てゐ魂 41話-2



…後に勝手口の惨劇と呼ばれる出来事からからおよそ六時間後。
日も昇って明るい太陽が公安⑨課の詰所を明るく照らす。
しかし、⑨課の面々は暗く、日が沈んだような面もちとなっていた。


「…こちらも命のやりとりをしている身、
 恨みを買って命を狙われるなんて事はいつだって覚悟していたわ…でも。」


レティは自分の横で布団をかぶり、横になっている人物に目を見やる。


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 一'´ ̄`'--、\      /
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「でもまさか、ラーメン三郎の店長さんが狙われるなんて思わなかったわ!
 はるばる人間の国から三郎の素晴らしさを伝える為に訪れ、
 油コッテコテのラーメンで国中のサブリアンを満足させてきた店長が、何でこんな目に!」

「…って言うか、布団で横にするなら
 ドンブリぐらい外してあげましょうよ副長…。」

大ちゃんは三郎店長の頭にスッポリハマってしまっている
ドンブリをみてそう呟く。
よく見ると、スープがドンブリの縁から滴を垂らしている。
この布団、⑨課の隊員が使うので汚してほしくないのだが。

「やってみたけど全然外せないし本人も別に問題ないって言ってるからそのままにしてるのよ。」

「そんなこと言ってたの?」

ちるのもゆーぎも大ちゃんも、この男とレティが喋っているところを一度も見たことがない。

「店長の体から漂うラーメンの香りがそう語っているのよ。」

「いや、それで解るんですか店長の気持ち!」

「ふふふ、三郎を極めたサブリアンと三郎を愛する店長の間にしか解らない会話もあるって事よ。」

解りたくもない、3人はそう思った。

「…それにしても、三郎の店長さんは一体どこの誰に襲われたんだ?」

とりあえず話を切り替えるゆーぎ。

「あたいが見つけたときにはもうこいつ以外誰もいなかったよ!」

第一発見者のちるのがそう証言する。
ちるのが見ていない以上、残された手がかりは、襲われた本人の証言しかない。


「レティ、店長さんに襲われたときのことを聞いてみたいんだが?」


非常に不安な面もちでゆーぎはレティにそう問いかけた。
レティの答えは即答だった。


「大丈夫、任せて。」


レティは店長の耳元でぼそぼそとつぶやいた後、
店長の体のにおいをかぎ始めた。

「…会話、してるんですよねアレ。」

「解らんが…今はレティを信じるしかないしなぁ…。」

その様子を見て二人は非常に不安な気持ちに襲われた。
やがて、レティはコクリと頷くと、ゆーぎ達の方へと振り向く。


「どうやら、勝手口を開けた瞬間に何者かに襲われたらしいわ、
 で、驚いて足を滑らせてずっこけた結果がこの惨状みたい。」


レティは店長から聞いたらしい襲われたときの状況を事細かく説明する。
あんなやりとりでそこまで細かい会話が出来る事には驚くべきか呆れるべきか。


「何かに襲われた…か、一体何に襲われたんだ?」

「それが、一瞬のことだったから大ざっぱな特徴しか覚えてないらしいの、
 取りあえず人の形をしていたみたい、それに…。」

レティは一瞬何かを戸惑ったが、かまわず口を開く。

「…顔が酷いことになっていたらしいわ。」

「酷いこと?」

「どんな感じなの?」

ゆーぎは嫌な顔色になりながら、ちるのは何とも興味津々で問いかけてくる。

「…全体的に赤くただれていて、酷く腫れ上がった顔をしていたらしいわ、
 まるで、悪い伝染病にかかったような、そんな顔を。」


「……!」


レティのその話を聞いて、大ちゃんがハッとした顔になる。

「いきなりそんな顔してどうしたのよ大ちゃん、変顔の練習?」

「違います、思い出したんです!」

「思い出した?何をよ。」

その問いかけに大ちゃんは真剣な顔になる。

「実は、⑨課のゆっくり達の間でも話題になってるんです。
 不気味な化け物を目撃したって話。」

「何ですって!?」

大ちゃんのその言葉に、れてぃ達は驚きを隠せなくなる。

「最近、夜番のゆっくり達から庭で
 そんな感じの不気味な連中を目撃したって報告が何回もあるんです。
 もうすっかり有名になっていて夜番をいやがる人たちまででてくる始末ですよ。」

「おいちょっと待て、そんな大事な話が何で今まで上司である私たちの耳に入って来なかったんだ?」

「報告はしたようですよ、ちるの隊長に。」


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それを聞いたれてぃとゆーぎはほぼ同時にちるのの顔を見た。

「…ちるのじゃあしょうがないわね。」

「そうだな。」

「?」

深くため息をつく二人を見てちるのは頭上にはてなマークを浮かべるのだった。
 
「…しかし、これで一つ確かなことが解ったわ。
 今、詰所の庭に何かが住み着いている。
 しかも得体の知れない。」

これはゆゆしき問題である。
れてぃ達がその事実に全く気づいていなかったことや
実際に彼らのせいによる被害者でたことも含めて。
もはや、これ以上放っていくわけにはいかない。

「すぐ庭の捜索を始めましょう!侵入者を見つけだすのよ!」

れてぃは大ちゃんに向かって指示を出す。
…しかし、大ちゃんはなぜか難しい顔。

「…?何よ、何でそんな顔になってるのよ。」

「…あの、隊長、おそらくそんな事しても無駄だと思います。」

「はぁ?何でそんなことが解るのよ?」

「侵入者の捜索ならもう既に何度も行っています。」

そういって大ちゃんは何枚にも束ねられた書類を取り出した。

「それは?」

「実際に侵入者を探し出そうと試みた隊員達からの報告書です。」

大ちゃんはレティに向かって書類を差し出した。
レティは受け取って書類を読み上げる。



れいむ:庭を隅から隅まで探してみたけど見つからなかったよ。

まりさ:床下を探してみたけど、何もいなかったぜ。

れいれい:何か引っかかるかもと思って池を調べてみたけど、鯉しか捕まらなかったよ!

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                            `丶ミ,、,ri'
                               ヘ.ヾi、
                                ヾ、\
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                                  'i i:;:;:;!i,rヽ
                                  )`ー)i_:;.!
                                  レ‐、.i'! `'i,
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                                 i';:;:;:;:;:l,!;:;:;:;:) i,
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    |::::ノ   ヽ、ヽr-r'"´  (.__   .   ヾ:, :, :, :,i',r.、   ,r;:'`ヽ L,__
   _,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7       `ヽ,_:,'i/;:;(_   ノ:;:;:;:;:_)/,; : `ヽ、
_..,,-":::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `ヽ/`7        `il:;:;:;:;`ー':;:;:;:;:,ノ/;, ;. :. :. : ヽ
"-..,,_r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ        !i:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ノ /‐-= ,,__,ノ
  `!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ  ,' ,ゝ         i):;:;:;:;:;:;:;:;:;:;)/
   `!  !/レi' (ヒ_]     ヒ_ン レ'i ノ         i,ヽ;:;:;:;:;:,r '´i'
   ,'  ノ   !'"    ,___,  "' i .レ'          !, `ー'´ ,r'´
  ノノ (  ,ハ.    ヽ _ン   人!            ヽ,___,ノ
 ( ,.ヘ ,)、  )>,、 _____, ,.イ  ハ  


マリーン:捕まえた鯉を解体してみたけど、中に何もいなかった。
     鯉の刺身おいしいです。


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            ノ |               l            | ヽ
       ト、    | |           |              l  {    /}
       ヽ ヽ  〈、 i、              |           |.ム   / !
      .  ヽ ヾ,、_rL |            |          _r}∠>=‐' /
         \ : ∵爻、       ヽ |!         j゙ソ゛.: . /
           ヽ ∵ ヾk         l||!        _}i}∴ ∵ /
   ___    _____ \ ∵{=、,       cr炎ro     _fiヾk: :/
   ネ  _,, '-´ ̄ ̄`-ゝヽ∠__ノァt-、  /,仝yハ    ∠rtゝ-‐ '
  , ン 'r ´          ヽ ゞニヾハ.  }K以ムハ  //> ′
  i ,' ==─-      -─== ; >、ヽ }ニネネ冫:i/∠、
  | i イ ルゝ、イ;人レ/ルヽイ  i /へ\ `ー八‐‐'_/' へヽ
  ||. i、|. | (ヒ_]    ヒ_ン) i リイ〃   >,才¨^¨弋ヽニニヾk
  | iヽ「 ! ""  ,___,  "" !Y.{/,<- '/ /      \\  「|l|
  .| |ヽ.L.」    ヽ _ン   ,'._.」 |{   トi′      > 〉 {.{l}
  ヽ |イ|| |ヽ、        イ|| | |l  /7        //   !|
   レ レル. `.ー--一 ´ル レ {{  〈ハ}      z'_/    k!


レイーン:鯉が居なくなってたから河原で捕まえたザリガニ放したよ。



「…と、まぁこんな感じで成果はありませんでした…。」

「取りあえず、最近庭の池の鯉が居なくなって
 代わりに何故かザリガニが沸いた理由がわかったわ。」

さし当たって後半の3人は減給しておこう、レティは心に強くそう決めた。


「まぁこんな感じで何故か庭で何度も目撃されてるのに
 その庭をくまなく探しても見つからないから、仲間内の間でこんな話がでているんですよ。」

「…どんな話よ。」

レティがそう問いかけると、大ちゃんはおどろおどろしい顔でこう答えた。

                _,, ―― 、
            , -'"        ヽ、
             /            ヽ
           /  __     ,ェェ-、 ヽ
         /  /|llll|   i   r' |llll| i  ヽ
         i  \|lll| /   \_|lll|_ノ  i   / ̄ \
   _,,. へ、   |     ̄       _,     |  / ,ヘ 、\\
  / ,ィ    l   |      ー-- 、_ -‐''ノ      !  | |  } 〉〉}/
 /ィ,ィイ/| |  .|       ` ''ー‐''"      /_ノ |  レ'
 " レ'  | |_ ゝ                __/
      ヽ__                 /
          ヽ              l
           \            |
             \           l
               \         \       //
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                 \            _,,/
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「…幽霊が私たちを祟るために庭をさまよってるんじゃないかって。」

「な…。」

レティ、ちるの、ゆーぎの背筋に冷たい何かが走った。

「ちょっと、それは流石に冗談が過ぎるんじゃないかしら大ちゃん。」

「文明開化のこの時代にお化けとか祟りとか馬鹿馬鹿しすぎる!」

「でも、それ以外に説明のしようがありませんし。
 それに…。」


その時、部屋の外からこんなやりとりが聞こえてきた。


「ねえ!いつまで寝てるの!今日の朝の庭掃除は
 君の担当でしょ!?」

「イヤだ!庭には行かないぜ!庭にはお化けが出る!」

「何言ってるの?朝っぱらからお化けに出くわすと思ってるの?馬鹿なの?死ぬの?」

「それから夜の見回りもお前がやってくれ!お化けに出くわして祟られるかもしれないからな!」

「さすがの私も夜はらめぇ…。」



「…と、まぁ今回の件を皮切りに
 お化け説を信じるゆっくりが急増しまして…。
 お化けや祟りを恐れて引きこもる奴が続出中です。」


「…そんなに出てるの?」


神妙な趣で問いかけてくるレティ。
それに対し大ちゃんはコクリと頷き、こう答えた。


「⑨課の活動に支障が出るレベルで。」


…途端に場の空気が重くなる。
ちるのは呆れ顔ではぁと深く溜め息をつく。

「…まったく、情けない話だよね。
 いっつも反逆ゆっくりを初めとした凶悪な犯罪者をドヤ顔で相手しているくせに、
 お化けとか祟りぐらいであんなに震え上がっちゃってさ。」

「相手がお化けと祟りだからだろう。
 我々にとってはどっちも身に覚えがありすぎる。
 …だからと言ってこんな情けない状況を放って置く訳にはいかないぞ。
 何かの弾みで外に公になったら間違いなく笑いものだ。
 何とか打開策を見つけなくては…。」


そう言ってうーむと考え込んでしまうゆーぎ。
…と、そこでこれまで黙り込んでいたレティが顔を上げてこう言った。

「…お払い、なんてどうかしら。」

「は?お払い?」

レティの提案を聞いて一同は目を丸くする。

「幽霊の仕業であろうがそうでなかろうが、とりあえずお祓いだけでもしておけば部下達の気は収まるでしょ。」

「た、確かに…。」

レティの言うとおり、お祓いをして幽霊を追い払うーーこの件が本当に幽霊の仕業なのかは不明だがーー
それでも形だけでもお祓いを済ませておけば⑨課の面々に蔓延している不安を晴らすことは出来るかもしれない。


「良いかもしれませんね、お祓い、やって貰いましょうよ所長!」

「…それで部下達が満足するならやってみる価値はあるかもな。
 しかし、お祓いなんて言ってもどうすれば良いんだ?」

「あたい知ってるよ!お寺や神社に頼めばお任せでやってくれるって!」

「…確かにそれが一番手っとり早いな…よし、誰かノートパソコンを持って来てくれ!
 お祓いしてくれる所を探してみよう!」

と、言うわけですぐさまノートパソコンが運ばれてきました。

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   /'レ小(◯),  、(◯) 从   \
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   ̄ ̄ `ー.r       ヾー`
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早速ネットにつないで検索を始めるゆーぎ所長。

「ゆっくりの国、お祓い…これでどうだ?」

検索してみると、いくつかの神社やお寺のHPにヒットする。
ゆーぎはその内の一つを開いてみる。

開かれたのは何の飾りっ気も凝った仕掛けも無い
まさに神社の紹介だけが目的のようなHPだった。
そのトップには神社の名前と住所と周辺の地図。
それとお祓い祈祷承りますの文章と、連絡用のメールフォームが表示されていた。

「ほう、この神社はウチの近くだな…これなら連絡してくれれば直ぐ来てくれそうだな…
 よし、ここにお祓いを依頼してみよう。」


早速ゆーぎはメールフォームにお祓いの依頼すると言う旨の文章を書き、送信ボタンを押そうとする。

「待った!」

しかし、マウスをクリックしようとするその手を止める者がいた。
公安⑨課副隊長、レティである。


「レティ?何のつもりだ?」

「安易に決めちゃだめよこう言うのは、
 もしかしたらボッタクリかもしれないわよ!」

「う、言われてみれば…。」


安易であるが故に罠にハマりやすいのがインターネット。
慎重になるに越したことがない。

「まずは信頼できる所かどうか調べておかないとね。」

レティはゆーぎと席を替わり、パソコンをいじり始める。
トップページを詳しく調べてみると、お祓いについてと書かれているリンクが見つかった。
クリックしてみると、その神社のお祓いの実績と歴史について書かれているページが表示された。


「…へぇ、この神社って祈祷祈願の類で有名なのね、
 テレビで有名になったあのビルの祈祷もやってるみたい。
 それに、あの某企業も祈祷関係の依頼は必ずここにお願いするみたい。」


そのページを読み上げてレティがそうつぶやく。


「なるほど…それだけの歴史と実績があるのならここにお願いしても良いんじゃないか?」

「確かにそうかもしれないわね…ん?」


ページをスクロールさせているウチに画面の下からこんな見出しが浮かび上がってきた。


現在、神社設立300周年記念セール開催中!

「記念」「セール」「開催中」。
こんな単語が並んでいるだけでページ上で見た真面目な文章ですら胡散臭く見えてくるから不思議なものである。


「…セール開催中って…何処のデパートのチラシよこれ。」

「300周年とか書いてあるけど、それを裏付ける証拠があるのかこれ?」

「てきとーじゃない?世の中には20周年記念作品を二年連続で出した特撮シリーズもあるんだし。」


見出しに対して様々な意見を述べるレティ達。
しかし、様々な意見を出したところで結局一番気になるのは…。


「神社のお祓いで記念セールって一体どんなセールなのよ…。」


レティはイヤな予感を感じながらもページをさらにスクロールさせる。
そこに書かれていた記念セールの内容を要約するとこんな内容だった。


ただいま記念セール開催中!
今、お祓い、祈祷の申し込みをしてくれた人全員に!


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特製希望のお面をプレゼント!


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       ,. -''"´     `' 、                               !:::::ァ'  ,. '"´`     ⌒'ヽ;::!
     ,'´  ,. -‐ァ'" ̄`ヽー 、`ヽ                            _ノ::::;.'   ,'  ,   ;    i    i ヽ!
     //         `ヽ`フ                           `ヽ.,'    i  ,' ! ,'!   /!   /! ,' ',
    / .,'  /! /!   ! ハ  ! ',                             /:i   iノ  !__,.、/ | / 、|__ィ'/レヘ .'、
   (     !ノ-!‐ノ ! ノ|/ー!、!ノ  ,.ゝ          ∧               ./::::! ∠,..イ (ヒ_] レ'  ヒ_ン i i>-ヽ
   (  ノ レ rr=-,::::::::::r=;ァi"/! ノ           |::::|              `ヽ!    !ノ '"        " ,V i,」
   )  ,.ハ '|  ̄      ̄ !  ヘ(      /´ ̄'!☆|"´ ̄\           ノ  ,'  .|ト.、     ー  ,イ i ',
    ) '! ト.、   ー  ,.イ  i .ノ      / /   |::::::|     \         (rヘ. i   ', .|>,、 _____, ,.イ レヘノ
     ノヽ,! i`>r--‐ i´レヘ ノ      / ノ    |:::::::!     \__\         レヽ、/ヽ!,.イ´ \_/iヽ!ノ!/レ'
 ∬  ヽ(へ レィr'7ア´ ̄`ヽ. )'     ∠〃 {ノノ_ハ_V   レ'、_i_l>\__>       ト 、,  /´`ヽ::ヽ、/ムレ'i`ヽ./!
┌-┐   ノ /イ       Y       /'レ小(◯),  、(◯) 从   \        \_`7    ';:::::'(ハ):::::Y Y
(i _i  rくヽ/!ノ     __  ,ゝ      /フ ('⊃ ̄ 'ー=-'  ̄⊂⊃)ノ(         <,__,ゝ、___rノ:::::::::::i::|:::::::i__,.〉,>
 \ \/`/::メ:::`ヽ、_二、___イ       ̄ ̄ `ー.r       ヾー`          ∠,_7   /〉:::;:::::::::::;::::::::::! ',>
                           |_|  / ̄ ̄ ̄/|  ||            /  /;:'::::/::::::::::::i:::::::;::'ヽ.i
                       ̄ ̄ ̄ ̄\/     / ̄ ̄ ̄ ̄



モニター一杯に映し出される何ともいえない表情のお面を目撃した次の瞬間。
レティの指はプラウザの戻るボタンをクリックしておりました。


「…今のは見なかったことにしましょ。」

「なんか、見てはいけないモノを見てしまった気がするな…。」

「お祓いして貰っても、あのお面のせいでまた呪われそうだよ!」

「って言うか、あのお面昨日の怪談話に出てきたお面と
 デザインがそっくりすぎる…。」

希望の面に大して言いた放題の⑨課の面々。
正に、言いたい放題である。

「とにかく、彼処はダメね、他の神社を当たりましょう。」

そう言ってレティは別のページを開いてみた。



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    /   ヽ、                         /    l
   /     ヽ、                      〈     |
   }       `ヽ、                   /     |
   i゙         .`ヽ、             , --- '´       .ヽ
   |            `ヽ,         /            l |
.  |              l、  ___  /             l | |
   l           _-─  ̄     ̄ ─- _          /ノ |
.   i        - ̄             r-,ヽ、       .// /
   ヽ     /                ゝ'  `ヽ     ソ /
  l\ヽ  /   , --- 、 λ       ._ -- __   ヽ、     /
  `l ヾ /  /´     ./ |        ,    `ヽ、  ヽ、  /
   |  ./      /ヽ /  i       /ヽ  八      i  ∠,
   ヽ /    /ヽ ./ ヽ/  ヽ     /  }_ノ  ヽ  ./|  ヽ /
   /V    / ヽi __   \   /      .ヽ/ .|    /ヽ
  /  |  l / / r--、`ヽ   \/  /´´二 -、   |/l  /  ヽ
 /|  |  | l (  {  )  }        l、.(  .) ヽ   l /  | .i
./ l  /  i | ヽ _ ̄_ノ         ヽ_ ̄   ) / \  .|  |
i | /   /\l.     ̄               ̄ ー´     `> |  |
| |/__ノ             - __,            \/ |  |
ヽ |   |                            | ヽ、 .| ∥
 V  /.|          _______        |  .ゝ  //
  \ | .|          l           l        |  ヽ//
   |` |          \       /        |   ソ
   |  l            `ー── ´          /    /
   ヽ  ヽ、                         /    |
    i   ヽ、                       /     i
    ヽ   ヽ、                    / ,イ    i
     ヽ    ヽ、                 ´ / |   /
      ヽ、   >、               ./    .l  /
        ヽ、 /  `ー─- ___ -─  ̄       ゾ


「ただ今お祓いの依頼をしてくれた者全員に
 希望の面プレゼント中!今ならもう一個付いてくる!」


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     !丶                              /l
    /  |、                           ./  l、
    /   ヽ、                         /    l
   /     ヽ、                      〈     |
   }       `ヽ、                   /     |
   i゙         .`ヽ、             , --- '´       .ヽ
   |            `ヽ,         /            l |
.  |              l、  ___  /             l | |
   l           _-─  ̄     ̄ ─- _          /ノ |
.   i        - ̄             r-,ヽ、       .// /
   ヽ     /                ゝ'  `ヽ     ソ /
  l\ヽ  /   , --- 、 λ       ._ -- __   ヽ、     /
  `l ヾ /  /´     ./ |        ,    `ヽ、  ヽ、  /
   |  ./      /ヽ /  i       /ヽ  八      i  ∠,
   ヽ /    /ヽ ./ ヽ/  ヽ     /  }_ノ  ヽ  ./|  ヽ /
   /V    / ヽi __   \   /      .ヽ/ .|    /ヽ
  /  |  l / / r--、`ヽ   \/  /´´二 -、   |/l  /  ヽ
 /|  |  | l (  {  )  }        l、.(  .) ヽ   l /  | .i
./ l  /  i | ヽ _ ̄_ノ         ヽ_ ̄   ) / \  .|  |
i | /   /\l.     ̄               ̄ ー´     `> |  |
| |/__ノ             - __,            \/ |  |
ヽ |   |                            | ヽ、 .| ∥
 V  /.|          _______        |  .ゝ  //
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   |  l            `ー── ´          /    /
   ヽ  ヽ、                         /    |
    i   ヽ、                       /     i
    ヽ   ヽ、                    / ,イ    i
     ヽ    ヽ、                 ´ / |   /
      ヽ、   >、               ./    .l  /
        ヽ、 /  `ー─- ___ -─  ̄       ゾ



「御利益満載!お祓いの依頼をしてくれた者に希望の面5個セットプレゼント!」


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   }       `ヽ、                   /     |
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   |            `ヽ,         /            l |
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   l           _-─  ̄     ̄ ─- _          /ノ |
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   ヽ     /                ゝ'  `ヽ     ソ /
  l\ヽ  /   , --- 、 λ       ._ -- __   ヽ、     /
  `l ヾ /  /´     ./ |        ,    `ヽ、  ヽ、  /
   |  ./      /ヽ /  i       /ヽ  八      i  ∠,
   ヽ /    /ヽ ./ ヽ/  ヽ     /  }_ノ  ヽ  ./|  ヽ /
   /V    / ヽi __   \   /      .ヽ/ .|    /ヽ
  /  |  l / / r--、`ヽ   \/  /´´二 -、   |/l  /  ヽ
 /|  |  | l (  {  )  }        l、.(  .) ヽ   l /  | .i
./ l  /  i | ヽ _ ̄_ノ         ヽ_ ̄   ) / \  .|  |
i | /   /\l.     ̄               ̄ ー´     `> |  |
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 V  /.|          _______        |  .ゝ  //
  \ | .|          l           l        |  ヽ//
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   |  l            `ー── ´          /    /
   ヽ  ヽ、                         /    |
    i   ヽ、                       /     i
    ヽ   ヽ、                    / ,イ    i
     ヽ    ヽ、                 ´ / |   /
      ヽ、   >、               ./    .l  /
        ヽ、 /  `ー─- ___ -─  ̄       ゾ



「以前の僕は冴えないダメダメゆっくりだったけど、
 希望のお面の力で地位、大金、彼女、全てゲット!
 もう希望の面を手放せません!」



「だから希望の面はいらないって言ってるだろうがぁ~~!」


思わずちゃぶ台返しをしてしまうレティ。


「う、うわ!」


ゆーぎは慌ててちゃぶ台と一緒に宙を舞ったノートパソコンをキャッチする。
慌ててTENGAから腕を伸ばしたため、ローションでノートがヌルついてしまったが壊れるよりマシだろう。


「何で?何でよ!何でどいつもこいつも希望の面をこっちに押しつけようとするのよ!」

レティは怒りを露わにして叫んでいる。

「って言うか、最後に開いたページ、
 雑誌の裏側に載っているパワーストーンの広告にしか見えなかったぞ…。」

「あたい知ってる!それって分割払いもOK!とか
 今ならもう一つついてくるとか言ってる奴だよね!」

「…それ違うよ、合ってるのは胡散臭いところだけだよ。」

自慢げに説明するちるのに大ちゃんはどうでも良さげにつっこみを入れる。


「そんな事より問題は希望の面よ、このままじゃあどの神社に頼んでも
 この変なお面を受け取ってしまうわ!」

「部下の心情を考えると一刻も早くお払いをしてやりたいが…。
 正直、このお面はどんな理由があっても貰いたくないな。」

「呪われそうだもんね!」

「ええ、全く持ってその通り。」

珍しく、ちるのの意見にレティは同意した。
実際、ホントに呪われてそうなデザインである。

「何とか希望の面を受け取らずにお払いだけやって貰う方法は無いものか…。」

輪になってああでもないこうでもないロクでもないと意見を交わし合う三人のゆっくり。
そんなにあのお面が欲しくないのか?実際欲しくないからこんなに真剣に話し合いしているのだろう。
そんな三人の様子を見ていた大ちゃんが口を開いた。


「あの、普通に貰うの断れば良いんじゃないですか?
 それか、貰っても捨てる…のは何かアレですから
 質屋に売るとか誰かに譲るとか…。」


勿論そんな普通の意見は総スルーである。
まぁ長い経験からこの展開は読めていた大ちゃん。
今度は別の意見を出してみた。

「あの、神社やお寺が駄目なら自分達でやっちゃうのはどうですか?」

「え?」

「どうせ形だけ何ですから偽物でもバレなきゃ大丈夫ですよ。
 変装用の衣装なら私沢山持ってますし…。」

その言葉を受けて三人のゆっくりは顔を見合わせ、

「それだ!」

同時に大ちゃんの方を向いてそう叫んだ。
大ちゃんは思わずビクってなってしまう。

「確かにそれなら希望の面を受け取らずにすむ!」

「しかもお払いの依頼料も浮く!」

「大ちゃん…あんたたまには良いこと言うじゃない。
 見直したわよ。」

「そ、そうですか、アハハハハ…。」

自分の意見の思わぬ好評ぶりに大ちゃん思わず苦笑いの巻。
ともあれ⑨課上層部はこの大ちゃんの提案した「ニセ祈祷士作戦」で行くことになった。
そしてこの作戦を実行するにあたって問題が一つ。

「誰が祈祷士役をやるんだ?」

「私達が祈祷士に変装してもすぐバレそうよねぇ、
 ⑨課の面々とはみんな顔見知りだし。」

「え?そうかな?アタイ達みんな髪の毛とZUN帽以外
 同じパーツの使い回しじゃない。」

「それは禁句。」

「祈祷士役は他の誰かに頼んだ方が良いんだろうか…
 しかし誰に頼めば…。」

⑨課の綿々と認識が無く、なおかつ自分達の頼みを聞いてくれそうな相手。
そんな都合の良い相手が居たかと考えて。
レティ達は気づき、顔を上げた。


         ゙'-´..``````.´-'゙
         ゙l'-´..``````..,´-'l゙
       /          \
       'l,             ,ヘ
      l,              .|
     .|              '゙|
     (              )
      `-''',..,        ,.,,:、
         `,´-------::´..
     / ̄   \ \   \ \  ̄\_
   /         \ \   |  |    \__
  /           \_ \|  |   j   \
  |          \   \_|  |   」__    |
  │            \   |  | ||>'"´ ̄`\
   |           `<´ ̄` ̄ ̄\      ヽ
    |            └ -、     |      |
    |                 | ̄`>'´ ̄`'ー‐-、lー─--、__
     |\            ノ/          `'ー-、      `丶、
     |,ノ\           /               `丶---   ヽ-- ' "´
 一'´ ̄`'--、\      /
            ̄`ー=ニ´_ _ _ ,.. --- -
                        _ _.. --


そしてその視線をさっきからずっと隣で布団を被っていた三郎店長へと集中させていた。


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最終更新:2013年08月08日 14:03