美鈴の休日:神様の暇潰し

美鈴の休日:激突!めーりん対ゆーぎ!!と同じ設定ですが、読まなくても問題ないと思います。たぶん。

 紅魔館の門番・紅美鈴は武術の達人でもあり、彼女に試合を申し込む人間が後を絶たない。また、彼女の飼っているゆっくりめーりんも強く、めーりんへの挑戦者も増えていた。美鈴とめーりんは休日の度に人里まで向かい、挑戦者の相手をしている。今のところ、双方とも負け知らずだ。

 この日、美鈴とめーりんが挑戦者の相手をすべくやってきたのは、いつもの人里ではなく、守矢神社だった。
 守矢神社は、最近になって外の世界から妖怪の山に移転してきた神社で、1人の巫女と2人の神様が仲良く暮らしている。
 その神様の1人、八坂神奈子が美鈴にゆっくりの勝負を挑んできたのだった。

 神社に着いた美鈴を出迎えたのは巫女の東風谷早苗だった。
 「こんにちは、美鈴さん」
 「こんにちは、早苗さん」
 「八坂様から話は聞いてます。どうぞこちらへ」
 そう言って早苗は客間に美鈴を通した。客間には神奈子とゆっくりかなこがいた。
 「おう、いらっしゃい」
 「おじゃまします」
 「わざわざ来てもらって悪いね」
 「いえいえ、お構いなく」
 「ゆっくりしんこうしていってね!」
 「じゃおっ!」
 美鈴は神奈子に向かい合うようにして座り、神奈子に尋ねた。
 「しかし何でまたゆっくりの勝負を?」
 「ん…べつに大した理由はないよ。あんたのゆっくりの噂を聞いて、うちのかなこと戦わせてみたくなってね。それに、弾幕ごっこも飽きてきたし」
 客間に入ってきた早苗が2人の前にお茶とお茶請けを置いた。早苗が客間を出るときに、めーりんの方を異様に目を輝かせながら見ていたのに、美鈴は気づいた。
 「ああ、気にしないでおくれ」
 神奈子が言った。
 「あの子、どうやらゆっくりのことがすごく気に入ったみたいでね」
 「はぁ…」
 「あの子、外にいたときから何か視点がずれてるのよねぇ」
 神奈子はお茶をすすった。
 「まぁ、根はまじめでいい子だから、嫌いにならないでおくれよ」
 美鈴は小さくうなずき、神奈子が湯飲みを置いた。
 「それじゃ、始めるかね」

 2人と2匹は神社の表に出てそれぞれ向かい合った。
 「いつでもいいですよ」
 「あ、ちょっと待ってくれ。準備がいるんだ」
 「準備、ですか?」
 「なに、すぐ終わるよ。かなこ!」
 「ゆっ!」
 返事をしたかなこは背負っていた注連縄型ドーナッツを前方に投げた。するとドーナッツが地面に水平になって浮き、横方向に緩やかな回転を始めた。かなこはそれに飛び乗るように跳ねたが、ドーナッツに着地せず、ドーナッツから少し浮いた状態で静止した。御柱に見立てたであろう千歳飴が4本、戦車の大砲の如く前を向いていた。
 「どうだい?うちのかなこは機動性抜群、御柱での中長距離攻撃も可能だ。そこらのゆっくりとはひと味もふた味も違うよ」
 「ゆっ!」
 神奈子もかなこも自信満々、という顔だ。
 めーりんも戦闘態勢に入った。
 「さぁ、始めようか」
 神奈子がそう言ったのを合図に、かなこが突進してきた。まるでスィーに乗っているかの様な速さだ。
 めーりんは素早くかわす。かなこはめーりんから少し離れた所でUターンしてめーりんの方に向き直り、今度は千歳飴を放った。4本の千歳飴はめーりんには当たらず、めーりんを囲むようにして地面に刺さった。
 「なっ!?」
 「じゃおっ!?」
 驚く美鈴。困惑顔でしきりに振り返るめーりん。神奈子はしてやったり、という表情だ。
 「よし!とどめだ!かなこ!」
 「ゆっ!」
 かなこはめーりんに接近すると、ドーナッツから飛び降り、めーりんをめがけて降下してきた。
 「なんの!めーりん!」
 「じゃおっ!」
 めーりんは少しためると真上に跳び、体当たりで迎撃した。
 不意を突かれたかなこは地面に転がり、めーりんはうまく着地すると、少し痛がったが、千歳飴を1本くわえて抜いた。
 かなこはその間にドーナッツに乗り直し、めーりんに向かって体当たりを仕掛けた。
 めーりんに激突するかと思った瞬間、めーりんは跳び上がり、自らの体を回転させ千歳飴でかなこの頭上を強烈にたたいた。
 そのままめーりんは千歳飴を放して綺麗に着地し、かなこは気を失って落ちた。
 唖然とする神奈子、にっこり顔の美鈴。
 「あらら…」
 「私のめーりんの勝ちですね」

 2匹の回復が終わり、美鈴は神社の客間で神奈子と話していた。
 「あ~悔しい!あんな負け方するなんて」
 神奈子はだいぶ悔しそうだ。
 「でも一時はどうなるかと思いましたよ。あの千歳飴攻撃はホントにびっくりしました」
 「勝った方に言われても嬉しかないんだよ!」
 美鈴は苦笑いしてたじろいだ。
 「もう1回だ!」
 「いや、今日はちょっと…」
 「なんでだい?」
 「あの様子じゃあ…」
と言って美鈴が指さした方をみると、千歳飴をほおばる2匹と、やはり目を輝かせてめーりんを見つめる早苗がいた。
 「…早苗さんに何されるかわからないですもん」
 苦笑いの美鈴と、あきれ顔の神奈子。
 「あー…」

 結局2回戦目は行われず、次からは場所を変えようということで2人は合意し、美鈴とめーりんは神社を後にした。
 「…負けちゃったね」
 美鈴達を見送る神奈子に、神社の屋根の上から、この神社のもう1人の神様である洩矢諏訪子が声をかけた。
 諏訪子は屋根から飛び降りた。
 「計画失敗?」
 「計画?何のことだい?」
 「あーうー?めーりんに勝って知名度を上げて、信仰を獲得しようっていう計画じゃなかったの?」
 何言ってんだい、と神奈子は笑った。
 「そんなんじゃないよ。ただの暇潰しさ」

以下作者の言い訳など
  • 実はゆっくりかなこの飛行形態を書きたかっただけ。予定してたのと違うけど先にできちゃったので投下します。こまちネタはもう少しお待ちを…。
  • かなこの飛行形態はバラムガーデン(FF8)みたいなイメージです。
  • 危うく諏訪子の出番が無くなるところでした。
  • 引き分けは負けに入りませんよね?大丈夫ですよね?
  • 感想、質問、誤字報告等あれば下のコメント欄へ。閲覧ありがとうございました。
尻尾の人

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最終更新:2008年12月16日 21:19