ゆっくりまりさがゆっくりアリスに襲われて(?)から数日間、まりさは怖がって外に出ようとしなかった。まあ、私としては何も困ることはないのでいつものようにゆっくりしていた。
……異変に気づくまでは。
「まりさ、太ったわね」
「ゆっ?」
「いや、大きくなった? 膨れた? 体積は大きくなってるけど……」
お腹や腕、脚に当たる部分がないのでどうも表現しづらい。まあ、とにかく増量したのは間違いない。最近腕が筋肉痛だし。
「おねえさんおなかすいたよ!」
……思えば家にいるようになってから食べものを要求する回数が増えた気がする。いや明らかに増えた。
「……」
「ゆっ」
つついてみた。相変わらず弾力がある。肉厚ならぬ餡子厚が増したせいか、弾力感、ぷにぷに感が増している。
「ゆっゆっゆっ」
音の出る玩具のように突かれるたびにまりさは鳴く。
「ゆっゆっゆっ」
「この弾力があ……肉球みたいな弾力がいいのよ……うふふ……はっ!」
「ゆっ?」
思わず脱線してしまった。
ともかくこのまま太られてはいけない。何がいけないかというと、最近床が軋み始めている。床の強度的にいけない。
「まりさ、出かけましょう。お散歩よ」
「ゆっ! ありすにまたいじめられるよ!」
……あまりその名を使わないでほしい。
「大丈夫よ、私がついてるから。いじめられそうになったら追い払ってあげる」
「ほんと?」
「ええ」
「それなら
ゆっくりできるね!!!」
まりさと一緒に玄関から出る。
「さあ、行きましょう……どうしたの?」
まりさがこちらを物欲しげな目で見ている。
「おねえさん、抱っこしてほしい!」
「う……(かわいい)だ、だめよ。自分で歩き、いや動き、いや跳ねなさい」
「つかれるよ!」
「言うこと聞かないとご飯抜きよ」
「ゆっ……」
まりさは我慢して跳ねだした。なんだか子供を躾けてるみたいだ。
散歩は意外に難航した。すぐに疲れを訴えて休みたがるのだ。
「つかれたよ! ゆっくりしたい!」
「だめよ、さっき休んだでしょ」
「ゆっくりする!!!」
「……あ、ゆっくりアリスだ」
「ゆゆっ!?」
「私は先に行ってるから、ゆっくりアリスとゆっくりしてなさい」
「や、やだー! おいてかないでー」
必死について来ようとする。……すごく複雑な気分だ。
「嘘よ」
「ゆっ?」
「後ろ見てごらんなさい、ゆっくりアリスなんていないわよ」
緩慢な動作でまりさは後ろを向く。
「ほんとだ! いない! おねえさんのうそつき!」
「ごめんね。でもね、私がいない時にゆっくりアリスが出てきたときに休んでちゃ捕まってしまうわよ? だから疲れた疲れた、って言わずに体力をつけないと。それともずっとゆっくりアリスに怯えて外に出ないつもり?」
「……でも、うそつく人とゆっくりできない! まりさここでゆっくりする!」
「……あ、ゆっくりが」
「もうだまされないよ!」
「いや、ほんとに」
ぼてん、ぼてん、ぼてんという効果音が似合うこれまた重量級ゆっくりが道の向こうから接近してくる。
「ゆゆゆゆゆっ!!」
足(?)音を聞いて本当と思ったのか、まりさは起き出して必死に跳ねだした。
「ま、待ってまりさ」
「こあいよー! いじめられるよー! ゆっくりできない!」
「だ、大丈夫」
なはず。だってあれはアリスじゃなくて……
「ゆっくりしていってね!!!」
霊夢。
まりさと同程度の重量のゆっくりれいむが道の真ん中を陣取った。
……とりあえず声をかけてみよう。
「こ、こんにちは」
「こんにちは!」
「お散歩してるの?」
「そうだよ!」
……敵意はないようだ。ゆっくりは間が抜けた顔をしているので敵意など感じることがそもそもないのかもしれないが。
「まりさ、怖くないわよ。ご挨拶しなさい」
まりさは私の体に身を寄せながら顔を出し挨拶した。
「ゆ……ゆっくりしていってね」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆうっ!」
また隠れてしまった。
「ごめんね、この子怖がりなの」
「いいよ!!!」
まりさと比べるとずいぶん元気のいいゆっくりだ。皮の艶はよく、弾力も申し分なさそう。
「ちょっと失礼」
「ゆっ?」
抱き上げてみた。やはり重い。意外に低反発だった。中身が違うのだろうか。……これはこれでいい。まりさとはまた違ったエロスがある。
「ゆっゆっ♪」
喜んでる……この反応、誰かに飼われているのかな?
ふと足元を見ると、まりさが羨ましそうに抱えられたれいむを眺めている。
「ゆっくりー! どこにいるのー! 返事しなさーい!」
「ゆっ!」
「……この声は」
「れいむー! ここにいるよー! ここでゆっくりしてるよー!!!」
「ふぅ、ふぅ……あ、アリス?」
「霊夢がこの子飼ってるの?」
「う、うん、そうよ。ゆっくり! 勝手に遠くに行っちゃだめでしょ!」
「ごめんね! ゆっくり反省するよ!!!」
「……本当に反省してるのかしら、全く」
いつまでもゆっくりれいむを抱いてるわけにもいかないので、霊夢に手渡す。
「はい」
「捕まえてくれてたのね。ありがとう、助かったわ」
「いやいや偶然というか……」
「このおねえさん、れいむのこといやらしい目で見てたよ!!!」
「ちっ、ちがっ!」
確かにちょっとそれもなかったとは言い切れなくもないけど!
「んもー何言ってるの。あなたはお饅頭よ? 人間がお饅頭に対していやらしいも何もないでしょ。ごめんねアリス。たまに変なこと言うの、この子」
「あ、そうよね、あはは、あははは」
……
お饅頭と口づけはやはり異端だった。
「アリスおねえさん!」
「ん」
「あらその子……ゆっくりまりさじゃない。あなたも飼ってたんだ」
「う、うん。どうしたのまりさ?」
さっきから喋らないのですっかり忘れてた。まりさは引っ込み思案でもあるらしい。
「…………だっこ」
「え? 何?」
「まりさも、抱っこ!」
顔を薄く赤に染めてまりさは懇願した。
「ふふ、甘えん坊ね。抱っこしてあげなさいよ、アリス」
「……うん」
れいむが羨ましくなったのだろう。
「さて、神社に戻りましょうか、ゆっくり」
「ゆっくり帰るよ!!!」
「というわけでまたね、アリス」
「あ、うん」
「知ってるかもしれないけど」
「?」
「ゆっくりならそのうち痩せるから安心なさいな」
「え……?」
どういうことだろう。
「おねえさん……」
「あ」
心地よかったのだろう、まりさは腕の中で寝てしまっている。こうなったら持って帰るしかない。
「明日はひどい筋肉痛かな……」
次の日の朝、霊夢の言ったことの真意がわかった。
そこにいるのは一回り小さくなったまりさと……
「だ、脱皮しとるー!」
割と厚めなまりさの皮。
「すっきりー!」
- 「まりさも、抱っこ!」 がかわいい!今回はいぢめられなくてよかったね。 -- 名無しさん (2008-07-08 22:50:55)
- 脱皮するのかー! -- 名無しさん (2008-07-08 23:19:26)
- アリスとゆっくりまりさの距離感がすばらしい。 -- 名無しさん (2008-07-09 00:01:01)
- うふ、うふ、うふふふふふふふ -- 名無しさん (2008-09-27 21:16:04)
- 修正しました。 -- Jiyu (2008-10-23 04:15:35)
- 脱皮・・・ -- 名無しさん (2010-11-27 14:29:45)
- だ、脱皮しとるー! -- 名無しさん (2011-07-31 13:34:21)
- 脱皮ですとーーー!? -- 名無しさん (2012-04-23 21:53:14)
- まりさかわいい -- アリス (2013-07-31 20:33:51)
- 脱皮するのかよ⁉︎ -- 名無しさん (2014-09-22 09:35:05)
最終更新:2014年09月22日 09:35