牛の被り物を被ったれいむが大声で言う。
「あけましておめでとう!!!」
「はいはい、あけおめあけおめ。」
「はんのうわるいよ!!なにやってんの!!!」
いやあ、とは言うもののもう三が日はとっくの昔に過ぎてる訳で。
まあ、本当は俺が仕事で忙しく、祝い事を後回しにしすぎたのだから悪いのだろうが
それにしても、このれいむ。さっきから
「あけましておめでとう!!!」
ばっかりだ。ちなみに今のを合わせて今日、俺がこの言葉で起されてから三十六回目。
しつこいと言うのは簡単。けどそれは返せばこれだけ正月の祝いを楽しみにしてたのだなあ、
と取れるのであってこんな今更な事になったのは少し胸が痛かったりもする。
「ゆっくりおめでとう!!たっぷりおめでとう!!!」
「よしよし。とりあえず雑煮食え。」
「おもーちもちもち、はっふはふー」
素直に身体を伸ばしながら差し出した御椀に口を付け、熱々の雑煮の中から餅を咥え伸ばしながら口の中に入れ込むも
熱さの為に中々むしゃむしゃ出来ず上向きに口を開けてはふはふと言って冷ましている。
「むーしゃむーしゃ、しあわせー!!!
おもちはあつあつにかぎるね!!!」
数分、口の中で冷ましてからゴクンと飲み込むと、れいむはそう言いながら嬉しそうに飛び跳ねていた。
「ほらほら、あんま跳ね周ると雑煮に当たってこぼしちまうぞ。」
と笑顔でそこらを跳ねるれいむを横目に見て、言いながらテレビをパチパチと変える。
特にめぼしいものはやっていない。もう普段どおりの番組で、その内容の中に僅かに正月だったことを感じさせるのみだ。
当たり前と言えば当たり前。世間はとっくに正月ムードを終えて平日。
それを実感してしまうと年末に「おっせち~♪おぞうに~♪」とはしゃいでいたれいむの姿を
思い出し少し悪い気がしてしまって
「れいむ・・・。ごめんな。せめて祝い事くらい少し時間を取ってでもやるべきだったよな。」
と、跳ね回るのを止めてテーブルの上に乗り買い置いていたおせちを牛の白黒な被り物を着けたまま
むしゃむしゃと咀嚼するれいむの後ろ姿を眺めてぼそりと呟いてしまった。
そんな、俺の声が聞こえてしまったのかれいむは勢い良くこっちに振り返って
「せかせかするより、ゆっくりよゆうをもっておいわいするほうがいいよ!!!
だから、いまゆっくりとおいわいしてるのはとってもたのしー!!だよ!!」
そういったれいむの顔は何の迷いもなく、何時以上にキリッとした強気な表情で
さらにはそんな中に満面の楽しさというかそう言った感情を感じさせていた。ただし格好は牛のままで。
「・・・。よし!せっかく連休が取れたんだし、のんびりゆっくりと祝うとするか!!」
「ゆっくりあけましておめでとうだね!!!」
「おう、ゆっくりあけおめ!!改めて今年もよろしくな!!」
「ことしもゆっくりしていってね!!!」
と、面と向かって挨拶しなおしてちょいとしぼんだ気分を持ち上げなおしてから
あとはすごろくとか羽子板で遊びつつれいむのゆっくりふれんずも呼んで
ゆっくりとできなかった正月を今更ながら、ゆっくりたっぷりと満喫した。 即興の人
最終更新:2009年01月16日 16:24