-‐‐ノノ └l--< \ミ
                      ̄     `\__l.\ ヽ/<ヽ、
                                \《 /ヽ_ヽ
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                                 丶-- ″

そして…そいつの顔は無茶苦茶ゆっくりしていた。


「店長…さん?」


もうすっかり見慣れたその顔を見てもなお、
てゐとかぐやはこいつにどう対応したらいいか解らなかった。


「お、おと…おか…?」


さなえに至ってはこのゆっくりの事を
お父さんかお母さんのどっちで呼んでいたかも忘れていた。


「…さなえが無事って事は一応間に合ったみたいだね。」


そして空から落ちてきたこのゴツい体のゆっくり…。
ゆっくり動物園店長、八坂号は我が子が無事なことを確認して安堵のため息をついていた。




「…さて、と。」


そしてすぐさまその視線の先を我が娘から
触角アリスの方へと向けた。
表情も急に険しくなる。


「え?」


いきなり視線を向けられて思わずドキリとして後ずさる触角アリス。


「…あんた、さなえに何をしようとしていたんだい?」


「!?」


そう八坂号に問いかけられた瞬間、触角ありすが感じたのは死の恐怖だった。
今この場で弁解しなくては取り返しのつかないことになる。
彼女の第六感的な何かがそう告げていた。


「な、何よ!私はとかいはだから、こんな子供に何かしようとする訳。」


「チョメチョメで***で放送禁止な目に遭わせようとしてましたけど。」


何とか怒りを収めようとする触角アリスの後ろで
とんでもないことをてゐは口走った。


「ちょっとぉおおおおおおおおお!?」


触角アリスは思わず大声で叫んでしまう。


「ほう…?」


だって目の前の八坂号の顔が鬼神の如く険しいモノになったから。
まずい、このままではこいつは絶対に自分を殺す。
そう思った触角アリスの行動は実に早かった。


「撤退!」


触角アリスは目にも留まらぬ早さで八坂号の目の前から逃げ出そうとした。


「にがさん!」


だが、それより八坂号が触角アリスに狙いを定める方が早かった。


ドゴォオオオオオオン!


「ぎゃああああああああああああ!」


放たれる砲弾、起こる大爆発、ぶっ飛ぶ触角アリス。


「マダマダァ!」


ドゴン!ドゴン!ドゴン!


さらに追い打ちと言わんばかりに八坂号は宙を舞う触角アリスに向けて狙いを定め直す。
立て続けに打ち出された砲弾は触角アリスを的確に打ち抜いた!


「いやぁあああああ!何でとかいはな私がこんな…目に…。」


彼女が地面に落下したのは砲撃音が十ほど響き、その全てが止んだ後だった。
黒こげの触角アリスを見て、八坂号はさなえの方に向き直る。


「安心しな、化け物はこの通りもう居なくなった。」


(あんたの方が余程の化け物です。)


てゐは心の中でそんなツッコミを入れた。
実際に口にしないのはそんな事言ったら八坂号に何をされるか解らないからである。


「お父さん、そいつより危険な連中なら周りにいっぱい居ますが。」


「え?」


返ってきた娘の言葉に八坂号が首を傾げた次の瞬間。



「シャァアアアアンハァアアアアアイ…。」



周りから、まるで地獄の底から響いてくるような、
そんな鳴き声が響きわたった。


八坂号は、いつの間にか大量の上海に囲まれていたのだ。


「!?何だい!?さっきのあいつの仲間!?」

「…当たらずとも遠からず、かねぇ。」


八坂号を囲んでいる上海達は、明らかに八坂号に向けて敵意を放っている。
この場において一番のイレギュラーで危険分子は彼女であると上海は判断したようだ。


「ありゃまぁ、砲弾はさっきの触角野郎に全部使っちまったってのに。」


八坂号はそんな事を言いながら冷や汗を流している。


「おーい!店長!」


そんな八坂号に向けててゐは大声で呼びかける。


「あ、あんた…って義体はどうしたんだい!?」


八坂号はてゐの姿を見てそういった。
てゐが着けていた猫の義体は上海の巣穴に置いてきてしまっている。


「そ、そんな事より!それだけの数の上海に囲まれたら流石にヤバいよ!
 何体かはあたし達が引きつけるから早い所…。」


ごまかすように八坂号に忠告するてゐ。


「あらよっと。」


「きゃあっ!?」


そんなてゐに向かって八坂号は何かを放り投げた。
黄色い悲鳴を上げたそれをてゐは慌てて受け止める。


                       ,-――ー―/ O`-、,',ニ、ヽ
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                  ハ:::::::レヘ::i' (◎)   (◎)ハソ:::ハ
                  |::::::::ノ:::l:|"   ,___,   l:::::|::ノ
                  ノ:::::::::::::ハヽ、  ヽ _ン  ノ::::i:::(
                 イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ
                 〈rヘ:::::!::レ´   `y二」ヽレ':::〈



「え?え?」


受け止められたさなえは何が起きたのか解ってないのか
キョロキョロ辺りを見回している。


「て、店長??」


何故、こっちに向かってさなえを放り投げたのか、
てゐは八坂号の行動の意図が分からず、思わずそう口走る。


「まぁ、私だって若い頃ほど無茶はできない、
 娘を守りながら戦うなんてのはこっちも辛いんでねぇ。」


八坂号はそういうと、そのメカボディの手の骨をパキパキ言わせ始める。


「シャンハァアアアアアイ!」


上海達は八坂号に一斉に襲いかかった!
対する八坂号は微動だにすらしない。


「濃い面を全員叩きのめしている間…さなえのことは頼んだよ!
 それで無くした義体のことはチャラだ!新入りぃ!」


そう叫んだ次の瞬間だ。


ドォァアアアアアアアン!


「シャ、シャンハァアアアアアアアイ!?」


まるで、火山が爆発したかのような轟音。
次の瞬間、八坂号に飛びかかった上海軍団はもの凄い勢いで吹き飛ばされた!


「え、えぇ!?」


その衝撃は、遠くにいるてゐ達でさえ
ビリビリとした衝撃を感じさせるほどのモノだった。


八坂号は空中に舞い上がった上海に向かって飛び上がる!


「おらぁ!」


ドガアッ!


一人の上海の顔面に決まった一撃。
それを食らった上海は激しく顔を歪め、彼方へと飛ばされていく。
次に犠牲になったのは八坂号の目の前に落ちてきた巨大な肉体を持つ上海だった。


ズガッ!


「シャバッ!」


八坂号は上海の顔面を思いっきり踏みつける。
顔面に足形を着けて哀れにも落下していった上海とは対照的に、
八坂号は上海を踏み台代わりにして別の上海に向かっていく!


「シャ、シャンハァアアアアイ!」


狙われたのは右腕が異様に肥大化した上海だった。
やられて溜まるかと、その上海は叫び声をあげて八坂号にその右腕を振りかざす!


「でぇりゃぁああああああ!」


八坂号も対抗せんと言わんばかりに拳を突き出した!


ドゴァアアアアアアン!


ぶつかり合う拳と拳!


メリメリバキバキメリメリバキバキ!


次の瞬間、上海の右腕が派手に変形を始めた!
拳と拳の勝負に勝ったのは、八坂号の方だった。


「シャ、シャンハァアアアアアイ!?」


腕が派手に変形したため、上海は泣いて痛みを訴える。
八坂号は容赦なくその腕を掴み、そのまま地面へと落下していく!


「うおりゃぁあああああああ!」


八坂号はそのまま地面に向かって上海を投げつけた!


ドォオオオオオオオオオン!


上海は地面に巨大なクーデターを作り上げ、そのまま白目になる。
そのクレーターの縁に着地した八坂号はそのまままた天を仰ぐ。
空中に打ち上げられた上海達はまだ5、6匹ほど居る。
八坂号はそいつ等を始末するため、また大きく飛び上がるのであった。


「…何じゃあありゃぁ…。」


そんな鬼神の如き戦闘を見せられたら、流石のてゐもこんな声しか上げられない。


「お、お父さんあんなに強かったんですか…。」


さなえも父親の予想外の姿に思わずそんな声を漏らしてしまう。


「…思い出した。」


そして、最後にかぐやがそう呟いた。


「え?」


「昔、先輩の反逆ゆっくりから聞いた話なんだけど…。
 ある反逆ゆっくりの一団が奇襲にあってボロボロになって、
 敗走中に敵の大軍に追われて絶体絶命のピンチに陥った時があったの。
 絶体絶命の危機を救ったのは一人の反逆ゆっくりだった。

 そのゆっくりは敵陣に飛び込み、
 たった一人で胴付きゆっくりの軍隊を半壊させて撤退させてしまったの、
 そのお陰で多くの反逆ゆっくりの命が救われたわ。」


「たった一人でって、随分と無謀なゆっくりも居たもんだねぇ。」


武装した胴付きゆっくりと胴なしが殆どの反逆ゆっくりでは一体一でも反逆ゆっくりの方が圧倒的に不利と言われている。
しかもそのゆっくりは多人数対一と言う状況で戦いを挑んだ、
もはやそれは戦いではなく、自ら死にに行くようなものである。
そんな無謀な事をして、生き残るばかりか半壊させて配送させてしまったなんて、にわかには信じられない話である。


「その時、そのゆっくりはどんな格好をしていたと思う?」


かぐやはてゐとさなえにそう問いかけた。
もちろん、二人は首を傾げて知らないと言うしかない。


「…肩にキャノン砲を背負った異様にゴツい義体を身につけていたって話よ。
 ちょうど、今店長が身につけている感じの。」


それを聞いててゐとさなえは驚いて八坂号の方を見る。
殆どの上海は地に伏しており、立つことさえ出来ない状態になっていた。
今、大地に立っているのは八坂号と、



      /^\      ,.へ、_
      i   _ゝ、-──'- 、 L
     / , '"         `ヽi
    く_γ        、    ヽ,.
    く,'  / / _ハ  ハ ハ_',  ',
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     i ヽ、 i ttテュ;:::::::;rェzァiハノV
   ヽ、'  i l ハ. ""     ""! |/i
   .ノ  ,' iヽ iヽ、.  ( ̄ノ .,イイ| l.
       ハ_イレ^r> --- イヽViノ
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   !/:::/  ! .| ! メ∠匸 !l/.ヽ.イ .入_:: : ,':: :: :: ::. :|
  レ':::l  l l l"/:: |.ヾ" へ〉 /ハ∨:: :/:: :: :: :: ::


「ルガールゥ…。」


てゐ達が一番最初に遭遇したあのスーツ姿の上海だけだった。
にらみ合う二人の力量は互角、勝負は一瞬で決まるだろう。



「その鋼鉄の体を返り血で真っ赤に染めて帰還した彼女は
その時の姿と功績からこう呼ばれるようになった。

 機神 八坂神奈子  と。」


「うぉおおおおおおおっ!」


「ルガァアアアアアアアアア!」


二人が叫び、飛び上がったのはほぼ同時だった。
八坂号の拳とルガール上海の手刀がほぼ同じタイミングで同時に放たれる!


ズガアッ!


放たれた攻撃は二つ、響きわたる音は一つ。
先に攻撃を当てたのは、ルガール上海の手刀だった。
八坂号の胸をルガール上海の手刀が貫く。


「ぐがっ…。」


苦痛にゆがむ八坂号を見てルガール上海は口端をゆがめて笑う。


「…なーんて。」


そしてその直後に、八坂号は不適な笑みを浮かべた。


ドガアッ!


「ルガ…。」


不意打ちの八坂号ストレート、
ルガール上海の顔面を的確に捉えたその一撃で
ルガール上海は遙か後方へと吹き飛んだ。


「悪いね、体の方は作りものだ。」


八坂号は自分の義体の胸にあいた穴を見下ろしながらそう言った。



ハラリ。



すべての上海との戦闘が終わったその直後、
八坂号の目の前に一枚の紙が舞い降りた。


「ん?」


八坂号はその紙を手に取る。
紙には文字がびっしり書いてあり、その字は何処かつたなさを感じさせた。


「あ、店長読まない方が…。」


と、てゐが八坂号にそう忠告する。


「え?」


八坂号がてゐの方へと振り向いた次の瞬間。


ヒュバッ!


高速で近づいてきた何者かが八坂号が手に持っていた
紙切れを奪ってしまった。


「へ!?」


八坂号は驚いて辺りを見回す。
そして直ぐに発見した。



                          ,-――ー―/ O`-、,',ニ、ヽ
                       ,ノー'       i ̄ ̄\``-ソ
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今し方自分から奪った紙切れを隠して
こっちを睨みつけるさなえの姿を。


「サナエ、あんた一体何をしてる…。」


「近づかないでください!本気で泣きますよ!」


近づこうとする八坂号に対して、さなえはちょっと意味不明な警告を発してきた。

「えぇ~…。」

娘の行動に困惑する八坂号。


「あのさぁ、前から言いたかったんだけど。」


と、てゐがいつの間にか八坂号の横にでてさなえに話しかける。


「それ、今度の授業参観で発表する作文でしょ?
 だったら今秘密にしても結局は大勢の前で発表するんだし、あんまり意味ないんじゃ…。」


「この作文は元々家に持ってかえって再編集つもりだったものです!
 未完成の原稿なんて世に出すべきではないししては行けないんです!」


てゐの問いかけにさなえは顔を真っ赤にしてそう答えた。


「…何じゃそりゃ。意味不明すぎる。」


その答えを聞いたてゐは呆れ顔になっている。


「ま、子供の基準は子供にしか解らないものよ。」


その隣にいつの間にか現れたかぐやがてゐに向かってそう言ってくる。


「ふう~ん、さなえの書いた作文ねぇ…。」


八坂号がそう言って上の方を見上げた。
そこにはこっちにヒラヒラと舞いながら落ちてくる
複数の紙の姿があった。


「じゃあ、あれもそうなのかねぇ?」


「!?」


サナエもその紙切れを見て、焦りの表情を見せる、


「…あの作文、触角アリスが持ってたもんじゃん、何で空を舞ってるのさ。」

「たぶん触角アリスが砲撃でぶっ飛んだ際に
 持ってた作文もばらまいたんじゃない?」


かぐやの冷静な分析とは対照的にさなえは全く穏やかではなかった。
さなえはおそるおそる八坂号の方を見る。



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  (乂_∠丿,レへ:::`>r-‐∠::__;:イ_(lll)/  l 7rf ニ ヘ /
    ̄      ̄     ゙!:::::  l::_;:_;;;::::   |。 ∪ ニ ノ
                ` _「庁L___,,,.___,⊥ノ丶 ̄
                    kl皿rk=-l;;:: \ :\
                   / /  / _..,-\  :\.\
                   / /  /冫^ ::6)\ 厂`ヽ、
                  ´.<,,_`ヽソ_,´-‐‐ノノ └l--< \ミ
                      ̄     `\__l.\ ヽ/<ヽ、
                                \《 /ヽ_ヽ
                                 l /ヾ//
                                 丶-- ″



八坂号はにやにや笑いながら舞い降りてくる紙束を
ジャンプで回収しまくっている。


「あ、あぁ、あぁあああああ~~~~。」


さなえは完全に顔を真っ青にしてその様を見守るしかなかった。
やがて、八坂号の手にはさなえの書いた作文が。


「あ、あのあのあのオトウサマそ、それそれそれわわわたしててててて。」


さなえは八坂号に作文の返却を要求しようとするが
口がうまく回らない。


「…さなえの書いた作文ねぇ…。」


八坂号は手に持った作文と、慌てるさなえを交互に見やる。
そして…。


「はい。」

「え。」


あっさりと、作文をさなえに返したのだった。
さなえは、目を点にして、八坂号が差し出した作文を見やる。


「どうしたんだい、たまには素直に受け取って欲しいんだけどねぇ。」

「あ、あの、お父様は何が書かれているのか知りたくはないんですか?」


さなえの当然の問いかけ。
八坂号は回収したときに、「私のお父さん」と言うタイトルは見ていた。
つまりこの作文には普段さなえが自分のことをどう思っているのか書かれていると思う。
そりゃあ少しはみたいと思う、思ってしまうが。


「娘のプライベートに土足で踏み込むほど、私は無粋なゆっくりじゃないよ。」


それを飲み込んで、八坂号はさなえに向かってそう言った。
さなえは無言で八坂号を見つめていたが、すぐに我に返って慌てて作文を回収した。

「ほ、ホントは観たい癖に何カッコつけてるんですか!
 ガンキャノンの癖に!?」

顔を真っ赤にしてさなえは八坂号にそう言い放つ。
それを聞いた八坂号はちょっとニヤニヤ笑って、

「いや、別に今観なくてもどうせ後で
 内容は聞けるんだし良いかなぁって。」

と言ってきた。
それを聞いたさなえはハッとなる。

「ま、まさかお父様…。」

「出るよ、出るに決まってるでしょ授業参観。」

その直後、さなえは叫んでいた。


「止めてください!」


その大声は八坂号を大声でひるませ、
離れて聞き耳を立てていたてゐ達の耳をきーんとさせる。



「そ、そんな大声で叫ばなくても…。」

八坂号は頭がキンキンするのを堪えながらさなえに向かってそう言った。


「前の授業参観の時どれだけ学校に迷惑かけたと思うんですか!
 あの時の惨劇だけは繰り返さないでください!」


さなえはさらに凄い大声でそう返す。

「…ホントに何したんだろうね、あの店長。」

「聞きたいけど、正直怖いわね…。」

ひそひそとてゐとかぐやが話し合う。
一方、早苗の言葉を受けて八坂号は「フム…。」と考えごとをしていた。
やがて、何かを閃いたのかその顔がぱあっと明るくなった。

「良し、じゃあこうしようさなえ!」

「…何を思いついたのですか?」

いやな予感がしながらもさなえがそう問いかける。
八坂号は自信満々の表情でこう言った。



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「次の授業参観は、動物の義体じゃなくてガンキャノンの義体を付けていこう!」


「それは駄目だろ(でしょ。)」


てゐとかぐやは思わずそう突っ込んだ。
そんなもんが大挙して学校にやってきたら大騒ぎ所じゃすまない。
警察どころか自衛隊が来るレベルだ。
もちろん、さなえだって全力で駄目だと言うはずだ。
…と思われた。

しかし、八坂号の案を聞いたさなえは少し悩んだ後、
ちょっと恥ずかしげにこう答えていた。

「それだったら、別に…。」

「いいのかよ!」

さっきよりも大きい声で同時につっこみを入れるてゐとかぐや。

「ちょっとさなえさん!意味が全然分からないよ!」

「動物はNGでガンキャノンはOKって、どういう基準でモノを言ってるの!」

「え、そ、それはその…。」

てゐとかぐやの当然の問いかけに、戸惑ってしまい答えることの出来ないさなえ。
しかし、八坂号はガンキャノンなら問題ないと言うその理由に何となくピンと来た。


「…もしかしてさなえ、動物よりロボットの方が好きなのかい?」


「!?」


その問いかけを聞いてさなえは焦り始める。
その態度を観て八坂号は確信した。


「なるほど、大当たりみたいだねぇ。」


「お、お父様の予想は外れています!
 確かに毎週のように「新世紀イバラゲリオン」を観ていたり、
 「機動戦士ハクタク」のDVDも全巻持ってますし、
 7月から放映される「勇者尼ナムサンガー」の最新情報をチェックしてたりしてますが!
 別にロボットが好きとかそう言う事ではありません!」



(大好き何じゃん。)


てゐ、かぐや、八坂号は確信した。
そして八坂号は納得した顔になってこう言った。

「なるほどね、さなえが動物に扮した私たちに何で懐かないのかと常々考えていたけど、
 そう言うことだったんだねぇ。
 動物よりロボットの方が好き、と。」


そして、その後八坂号は何か名案を思いついた顔になる。


「そうだ、なら店で新しいサービスを入れてみるか!
 名付けて「ロボット接待」サービス!
 メカボディなゆっくりによる全く新しいサービスだ!」


新しすぎるサービスだ。
てゐ達は本気でそう思った。


「よし、そうと決まれば義体の調達だ!
 さなえ、あんたもついておいで!」


八坂号はそう言ってさなえをガンキャノンの肩にかつぎ上げる。


「ちょ、何で私までついて行かなくちゃいけないんですか!」


さなえはジタバタしながらガンキャノンから降りようとしている。
しかし、八坂号は落ちたら危ないだろ、とさなえを押さえつけているので彼女の力ではどうにもならない。

「私はガンキャノン以外のロボットについて良く知らん!
 さなえ、どのロボットがお客さんに受けがいいのか、教えてくれ!」

「そ、そんなこと勝手に言われても、ロボットアニメなんて個人個人で好みが分かれるもので…。」

「店の方も改装しなくちゃいけないだろうしこれから忙しくなるねぇ、
 これは、気合い入れて掛からなくちゃあ行けないね!アッハッハッハッハ!」

「私の話を聞いてください、お父様ぁああああ!」


さなえの叫びもむなしく、彼女は八坂号と共にジャングルの彼方に消えていった。
残されたのは唖然としているてゐとかぐやだけ。

「…あのさてるよ、一つだけ言いたい事があるんだけど。」

「何?」

「…正直、あのゆっくりに勝てる気がしねぇ。」

「…私は最初からそう思っていたわよ。
 八坂号…ね、私たちから見たらやっぱり先輩に当たるのかしら。反逆ゆっくりの。」

「だとしたら色々な意味で逞しい先輩だよねぇ…。」

「反逆ゆっくりとしてだけではなく、親として、店長として、あのゆっくりは逞しく生きている。
 私らも見習わなくちゃね、ああ言う生き方は。」

「私はちょっと勘弁かな…。」

そこまで話し合って、てゐとかぐやは無言になる。

「ところでてゐ。」

「ん?」

「さっきからシャンハイ~とかそんな声が聞こえてくる気がするんだけど。」

「…奇遇だね、私の耳にはさらにはっきり聞こえて来てるよ。」

触角アリスの作ったシャンハイのための楽園。
その楽園にはまだまだ未知のシャンハイが溢れていた。

二人のゆっくりがそのシャンハイ達を倒したり逃げたりしながら脱出するのに、
実に三日の時を要したのであった。


~☆~


平和なゆっくり小学校に再びあの日が訪れた。
”授業参観”
前回の授業参観は学校の関係者全員が思い出したくもない日だった。
大量の動物ゆっくりが訪れ、生徒達は悲鳴を上げ、逃げ回り、阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

今回はその悲劇を繰り返させない。

先生ゆっくり達は人間の国から大型麻酔銃や大型動物を捕獲するための罠を取り寄せ、
動物ゆっくり達を捕まえるために訓練を繰り返してきた。

準備は万全、いつでもきやがれ、先生達はやる気満々で動物ゆっくり達を待ちかまえた。

…そして、校門の遙か向こうからその巨大な陰はやってきた。
先生達は銃を構えて動物ゆっくり達を迎え打たんとする。

しかし。

その陰の輪郭がはっきりしたとたん、ゆっくり達はかつてない衝撃を受けた。


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    くυ1二ヽ_ヽ|二二i二,'::::::::::/:::::__/:::/|:::::::::i:::::::::::ヽ;::::::|:::::!/τ>>>
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「ぶ、武装している…だと…。」


やってきたのは動物ゆっくりではなく、
鋼鉄の体を身にまとったガンキャノンだった。
動物ゆっくりが来ると思っていた先生達は動揺。
これがガンキャノン達に校庭侵入の隙を作ることになった。

先生達は麻酔銃と罠で抵抗を試みるが
銃はガンキャノンに通じず、罠も破壊され、無駄な抵抗に終わった。
ガンキャノン達は一斉に校舎に向かい、またあの悲劇が繰り返されるのか、とゆっくり達が思った次の瞬間だった。



               ,-――ー―/ O`-、,',ニ、ヽ
            ,ノー'       i ̄ ̄\``-ソ
         , -′  ' ; 丶     ヽ  _ゝノ\
        /      ; ,  (ヽ    ヽ  ヽ、   `,
      , '     /  / ,i  ';;;\       i   ;;; ',
      ノ      i  i;;;i i;;', ';;;;;;:\__    ト  ;;;;;;, i
       i      ',   i;;;; i;;;;-´ ̄ ̄:::::::`    |ヽ ';;;;;;;;; ',
     ノ  ; i  i ,ーゝ、j::::丶::::::>t===≦   ノ;;::;;;;;;;;;;;; 丶
     /   ', `iヘ i,,=‐、::::::::::' i弋 ノイ‐' ̄~`i;;;;;;;;;;;:::;;; ',
    ノ    ;;', i;;;`(弋ノi ,     ̄~ |    |;;;;;;;;;;;;;;;; \
   /    ;;;ソ;;;;,、;;ゞ ~′'       人  __ノ;;;;;;;;::::;;;; i
  ~      ;;;;;;;'  ) ;;ヽ、   __   / ゝ ̄`j;;;;;;':::i );; |\
         ;;;;'  ;;;;;;;;;;ヽ     , ´i / __ i ;;;;'::ノ i;; ノ
         ;;;'  ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`..,- ´ ニ二ー‐-`'';;;:::/-―::


「◎年△組 さなえ。」


突如、校庭に女の子の声が響きわたった。
ガンキャノン達は動きを止め、先生達も何事かと辺りを見回した。
声の主はすぐに見つかった。
校長の朝礼台の上に、まるで全てを見下したような目をした緑髪の銅なしゆっくりが作文用紙を持って立っていたのだ。

「何してるの!」「危ないぜ!」先生たちの忠告を無視して、そのゆっくりは手に持った作文をゆっくりと読み上げ始めた。


私のお父さん


私のお父さんはゆぶき町でお仕事をしています。
でも、そのお仕事の時の格好が変だとみんなに言われています。
確かに、犬の格好でお客さんの相手をするお仕事なんて
変以外の何でもありません。
お客さんに対して仰向けで服従のポーズを取るお父さんを見たときは、
首を絞めようかと思いましたが体はつくりモノで首なんて無いので無理なので諦めました。

しかも酔っぱらうと、お父様は決まって私にガンキャノンの魅力について語り出します。
私はマジンガー派なんでそんなの語られても毛ほども興味はありません。
正直は約酔いつぶれて寝てほしいのですが、元キャラが元キャラだからか
夜通し飲み続けても翌日には平然と営業を続けられるほど酒が強いです。

こんな端から見るとどうしようもないお父さんですが
不思議と頼る人は多いですし、いろんな人たちを助けてあげています。
それに、娘である私のことを一番大事にしていることも。
でも、お父様のことですからそういうことをいったら絶対調子に乗って羽目を外してしまいます。
だからこれからも冷たく当たるのでしょう。
それが、私なりの親孝行です。


ゆっくりは作文を読み終わる。
先生たちはそのゆっくりの行動に呆然とし、唖然としていた。
そしてガンキャノンの方は…。
全員、何だか満足げな(時にリーダーと思われる紫の髪のゆっくりが)顔をしていた。
そして、もう用はないと言わんばかりにガッシャガッシャと音を立てて小学校からでていく。

助かった。

何だか解らないが悲劇は未然に防がれたのだ。

先生達はもちろん、校舎の中にいた生徒達も歓声を上げていた。
この出来事は後に授業参観の奇跡、と学校史に残るようになり、
言葉だけでガンキャノン達を追い返した緑髪のゆっくりはまるで神のような雰囲気を漂わせていたことから
「現人神」とまで呼ばれるようになったとかそうでないとか。



オマケ


シャンハイ達の楽園の奥深く。
すっかり日が暮れたジャングルの中を歩き回る3人のゆっくりの影。


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  ノ .ノへ,ハ! (ヒ_]     ヒ_ン ハ/レ'    ノ .ノへ,ハ! (ヒ_]     ヒ_ン ハ/レ'   ノ .ノへ,ハ! (ヒ_]     ヒ_ン ハ/レ'
  ,'   ノ i ','/// ,___,  ///.i   ',    ,'   ノ i ','/// ,___,  ///.i   ',  ,'   ノ i ','/// ,___,  ///.i   ',
  i  〈  ノ ト.、  ヽ _ン   , イ ノ,.ゝ  i  〈  ノ ト.、  ヽ _ン   , イ ノ,.ゝ i  〈  ノ ト.、  ヽ _ン   , イ ノ,.ゝ
  `ヽヘ `〈へハ,ノ,、 _____, ,.イ ハへ(ゝ   `ヽヘ `〈へハ,ノ,、 _____, ,.イ ハへ(ゝ  `ヽヘ `〈へハ,ノ,、 _____, ,.イ ハへ(ゝ

メディスン三姉妹はあるものを探してジャングルをさまよい歩いていた。

「ねぇ、まだ見つからないの?」

「そんな急かさないでよ、そう簡単に見つかるわけが…。」

「ねぇ、あれ、もしかしたらもしかするんじゃないかな?」

メディスンの一人がジャングルの奥の方を指さした。
確かに、奥の方に何か黒い陰がある。
メディスン達は、その黒い陰がなんなのか、じっと目を凝らしてみた。




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       ,. '"´ _,,,....、,,,,___   `ヽ.
      ,:'´ .,.´,. ''"´ ̄ ̄/ ̄\':,
    /  / Y   ハ // ̄\\',
    ,'  _ ハ,_ ノ ヘ | |    | | ',
    ',__ソiT -‐‐ 'V  ‐‐-,' | | i    /
    〉  \) (ヒ_]     ヒ_ン ! ∨ ヘ/ ̄/  
 __>-へハ'"   ,___,  "ハ ○ノ|/ rへ,ノ 
     ゝ .:ヽ ヽ,    ヽ _ン  ノ| .| ( ノ  :.\_
    _::ノ /从へ、.     .ノ从rー ___
    _::ノ    :ノ`⌒Y⌒´::  \
          .::┘   :│   ゚~



それは、八坂号にさんざん砲撃され続けた結果、なぜか地面に埋まってしまった触角ありすだった。
彼女は表情一つ変えず、ただただ、埋まり続けている。


「見つけた!」「見つけた!」「見つけたわ!」


三人のゆっくりメディスンはその触角アリスを見て
すごい勢いで駆け寄っていき。

そのまま触角アリスの横をすり抜けて。

彼女の後ろにあった一輪の花に注目した。



        _,. -──=ニヽ、
         /レ'´       `ヽ、
        //● / , ,、 ヽ ヽヽ ト、
      /7O j_ノ_/ハHl、_j l lN
       〈7イ ´|/l/   `ヘノ} jrく)j
     r‐ヶハl  c⌒r─ォ⌒c,ハヽ〉  わはー
     Y//,ハ>、j>l、_ノ.イレ1l レ′
        \l l//` ` ̄´ j l レ'
         _>′r。~。ヽ レ'´
      (__ゝ、<ゞニア< |
           \`^^´  l
              `ーr-、ノ
            し


「間違いない!このスズランこそ私たちが捜し求めていたスズランよ!」

「この上海だらけの危険なジャングルを一週間も探し回った甲斐があったものね!」

「これで私たちの夢に一歩近づいたわ!」

3人のゆっくりはスズランを中心に喜び合い、これからの未来を夢見て光に満ち溢れていた。
そんな3人を見て触角アリスは一言つぶやいた。



「…私より、スズランかよ。」



雇う相手を間違えたかもしれない、
触角アリスは本気でそう思っていた。


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最終更新:2013年06月21日 07:29