「策ってそんなんか!ただ巨大化しただけじゃねえか!!」
「巨大化を舐めるなよ!!」
巨大すいかはいつものように跳ねて村の中をズシンズシンと突き進んでいく。
TENGAが地面につくたびに地響きが起こり男の身体も跳ね上がる。
地震と火山大国である日本に暮らしているからか男はそう簡単に腰は抜かさなかったが
如何せん深夜であったため多くの家から村人の声が上がってきている。
「いい加減にしろ!!早くするならはやくしろっての!」
「今する!」
高く聳えたるTENGAの中からすいかの手が出される。今までずっとTENGAの中に収納していたせいか
すいかがその腕を振り回すたびにローションが村中に飛び散っていった。
たった泥棒を捕まえるというごく些細な事だけなのに今日一日で村は壊滅状態になってしまった。
男は久しぶりに誰かに頭を下げたくなった。
「よし!!!捕まえたぞ!!」
地震に気を取られ、頭にローションが降りかかってきたせいで気づくのに遅れたがいつの間にか
すいかの手に人影が見える。
その光景はかの社会現象を引き起こしたアニメのワンシーンにそっくりだった。
「潰さないよ、こいつらが犯人だ。後は君に任せる」
そう言ってすいかはその両手に握っている犯人を男の前に優しくゆっくりと降ろした。
犯人はぺたんと気力が抜け去ってしまったかのようにその場に座り込んだ。
「…………………なるほど」
男は目の前にいる二人の犯人をじっくりと見る
まるで分身しているかのように犯人達の身丈容貌は重なっている。
そしてロングスカートのちょうど上からのぞき見る太々しい眼。
「いい加減に正体を現せ」
「う、ううううう」
「唸るな、てめえらはそうやって唸るナマモノじゃねぇだろ」
男は犯人達の上着を勢いよくはぎ取る。そこにあったのは白黒の魔法使いが着ている服と
紅白の巫女が着ている巫女服である。
そして剥ぎ取られた勢いで犯人達の上半身がぽふんと可愛い音を出して地面に落ちた。
「そう、これが真相だ」
男の後ろにいつの間に元のサイズに戻ったすいかが居る。そして目の前にいたのは
二組のかっこいいまりさとかわいいれいむであった。
「あの巫女の言うとおりだったか……後で餞別でもしにいくか」
グルだったのは店員だけではなかった。商品もまたグルであったのだ。
推測に過ぎないのだが一連の事件の概要はこうだ。
まず商品ではない方のかわいいれいむとかっこいいまりさが肩車をして人間の変装をし
みょんの手引きによって店の中に潜む。その時自分達の着ている服をもう1着用意する。
そして誰もいなくなったときそいつらはみょんから借りた鍵を使いショーウィンドウから
商品であるゆっくりを取り出すのだ。
昼のうちにコミュニケーションを取っていると考え犯人達は商品達に自分と同じ格好をさせる。
そして強盗のように見せかけるためにショーウィンドウと正面玄関の鍵を破壊して逃亡。
ここからが巧妙なのだが例え追っ手に追いつかれそうになっても上着を脱ぎ捨てれば
「犯人は商品と服を捨てて逃げた」という状況が作り上げられるのだ。
恐らく実際ゆっくりを取り返したすいかもこの事をある程度感づいていたのだ。
分裂してゆっくり達に聞き込みをしたときに真相へと辿り着いたのだろう。
さて、今男の前に二人、いや四人の犯人が居る。
「ここからは君の出番だ。思う存分やってくれたまえ」
「そうか………俺は同じゆっくりの区別がつかねぇがお前ら全員この店出身だろ」
「うう」
「あのカスみたいに唸るな。その服についているタグが取れなかったみたいだな」
そもそも犯人達が採った作戦は大分穴が開いている。
まずタグを付けなければ上着を脱いだときに商品としてみられない可能性がある。
しかしタグというのは識別のためにある。それを見ればいつ頃売られたゆっくりか簡単に判別できるのだ。
その上逃亡中二組が同時に捕まってしまったら意味がない。
一組が逃げられればもう一組は陽動いう形に出来るがそれも効果があるとは考えづらい。
今の今まで成功してきたのはただ運が良かっただけなのだ。
矢張りこの程度の計画か。しかし嵌った自分が言うのも何とも情けない。
「恐らく団体犯で主犯が何処かにいるはずだ、答えろ」
「ゆ、れいむたちはな~んにもしらないわ!わかったらさっさとゆっくりおかえり!」
かわいいれいむは通常の生首れいむと違い霊夢の性格を色濃く反映させているようだ。
だが所詮ゆっくり、本物が持つ存在感と威圧感を持ってはいない。
「俺は憲兵じゃないから暴力はしねぇよ、だがな、きっちりと話して貰わないと困るんだよ!!
窃盗は犯罪だ!こんな事てめぇらでも分かるだろうがよ!!!」
「ひぃ!ごめんなさいなんだぜぇぇぇ!!」
二人のかっこいいまりさが互いに身を寄せ合って怯えている。
今の男の面構えはおぞましいほど引き攣っている。昼間商品達に見せた鬼面とは格が違う。
ただの八つ当たりと悪意の持った行動は群を抜いて違っているのである。
男はふとこれは脅迫かと感じたが相手は確実に犯行を犯した奴だと思いだし
吹っ切れ躊躇いなくゆっくりの尋問に当たった。
「ゆゆゆゆゆ!れれれれいむたちはしらない!しらないのよぉぉ!」
オリジナルは威嚇や威圧が効かないせいかかわいいれいむ達もある程度圧力の類は
耐えられるようである。流石に男の実力ではこれまで。これ以上行くと拳が出そうだからだ。
暴力は楽だがそれ故に短絡的だ。男はれいむ達をほっといてまりさの方に聞きだそうとしたが
れいむ達がとっさにまりさ達の口を塞いだ。
「くそ、すいか。次はお前の出番だよ」
「何を言っている、私に君みたいな尋問が出来るわけ無かろう」
その変顔なら十分いけると思うのだが、昼間のあの時ゆっくり達を怯えさせて切なげな表情を
見せたことを思い出すと意外にもこのすいかは自分のルックスに自信を持っているようである。
どこからどう見ても変な顔だが。
「ふぅ……どうにかならないか」
男は博麗神社にいた時を思い出して何か霊夢の弱点がないか探してみる。
「……………………………あ、毛」
「!!!!!!!!!」
案の定れいむ達は脇を抱えその隙にすいかがまりさ達を引き離す。
それで観念したようでれいむ達は脇、じゃなくて肩を落とし悲しそうな顔を見せる。
「連れて行って貰うぞ、きちんと自分達の罪をわきまえろ」
「つみ……わかったぜ、ゆっくりついてくるんだぜ……」
「さて、思うのだが動機は一体何なのだ?」
男とすいかは身近にあった紐でゆっくり達の手を痛めない程度に縛りそのまま引かれるようについていく。
「ん?そりゃあ売り物として生きるのが嫌になったんだろ」
「しかし、んまぁ、だがな………」
すいかは頭を捻りながらそう呟いている。男はゆっくりの生体について金輪際考えるのを止めているため
これ以上動機についての考えを進めることを放棄している。
ただこのすいかの頭の捻り様を見るとそれだけの理由ではないようだ。
男が尋ねようとしたその直後ゆっくり達が声を張り上げた。
「あ、あれが……わたしたちのかくれがなんだぜ」
まりさ達の目線の先にぽつんと崖の下に小屋があった。何処かしら警察署を彷彿させるほど
古ぼけていたが手入れはされているようできちんとその存在感を誇示している。
「ふむ、入り口は何個だ?」
「い、いっこだぜ、たぶん」
「よし、一気に突入するぞ」
男はそれに頷きゆっくり達を縛っている紐を握りながら小屋の入り口へと向かう。
そしてすいかと向かい合い無言で頷き合い一気に扉をぶちこわした。
「幻想郷警察第一課だ!!貴様らを連続窃盗容疑で逮捕する!!」
「抵抗するなよ!下手に抵抗するとこのお兄さんが暴走して怪我するからな!」
中にいたのは二組のかわいいれいむとかっこいいまりさ、そして店員のみょんであった。
「みょ、みょん!」
「お久しぶりだな、お前が主犯か」
「うううう………そ、そうだよちーんぽ……みょんがはんにんみょん………」
「ち、ちがう!みょんははんにんじゃないよ!」
「みょんはわたしたちのためにむりしてつきあってくれたんだぜ!つかまえないでほしいんだぜ!」
仲間意識が強いのは悪いことではないがこの状況だとただ場が混乱するだけである。
男は辺りを一喝し場を整理して犯人達に尋問を始めた。
「みょん、お前はいつから参加していた?」
「ちちち……ちんぽいっかいめからだよ」
「誰にそそのかされた、言ってみろ」
そこでみょんは卑猥の言葉と共に口を紬ぎ真実を隠している。
他のゆっくり達に聞こうと思い腰を上げたとき奥の方から声が上がった。
「もう……もういいのよ」
「みんなわたしたちにつきあってくれてうれしいんだぜ……」
ドアを開けて出てきたのは何処かしら貧乏臭く、衣服も袖が無くボロボロとしたかわいいれいむ、
そして何処かしらワイルドで無精髭が生えたかっこいいまりさであった。
「………そうか、てめぇらが主犯か」
「そうだよ、このすばらしいはんざいはこの私びんぼうなかわいいれいむと」
「ぶしょうひげでかっこいいまりさがかんがえたんだぜ!」
素晴らしいという割には大分落とし穴があったが、と突っ込む暇はない。
男とすいかはその両者の前で座した。
「………おい、すいか、手錠を」
「分かった」
そう言ってすいかはTENGAの中から二つの手錠を取り出す。相変わらずローションで濡れていて
お前は海パン刑事か、と男は何遍も何遍も心の中で突っ込んだ。
「ただ聞きたいことがある」
すいかは二人の手にそのぬるぬるの手錠を掛ける前に二人に尋ねた。
「君たちは何故このようなことをしたのか。この男からその推測を聞かされているが
どうも腑に落ちん」
「…………………そうだね、はなすよ」
まずこのびんぼうれいむとぶしょうまりさは元々あの店で売られていたゆっくりだったのだ。
来る日も来る日もショーウィンドウの中で笑顔を絶やさずにポーズを取っている。
その当時少しだけ不況だったので二人は買われずにショーウィンドウの中で何日か過ごしていた。
だが二人は幸せだった。ガラス越しで声は聞こえないがお客さん達が自分達を選ぼうとして
迷っているのを見ると楽しみでしょうがなかったのだ。そして二人はいつか買われる日を心待ちにしていた。
そんなある日のこと。二人は真夜中に何か物音がすると目を覚ました。
闇の中何も見えないが何か気持ち悪い音だけがずっと聞こえてくる。そうして不気味に思っている内に
闇に目が慣れてきた。そこで二人が見たのは鼻息を荒げながら気色悪い目でニヤつきながら
こちらを見ている店長達だったのだ。
「キモイ!見るな!」と声高に叫んだのがいけなかった。店長達は慌てふためいて
冷静な判断も出来ず二人を何故かショーウィンドウの中から出してそのまま店の奥に連れ込んでいった。
そして……何というか、全年齢対象のため表現を省こうかなと思うのだけど省くと意味が分からなくなるし
心情の変化とか書き写せなくなるし、どうしようかなぁ。
まぁ表現を軟らかくして簡単に言うとネチョられた。それも一晩中。
「そうわたしたちは!しんぴんなのに!」
「ちゅうこひんになっちゃんたんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「上手いこと言ったつもりでもそういうこと言うんじゃねぇ!」
その日から彼女たちは自分達という存在に誇りを持てなくなったのだ。
自分達を見てくれる客に真実を伝えようとしても防音ガラスがそれを阻害する。
それどころか中古品となった自分達の姿が公然と晒されることによってその羞恥心が刺激されていったのだ。
二人の心は日が経つにつれて一つ、一つと穴が開き始め襤褸切れのようになっていき、
商品としての誇りをずたずたに切り裂かれた二人は買われた日に店から逃げ出したのだ。
「そしてここまできてくうやくわずのせいかつを……」
「あるときはれいむのそでをしゃぶりのどのかわきをうるおして……
まりさもやまでたべものさがしていうるちにひげがはえてきたんだぜ」
「……………………なるほど、それであの店にいるゆっくり達も自分達と同じ目に遭わせないように
このような犯罪を犯したというのだな、なるほど合点がいく」
これで事件の全貌が明らかとなった。残る警察の仕事はただ犯人達を連行するだけである。
ただ男の心にほんの少し凝りが残った。
「やっぱさ、こういうもんなんだろうな」
「何がだ?」
「警察の仕事だ。久しぶりに事件を扱ったがやっぱやりきれないことが多いモンだ」
「………………いいんだ、それで。悪人が少ない証拠じゃないか」
そんなはずはない。話を聞く限りこの事件の発端は店のモノに手を付けた店長達ではないか。
そして己の同情か正義感によって犯罪に手を染めたこいつらは連行されることとなる。
悪は店長達だ。
……………………男は勧善懲悪の話が好きだ。悪が制裁され正義が必ず勝つそんな物語が。
そしてこの幻想郷においてその物語の主役は楽園の空飛ぶ巫女、博麗霊夢なのだ。
男とすいかはその物語の登場人物になることが出来ず。ただ空しく法の下に従って己の行動を決めるしかないのだ。
「……………………嫌になるぜ」
「そう言うな」
そうしてすいかは二人の手に手錠を繋ぐ。そしてそのままその場を後にしようとしたその時であった。
「けいじさんのあとついていったらようやくみつけたよ!!」
「はんにんめ!かんにんするんだぜ!」
唐突に入り口から二つの生首が飛び込んでくる。仰天してみてみるとそれはデフォルトのゆっくり
いや、あの店の店長達ではないか。
「む、店長達。ご覧の通り犯人は捕まえましたよ」
「よくやったよ!さすがだね!」
そう言って店長達は犯人達の前にゆっくりと近づきその顔を太々しい顔でまじまじと見る。
数秒後、店長達の顔は引き攣ったように見えた。
「あ、あ、あ、けいじさん……こ、このはんにんから……なにか……きいてないよね……」
「主に動機の面を聞きましたが何か?」
店長達は苦笑いをしながら後ずさっていく。だが唯一無二である入り口は
店員のみょんや他のかわいいれいむ達によって塞がれていた。
「ねちょてんちょうはかえれ!」「そうだそうだ!」「ひどいんだぜ!」
「みょんみょんみょんみょんみょんみょみょんみょみょちんちんーぽ!」
「ぐ、ぐぐいぐ」
そうやって多くのゆっくりが入り口を塞いでいたがすいかは何を思ったのか
そいつらゆっくりを手で払いのけ始めた
「……………………まぁ私たちの仕事はこの二人を連れて行くだけだ。貴方たちに関しては
物的証拠が一つもない。」
「おい、それでいいのか?」
「ゆゆゆ!それでいいんだよ!ばかなの?れいむたちはなにもしてないよ?」
「さぁはやくはんにんたちをしょっぴくんだよ!」
男は久しぶりにどうしようもない怒りの感情を覚えた。太々しすぎるのもいい加減にしろ。
こいつらはお前らの勝手な行動で心も姿もボロボロにされたんだ。
そう心の中で思い続けて拳を思い切り握りしめる。だが腕を動かそうとした瞬間すいかの口が開いた。
「まぁこの事件は後々、いや明日にでも新聞に載るかもしれないな」
「…………………そうだな」
男は握り拳を解きすいかの話の流れに乗り始める。その時のすいかの顔はゆっくり顔だったのだ。
「そうして事件の全貌が赤裸々に載るんだろうな。「ゆっくり涙の犯行!極悪店長の禍根!」とな。」
今まで太々しい顔だった店長達はまた引き攣り始める。すいかはどんどん話を続けた。
「いやぁ困ったモノだ。検閲機関がないから情報の流出を止められない。人々は確的証拠もない
犯人達の証言を鵜呑みにするしかないのだろう、な?」
「おう、全く酷い世界だぜ。プライバシーの何もあったもんじゃねぇ」
店長達はまた逃げだそうとしているが入り口は封鎖され目の前には悪意を持った犯人と刑事が居る。
もう逃げ場はない。悪党め、ご用じゃ。
「と、まぁそれは連行してからの話だ。だが最後に被害者と面会を許そう」
そう言ってすいかは犯人のびんぼうれいむとぶしょうまりさを店長達の前に突き出す。
「て、てじょうがかかっているからこわくないよ!」
「そうだぜ!まりさたちのめんたるはいがいとつよいんだぜ!」
そうしてびんぼうれいむとぶしょうまりさは口を開いた。
「「ゆっくりしね!!!」」
口から出てきたのは言葉ではなく拳だったが。
「「ゆ、ゆっくりねちょった結果がこれだよぉぉぉぉぉ…………」」
顔面を強く殴られた店長達は天井を突き抜け、空を駆け、宇宙の星となった。
彼女らは天の川の一部となり織姫と彦星の会合を永遠に邪魔するのであろう。
「ホシじゃねぇけれど……星になっちまったな」
「つまらんダジャレでしめるな」
数日後、村は意外とも言うべきか怪盗ゆっくりのことなどあまり話題にならず、
寧ろすいかの巨大化によって起きた地震やローションばらまきの話題で持ちきりだった。
男はその話題の張本人と共にゆっくり屋を訪れていた。
「意外にもまだ繁盛してるな、これもお前のおかげだな」
「いや、本当に済まない。」
そう話し合いながら男達はゆっくり屋の扉を開ける。新しい物に替えたのか鍵は直っていた。
「いらっしゃいませちーんぽ!!!」
「「「「いらっしゃいませー!」」」」
そうして接客態度最低な猥語が聞こえてきてそれに続くようにかわいいれいむやかっこいいまりさが
挨拶をした。
「それにしても大分模様替えしたな、署を思い出す」
「良いじゃないか活気づいて」
以前と様相が大きく違い店の壁にはいかにもふぁんしぃと言うような飾りが飾られている。
そして大きな違いはあのショーウィンドウが跡形もなく辺りに商品のゆっくり達が
自由に動き回っているということだ。
「たしかみょんが新しく店長になったんだったな」
「はい、ぜんてんちょうたちはただしきねちょのみちをさぐるといってしゅっけしましたちーんぽ」
まぁ精進するのなら罰はそれくらいので良いのだろう。
既に禍根はなくこの事件は終末を迎えている。事件はもう過去の物なのだ。
「けど、すべてがはっぴーえんど……というわけにはいかないんだぜ」
「………………いや、犯人の身柄はしっかりとこちらで扱うから心配するな」
「ほんと…………?」
すいかはかっこいいまりさに向かってそう微笑みを返す。相変わらず変な顔だが
逆にそれが優しさと楽しさを与えてくれるようであった。たぶん。
「それではまた!」
「またおこしくださいちーんぽ!」
そう言われて男達は入り口を出る、それにすれ違うように子供らしきゆっくりれいむが
新渡戸さんの肖像が入った紙を咥えて店の中に入っていった。
これが全てが終わった事の証明なのだ。そう思って二人は警察署へと帰っていった。
「相変わらず、だな」
二人はいつも物が汚く散在している署の廊下を通り一課の扉を開ける。
いつもなら静寂のみが二人を待ち続けていたのだが今日は何人かの人間が二人の帰還を待っていた。
「あら、二人ともお帰りなさい」
「署長。帰ってきてたのか」
「ええ」
七つある内の机の四つが既に埋められており、そのうち三つは死屍累々とした人間らしき生命の
上半身を一心に受け止めていた。
「何処まで連れ出したんだ……この間まで本業の仕事してた俺らよりくたびれてるじゃねぇか」
「せ、せんぱ………い」
「生きてたか。とりあえず酒呑め酒。これが私の潤滑油だから効くぞ」
すいかは死にかけた部下の口に向けて瓢箪から酒を流し出す。案の定まともに飲み込むことなど出来ず
咽せて口の中にある酒を全部吐きだしてしまった。
「わ、私の酒……」
「す、すいません!すいか先輩!」
だが別方向で効果があったのか部下Aの気力は何とか連続した会話できるほどに回復した。
これを他の二人に続けて行うというのも部下にもすいかにも酷というものだ。
実際すいかはこの一回だけで落ち込んでいる。意外と純情なのだ、あの顔で。
「……ねぇ、折角みんな集まったのだから今日の夜宴会しない?」
「宴会?そうですね」
「する!ぜったいします!」
いつになく紳士的で有名なすいかが声高々に叫びまくる。
男も久しぶりにバカ騒ぎしたいと思っていたので珍しくこの署長の意見に同調した。
そしてその夜、死にかけていた他の二人も加え警察総勢杯を片手に持ち、互いに交わした。
乾杯したその瞬間すいかは一気に他の人より何倍の面積もある杯に汲んだ酒を一気に飲み干した。
「酒は良い、酒は良いぞ」
「……………やっぱ飽きた」
「汲むぜぇ~超汲むぜぇ~」
食傷気分な男の心理をよそにすいかは男の杯に酒を溢れるほど流し込む。
部下にでも渡そうかと思ったが既に署長以外は机の上にその上半身を載せながら寝ていた。
「お、酒がそろそろ切れそうだ。おーいお酒!」
「はーい!」
その声に反応してよたよたと酒の瓶を持ちながら入って来る人影。
なんとそこには服役中であるびんぼうれいむとぶしょうまりさの姿が!!
「おお!きたか!さあさあ呑め呑め!」
それにしてもこのすいかノリノリである。
「やっぱ司法機関が三途の川の向こうにしかありませんからね。
一応拘留という形で死ぬまでお手伝いさせてもらってます。」
と、署長の解説が入り二人は男とすいかの杯になみなみと瓶の中の酒をつぎ込む。
何処かしら幸せに見えるその横顔はこの些細な事件が終わった事を物語っているのだ。
「それにしても、今回のことでゆっくりのことがある程度分かった気がするな
ゆっくりも俺らと変わらん心を持って生きているんだな。」
「甘い、甘いぞ。こんな事でお前如きに理解されるはずがない」
「なんだよ、じゃ、言ってみろや」
男はそう言って杯の中の酒を呑む。日本酒では味わえない葡萄の酸っぱい味がした。
「うしろうしろ」
「後ろ?」
すいかに言われ後ろを振り向くと冷蔵庫の上で頭蓋骨のあった場所に何かがもぞもぞ蠢いている。
立ち上がって見てみるとそれはゆっくりだった。
「
ゆっくり信仰していってね!!!」
「…………………何でかなこが」
「あ、それ多分あの頭蓋骨が変化したと思う」
「はぁぁぁぁぁ!!?!?!?!」
何で神様の頭蓋骨がゆっくりになるんだ。
やっぱり、ゆっくりという物は訳わかんねぇなと男は悟りそのまま杯を飲み干す。
警察も平和で村も平和。そう、これは平和な世界、人間と動物と妖怪と神様とそれからゆっくりが
住む幻想郷の物語なのだ。
緩慢捜査網 ~後編~ 終
後書き
最早途中で何書いてるのかすら訳わかんなくなりました。
とりあえず至らぬ点、「これは違うだろ・こんなこいつはしゃべり方をしない」などの点など
どしどし指摘して下さると有り難いです。
あと、男のモデルは某百鬼夜行小説に出てくる木○修太郎さんです。
でも出来ればそのモデルと区別して読むことを推奨します。うろ覚えでモデルにしてますので……
恐れ多い事していると思います………実際。
それでは今度は短編で。ハローそしてグッドバイ!
- 二転三転する展開が面白かった。
事件解決後の酒盛りはやっぱいいねw -- 名無しさん (2009-04-10 23:03:43)
最終更新:2009年08月18日 23:14