----※相変わらず東方キャラ登場注意、ネタは二次より
※しかも百合百合な表現があるかもしれんね
※ゆっくりSS206
『永遠な二人』の続編かもしれんね
永遠のお姫様、蓬莱山輝夜。
紅の自警隊、藤原妹紅。
片や、許されざる罪を犯し永遠と須臾を生き続ける者。
片や、家族を失い友を失い死を失い孤独の夜を常盤に走り続ける者。
二人の不死は度重なり巡り合う。
生をもって死を紡ぎ、死をもって生を果たす、無限の闘争、その火蓋を切って落として並べるために。
それは、始まってしまった以上、決して終わることはないのだろう。
二人は永遠なのだから。
ゆっくりSS 永遠な二人 第二夜
草木も眠る丑三つ時。
今日も今日とて魑魅魍魎が跋扈する人拒む自然の迷宮、迷いの竹林。
今宵は三日月、そして、蓬莱山輝夜と藤原妹紅、その何百、何千回目とも分からぬ決闘、殺し合いを行う刻であった。
「ごめーん!!遅れちゃった」
「遅い!!」
暗いだけの深夜の竹林で延々待ちぼうけを喰らった妹紅は、待ち合わせの相手、輝夜に向かって大きな文句の声を浴びせた。
「今回の日程を決めたのはそっちでしょ!距離だって近いんだから30分や40分も待たすなってのよ!!私を怒らせたいのか!!」
「う~、妹紅もう怒ってるじゃない。
いいでしょ、貴女なんて家が近いどころかこの竹林そのものが住処なんだからそんなガミガミ言わなくても~」
「住んでねーわよ、家くらいあるわよ!!早速灰にされたいみたいね蓬莱ニート」
妹紅は激昂し、その右手に闘志の火をメラメラと燃やしながら(比喩表現ではない)輝夜に怒鳴り散らした。
「だってぇ、この子も付いて来るっていうから準備に手間取ったのよ!」
そう言って輝夜は手に持ったバスケットを妹紅に見せるように掲げる。
「それは‥、まさか‥」
最近同じような光景を見た気がする、たしか里の大型ディスカウントストア辺りで。
「そうよ!お出でなさい、もこたん!!」
「ゆぅうう!!」
バスケットから何かが飛び出る。
風を切る音。刹那に瞬く炎の翼。
そして、その饅頭は輝夜の頭の上に、ちょこん、と着陸し、胸を張って勢いよく声を張る。
「ゆっくりとらうまになってね!!」
この饅頭こそ蓬莱山輝夜が現在飼っているお気に入りのペット、ゆっくりもこうである。
「びしっ、きまったよ!!」
登場シーンから掛け声を決めるまでの一連の流れが見事に決まったの嬉しいのか、ゆっくりもこうの目はキラキラと輝いている。
「きゃー、流石だわ!格好良かったわよ、もこたん」
輝夜はこれ以上ないほどの満面の笑みで頭のゆっくりもこうに「いーこいーこ」する。
「ゆきゃー、ひめー、くすぐったいよー。くすぐったいよー」
ゆっくりもこうも嬉しそうに身をよじり輝夜の手にすりすりする。
ラブラブである。輝夜単体で見れば馬鹿親である。
「ああ、やっぱこんな展開か‥」
妹紅はその様子を半分呆れた様子で眺めていた。
「ん?どうした妹紅。羨ましいの?」
「誰がだ!!」
「ゆゆ、心配しなくても後でお姉さんにももこうをもっこもこにできる権利をあげるよ!ゆっくり撫でるがいいよ!」
「いや、だから違うって」
「んで、何でゆっくりなんて連れてくるかねぇ。冒頭ナレで言ってたろ。私達殺し合いするんだぞ、死闘だぞ。
ゆっくりが怪我したらどうするつもりなんだよ。」
自分のペースを取り戻し再び妹紅は輝夜に向かって問い詰めた。
「う~、だけどさ。いやこれはね‥」
「ゆぅ~。姫は悪くないよ!ごめんねお姉さん、もこうが姫に我侭言ったの!」
輝夜の頭の上のゆっくりもこうが涙目ながらに告白する。
「姫がお姉さんに会いに行くって聞いたからね、もこうもかぐやに会いたいと思ったの!
だから姫に連れてっててお願いしたの!ゆっくり迷惑かけてごめんね!」
このかぐやというのは飼い主の蓬莱山輝夜のことではない。妹紅のペットのゆっくりかぐやのことだ。
ここ数回の交流で輝夜のゆっくりもこうと妹紅のゆっくりかぐやはすっかり仲良くなっていた。
「もこたん、いいのよ。きっかけが何であれ貴女を連れ出したのは私なんだもの。妹紅に怒られるのは私だけでいいのよ」
「ゆゅ、姫ぇええええ!!」
ゆっくりもこうは泣き顔でがしっと、手も無いのに輝夜の頭に抱きついた。
「もこたんっ!!ああ可哀想なもこたん!! チラッ‥」
「『ちらっ』じゃねええええええ!!嘘泣きなのが見え見えなんだよ!怒らせたいのかあんたは!!」
「ゆぅうう!ごめんね!謝るね!」
「ああいや、別にお前に怒った訳じゃないから、ね」
「何私のもこたん泣かせてんのよ!!殺すぞ、こらぁ」
「手前はもう黙れ」
頭を抱えながら、妹紅はまたもや自体が思いもよらぬ方向に転がってしまったことを痛感していた。
「ゆぅ!そういえばお姉さん!かぐやは!?かぐやはどこにいるの?」
何時の間にか泣き顔から持ち直したゆっくりもこうが妹紅に尋ねる。
「あ、ああ。それは‥」
「いや、言ったでしょもこたん。妹紅はこんな所にかぐやを連れてこないって。仕方が無いけどまた今度ね」
輝夜もまさか妹紅が可愛がっているゆっくりかぐやをこんな危険な所へ連れてくるとは考えていなかった。
それは自分だって同じこと。
できれば可愛いペットをこんな陰惨な殺しあいの場に置いておくことは本意ではない。
ただあまりにも必死にお願いされたので、連れ来ざる得なくなったのだ、鼻血的な意味で。
「ゆ、ゆゅ~ん」
妹紅はそんな様子を見ながら、どこからかバスケットを取り出した。
そして中から、それを取り出し、
ひょとん
自分の頭の上に乗せる。
「いや、実はいるんだ」
「ゅぴぃ~ ゅぴ~」
輝く黒髪、チャームポイントの白いリボン。それは正しく、
「ゅ!かぐや!!」
そう、ゆっくりかぐやであった。
「ゅぴ~ ゅぴ~ 」
ちなみにもう夜遅いのでゆっくり3大欲求の内一つ睡眠欲が他の種より一際高いゆっくかぐやは、ゆっくり爆睡中であった。
漫画みたいな鼻提灯を膨らませ妹紅の頭の上で器用に眠りこけている。
「ゅ、かぐやぁ!!ゆっくり起きてね!もこうが会いに来たんだよ!
それなのに眠っちゃうなんて酷いNEET根性だよ!起きて起きてよ!」
ちなみにゆっくりかぐやの上位互換であるテルヨフと呼ばれる体つきゆっくりかぐやは一日の82%をNEET状態で過ごすと言われている。
それと比べればゆっくりかぐやの睡眠など可愛いものだ、二重の意味で。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥、お前も連れて来てんじゃーん」
「それ私の台詞」
輝夜がビシっと妹紅に大して突っ込む。
「何!?あれだけ私を叱りつけておいて自分も見事に同じ轍を踏んでんじゃないのよ!!
おそろいじゃん、ていうかペアゆっくりじゃん、お似合いの二人じゃん!」
「おい輝夜、落ち着け。何か変なこと口走ってるぞ」
「どーいうことなのよ!説明してよ!」
「だ、だってさ。家の中で一匹だけで留守番させるなんて可愛そうじゃん!!」
「だからって連れてきて怪我したらどうするつもりだって言ったのは何処の誰よ!しかもついさっき!!
自分が出来てないことを人に強制するなんて最低よ!!」
「私だって最初はバスケットの中から出すつもりなんてなかったんだからしょうがないじゃない!!
それに私んちはこの竹林の中にポツンと一軒だけ薄ら暗く寂しく佇んでんのよ!!
そんな中私の可愛いかぐやを独りで置いてけるかい!!妖怪に襲われちゃったらどうするつもりだってのよ!!」
「きゃぎゅっ」
輝夜が顔を真っ赤にして吹き出す。酷く動揺した様子だ。
恐らく『私の可愛いかぐや』辺りに反応したものと考えられる。
「ちょっと!紛らわしい、もとい、気味悪いこと言わないでよ!」
「心配しなくてもあんたのことなんか可愛いなんて思ったこと微塵もないから」
「ぬぁ、何ですってぇ!何よ!そこまで言う!
第一ゆっくりかぐやなんて大して可愛くもないでしょ!何そんな必死になってるんだか!」
「あぁ!?何言ってんだ、キレっぞコラァ!!私のかぐやは超悶絶可愛いんだよ!このスウィートな寝顔見りゃ分かっだろ!!」
「きゃぎゅぎゅっ!! ‥だからぁ、そんな嬉し、じゃなくて紛らわしいこと言うなぁああああああああああああ!!!!
何よ!そんな子より私のもこたんの方が100倍も可愛いんだからぁ!!」
「もくぅ!!」
今度は妹紅が顔を真っ赤にして吹き出した。輝夜のどの台詞に反応したかは敢えて言うまでもあるまい。
「前々から思ってたが私ゆっくりに妙なニックネームつけるのやめろ!!何だ『もこたん』って。その萌えキャラなネーミングは!!」
「いいでしょ!!実際萌え萌えなんだから!!もこたん可愛いよ!もこたん!萌えぇえええええ!!」
「ももきゅっ!! ええい叫ぶな恥ずかしい見苦しい!!
それだったら私のかぐやの方がずっと萌え萌えだってのよ!かぐや萌えぇ!!!」
「かぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!!! ああだからぁ私のもこたんの方が‥」
「もきゅきゅきゅきぃきゅ!!!! 私のかぐやの方が‥」
そしてやっぱり
親馬鹿Aと親馬鹿Bによるどっちのゆっくりが可愛いか論争がゆっくり始まる。
いつか見た流れである。テンプレとも言う。
傍から見れば新手のプレイみたいに見えたりするが彼女達は真剣だ。
色々な意味で顔を真っ赤にしながら互いに負けじと論争を繰り広げる。
「ゅ、姫ぇ、お姉さん、ゆっくり喧嘩はやめてよ!とらうまになるよ!とらうみゃあ!」
ゆっくりもこうは輝夜の頭の上でゆっくり仲裁しようとしたが、色々タガが外れた彼女達にその声は届かない。
「ゅぴ~ ゅぴ~」
ゆっくりかぐやは動じず眠り続ける。
この場では彼女こそが真のゆっくりに最も近き者と言えよう。そんなことに意味など無いが。
こんな不毛な言い争いが夜が明けるまで続くかと思われたが、
「何よ!!ゆっくりかぐやの何がそんなに可愛いのよ!!そんなのただの不細工なNEET饅頭じゃない!!」
涙目ながらに叫んだ輝夜の、ある意味自虐とも言えるその一言で、
「んだとコラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
状況は一変する。
大切なペットを不細工なNEET饅頭呼ばわりされ妹紅がブチ切れた。
「殺して焦がして燃やして灰にしてばら撒くぞ、オラァ!!!!!!」
怒りに任せ妹紅は本気の戦闘態勢に入る!
その背中から巨大な火炎が生き物のように伸び広がった。
そしてそれは竹林も夜空も焦がし、一つの形へ向かい収束する。
「『火の鳥 鳳翼天翔』!!!!」
永遠と不死の象徴、敵対する一切の者を塵へ返す無限の炎、
鳳凰の両翼が、今、完成した。
「くっ、本気なようね」
思いもよらぬ開幕となったが、元々今日この時間はそういうことをやり合う時間だ、予定調和、やることに変わりはない。
輝夜は頭を切り替え、自身もスペルカードを構え相対する、
「ゅ、かぐやぁああああああああああああああ!!とらうみゃあああああああ!!」
途中で頭の上に乗せっぱなしだったゆっくりもこうが突然叫びだした。
「な、どうしたのよもこたん!」
尋常ではないゆっくりもこうの叫び方に何事かと輝夜は尋ねる。
「姫ぇ!!かぐやの頭がぁあああ!!」
「かぐや?」
ゆっくりもこうは見ての通り輝夜のことは『姫』と呼んでいる。だから今呼んでいるのは妹紅のゆっくりかぐやのことだろう。
(ゆっくりかぐやっていうと、確か妹紅の頭の上に‥)
そこで、彼女も気付いた。
「ぁあああああああ!!ちょっと妹紅!上!頭!頭ぁあああ!!」
慌てふためき輝夜は自身のペットと同じように妹紅に対して叫び呼びかける。
「‥‥え?」
「だからぁ!頭の上!!かぐやが!ゆっくりかぐやがぁああああ!!」
「かぐやぁああああああああああああああ」
ゆっくりかぐやの自慢は何と言ってもその髪の毛だ。
美しくしめやかな黒い長髪。どんなに髪が自慢なゆっくりありすやゆっくりまりさが見ても『うっとり~』してしまうだろう。
そんな長く美しいゆっくりかぐやの髪の毛先から、
ちりちりちりちり
何だか良くない感じの煙が出ていた。
火の元は言うまでもあるまい。
「‥‥あれ?嘘?」
妹紅も輝夜とゆっくりもこうの掛け声にやっと気付き、
「ってしまったぁああああああああああああああああああああ!!!」
急いで炎の翼を引っ込めた。
だが既に色々手遅れだ。
「ゅぴ~ ゅゅゅ、ゆっ ゅう~ 何だか焦げ臭いね~」
自分の髪が燃える異臭でゆっくり輝夜はゆっくり目を覚ました。
妹紅の顔がゆっくりと、だが確実に着々と青ざめていった。
「ゆわぁああああああああんんん!!かぐやの髪がぁあああああああ!!!!」
けたたましいゆっくりかぐやの泣き声が暗闇の竹林に響き渡った。
あの後二人と一匹による必死の消火活動によってゆっくりかぐやの火はゆっくり消えた。
幸いゆっくりかぐやに火傷や水ぶくれといった実害はなかったものの、
当然のことながらその長く美しかった髪の長さは半分ほどになってしまい、非常にちりちりした具合になってしまった。
もう一度言うが、ゆっくりかぐやの自慢はその美しい髪だ。
その髪が焼き焦げ無残な姿になってしまった‥、
その事実はゆっくりかぐやをとことんまでゆっくりできなくした。
鏡見ることなく自身におきた出来事を悟ったゆっくりかぐやは、一瞬で涙目になり、
悲しみに震える叫びをあげながら、元々入っていた妹紅のバスケットの中に隠れてしまった。
「うぅ、ごめんよ~!ごめんよ~!」
妹紅も故意でなかったとしても、寵愛していたぺットに深い心の傷を負わせてしまったことに後悔し、
涙目になりながら必死にバスケットに向かい謝っている。
「ゅ、ゅ、ゅ~。かぐやぁ、とらうまぁ~」
ゆっくりもこうはどうしていいか分からず、ただただ元気の無い小さな声でそう呟く。
もちろんそんなことでゆっくりかぐやが負った心の傷が癒される訳がない。
「ゆぇええええええん!!ゆぇええええええん!」
文字通り延々とゆっくりかぐやの泣き叫びは続いた。
「あうぅうう、ごめんよー」「とらうみゃ~」
しかし一人と一匹にはどうすることもできない。
死ぬことも老いることもない程度の能力などでは、大切な饅頭一匹の不幸も救ってやれない。妹紅は己の無力さを噛み締めた。
そんなライバルの情けない姿に、輝夜大きな溜息をつく。
‥、仕方ないなぁ。
「ゆっくりかぐや。取り敢えず泣くのはおやめなさい。
永遠亭の姫たる者と同じ名を持つゆっくりが、終わったことにおめおめと泣き続けるなど情けない姿を晒すのはおよしなさい。
そうすれば何とかしてあげなくもないわ!」
輝夜は静かに淡々と、厳しくも優しくもない気品ある口調でゆっくりかぐやをそう諭した。
「おい、輝夜。そんな言い方‥!」
「大きな声を出さないで。この子と話ができないわ」
普段とは打って変わって威厳とカリスマ溢れる輝夜の言動に圧倒され、妹紅は出しかけた言葉を引っ込めてしまう。
「ゅゅゅ、でもぉおおおおおおおおおおお!!かぐやの大切な髪がぁあああ」
「分かるわ。女の子にとって髪の毛程大事にしなちゃいけないものはないものね。でもね、泣き叫ぶだけでは何も解決はしないわ」
「でも、でもぉおおおお!!」
ゆっくりかぐやは自分の髪に誇りを持っていた。
それはただ美しいからではない。
他のゆっくりが『うっとり~』してくれるからではない。
ましてや、自分で自分の髪を眺めて他を見下し悦に入るためではない。
ただ、大切なあの人が、
行き場も生き場もなかった自分を拾ってくれたあの人が、
『あんたの髪は綺麗ね。そんなとこまであいつに似ちゃって。ほらこっちに来て。といであげるから』
いつも誉めてくれたから。
いつも自分の睡眠時間を削ってまで手入れしてくらたから。
それが終わった後ぎゅっと抱きしめてくれたから。
だから、自分は誰よりも美しい髪を持つゆっくりになろうと思った。
それなのに、それなのに、
どうしてこんなことになってしまったのか‥。
「大丈夫、大丈夫よ」
輝夜はゆっくりかぐやが入ったバスケットを持ち上げ、優しく囁きかける。
後ろで心配そうに様子を見ている彼女に聞こえないように、小さな声で、
「貴女と私の大好きな優しいあの人は、そんなことで貴女を嫌いになったりはしないわ」
そもそも事態の元凶である訳だし。
「それに、さっき言ったでしょう。何とかしたげるって」
そう言うと輝夜はバスケットを開け、不安そうに見上げるゆっくりかぐやに向かってウィンクする。
そしてその顔を見て、ゆっくりかぐやも泣くことをゆっくりやめた。
所と時間変わって。
永遠亭、夜明け前。
「よしっ、できたぁ」
「ゅ、ゆゆゆ~!どうなったの?かぐやの美しい髪はどうなったの!?」
「はい、見せてあげる」
そう言って輝夜は微笑み、鋏と櫛を置いて手鏡をゆっくりかぐやの前に置いてやる。
「ゅ、ゆゆゆ♪ か、可愛いよ!これがかぐやなの!?」
鏡には短くなった髪の毛をポニーテールにして束ねている、ゆっくりかぐやの姿があった。
サービスとして輝夜の所持品であった蝶々の形をした髪飾りもつけてあげている。
「ええ、そうよ。ほら、妹紅ともこたんに見せてあげなさい」
「うん!有難うお姉さん!!」
「それと、私のことは姫とお呼びなさい」
「分かったわ!姫!」
そう言うとゆっくりかぐやは振り向いてふんぞり返り、
「ゆっくりニューゆっくりかぐやを謁見していってね!!すりすりしてもいいよ!!」
自信満々な笑みでそう言った。
「ゅゅ!さっすが姫。かぐやがゆっくり可愛くなったね!」
ゆっくりもこうはピョンピョン跳びはね主人を賞賛した。
「ぶっ、鼻血が」
馬鹿親Bは一瞬見ただけで下を向いて鼻を押さえてしまい、まともにその姿を見ることができなかった。
「あ~の馬鹿が‥」
その様子を見て、呆れながら親馬鹿Aがそう呟いた。
幻想郷に日の出が上がる。
色々な出来事があり結局明け方まで録に眠れなかったゆっくり2匹、今では仲良く寄り添い静かな寝息をたて眠っていた。
そんな様子を見て永遠亭の縁側に座っていた輝夜も「ふぁ~」と口に手を当て大きく欠伸する。
「今日は疲れたわぁ。結局決闘もできなかったわね‥」
「ああ、そういえばそうね」
隣に座る妹紅が答えた。
「まぁ、しょうがないわね。どうせこの先に機会なんてそれこそ無限にあるんだから、また今度でいいわよね」
残念そうに輝夜が呟く。
「なぁ、輝夜」
「ん、あによ?」
妹紅は輝夜に向き合い、
ゆっくりと頭を下げた。
「ありがとう」
「ん?へ?」
妹紅が自分に頭を下げる!?普段なら絶対に有り得ない状況に、輝夜の頭は軽く混乱する。
「ちょっと、どうしたのよいきなりそんな。貴女らしくもない」
「そうね」
妹紅は俯いて地面を見つめる。
「ちょっとね。久しぶりに自分の無力さを痛感してね。
‥あの子の、大切な髪を燃やしてしまったのに、私は慌てふためくだけで何もできなかった‥」
「‥‥‥」
「あんたが少し羨ましくなったよ。綺麗な顔しといて芯は強くて‥、器用で裁縫も髪切りも料理も、
何でもそつ無くこなしやがってさ。本当に姫でお嬢様じゃないか。どこかの竹林の誰かさんとは偉い違いだよ」
自嘲気味に妹紅はそう呟いた。
そんなライバルの珍しい態度に輝夜は、きょとん、とした後、
ニヨ、っと薄く笑い。
「似合わないわね」
自分の顔を妹紅の髪にギリギリまで近づけ囁くようにそう言った。
「ちょ!? 何だよ輝夜!」
急に耳元で呟かれ、どぎまぎしながら妹紅は文句を言う。
「ああ、髪型の話よ」
そう答えにならない返事を返し、輝夜は意地悪い笑みで妹紅の髪の毛を左手でそっと掴む。
「もきゅ、おいやめろ!」
「いいじゃない。折角綺麗な髪してるんだからさ。ちゃんと手入れしないと勿体無いとは思わないかしら」
「はぁ!?ちょっと、だから顔が近いって!」
顔を真っ赤にして妹紅は抵抗する。
「フフフ‥、前々からいじってみたいと思ってたのよ、妹紅のその綺麗な髪」
「気持ち悪い笑みを浮かべるなぁあ。いいから、自分の髪ぐらい自分で管理できる!」
「またまたぁ、私みたいな器用美人になりたいんでしょう?ゆっくり教えてあげるからさ」
「取り消す!前言撤回する!誰があんたみたいな‥ひゃぅ‥!ドサクサに紛れてどこ触ってんのよ!!」
「フフフフ、良いではないか、良いではないか~」
「う~わ~、やめて、やめてぇぇええ‥」
「ゅぴ~ゅぴ~とらうみゃとらうみゃ‥」
「ゅぴ~ ゅぴ~ にゃははもこたん~」
二匹のゆっくりがゆっくり眠る永遠亭。
だが、その主人達のゆっくり眠る時間は今暫く来なさそうだ。
兎たちがゆっくり起き始め活動を開始する時まで、
二人の闘争はゆっくり続く。
第二夜 ~了~
以下後書きのようなもの
- まさか二話目書くことになるとは思わなかった。取り敢えずこれからは「かぐもこジャスティスの人」とでも名乗っておこうか。
- 相変わらず駄文ですまんね。
- 可愛いいものを可愛く書くって難しいね。
- これあんまりゆっくり関係なくね?
- 前回が妹紅攻めだったので(?)今回は妹紅受けなのです。
- かぐもこが俺のジャスティス。
- えーこまは我が彼岸。
- 二人の結婚まで見たくなったw -- 名無しさん (2008-11-30 18:03:35)
- 第三夜が待ちどおしいw
-- 名無しさん (2008-12-13 15:51:22)
- すまない、みすちー物語がもうちょっと続くので、第3夜はなかなか書けそうにないのです。
でも、いつか必ず。 -- 名無しさん (2008-12-15 09:31:40)
- みすちー物語との接点を作る予定はありますか? -- 名無しさん (2008-12-25 15:01:52)
- 実は接点既にバリバリです。さっき投下した新SSにも。みなぎ得一とか成田良悟とか上遠野浩平とか、クロスオーバーする作品大好きデス。 -- かぐもこジャスティス (2008-12-27 01:26:25)
- >ゆっくりもこうは見ての通り輝夜のことは『姫』と呼んでいる。かぐやと呼んでいるのは妹紅のゆっくりもこうのことだろう。
ここ、正しくは「妹紅のゆっくりかぐやのことだろう」だよね -- 名無しさん (2009-11-01 11:59:45)
- ↑修正しますた。 -- kgmk (2009-11-01 16:31:34)
最終更新:2009年11月01日 16:31