れみりゃのお使いっ! ~忘れ物を届けるどっ!

「じゃあ、行ってきますっ! 今日もいい子にしてるんですよ、おちびちゃん達っ!」

「うー♪」

「うっうー!」

れみぃとふりゃんはいつもの様に、『シゴト』に出かけるおねーさんを見送るため玄関までついていっているんだど!
おねーさんがドアから完全にいなくなって、カチャリと鍵のかかった音がしたんだど。する事の無いれみぃ達は起きていても仕方無いし、二度寝しようとした…、その時だったんだど!

「…うー??」

なんと、テーブルの上におねーさんが仕事に行く時大切に持っていっている『フデバコ』が置いてあったんだど!
『フデバコ』にはへびさんとかえるさんが付いていて、それらのワッペンはおねーさんの大切な人から貰ったんだとか…。うぅ~ん、おねーさんったらダ・イ・タ・ン♪
でも、おねーさんはこれが無いと困るだろうから、ふりゃんに相談してみる事にしたんだど!

「うー…、ふりゃん! テーブルの上におねーさんの『フデバコ』が置いてあるんだど! どうするんだど~??」

「うー? フデバコ? …うー!! それって、おねーさんの大切なものじゃ無いの!?」

「うー、そうなんだど。どうしたらいいんだど…」

「でも、おねーさんは既に職場に行っちゃったみたいだし、どうしようもないよ…」

「…うー! れみぃ、おねーさんの『ショクバ』まで行って、届けて来るんだどぉ♪」

「えっ!? おねーちゃん、大丈夫?」

「別に、一人でおつかいくらい行けるだど☆うっうー♪」

れみぃはふりゃんに余裕を見せ付けるため、おぜうさまダンスを踊ったんだど!
ふりゃんは心配そうな表情でれみぃを覗くけど…、でも! きっと大丈夫なんだど!
れみぃ達の部屋の和室に行って、お気に入りのくまさんポーチに『フデバコ』を入れて、玄関に向かって鍵を開ける!
れみぃはおねーさんの『ショクバ』へと向かったんだど!

「うっうー、ふりゃん! お留守番、頼んだんだどぉー♪」

「いいけど…。気を付けてね、おねーちゃん! 道がわからなかったら交番に行ってねー! …行っちゃった」



「うっうー♪ おてんとさんがぽかぽかなんだどぅ♪」

れみぃは雨上がりの歩道を軽い足取りで進んでいるんだど!
昨日の夜はどしゃ降りで雨さんの叩き付ける音が怖かったんだけど、無事に止んで一安心なんだど♪

「うっうー、信号機さんが真っ赤だから一旦止まるんだど! 青になったら、右と左を見て…、キャー♪」

歩いている途中に信号さんがカンカンに怒っていたんだど! 
れみぃはおねーさんに教わった通り、信号さんの機嫌が直るまで待って、それから右左を見てはしごさんを一気に駆け抜けたんだど!

「ふぅ、信号機さんったらコロコロ表情変えちゃって…。やぁ~ねぇ♪」

最近の信号さんはおこりんぼなんだど! と頭の片隅に思いつつ、翌々考えたられみぃはおねーさんの『ショクバ』の場所を全然知らなかった事に気が付いたんだど…、これはショック!

困った時には交番に行きなさいっておねーさんに、ふりゃんにも言われたんだど! おねーさんが言う理由は、おねーさんの『カ・レ・シ』、…キャー♪ 
…ともかく、おにーさんが最近『フケイキ』のために交番でバイトを始めたから、信頼できるし『オチョクレル』って言ってたからだど! 所で、『オチョクレル』って何だろう?
信号さんを過ぎて真っ直ぐにある交番さんに、れみぃは尋ねたんだど!

「うっうー、おまわりしゃん! おねーさんの『ショクバ』の場所を、教えて欲しいんだど!」

「…、? その。おねーさんとは?」

「う゛ー! おねーさんは、おねーさんなんだどっ! おねーさんが、分からなければ交番で聞けって言ってたんだどっ!」

「どうしました、本官?」

「んー、十六夜くん。どうやら、迷子の子らしくてね。ゆっくりのれみりゃで、くまのポーチをつけている。何か、心当たりはあるかね…?」

「くまのポーチ…、ああ! この子は、東風谷さんの所の!」

「こちや、とは?」

「あ、ええと。俺の本職である、事務所の先輩の人でして。本来なら俺も決算整理をしている筈なんですが中々仕事が回ってこなくて…」

「ふむ、君の私情はどうでもいい。恐らくこの子の言っている職場とは事務所の事だろう、教えてあげなさい。それと、念のため私がその事務所に連絡を入れておくよ。電話番号を教えてくれ」

「はいっ、かしこまりました! れみりゃちゃん、ちょっと待っててね」

始めは知らないおじさんが現れて恐かったけど、奥からおにーさんが現れてほっとしたんだど! でも、二人とも何やら難しい話を始めてれみぃにはさっぱり内容が理解出来なかったんだど…。
おじさんが電話をし始めて、おにーさんがれみぃの前に紙と鉛筆を持って座り込んだんだど!

「うっす、れみりゃちゃん! おねーさんって言うのは、緑髪をした人の事でいいんだよね?」

「うー?? その通りだどっ!」

「そっか、ならよかった。行き方はこの交番を、れみりゃちゃんが渡って来た横断歩道の方に真っ直ぐ行って、3つ目の信号を左に曲がる。すぐ近くにはソフトクリーム屋さんがあるよ。
真っ直ぐ行くと、公園がある。その公園も真っ直ぐ行って、突き当たりに出ると大きな通りに出るから。そこからの真正面にはボウリング屋さんが合って、ボウリング屋さんを左にずーっと真っ直ぐ行く必要があるんだけどね、大丈夫かな…。
まあ、するとまたもう一つの公園が左隣にあるから。その公園も気にしないで真っ直ぐ行くと、左隣に『オオトモ証券会社』って、大きなビルの会社があるから。そこに入ってロビーに行って、受け付けの人に質問するといいよ」

「うー『ろびー』…? れみぃ、頭がちんぷんかんぷんなんだどっ!」

「あはは、俺も知らなくて言われたら覚える自信は無いなあ。そんな事だろうと思ったから、あらかじめ紙に書いて置いたんだ。ほら、無くすなよ」

れみぃは大きくてごつごつしたおにーさんの手から、いっぱいメモが書いてある紙を貰ったんだど!
紙を受け取ったら、おにーさんがれみぃの頭を撫でて来たんだど、おぜうさまに無礼な行為なんだど!
でも、ちょっと気持ちいいカモ…。

「はっはっは! 撫でられるとうつ向いて顔を赤らめる辺り、れみりゃちゃんも東風谷さんの子なんだなあ!
ともかく、どうして職場にまで?」

「それは、おねーさんの忘れ物を届けるためなんだどっ!」

れみぃはポーチから『フデバコ』を取り出して、おにーさんに見せたんだどっ!

「…ああ、なるほど。そりゃ確かになあ、東風谷さんがいつも大切にしているやつだけど…。
どうする? 俺が届けに行ってもいいし、一緒に届けに行ってもいいよ。何なら、通りに行ってからバスって手もあるし」

「うーん…。れみぃ、一人でおつかいに行きたいどっ! おにーさんのハカライは嬉しいけど、一人で行くんだど!」

「そっか。なら、車に気を付けてな! 通りに出てからは特に多いから、決して遊ばない様にな」

「うっうー♪ こーまかんのおぜうさまたるもの、品の無い事はしないんだど! じゃあ、おにーさん。じゃあねぇ~…♪」

おにーさんが一緒に付いてきてくれるって行ってくれたけど、れみぃは一人で行きたいから丁重にお断りしたんだど!
それにしても、おにーさんはレディーに対して小さな気遣いが出来て、近頃の若者にしては良く出来てるんだど! れみぃ、惚れ直したかも…♪
おにーさんがくれた道のりの紙を両手に広げて、れみぃは先へ進んだんだど!

「…はい、はい。ったく、どうして大企業のダイヤルは出るのが早い癖に対応が遅いのかね、さっきの子はいるかい?」

「いや、もう行きましたけれど…」

「…そうか、せっかくその東風谷さんとやらに代われたんだが、遅かったか…」







『もしもし、れみりゃ? 今、どこに居るんですか? ふでばこなんてどうでもいいですから、家に帰ってゆっくりしてるんですよ~、れみりゃ~…?』







おにーさんに渡して貰ったメモの通り、れみぃは交番を真っ直ぐ行って3つ目の信号さんの前まで行って、左にアイスクリーム屋さんを発見したんだど!
このアイスクリーム屋さんは良くおねーさんと公園に遊びに行ったときに利用して、買って貰ったっけかなあ…。あの、バニラの甘々がたまらないのだ…♪
でも、今はおねーさんっ! れみぃはおねーさんの『フデバコ』を届けるという、重大な任務を背負っているのだど!
せめぎる気持ちを押し込めて、ソフトクリーム屋さんから真っ直ぐに進み、公園を目指したんだど。
ふと、進んでいる途中に横をみると、何やらかたつむりさんがコンクリート塀を伝っていたんだど!
かたつむりさんって、確か6月じゃなかったっけどぉ…?? ともかく、かたつむりさんが今目の前に居るのは本当で、れみぃは思わずかたつむりさんにみとれちゃったんだど!

「およー…。かたつむりさん、凄いんだどっ!」

だけれど、れみぃは今はお使いの身! 『フデバコ』が無いとおねーさんも困るし、先を急ぐんだど!
精一杯駆け抜けた先には、公園があったんだど!

「ふぃ、ちょっと、休憩なんだど…」

いっぱいいっぱいに走ったから、大分疲れちゃったんだど。れみぃは、一旦公園に入ってベンチに座り、休憩する事にしたんだど。
昨日雨さんが降ったからか、どこかむしむしして居心地が悪いんだど。地面も、ぬかるんでいる所とそうでない所があって、油断するとつるっと転びそうになるんだど。

「あ、れみりゃじゃん! おーい、れみりゃー!」

「うー?」

遠くから声が聞こえるからなんだろうと辺りを見回してみると、いつも公園で遊んでいるりぐるがサッカーボールを抱えて現れたんだどっ!

「ようっ、れみりゃじゃん! これからサッカーするからさ、れみりゃもしない?」

「うー、りぐる! もっちろん…、うう。れみぃ、今、おねーさんに届けないと行けないんだど…」

「何、お使いか? 偉いなあ、れみりゃ。でも、ベンチに座って休んでる所から大方体力も考えず走ってきたんだろ!」

「う、うーっ! こーまかんのおぜうさまたるものそんな無計画な事はしないんだどっ!」

「ははっ! まあ、どっちでもいいや! ともかく、どうする? もうすぐ皆来るし、やっていかないか?」

「うう、なら、少しだけ…」

「よーし、なら決定だ! 皆、今日れみりゃもサッカーやるだってー! …」






「…シュート!」

「うー、通さないのだ!」

「ぬおお、れみりゃいいブロック! しかし、もう一回はどうだっ!?」

「う!? …うーっ! ゴールに入っちゃったんだど!」

「はっは、ドンマイれみりゃ! でも、れみりゃ。もう夕暮れだけど、お使いは大丈夫か?」

「うー? …ハッ!」

こーまかんのおぜうさまたるもの油断していたみたいで、辺りはすっかりオレンジの夕方になっていたんだど!
ぬかるんでいる中サッカーをやったから、れみぃのお服もドロドロなんだど、うぅ~…。

「皆帰っちゃったし、俺もお母さん心配させたく無いから帰るわ! どうする、途中まで自転車で乗せてってあげようか?」

「うー、りぐるの家と正反対だから、遠慮しておくどっ」

「そっか。じゃあ、また今度な! お使い、頑張れよっ!」

りぐるがどろんこのボールを抱き上げて鼻をすすり、自転車に乗って行ったんだど。れみぃも、おねーさんの届けもののためにベンチに置いたポーチを取って、急ぎ足で公園を出たんだど!

「…うーっ!」

足が痺れるくらいに歩いて、ようやくおにーさんのメモにあった大きな通りに出たんだど!
目の前にはボウリングのピンの建物があるし、間違いは無いと思うんだど! でも、疲れたなァ…。
疲れた体に鞭を打って、れみぃは先に進むため左に進んだど、その時!

『ブウゥゥゥゥウン!』

「うぎゃっ!」

なんと、いきなりバイクさんがれみぃの側を駆け抜けて、れみぃは思わず尻餅をついちゃったんだど!
れみぃのお尻とお手手には冷たい感触がじわっと広がっている、もしかして…。

「う、うーっ!?」

…案の定、れみぃは水溜まりの上に座り込んでいたんだど。お気に入りのポーチはもちろん、おねーさんの『フデバコ』まで濡れちゃったかも知れないんだど…。

「ううっ…、くすん。うう! れみぃが、しっかりしなくてどうするんだど!」

泣きたい気持ちを堪えて、れみぃは立ち上がったんだど! ポーチは濡れちゃったけど、おねーさんが『ぼーすいかこう』って言ってたし、きっと大丈夫なんだど!
痺れる足を気にせず前に進む、進む! でも、一向に公園が見える気配が無いんだど…。
れみぃは来た道のりが間違いじゃあ無いか確かめるため、おにーさんのメモを見ようとポケットをあさぐってみたんだど、そしたら…。

「…うー、そうだったど。さっきれみぃが水溜まりに入ったから、濡れちゃって破れちゃったんだど…」

れみぃのポケットにはぱすぱすになったおにーさんのメモ切れが何枚か。これで、道のりを確認する事も出来なくなった。
また、泣きたくなったけれどぐっと我慢。大丈夫、きちんと左へ曲がったんだからきっと合ってるど!
でも、進むに連れてどんどんと辺りは暗くなって、とうとう街灯がつき始めたんだど。車さんの数も多くなって、恐くなったれみぃは思わず大通りから離れるため路地に曲がったんだど。

「うー。思わず曲がっちゃったけど、きっと行けるよね。行けるんだど!」

れみぃは不安に押し潰されそうな心を励ましながら、自分の土地勘を信じて進んだんだど。けれど、辺りは暗くなる一方で…。

「うっ、うっ、…う゛っ」

周りからは音一つ聞こえない、まるで閉じ込められちゃった様なんだど。
足腰も痺れて疲れたし、早く家に帰って休みたいど…。

「ああん、まんま、ぷっでぃん…」

一旦誰かの家さんの塀にもたれかかって、休憩を取ることにしたんだど。
その家の窓からは光が漏れていて、断片的にアハハハと言った声と美味しそうなカレーの匂いが漂ってくるんだど。
いい匂いにくすぐられて腹の虫さんがぐぎゅう~、と鳴いたんだど…。
今日のご飯はカレーっておねーさん言ってたなあ、ああ、お腹空いたなぁ…。

かっくりと頭を下げた時、遠くからなんだか小さな光が見えたんだど。最初は気にも止めなかったけど、だんだん光が大きくなって来て―…

「う、うーっ!?」

れみぃは無我夢中で駆け始めたんだどっ! 後ろから刻々と、本当に少しずつ光がれみぃを包んでくる。なんだかそれに包まれると行けない気がして、とにかく必死に走り続けたけたのだけれど、

「ゆぎっ!」

さっきからがたがた来ていた足が限界を向かえたのか、れみぃは水溜まりの中に一直線に突っ込んでしまったんだど。
ある種のまどろみを感じる。体が重く、起き上がれない! けれど、れみぃが止まっているからといって光も止まる筈もなく、どんどんと近付いて来ている―…

逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!

「ゆぐああああああっ!」

れみぃは再び立ち上がり、足を進める! けれど、思う様に進めないのだど…!
もう駄目か、そう思った瞬間、

…―暗く塗り潰されているれみぃの視界に、うっすらとトンネルの様な、隠れられる場所が入った。

植木がバキバキ折れる音がするけど、気にしていられないど! れみぃはがむしゃらにトンネルまで行き着き、サッと身を潜める!
後ろからまだ圧迫感を感じるけれど、まさかここまで追ってはこないだろう、チラと外の様子を伺うと――

「…う、うう?」

既に何も光るものは無く、ただ虚しく風の切る音が聞こえただけだったんだど。
追うものは無いとわかった瞬間、れみぃの体からふっと力が抜けて、その場に倒れこんでしまったんだど…。
なんだか体が臭い、どぶの様な臭いがして嫌々するけど、れみぃ一人だからそれすらも意味が無い行為で、一層泣きそうになったど。でも、堪えたんだど!
お気に入りのポーチ、すっかり濡れてしまいボロボロになってしまったんだど。おねーさんの『フデバコ』もボロボロになっていないか不安で見ることが出来ないんだど…。
辺りが暗くなって心細いし、お腹も減ってきたんだどぉ。れみぃの体は確実に限界に近付いて来てるんだど…。でも!

「れみぃは、おねーさんに忘れ物を届けるまで負けないんだどっ!」










気が付いたられみぃは眠っていたみたいで、体の節々がギシギシして痛いんだどぉ…。
おてんとさんがやけに眩しくて、思わず手で光を遮る。少しずつ指の間を開けて行って、夜が過ぎていった事を少しずつ実感していったんだど!

「うっうー♪ これで安心なんだどぉ! …でも」

おにーさんから貰ったメモは既に無い。道もわからないし、れみぃは途方にくれるしか行動のしようが無かったんだど…。
視界がしっかりと見えるにつれて、空腹を忘れていたお腹も活性化したみたいで痛いくらいなんだど…。

「うぅ、うっ、うー…。…う、うー? !」

力なくトンネルさんから出て辺りを見回した、その時だったんだど! なんと、れみぃの目の前にはおねーさんの『ショクバ』があったんだど!!
れみぃは急ぎ足で『ショクバ』の門前まで向かって、名前の書いてあるプレートを見る! 『オオトモ証券』…、間違い無いんだど!

なんで、どうして!? でも、湧き出る疑問よりも溢れる期待の方が大きく、はやる気持ちを抑えつつれみぃは駆け足で『ろびー』まで向かったんだど!

「うー! おねーさん! おねーさんを、出すんだどっ!」

「…、? 迷子になっちゃったの?」

「う゛ーっ! 迷子なんかじゃ無いんだど! れみぃは立派なお届けやさんなんだどぉ!」

「…れみぃ、ねえ。少々お待ちください。…はい、はい。くまのポーチを提げた、薄汚れたれみりゃの…」

『ろびー』のおねーさんになんだか良くわからない事を言われて、れみぃは待たされているんだど。早く、おねーさんに会いたいんだどぉ…。
辺りもなんだか騒がしいし、なんだか居心地が悪いんだど。
熱い視線ねぇ~ん、…。お腹が空いて、ふざける余裕すら生まれないど。
ぼおっとするし、頭もガンガンするし、れみぃはもう駄目かも知れないんだどぉ…『れみりゃ!』

ふと、横から誰かが駆け出してきてれみぃは思いきり抱き締められてしまったんだど! 
次に、れみぃの頬にパシンと痛みを感じたんだど、でもすぐに顔全体が暖かいものに包まれて、痛みがいないいないしたんだど。
ふんわりしていて、柔らかく暖かい匂い。顔を見なくても、れみぃは今ぎゅっとしてくれているのがおねーさんだってわかったんだど。

「ばか、ばか、ばか、おばか!! ふでばこを届けようとして一日かかるおばかさんがどこにいますか!!!
咲夜くんから電話があってまさかとは思ったけど、道に迷ったのなら何で家に帰ってこないのですか! ふらんも心配していたし、咲夜くんが責任があると夜に探しに行ったのですよ!!? 皆に心配をかかせて、ばか、ばか…。
私は、ふでばこよりもお前の方が大切なんですっ! お前に万が一があったらと思うと、私、もう…」

おねーさんがれみぃと目をあわせながら朝にいつも整えているお顔を崩して泣いているんだど。
体も震えていて、おねーさんの抱き締めている腕の力が強くて、苦しいくらいなんだど。
れみぃが嫌々をして逃れようとしても、おねーさんはれみぃを離さないで一層強い力で抱き締められてしまったんだど。
建物の中なのに、れみぃの肩が再度濡れたんだど。次第に、抱き締める力が弱くなって、とうとうおねーさんの腕はれみぃから離されたんだど。
おねーさんのいつもピカピカで輝いている白いスーツが泥まみれになっていて、れみぃは心がキュッとするような感触を覚えたんだど。
…戸惑うれみぃにおねーさんが、れみぃを抱き上げてこう言ってくれた。

「…よかった」

れみぃのおでこにおねーさんの唇がチュッと触れたんだど。その時、ずっと我慢していた心のダムが、一気に崩壊した様な気がして…

「…う゛、う゛。…う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛ れ゛み゛ぃ゛、こ゛わ゛か゛っ゛た゛゛と゛!゛!゛!゛」

「はいはい、恐かったのですね…。好きなだけ、泣いていいですよ」

「ひ゛か゛り゛さ゛ん゛か゛お゛そ゛っ゛て゛き゛て゛…゛、…゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!゛!゛!゛」









泣きやんで落ち着いたれみりゃから話を聞いてみると、何やら夕方まで公園でよく遊ぶりぐるくん達とサッカーをしていたとか。
その位時間が経ったなら、家に帰ってくればいいのに! 
その後に咲夜くんが書いたメモが濡れて読めなくなって、帰るに帰れなくなったみたいだけど。

どうやられみりゃが一晩過ごしたトンネルというのは、会社前にある公園のトンネル遊具の事だったらしいです。途中、車のライトを怖がって必死に逃げたら、たまたま公園にまで辿りついたみたいです。
全く、車のライトを怖がるなんて本当おばかさんなんですから! それに、悪運は強いのですから…。

聞いた話、まあ当然でしょうがれみりゃはまる一日何も食べていなくてお腹がペコペコらしいので、仕事はまあ無能だけれど出来る部下が引き受けてくれて手が空き、レストランにお邪魔する事にしました。
頼んだビーフオムライスを美味しそうに頬張るれみりゃの表情はまさに幸せそのものです!
思わず食べているパスタの手も止まりにやけてしまうというものです。その後も大変お腹を空かせていたのでしょう、いつもは残すジャンボパフェも難無く食べきりました。
かくいう私もパスタ以外に同じくジャンボパフェ、さらにはラーメンまで頼む始末で…。れみりゃがこの世の物かと言わんばかりの表情で眺めていた事が印象的です。
いやあ、れみりゃの事を考えると不安でご飯が喉を通らなかったんです。しっかりしないといけないのは私なんですけれどね。
れみりゃと会ったあの時も、ただ良かったと言って抱き締めてあげれればいいのに要らない愚痴をれみりゃに投げ掛けてしまいましたし、私もまだまだです。
しかし、よく食べたつもりなのにまだお腹が空いています、安心するとお腹が減るのでしょうか。
軽く食べるために再度小さめのピザを注文するとれみりゃはギョッとびっくりして唖然とした目付きで私を見てきました。
いや、精確には私のお腹を凝視されている様な…、…。
今日から、ダイエット始めないとなあ…。そんな事を考えるのならモリモリ食べているピザを掴む両手を止めろと言いたい所ですが、それはそれ、これはこれ。妥協は大切です。
ひとしきり食べ終えた所で、時間はまだまだあります。唖然としたまま動かないれみりゃの頬をぺちぺち叩き現実の世界に引き戻し、れみりゃに問掛けます。

「ふふ、れみりゃ。時間もありますし、買い物にでも行きましょうか。ふらんには、内緒ですよ?」

「うっうー! 買い物なんだどぅ♪ でも、何を買うつもりなんだどぉ?」

「…新しい、ポーチですよ。れみりゃ」



れみりゃのお使いっ! ~忘れ物を届けるどっ!


  • 和むな~ -- 名無しさん (2009-03-25 11:15:45)
  • あれ…?咲夜さんがおにーさん…? -- 名無しさん (2009-08-31 20:54:56)
  • よかった。すごいよかった。 -- 名無しさん (2010-12-01 16:39:23)
  • なんでかなー? 咲夜さんのおにーさんバージョンでの脳内再生余裕なんだけど。 ああそっか、胸が・・・ おっとだれかきさようだ -- 名無しさん (2012-11-08 16:06:35)
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最終更新:2012年11月08日 16:06