『何かがやって来た日』
あの頃、俺は、もうすぐ受験を控えてた。
学校も始り、帰ってきては勉強、それを繰り返していた。
そんなある日の出来事だった。
「はぁ、疲れた・・・。とりあえずこの問題解いたらゆっくりと休憩するか。」
ドスン!!
後ろで何か物音がした。
いったい何だろうか?そう思って椅子を回し振り向く。
「「ゆっくりしていってね!!!」」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「なんじゃああああこりゃあああああああああああ!!!!」
そこに居たのは
赤いリボンと髪飾りを着けた、黒毛で眉を吊り上げ威張った風な顔と
黒い魔女の帽子のようなものを被った、金髪で見下したような顔が
・・・そう、顔だけのものが居た。
「お、お、お、お前ら、な、なんなんだぁ!!!!」
「れいむだよ!!!」「まりさだよ!!!」
「「ゆっくりしていってね!!!」」
わ、訳がわからない。なんなんだアンタラ。そう心に思いながら、
なにやら満足げな顔で部屋の中央に鎮座している、
大体直径30cmはあろうかというこの二つの顔?を唖然と見つめていた。
「ゆっくりつかれをとってね!!!」
そう喋る、れいむ?とやらの頭の上にいつの間にやらおぼんとお茶が。
「あまいものがからだにいいよ!!!さぁ!!おたべなさい!!」
そういってまりさ?が顎を上げてさっきより偉そうにアピールしてくる。
ってか、たべなさいってなにを?
「「さぁ!!おたべなさい!!!」」
ちょっ、おま?!なんかまりさとやらが帽子ごとぱっくりと二つに分かれたぞ!!!???
その上、いつの間にやら律儀におぼんとお茶が床に置かれているその後ろで
れいむとやらもぱっくり分かれていた。
「・・・!?」
もはや意味が不明すぎて声が出ない。俺はこの時、
人間、感情を逸脱すると出来ることといえば、黙ることだけだと学んだよ。
「「たべないと・・・。」」
「な、なんだ?」
からからの声を何とか出しながら、恐る恐る尋ねる。
そして次の瞬間!!
「「「「
ふえちゃうぞ!!!」」」」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ふえた、言葉どおり増えた、二つずつ、そう、なんか二つずつに増えた。
しかもどんどん「「「「さあ!!おたべなさい!!」」」」と分かれては
「「「「たべないと・・・。」」」」「「「「「「ふえちゃうぞ!!!」」」」」」
と言っては増え。言っては増えをくり返している。
そして徐々に部屋が埋まっていく。
俺自身もプニプニとした、柔らかくて暖かくて肌触りの良い感触に全身が飲み込まれていく・・・。
「あ、あ・・・・・」
徐々に顔まで埋め尽くされて俺は意識の薄くなっていく中で
(俺、なんか悪い事したっけアハハお花畑♪・・・。)
と軽い走馬灯を見た・・・。
「起きなさい!!!」
母の声が聞こえて、ハッと眼を覚ます俺。
気付けば床の上で眠っていたようだ。
「あ、あれ?母さん。なんか顔みたいなので部屋が埋まってなかった?」
はぁ?と呆れた顔で俺を見てくる母。
「何、言ってんの。帰ってきたのにドアを叩いても返事が無いから、どうしたのかと思って
様子を見に入ってみたら、あんた床で寝てたんじゃない。疲れてんのは解ってるけど寝るなら
ベッドの上で寝なさいよね。」
「じゃあ、あれは夢?」
「どんな夢見てたのか知らないけど、もうすぐご飯なんだから。
おやつなんて食べてないでさっさと降りてきなさいよ!」
おやつ?何のことだろう?
そう思い、立ち上がると机の上に、
お盆の上にお茶と隣に小皿に乗った白と赤が半分半分の饅頭と
白いお餅に中が少しだけ黒く透けて見える、たぶん、大福餅?が有った。
「へ?これ母さんが持って来てくれたんじゃ・・・。」
「知らないわよ。もうすぐご飯って言ってるのに私が持ってくる訳ないじゃない。
さっさと降りてきなさいね。」
とだけ言うと母さんはそのままドアを閉めて降りていった。
なぜ机の上にお茶と饅頭なんて物が有ったのか今も解らない。
ただ、暮れてしまった空を見た時
「「ゆっくりしていってね!!!」」
そう、何処からか聞こえた気がした。
即興の人
- 面白い。これはいいww 栗まんじゅう問題だね。 -- 名無しさん (2008-11-23 03:38:16)
- ・・・確かにゆっくりの分裂は初めての人にはインパクト強いかも・・・ -- さまよう人 (2009-12-20 00:57:55)
- ああ、バイバインか。 -- 名無しさん (2012-08-14 10:33:14)
最終更新:2012年08月14日 10:33