「すっきりー!」
魔理沙と霊夢の間から一体のゆっくりが飛び出した。
「これで最後かな?」
「そうみたいね」
「アリス、生きてるかなあ……」
「あ……あ、あ……う、あ、あ、ん」
アリスは乱れ切った布団の上で痙攣を起こしながら力なく悶えていた。部屋の角でゆっくりまりさが寝ている。他のゆっくりに揉まれ、疲れて眠ってしまったのだろう。
「うわあ……何なんだこれは……たまげたなあ」
驚く魔理沙を余所に、霊夢はアリスに近づいて身体の具合を看る。
「魔理沙、着替えさせるわよ。今度こそ手伝ってよ」
「おっけい。うわ、べとべとで変な臭いが……」
「お風呂で洗わないとだめね」
「おお」
魔理沙がにやりと笑う。
「変なこと考えてないでしょうね」
「変なことなどしない。この機会にアリスの身体を余さず見ておくだけだ」
「……性格まで男。いや、オヤジね」
「好奇心は猫は殺すけど魔法使いは育んでくれるんだぜ」
「使い方を間違えてるような……」
虫が鳴いている。外から流れてくる風と程よく調和して気持ちよく感じられた。疲れた後の風呂はいいものだ、と魔理沙は思った。
「ふう。疲れた。動かない人間、いや魔法使いを風呂に入れることがこんなに難儀なことだとは思わなかったぜ」
「そうね。じゃ、私は寝るから」
「おいおい唐突だな」
魔理沙が霊夢の方に振り替えると、すでに霊夢は敷かれた布団に包まっていた。
「掃除、弾幕、介抱。私は疲れたの。よって寝ます。魔理沙、泊まるなら押入れから布団出して適当にどうぞ」
布団の中から襖を指さし、すぐに引っ込める。……しばらくして、霊夢の寝息が聞こえてきた。
「寝るのはやっ。……無理もないか」
万全ではないにしろ、今日のアリスは強かった。ひょっとしたら本気ではなかったのだろうか。追い詰められた精神がストッパーを外したのかもしれない。自分なら勝てただろうか……魔理沙は思った。
「まあ、いいや。私も疲れた! 寝る!」
朝。雀の声が最も目立つ時刻。アリスは起きていた。
「ふ、ふふふ」
立ち尽くすアリスの目の前には二人の人間がいた。霧雨魔理沙と博麗霊夢である。
「この辱め、返さずにおくべきか」
そして、アリスの手元には。
「ゆっくりしていってね!!!」
ゆっくりアリスがいた。
アリスは魔理沙を見る。布団から片足を出して、大きないびきをかいている。寝相が悪い。
「意識は霞んでたけど、覚えているのよ魔理沙。私が抵抗できないのをいいことに、あんなことやこんなことを……!」
アリスは霊夢を見る。横向きになって手を顔の前で合わせて、小さく寝息をかいている。
「霊夢、貴女は図に乗る魔理沙を止めもしなかった……。知ってるのよ、興味ないふりをして横目でしっかりと観察してたのを……!」
ゆっくりアリスを霊夢と魔理沙の顔の真ん中に配置する。魔理沙が霊夢に寄っていたおかげで、ちょうど挟むような形で配置できた。
「朝一番で探してきたゆっくりアリスよ。いい夢をじっくり楽しみなさい」
「う……あう……あ、アリス」
「な、んだ、アリス……うあ」
さっそく二人が悶え始めた。
「ふふふ、悶え苦しめ」
身体を左右させ、顔を歪めている。
「あ、や、め…………」
「アリス、おま、えは…………」
「……ん……」
「……あ……」
「…………あれ?」
二人は動かなくなり、顔つきも穏やかになった。たまに小さく震えている。
「これって……まるで」
夢の中のアリスの行為を受け入れているかのような。
「そ、そんなのだめっ!」
アリスは二人の間からゆっくりアリスを乱暴に抜き取った。二人の頭が勢いよくぶつかる。
「あてっ! ううっ、なんだよ~」
「いたっ! つつっ、なんなの~」
起きた二人が最初に見たのは、顔を赤らめてゆっくりアリスを抱えているアリスだった。
「ま、魔理沙、霊夢、これは」
魔理沙と霊夢が顔を合わせる。状況を理解した二人は微笑み、アリスに向き直ってこう言った。
「「取り上げなくてよかったのに」」
「うきゃーーーーーーーっ!!!」
奇声をあげてアリスは部屋の外に走っていった。
「面白いなあ、アリスは」
「最高にからかいがいがあるわね」
「おねえさんいじめちゃだめだよ!」
いつの間にかゆっくりまりさが側にいた。
「いじめじゃないぜ。愛情表現だ。……いいこと思いついた。ゆっくり私、アリスが喜ぶことを教えてやろう」
「なに?」
「アリスは寝ているときに頬ずりされると最高に喜ぶんだ」
「そうなんだ!」
「ああ。毎晩やってやれ」
「うわ、鬼畜」
霊夢が突っ込みを入れるが、顔は笑っていた。
最終更新:2009年10月03日 15:14