えろほんがあったよ!さとりさまよんで!第2章

※ 元ネタ、ガ板AA霊烏路 空 【うつほと読書の秋】など、
※ 俺設定アリ。
※ 外道です。
※ Sです。
※ Lです。









Ⅱ.VSさとり







「どこに行くつもりですか?」



お燐とお空が振り向いた先にいるのは一人の可憐な少女。
この殺風景な地獄には場違いなことに、ひっそりと咲く一輪の花のように儚げなその姿は
ほんの少し力を加えたら折れるのではないかと思うほど細い。
けれども彼女の事を知るものは決して見た目に惑わされて侮ることはない。
彼女こそ古明地さとり。心を読む程度の能力を持つ、地霊殿の主。
怨霊も恐れ怯む少女。

「さ………さとり様、どうしてここに?」

頭の中が真っ白になり、思わずお燐はさとりに尋ねてしまう。
ペットに対して放任主義のさとり。
これまでさとりが怨霊うずまくこの灼熱地獄跡地を尋ねることはなく、
お空もさとりに長い間会わずにいた。
それが原因で地下の異変の際はお空への対応が遅れたことは記憶に新しい。
しかし異変の一件以来、これまでさとりから遠ざかっていたのが嘘のようにお空はさとりに会いに行くようになった。うにゅほを連れてさとりと食事を共にしたり、遊びに行くことが増えた。
けれどもさとりはさとりは放任主義のスタンスを崩さず、
この灼熱地獄跡地にお空を尋ねることは今までなかった。そう、今までは。

「食料係からいいお肉を届けてもらったから、たまにはみんなでごはんにしようかと思ったの。
貴方達を呼ばないのって不公平でしょ。私から誘いたくなる時だってあるわ。」

なんてことはない。この場にこのタイミングで来たのはあくまで偶然だった。

「入れ違いにならなくて良かった。」

さとりは一見いつもの無表情に見えるが、その座った目の奥を輝かせ、
口元がぴくぴくとふるえ、笑顔を隠せないでいる。
放任主義とはいえ、共に食卓を囲むことの嬉しさはそれとは別だ。
食事として怨霊を吸収することができないペットはさとりのほうへと自分から寄ってくるために
さとりからペット達を誘うことはないが、さとりはペット達と食事をとることが好きだ。
ペットを飼っている者にとってはペットに食事を与え、
それを美味しそうに食べるところをみることは何事にも変えがたい幸福があるという。
さとりも例外ではないのだろう。
むしろ、愛する子に対して食事を振舞おうとする母の姿というべきなのかもしれない。

「今日はご馳走よ。早くしないと他の子達がみんな食べちゃうわよ。」

さとりはせかすようにお空、お燐、うにゅほに声を掛かる。
突然の事に躊躇するお空とお燐の間をすり抜けてうにゅほがいきなりさとりの方目掛けて飛び出した。

「さとりさまだ!」
「ちょっと、うにゅほ!」

制止するお空を振り切って、うにゅほはぽよんぽよんとさとりのそばへと飛び跳ねていく。
うにゅほはさとりに内緒でお空と地上侵略の相談をしていたことなぞ頭の隅に押しやられていた。
いつもさとりと一緒にいる時間に、さとりのそばにいることが出来なかったために心細かったのであろう。ゆっくりの名に反しては驚くほど速い速度で、あっという間にさとりの隣にやってくる。

「さとりさま!だっこして!だっこ!」
「あらあら、うにゅほってば今日も甘えんぼさんね。お空の小さな頃を思い出すわ。」

笑顔一杯でさとりにおねだりをするうにゅほ、
さとりはうにゅほを抱えるとよしよしと撫でながら微笑む。
うにゅう、ととろけるような声を出しながら、うにゅほは安らぐ。
地霊殿のペット達にとってさとりは母のようなものだ。
母の暖かい抱擁の中はどこよりも安らげる場所であろう。

灼熱地獄跡地という物騒な名に相応しくない、ほのぼのとした空気が漂う。
ここでお燐はチャンスだと思った。うやむやにしてしまえば面倒ごとも起こらずにすむ。

「え~と、そうだ! お空! うにゅほ! さとり様もああ言ってる事だし、早くご飯を食べに行こうよ。あんた達がこないならあたいがあんた達の分も食べちゃうよ。」
「そ………そうだね! 私はうにゅほを連れて先に行くね!」
「ふふ、お燐、お空、慌てなくても貴方達の分はちゃんと用意しているわよ。」




「だから地上にちょっかいを出しに行くのはおやめなさい。」




さとりがこの場を離れようとした二人にぼそりとつぶやく。お空とお燐が凍りついたように固まる。
クスクス、クスクス。さとりの囁くような笑い声が響き渡る。

「せっかく腕によりをかけてご飯を作ろうとうきうきしていたのに、企みごととは感心しませんね。」

さとりはお燐とお空の方に顔を向けた。笑顔、しかし目が笑っていない。
どの場面からなのかは知る由もないが、
お空とお燐が考えていることなどさとりは心を読む程度の能力であっという間に看破していた。
先ほどまでの柔和な空気が一変、張り詰めるような重く冷たい空気が辺りを支配する。

「いけない子ねぇ、貴方達。」
「さ……………さとり様………。」
「違うんです…………あたいらまだ何もしてないです…………。」

大妖怪の持つ圧倒的なプレッシャーに後ずさるお燐とお空。
さとりの腕の中にいるうにゅほだけが状況を理解しないで安らいでいる。

お燐は焦った。まずい、心を読めるさとり様には隠し事は通じない。

「『まずい、心を読めるさとり様には隠し事は通じない。』ですか。お燐、一体どんな隠し事をしているのでしょうね?」

先手を打たれたお燐。さとりの持つ固有の能力。心を読む程度の能力。
相手の思っていることをそのまま言い当てることで、何もかもお見通しだということを伝える。
けれどもたったこれだけで相手は何を考えればいいかわからなくなり混乱する。
派手さはないが、精神の揺らぎを何よりも恐れる妖怪たちにとって、これ以上の恐怖はない。
悩めば悩むほど、対策を考えれば考えるほど奈落の底に沈む、恐ろしき精神攻撃。

「あ…………あのですね、さとり様何でもないんです! これは」

お燐は主人の前でどうすればいいのか頭の中でぐるぐると考える。

考えてしまった。

正直に言ったらまたお空が何かしでかそうとしていることがばれちゃう。
そうしたらお空が何かお仕置きを受けるかもしれない。鳥頭のお空に言い聞かせるんだから、前のようにお説教だけじゃすまないかも。だけど優しいさとり様ならそんなにひどいこともしないよね。この間もお空が始末されると思ったのはあたいの早とちりだったし。でも次もそうとは限らないか。甘えちゃいけないよ。あぁでもこれは全部さとり様にはばれているよ。何も考えない。何も考えない。って考えなかったら対策の立てようがないじゃん。

「『正直に言ったらまたお空が何かしでかそうとしていることがばれちゃう。
そうしたらお空が何かお仕置きを受けるかもしれない。鳥頭のお空に言い聞かせるんだから、前のようにお説教だけじゃすまないかも。だけど優しいさとり様ならそんなにひどいこともしないよね。この間もお空が始末されると思ったのはあたいの早とちりだったし。でも次もそうとは限らない。甘えちゃいけないよ。あぁでもこれは全部さとり様にはばれているよ。何も考えない。何も考えないか。って考えなかったら対策の立てようがないじゃん。』ですか。」

全てお見通し。お燐の考えていることとさとりの言葉は一言一句変わらない。
さとり相手に隠し事は通用しない。
例えるならば相手の目の前で作戦会議を行なうようなもの、全て筒抜けである。
さとりに出会った時点ですでに王手がかかっている。逃げ場などどこにもない。
さとりはお空とお燐に【質問】する。

「お燐、お空、何か変わったことがありましたか?」
「え!? え!?」
「何もないです!」

お空とお燐はさとりの【質問】を受けて思わず先ほどの会話が頭に浮かぶ。
さとりの【質問】は言い訳を考えようともがけばもがくほど絡みつく蜘蛛の糸。
彼女達の頭の中に浮かんだビジョンと会話をさとりは能力によってあっという間に読んでしまう。


温泉卵、地下への侵入者、ネチョ、うにゅほの新しい力、エロ本、地上侵略。


「把握しました。」
「はやっ!」
「バレた!」

ほんの数秒。これだけでさとりは先ほどこの場で何があったかを知ってしまった。

「なるほど、私がいない間にそのようなことがあったのですね。」
「は………はい………。」
「そうです………。」
「トラブルが起こる前に気がついてよかったです。以前と同じ失敗を繰り返すわけにはいきませんからね。それにしても読み取った内容で一部つながりのもてないところがあるのですが………。地上侵略はまだしも、えろ…………」

さとりはこほんと咳ばらい。

「春画ですか…………。春画がなぜ地上侵略と関係あるのか…………。性を触媒にする妖術は確かにありますが………………。それでも理論が飛躍しすぎです………………。」

それはそうであろう。普通はネチョと地上侵略が結びつくとは思わない。
さとりの頬がほんの少し赤みを帯びていた。

さとりは深く息を吸って吐き、心を落ち着けてからお空を呼び止める。

「お空、貴方には少し話があります。いいですね。」
「………わかりました。」
「よろしい。」

さとりはお空をじっと見つめた。
睨んではいないが、お空は蛇に睨まれたカエルのように固まってしまう。
いや、悪戯をしようとしている事を母にばれてしまった子供のような心境なのかもしれない。

「お空、以前そうやって地上の方々に迷惑をかけたことを忘れたのですか?」
「あの…………そういうわけではえ~とですね………」

異変の際にさとりとお燐はお空のせいで色々大変な目にあった。
さとりが主人としてお空を叱ったのとは別に、お燐も友人としてお空のことを叱った。

まさかあのときの事を本気で忘れたわけではないと信じたい。お燐はそう思っていた。

「『忘れてた。どうせ全部うまく収まったし。』ですか。」

地獄に落ちろ、このトラブルメーカー。本当に忘れてやがった。思わずお燐は脱力してしまう。

さとりも頭を抱えていた。

「私が甘すぎたようです。叱るだけでは効果がないのがよくわかりました。
あなたにはきついお灸をすえる必要があるようですね………。」
「あのさとり様、冗談ですよね? ね?」
「本気です。この古明地さとりが地霊殿の主として命じます。」


うろたえるお空に向かってさとりは判決を下す。


地霊殿の主としての判決を。


無慈悲に


冷徹に


残酷に。






「お空、貴方は一週間おやつ抜きです!」
「え!?」






突然生きる希望を根こそぎ奪われた者はそのことを理解できずに固まる。
お空にとってそれは何よりも重く苦しい罰。

先ほどまではお空に対して怒りを抱いていたが、お燐は思わず同情した。
さとり様があれほどまで厳しいことをおっしゃるなんてと。

「もう一度言います。お空、貴方は一週間温泉卵を食べることを許しません。」
「さとり様…………嘘ですよね……………優しいさとり様がそんなこというはずないよ………。」
「やるといったらやります。やらせます。」
「卵…………卵……………。蛋白質………………黄身…………白身……………。」

毎日10時と3時のおやつ。

とろけるような温泉卵。

流動性を保ちながら、ムニムニとほどよく固まった白身。

その中にあるジューシーで濃厚な味を醸し出す黄身。

完全栄養食品【卵】

その調理法における究極系のひとつ、【温泉卵】

それが摂取できない。悪夢の7日間。

お空は罰を終えたときにその精神を保っていられるだろうか。


プツンと、お空の中の何かが音を立てて切れた。

「すいません!すいません!どうかそれだけは!私は温泉卵が生きがいなんです!」
「駄目です。今までほったらかしにした私が甘すぎました。今回は心を鬼にさせてもらいます。」
「や゛だ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

この場にいる少女達の中で最も発育の進んだ容姿をしているお空が、
幼い少女のように恥も外聞もなく、へたりこんでわんわんと泣き叫ぶ。
それはあまりにも痛々しい光景。
お燐は思わず目を逸らしてしまった。
うにゅほはこれほどの事態でも気づいていない。
さとりの腕の中でゆっくりしている。暢気にもほどがあった。

「そうだ! うにゅほはどうなんです! あいつだって共犯ですよ! むしろ主犯ですよ!」

最悪だあの鳥頭。おやつ欲しさに仲間を売りやがった。
いくら温泉卵が生きる気力だからといって、やっていいことと悪いことがあると
お燐は呆れる。

「うにゅほ、そうなの?」

うにゅほはさとりの声でようやく気がつく。

「うん!」

さとりはうにゅほに穏やかな表情と声色で聞いた。相手は子供だ。
場合によっては罰が必要だろうが、必要以上に厳しくするのはよくないと思ったためだ。
そんなさとりの気遣いを知らず、うにゅほは明るく返事をする。
善悪がわからないのだろうか。それとも強大な力を得たときの全能感?
うにゅほはお空の身体から分かたれただけあって、調子に乗りやすい性格を受け継いでいるようだ。

「うにゅほ、一体何があったの? 神様って何?」

さとりの【質問】を受けたうにゅほの心の声が響く。

「なになに『カエルとみさえさんがわたしのところへやってきてマーラさまをくれた。すごいぞこのちから!わたしはこのちからをつかって ちじょう を しんりゃくする。そう。わたしは しんせかいの かみになるんだ!!うにゅほっほーい♪』……………………………………………………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………」


「バレた!」

頭の上にエクスクラメーションマークを付けて大いに驚愕したうにゅほ。
さとりは驚きよりも呆気に取られ、
第三の目が故障していないか疑ってしまい、念入りにチェックする。

「え~と…………」

反応に困る。思わず毒気が抜かれてしまう。

「………………マジですか?。」
「マジです。」
「大マジです。」

駄目だこの子、早く何とかしないと。さとりは胸に一抹の不安を抱いた。




=============================================
「神奈子~、ちょっと聞いて~。」
「なに諏訪子、どうかしたの?」
「今日はミジャグジ様の友達の神様が遊びに来るはずなんだけど、予定の時間になっても来ないんだよ。神奈子知らない?」
「知らない。どんな神様?」
「マーラ様っていう外の世界の神様なんだけど、迷ったのかな~。」
「あぁ、あの有名な。ところでなんでそんな高位の神様がやってくるっていうのにおもてなしの準備しなかったのさ。」
「気を使われるのが苦手な方らしくて、ミジャグジ様が今まで教えてくれなかったから私も知らなかったんだよ。」
「しっかりしなよ。…………………………そういえばいないっていったら、私のとこのゆっくりがどこかに行ったんだよね。諏訪子知らない?」
「私が知るわけないよ。でも私のゆっくりもここのところみないし、どうしたんだろ?」
「ひょっとしたら何か企んでたりして。私達に成りすまして悪戯してたり。」
「それでマーラ様も面白がって便乗してみたり。」
「もしそうなったら大変だよね~。」
「面倒なことになるよね~。」
「……………………………………………………」
「……………………………………………………」
「考えすぎか、そんなことあるわけないよね~。」
「だよね~。」
「神奈子様~、諏訪子様~、ご飯ができましたよ~。」
「かなちゃん、す~ちゃん、ごはんだよ~。」
「は~い。」「今行く~。」
=============================================




「うにゅほ、あなたは外の世界の漫画の読みすぎじゃないかしら?私が絵本でも読んであげるから、言うことを聞いて、ねっ。」
「でもわたし地上侵略したい!わたしがさとりさまに地上をプレゼントする!」
「うにゅほ、私は貴方達がいればそれでいいのよ。地上なんていらないの。お願いだからわかって。」
「だいじょうぶ!わたしは世界を核の炎で染めるの!」
「だから………………あぁ…………もう…………。」

うにゅほは有頂天になっていた。
お空とうにゅほ。馬鹿サンドの間に挟まるさとりはどうしたものかと途方に暮れる。
心を読もうが何しようが、話が通じないのならどうしようもない。
うにゅほの精神はまだまだ子供だ。お空よりも下手をしたら厄介である。
子供の心というのはあっという間に色を変えるが、時には恐ろしく頑固なもの。
さとりは心を読めるからといって、心を支配することができるわけではない。

まだ力の弱いうにゅほは、さとりとお空みたいに地霊殿の主と従者という関係には至っていない。
さとりの罰は主が従者に向けて行なう形だった。つまりお空は従者としての力を持っている。
うにゅほはその意味で、まだ従者にすらなることができていない。
よって重い罰を与えることはさとりの中で抵抗があった。
このような場合は根気良く丁寧に叱り、諭す必要がある。

「そ………そうだうにゅほ、マーラ様ってどのような神様なの? 
その神様が身体の中に入って何か変わったことはある?どこか痛いところはない?」

お空は八咫烏を体内へと飲み込むことによって、
地獄鴉という低級の妖怪ではありえないほどの力を得ることが出来た。
ならばうにゅほも体内へとマーラ様を取り込むことによって、
【ゆっくり】という妖怪の身から分けられた使い魔としての存在の範疇を超えた力を持つようになったのかもしれない。
その力が危険なものならば大変なことになるし、力に耐えられないことも考えられたためである。
危険性を孕んでいた場合はマーラ様に頼んで出て行ってもらえばいい。さとりはそう考えた。

そしてそれがトラブルを巻き起こす。

「こんなのだよ!」

うにゅほが髪の毛を手のように動かし、枝をペンに見立てて地面に絵を描いた。意外と絵心がある。
某悪魔絵師のような絵柄で書かれたマーラ様の姿は例えるならば動く18禁、男性の象徴。
思わずその場にいた少女達の目が点になる。

「あはは、こりゃすごい神様がいたものですね、さとり様。お空が飲み込んだのが八咫烏様で良かったです。」

あまりのインパクトに驚いたお燐がさとりに同意を求める。
けれどもさとりから反応がない。

「さとり様どうしたんです?」
「……………………………………………………い…………」
「さとり様?」
「………あ…………ぁ……………………………」
「さとり様聞こえてます? さとり様~。」
「うそ………そんな…………大きい…………………」

さとりのいつもの寝ぼけているかのような座った目の光が失われていた。
お燐の声が聞こえていないのだろうか。
普段の透き通るように白い顔が血の気が引いたためか青さを帯びる。
カチカチ、カチカチ、さとりの歯の根があっていない。


「ねぇお空、さとり様の様子がおかしくない?」

異常を感じたお燐がお空に同意を求める。

「まさか…………………………。」
「お空、心当たりあるの?」
「私は八咫烏様を文字通り飲み込んだんだけど、うにゅほがマーラ様を文字通り飲み込んだとするよね。その時の事をうにゅほは思い出しているのかもしれない。」
「や…………やばくないそれ……………。マーラ様の姿から考えるに…………。」






例えるならば強大な力を持つ吸血鬼が日光に弱く流水を渡れないように、
高位の妖怪には神がバランスを取ったかのように、弱き者が対抗するための弱点が存在する。

古明地さとりの弱点。
それはネチョだ。正確にはネチョい妄想だ。

彼女は心を読む程度の能力という煩悩に常に晒される能力を持ち、
あの一件サディストのケがありそうな含みのある微笑から
一見ネチョに対して耐性があるように誤解されやすいが、それは大きな間違いだ。

さとりの心を読む程度の能力は都合のいいことだけではない。
相手の悪意に対して直接心に傷をつけられることがある。
芯の通った心を持っていないとその重圧に押しつぶされる諸刃の剣。いわば究極の痛みわけ。
普通ならばさとりの持つ精神の強靭さによって相手が先に屈するのだが、
相手を蹂躙し快楽を得ることのみを目的としたネチョい妄想だけは苦手である。

さとりは動物の「あ~繁殖してぇ~」などという直球的な考えには苦笑いしつつも微笑ましいものとしているが、人間や高位の妖怪の妄想力はそんな生易しいものではない。
動物達の子種を残そうとする性行為と人間や妖怪の快楽を貪る性行為とではそもそも目的が違う。

地底の妖怪特有の不気味な雰囲気はあれど、
よく見ればお人形のように可愛らしい少女の姿をしたさとり。
さとりはこれまでひどい思姦を受けることも多々あった。
邪な心を持った人間の持つ妄想力というのは恐ろしい。

けれどさとりは耐えることができる精神力を持っていた。
強い精神によって屈服せずに受け止めることが出来ていた。

だがしかし、そんなさとりも不意打ちで淫らなことを考えられたらたまらない。
一番応える攻撃は急所や弱点に対する予測のつかない一撃だ。
相手がどれほど脆弱な存在であろうと変わりはない。
例えるならば極限まで肉体と精神を鍛え上げた屈強な戦士でさえも、
幼女が擦り寄ってきた際に思わず頭を撫でようと油断して屈んだところに
不意打ちで睾丸を蹴り上げられたらひとたまりもない。

誰だってマスコットちっくな物体と男性の象徴がくんずほぐれつな目にあうとは考えない。
さとりが想定しなかったのも当然である。
まして、相手は性欲を司る神だ。さとりが屈するのも当然といえた。






「それでマーラさまがね、「さぁお嬢さん、僕とフュージョンしようか」って優しくいってくれて…………。」
「待って!ちょっとうにゅほ待って!」

さとりは今、マーラ様がやってきたときを思い返しているうにゅほの心がダイレクトに伝わっている。
つまりそれは、うにゅほの体験をそのまま受け止めていることになる。


「マーラさまはちょっとぬるぬるしていてね!」

さとりは涙目となってうにゅほを揺さぶる。
止まって、そのことを考えるのはもうやめて。
だがしかしうにゅほは自分の世界に入ってしまったのか、さとりの声が届かない。

「うにゅほ、やめなよ! 聞いてる!? あたいの声聞こえてる!」
「この馬鹿! は・や・く気がつけ~!!」

お空に引っ張られても効果がない。うにゅほは完全にトリップしていた。

「待って! やめて! お願いだからストップ! 嫌! いやぁ!」
「さとり様、しっかり!」

さとりはもはや必死だった。
その取り乱す様子は先ほどまでの地霊殿の主のものではない。
それは例えるならば悪漢から逃げ惑い、
全身が泥まみれとなりながらなりふり構わないでひたすら助けを乞い求める少女のよう。

「「飲み込んで、僕のエクスカリバー」ってゆっくりと入れてくれてね……………。」
「う………うぁ…………ぁ………やだぁ………………やだよぉ……………そんなのむり……はいらな…………はいら…ない……。」

けれども少女の助けの声が届かず力ずくで組み伏せられ今にも蹂躙されるかのように、
さとりの表情に絶望の色が濃くうつる。
大妖怪としてのカリスマ性は影を潜め、幼児退行したかのようにひんひんと泣きじゃくっている。
その幼げな容姿と服装に精神年齢が追いついたかのようだ。

「さとり様お気を確かに!」

ガタガタと震えるさとりの身体。
ただ事ではないと感じたお燐がさとりをぎゅっと抱きしめる。
冷たい。
そして、震えが止まらない。

「うにゅほやめな! おい! 聞いてるの!」

聞いていない。お空の言葉は届かない。
うにゅほの回想はついにフィーバーを迎えようとしているようだ。
その顔はまさにヘブン状態。今なら死んでも気が付かないであろう。


さとりは耐えることができず、胸を押さえてじっとうずくまる。

「でもマーラさまは苦くて生臭くておいしくなかったよ!」
「う゛……………お゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛……」











「あれ……………さとりさまどうしたの? さとりさま、さとりさま~~…………………………
さとりさま!?」

回想を終えたうにゅほがようやく異常に気がついた。愛する主人が倒れている。
だがしかしすでに遅い。お空が激昂する。

「うにゅほ、この馬鹿! さとり様がネチョい事考えられるの苦手だって知ってるでしょうが!」
「え?」
「あたい助けを呼んでくる!」
「え? え?」

鈍感なうにゅほはゆっくりと状況を確認する。



うにゅほが大好きなさとりさまが倒れている。

おくうがさとりさまの事を呼んでいる。

おりんが助けを求めに出て行った。

おくうが言っている。さとりさまはネチョが苦手だって言ってた。

ネチョが何かうにゅほはよくわからなかった。

だけどこれはわかる。さとりさまはうにゅほのせいで倒れている。

うにゅほのせいで辛い思いをしている。

ようやく気がつく。理解する。

「う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


絶叫。



うにゅほはさとりに飛びよって、さとりの身体に自らのほっぺたを摺り寄せた。

人は愛するものが突然倒れたとき、医学的には決して行なってはいけないと知りつつも
目を開けて欲しいがためにすり寄らずにはいられなくなる。揺さぶらずにはいられなくなる。

うにゅほはさとりに必死で頬ずりする。うにゅほが瞳の幅ほどの涙を滝のように流している。
お空がさとりの体を大きく揺さぶる。いつものお調子者のお空はどこにもいない。

さとりは動かない。

「やだっ、やだよぉ!死んじゃやだ!さとり様目を覚ましてぇ!」
「さとりさましんじゃやだ!さとりさま!さとりさま!」







………………………………………………………………………………………………………







………………………………………………………………………………………………………






………………………………………………………………………………………………………








さとりは消滅しました。






GAME OVER
















「いやいやちょい待ちちょい待ち。勝手にお姉ちゃんを死んだことにしないでよ。このくらいで死なないわよ。」

助けを求めたお燐が連れてきたのは一人の少女。
ふわふわの髪の毛とキメの細かい肌。童女のように幼げな容姿をしている。
彼女、古明地こいしは古明地さとりの妹である。
普段は地霊殿にはあまりいないこいしがいるということは、彼女もご馳走に誘われたのだろう。

意識を失ったさとりは今、こいしの膝枕で眠っている。

「お姉ちゃんはきっかり生きてるよ。妄想で死なないでしょ普通。」

一行は安堵のため息を漏らした。心の底から、よかったと思った。

「それはそうですが…………。なんだか様子がおかしかったので………。」
「確かにね、お姉ちゃんがいくらネチョが苦手とはいえ限度があると思うけど……………。」

でも、とこいしは言い直す。マーラ様の絵を注視していた。

「でも私でもキツイやこれ。しかもお姉ちゃんってばウブだから大変だっただろうね………。」

もはや失っているとはいえ、以前は心を読む程度の能力を持っていた彼女にとって、
姉の受けた苦しみがありありと思い浮かんだのであろう。
こいしは思わずこめかみに手を当てて眉間に皺を寄せる。

「で、これからどうするの? あんた達の話を聞いてたけど、地上に行きたいそうじゃん。ねぇお空。」
「う………うん……じゃなくて、はい。そうです。今度は地上侵略が上手くいくかなって………。」
「そのためにお姉ちゃんに迷惑をかけてどうするのさ。」
「す………すいません。」
「うにゅほだって子供だから何でも許されるとでも思ってんの? 止めていたのも気がつかないで。」
「ごめ、ごめんね! こいしさまごめんね!」
「そんなに怯えることないのに。私は怒ってるわけじゃないんだよ。ただ気に入らないだけ。」

こいしはやれやれと肩をすくめながら、冷や汗を描いたお空とうにゅほに向き合っている。

「とりあえずお姉ちゃんを看病するから、貴方達は邪魔だからどっか行って。」

邪魔。

歯に衣着せないこいしの言葉が鋭く突き刺さる。

「ですがこいし様、さとり様をベッドに送るのが大変じゃないですか。あたい達も手伝います。」
「いらない。他のペット達に頼むからいいよ。」
「だけど私達が悪いんだし………。」

愛する主人が倒れたときにのんびりと遊びに行く馬鹿はいない。

あのお空でさえ。

また、うにゅほもさとりから離れようとはしない。
目に涙を浮かべて温めるように頬をひたすら擦り付けている。
さとりを心配するお空達に向かってこいしは笑顔で拒絶する。

「お姉ちゃんのことは心配しないで。私が見てるから。お燐、こいつらだけだと危ないからついていってあげて。」

こいしは一行を見渡す。とびきりの笑顔。目元も口元もしっかりと笑っている。
けれど細く歪んだ目の奥が彼女の心を語っている。

お姉ちゃんがせっかく腕によりをかけてみんなにご馳走を振舞おうとしていたのにあんた達は………。

「ごめんねさとりさま!ごめんね!」
「ほら、あっち行って。」
「うにっ!」

そんなうにゅほをこいしはむんずと無造作に掴み、お空に向かって放り投げる。

「そうそう、ひとつ言い忘れてた。」







「貴方達晩御飯抜きね。それじゃ。」










もう後には引けない。
こうなれば失敗を挽回できるぐらいの成功をしないとさとり様にあわす顔がない。
一行は誰もがそう思った。
騒動の発端となったうにゅほはお燐とお空に向かって申し訳なさそうな顔をしている。

「うにゅほ、そんなに落ち込まなくていいよ。」
「でも……。」
「きちんとあんた達を止められなかったあたいにも責任があるんだし、
あんたに悪気がなかったんだからさとり様もきっと許してくれるよ。
それにさとり様はきっと大丈夫。さとり様は地霊殿で一番偉いんだよ。」
「………………………。」
「だからさ、一緒に頑張ろうよ。ほらほら元気出して。あんたってば元気なのがとりえでしょ。」
「うん…………………うん! おりんありがとね!」
「よろしい。それと、お空も空回りしないように気をつけなよ。あんたって変に頑張るんだから。」
「へっ平気だよ! 私強いし!」
「おいおい……………。」



お空はうにゅほをぎゅっと抱きしめて地上へ向かって飛んでいった。
お燐も後を追う。











次回、第3章 エロ本を求めて                   お楽しみに

名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年01月12日 11:15