※ ガチホラー
※ 原作東方ファンは、前半だけ見ると少し嫌な気分になる箇所があるかもしれません。ごめんなさい
反戦デモのおかげで、30分以上遅刻してしまった。
スタジオに駆け込む前、錐鮫は「ゆっくりゆうか」に会った。中型の着ぐるみだ。
「がんばってねー」
「おう」
――――はて。確か今シーズンも終わり、着ぐるみは全て倉庫にしまったはずだが、誰が何用できているのだろうか?
声も聞いたことが無かった。
そういえば、色合いも少し違っていた気がする。
何か臨時で使うのかと考えている内に、リハーサルが始まった。
外では、犀暁路さんと弥栄さんに、山佐奈局長が真剣な顔で話し合っていた。色々と気になっている内に、リハーサル
が始まった。
「始まった……」
「奴等が来る…………」
「フィルムはどうする…………」
あと1話で、このシリーズも終わる。
++++++++++++++++++++++++++++++
『はあ~、結局今日もお賽銭が全然入らない………』
『まあ、そう落ち込まずに、折角来たんだから茶くらい出して欲しいぜ』
『図々しいんだから』
「お疲れ様でしたー」
何やら、長い歴史が一端幕を閉じる様。
錐鮫は感傷的にならざるを得なかった。まだ番組は終わっていないし、半年もすれば新しいシーズンが始まるのだが、毎回
こうした気分になる。
「表情暗いっすよー錐鮫先輩。早くご飯食べに行きましょ!!」
後ろから能天気な声で、皮白が声をかけてきた。
「有栖川と鉢重さんと一緒なんだ。それで大丈夫?」
「ええ、ぜひ一緒に」
「まあ、あと打ち合わせもあるからさ」
やや薄暗い休憩室では、有栖川と鉢重の他、主要声優メンバー達が全員集まっていた。
歓談を交えつつ、来週の事などを打ち合わせている内、ふと言ってしまった。
「レイム様も、マリサ様も、どういう人達だったんでしょう?」
「ん………教科書どおり、ってイメージはまずあるよね。実際、私達が演じてるほど馬鹿っぽくはないはずよ。登場人物全員ね」
と、苦笑しつつ言うのは、散野さん。
「一応たまに正義っぽく描かれることはあるけど、レイム様は相当厳しいしきつい性格だったらしい。怖い絵も残ってるしな」
「実際、こうやってコメディにしてるけど、本当は命がけの毎日だったし――――キャラクターは、勿論改変されてるよ」
それくらい、小学校で歴史を勉強した者なら誰でもわかっている。
しかし、このアニメで演じられる、この国の英雄達は、誰も彼もとても愛くるしい。それを、自分達が声を当てていることを皆誇りに思ってい
るはずだった
「変わりすぎですわよ!!」
まあ、確かに行き過ぎている所はある
「憧れの役になれたと思いましたら、何ですの?この変な言葉使いは………」
「雛茄井さん、テンシ様のファンだったもんねえ」
「この怒りはとどまることを知らない…………珍妙なものの言い方にも慣れてしまいましたわ」
「台詞くらいイイジャナイデスカー。アタシなんか実家に帰ってスラ寝坊助扱いですヨ~」
「いや、実際明倫さん、本番前いっつも寝てるから」
本番ではなく、こうしてだべったり愚痴を言い合うのが、一番楽しい時間だった。 声優は、ファンが思っている以上に修羅の職場である。
その時。
「そういえば、矢蜘さん帰ってきてたみたいね」
この中で一番の古株である。North side project――――本編で初期の主人公を演じた本人である。
「退院できたんだ」
「さっき山佐奈局長と、犀暁寺さんと話してたよ」
季節ももう直ぐ春。番組も改変期だので、その打ち合わせだろうか?と、いう事は本編をまたスタートさせるのだろうか?しかし、あら
かたやりつくした感があるし、今、矢蜘さんが演じる役というとなんだろう?
「そろそろ行きません?」
「うん・・・・・・」
矢蜘さん自身は嫌いではなかったが、錐鮫の腹の中に嫌な気持ちが充満し始めたのは、そこからだった。
とにかく、その夜は鉢重と有栖川、皮白と浴びるほど飲みたい気分だった。
スタジオを出る時――――今度は「ゆっくりれいむ」に会った
「おっつかれー 錐鮫さん」
中に入っているのは、今日は誰だろう?馴れ馴れしく話しかけてきた。が、一番大きめ(180cm)の着ぐるみを被っている。にも拘らず、
すいすいと狭い通路もかき分けて移動している
「お疲れ…………」
本当に誰だったのだろう。そういえば、今日は収録日だったか?
+++++++++++++++
思ったよりも、酒の席は盛り上がらなかった。
「来週で終わりって、何だか寂しいですね」
「また次のシリーズが直ぐに始まるわよ」
「それまで―――」
自分達は、マリサさんでも、マーガトロイドさんでも、ニトリさんでもなくなる。
現実に本人ではないのだが、長年生活の一部として演じていた役から離れるのはやはり心苦しい。あれだけ仕事一筋にうちこんできた
のに、現場から離れざるを得なかった矢蜘さんの心境はいかなものだったろうか
「そういえば、『ゆっくりと遊ぼう』って、今日じゃないよね?」
「え?」
有栖川が、少し過剰に反応していたが、錐鮫は軽いことだとその時は捉えていた。
「いや何。さっき出るときに『ゆっくりれいむ』に会ったからさ」
「そりゃおかしいねえ。『~遊ぼう』の方が、先に終わってるんだから、着ぐるみは全部片付けたはずですけど」
「こっちが終わっても。『~遊ぼう』はずっと続くんだよね……」
着ぐるみが新調されたり、新しいバリエーションをつけたり、中の人や声優が少し変わることもあるけど――――錐鮫は「ゆっくりまりさ」の2代
目を担当していた。実は、アニメよりも「ゆっくりと遊ぼう」の方が少しだけ歴史が長い。
そのためか、「ゆっくりと遊ぼう」という幼児番組には、いくつかの変な噂があった。
夜中に着ぐるみが勝手に動き出すとか、何故か茎が絡まっていることがあるとかのありがちな怪談から――――意図は語られることは無いが、
実は大河ドラマの悪役の一つとして登場する予定だったという噂だ。
こんな緊張感の無い、頭部だけの饅頭妖怪を悪役にどうすればできるのかと誰も信じないが、実際のそのパイロットフィルムが存在している
というのだ。
実際に、目を通したことがあるのは、蔚帆さん、弥栄さん、楡井屋さん、犀暁寺さん、加賀谷さん、山佐奈局長だけだと言われているが、
何故かその事は誰も本人達には聞かない。皮白は以前、弥栄さんに聞いて軽く流され、錐鮫も楡井屋に聞いてみたが、無視された。
「地面を埋め尽くす程の、こう、バレーボールサイズのゆっくりれいむと、その後ろに200mくらいあるゆっくりまりさが、軍と戦うんだって」
「何と緊張感の無い………」
昼間の、迷惑を考えない、自分達こそ正義の平和活動家達にそれを見せたら卒倒するかもしれない
++++++++++++++++++++++++++++++++
この国の誰もが、英雄に憧れる。過去に異変を解決し、様々な異郷の神やそこかしこから現れる妖怪達と決着をつけてきた彼等の事
は、小学校からその偉大さを教えられる。国営放送では大河ドラマとして、何回も放送されたし、キャストが世代交代するくらい、それは
伝統として続いていた。
どれだけ学校の勉強をさぼろうとする不真面目な子どもでも、英雄達―――殊更マリサ様とレイム様の事を知らない者はいない。
と、いうか、本編ドラマの横で始めた、彼らをディフォルメしたアニメが妙に人気を催し――――シーズンは実にもう23期をきった。史実にある程
度基づきながらも、破天荒な性質はそのままに、2次設定とはいっても個性豊かな英雄達のコメディは、子供にも大人にも人気である。
――――ちなみに、「ゆっくりと遊ぼう」は、丁度幼稚園に行く前の7時~8時に放映している。勿論、歴代の英雄達の顔をもじったマスコット
キャラクターだが、「ゆっくり」の語源は未だに不明だ。
今では、この国営放送局の看板とも言っても良い
最終回の収録日。
何か落ち着かずに、1時間早く来てしまった。
他の面々も同じだったようで―――――犀暁路さんや弥栄さんや楡井屋さんといった、役は終えたはずだが、そうそうたる面々が揃っていた。
「錐鮫。結論から言うわ」
「はあ」
「来シーズンも私達は貴女の主演を推してるのよ」
「―――――それは………、どうも」
「だから、終わったら話があるわ」
今思えば、あの人達も虫の報せとやらを感じていたのだろう。
胸躍らせながら、本番前
3.2.1―――
(いいじゃないか、本はまた必ず返すって----いいじゃないか、本はまた必ず返すって-----)
出だしの台詞を脳内で連呼していると----照明が落ちた
真っ暗闇。
驚いたが、停電か何かと決めて平静を装うようにした。
が、編集室の方で悲鳴があがり――――明かりが中々点かないまま、本番も始められず、一人2人と出て行くにつれ、結局錐鮫も、多くが
集まる編集室に行ってしまった。
そこだけが明るい。
中では――――モニターが一つだけ点いて――――
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> 我々は秋姉妹。お前たちのAA的特性とネタは我々と同化する!! <
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___,∧"´:ト-、
>,ゝ/ヽ、ノ::V:::_」∠━Zァ>ァ、 _,,.. -――C○ィ )  ̄ ̄\
.,:'ィiヽ':::_>''"´ ,__ ,,`人!, // ̄ヽ ゝ○o _ ヽ
/ キア'" (◆┳]-[{}]=ヽフ Y /[{}][┳◆)/ \`L_. ',
,イ / / ,ハ! /\┫〓:`ヽヽY .,' .|@:〓┣/ゝ、__,..-、\ ̄`i )i
'、!,イ ,' /´___!_ i /`ヽ品┫リノ 、 | /i┣品i / イ ,ヘ ヽ \` し' |
ノ ', レ、 !ァ´ノ_」_ノレ' //┏╋:)}}) ({{(:╋┓|ヽナ ル ヽ、ナ‐-',ヽ、ハ!\
( ソ'´ Vi ttテュ,::::::::::ヽ|◎}}ヘノ:/ T{∧{{◎|∥::::::::::,rェzァ i} リ `T ‐ヽ
y'´ ! !. '"  ̄ |┻{{ハハ _ノ }}-┻|  ̄""/ !_」
,' ! , ヽ、_,ゝ 'ー=ョ |-■ハ | ! ゝ._ノ人■| 'ー=ョ ∠ノ |
'、 ゝ、ノ )ハゝ、, ノ┫イノ ' `ー‐ >, 、 _,. <_Z_ /ノ/
`ヽ(ゝ/)ヽ,ノイi` ''=ー=':i´ノ´ンノ / ̄_ヽ`ー-一'イ==≠二
_人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_
> お前たちの存在は我々と同化する。抵抗は無意味だ <
「は?」
どうやら数あるゆっくりの2種類が映っているのだと思っていたが、こんなゆっくりはいなかったはずだ。
何のハッキングかと、焦りよりも意味の不明確さに首を捻っていると――――
『どきなさい――――あんた達じゃ説得力が無い』
換わりに映ったのは―――
,-r⌒L⌒」⌒yヽ、
_r─ノヽヽ,_ _,ノヽヽイゝ、、
rヽ,/ / `ヽイヽヽ, / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
r` / /λ 入、ヽ、 ヽy i |>>みんなお疲れ!!!
'y r イ____,ヽ, ノ.,____ヽ、 ヽ, | | ・・・・といいたいところだが
∠/ / _____i レ' レ ______!ヽヽ、、i <
/ ,イ}.T'ヒ_i´ ´ヒ_,!ア イヽ、ヽ、 | 君たちにはゆっくりしてもらおう
/ /くl"" _ , _ ""{yイ\ ヽ! \________________
i// ⊂⊃ ー─,- ⊂⊃iy}イ´/ヽ!
//y}レヽ..、 ̄ ,イゝ|{yレV
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_,.-;'´!,L:',/:/´.:.:.:.:.:{、 j j' ゙i ',.:;'':..:..:..:..:.',';:::::゙i、、}`i' 、_
f´_l,..i:'"o:::::/:.:.:.:.:.:.:.:.';:゙!、l i ト:'::/、:..:..:..:..:..',';:O::`ヽ、'_i_i`‐.、
. /´::::::::::::::::::/:.:.:.:,、‐ン:.:|::! i ト;:/:.ヾ:、:..:..:..:..:',';:::::::::::::::r';、'<入
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「「「「「「「た、ダディアナザァーン!?」」」」」」」」
橘咲矢―――――先日突然原因不明の退社をした、今期の花形ともいえる声優の一人だった―――
ただし、橘と判断したのは、その声と顔からだったが、よく見ると明らかに本人ではなかった。目と口を妙に横に引き伸ばし、
鼻を省略して輪郭を丸くし、どこか子憎たらしい………そう、この顔は………
「ゆっくりじゃないか・・・・・」
『そう。暗闇の中で、ゆっくりしていってね!!!』
モニターが消え、今度こそ真の暗闇となったところで――――何か小さいものが、大量に室内に入り込んできたことが気配で
解った。
既に懐中電灯を誰かが手に入れ、入り口を照らしていたが、良く解らない。
兎に角数は多い。大きさはソフトボール大のものだという事だけが解ったところで、そこから音が発せられる事に皆気付いた。
――ゆっきゅ ゆっきゅ!!
――ゆぅ~ ゆぅ~ ゆうううーー
――ゆっきゅち!!!
――ゆっ!!
――ゆっきゅり~
見覚えがある
「「「「「「「ゆっきゅちしていっちぇね!!!」」」」」」
小型のミニ「ゆっくりれいむ」人形だった。「ゆっくりれいむ」がメインの回を撮る際、または野外ロケなどの時には大活躍するミニサイズ
の人形だが――――せいぜい5個程しかストックが無かったはずだった。
その数、おそらく3桁は下らない。
それに―――声を出すなんて、高度なギミックは無い。
「どしたのこれ?」
修理を手伝っていた皮白が、興味を引かれて、ミニゆっくりれいむ人形の山に近づく。
声はまだ続き――――暗くてよく解らない。が。錐鮫の目には。 その笑った口がちゃんと動いて見えた。
「ゆっ!!!かわちろちゃん、こんにちは!!!」
「はい。こんにちはー。どこから声だしてるの?何これ?」
「おねーさんは、ゆっくちできりゅひと?」
「う~ん………今はゆっくりできないなあ。お仕事あるからねえ」
「じゃあ・・・・・・・ゆっくりさせてあげりゅにぇ!!!」
言うが早いが―――明らかに周りに人はいないのに――――ミニゆっくりれいむ人形は、一気にしゃがみこんだ皮白になだれ込んだ。
昔見たドキュメンタリーで、小魚かが見事な統率で、まるで一匹の巨大な魚の様に固まって動く様を見たことがあったが、それに近い。
声すら聞こえなかった。
ややあって―――またも不自然な形で、皮白を覆ったミニゆっくりれいむ達は、ぽてぽてと散らばっていった。
そこに、皮白はいなかった。
代わりに――――
「あれ?」
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/ ,rァ'´ `ヽ!:::ァ' ,ハ
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ヽ| ! /-- |_,/--ト/! | イ
|__|,.イ(ヒ_] ヒ_ン ) ト、_ハ、 \
/`|/"" ,___, "" | | \ ヽ ヽ
!/i、 ヽ _ン u ,ハ/ ノ´`ヽ! ノ
〈 ,ハ,>、 ''/ 八 ( | /
∨´\/!`>‐rァ / _//`ヽ) レ'´
ノノ´ |/!/レ'´レ'´ヽ‐-、´ (|
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| '7 / ナト /! ,ハ i `O |
ヽ| ! / /' |__,/\ト /! | イ ニタリ
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ノノ´ |/!/レ'´レ'´ヽ‐-、´ (|
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「―――今日、何の日だっけ………?」
「え?何? そういう企画? ここってそんな。あれ。その何だ。あれ」
「い、所謂『ドッキリ』とかってこの局でもやるの?」
皆、目の前の事が信じられず、何とか最も都合の良い解釈をしようと汗だくになって考えをめぐらせている。
ざわつく中、ぼそりと犀暁路さんがはなった言葉が――――結果的には起爆剤になった
「企画じゃないわ―――あれは、『本物』のゆっくりよ―――」
それまで、押し黙っていた有栖川が悲鳴をあげ、そしてスタジオは阿鼻叫喚の坩堝と化した。
ただ転がって移動しているだけだと思っていたミニゆっくりれいむ人形は―――明らかに自律して移動を始めた。
それは、明らかに、「そういう生物」なのだという事が解った。
そして、流暢に喋っている
「ゆゆ~?どうちておねえちゃんたち、にげゆの?」
「もっちょゆっくちちようよ~」
「――――って、この口調疲れるなオイ」
「こうしときゃこいつら満足すんだろって思ってたけどやっぱりきついわ」
雛茄井と加賀屋が転び、その上に喜び勇んでミニゆっくりれいむ達が飛び乗っていった。
何の音も、悲鳴も聞こえないし、暗いので何が起こっているのか解らないが、とりあえずあの小さいゆっくりに捕まる
と、皮白の様になってしまうらしい。
気がつけば、錐鮫も廊下に飛び出して走っていた。
何が何だか解らない。
しかし、背後からは、確実に ぽよんぽよん と、緊張感の無い音で、「ゆっくり」達が追いかけてくる。
「こっちに来なさい!!」
手を引いてくれたのは―――弥栄だった。いつしか、走っているのは二人きり。遠くで、散野の悲鳴が聞こえ、恐ろ
しいというより、悲しくなって錐鮫は嗚咽を始めてしまった
―――何故、こんなことがおきている?
―――何故、こんな目にあわねばらならない?
―――あの生物は何なのだろう?
弥栄にひたすら大声で聞いてみたが、それに答えてはくれなかった。
2人は、いつしか大道具の倉庫へと到達した。
手馴れたものらしく、すぐさま弥栄は閂をして倉庫を内側から封鎖した。ぺちぺちと鋼鉄の扉に、大量の何かがぶつかっていく音がする
「とびらさん、あけちぇね?いじわるしないでゆっくりあいちぇね?」
「おねえさん、どうちていれてくれにゃいの?ゆっくりちていってよー!!!」
「あけろっつってんだろうがあ、このおばさん頭!!!」
「こちとら赤ちゃん言葉無理して使うのもつらいんやでー」
いつまでも鳴り止まない扉を叩く音―――加えて、倉庫には、大型のゆっくり着ぐるみがかけてあり、錐鮫は本当に気を失いかけた。
「しっかりなさい!! これは、着ぐるみ。本物じゃないわ」
「じゃあ、表のあのちっちゃいのは………」
「私のいう事を、よく聞きなさい。本当の、知ってることを全部話すわ」
本当は、今期最終回の収録が終わってから改めて話そうと思っていた、と前置きして、弥栄は錐鮫の目を見つめて始めた
「North side projct ――――本編ドラマと、あたなたのやってるアニメと、『ゆっくりと遊ぼう』―――その他、小説・
ゲーム・コミックまで含めての、主人公のレイム
とマリサ。解るわね」
「はい……………………」
「それが良いかどうか問わないわ。このプロジェクトの、本当の大きな意味は?」
言いたくは無かったが、しぶしぶ言う。事実は事実だ。
「プロパガンダの一つだっていうんでしょう?これからの侵略戦争のための………」
「そうね。多分、開戦は避けられない。誰がどう見ても、この国からの一方的な侵略戦争よ。でも、それを止める事はもうできないし、国民にこれが侵略だって
事を認めさせてはいけないわ。事実じゃなかったとしても、大義があるって事を示さなきゃいけないの」
「そうやって――――レイム様とマリサ様を、戦争の道具に使うんですね」
汚い。流石帝国主義。汚い――――テンコ様が、もしも生きてこの場にいたら、そういっていたはずだ。
声優達も、殆どがそのことには気がついていた。だって、こんなアニメを、人気があるからといって、国がここまで恵まれた環境を与え、保護するのはおかしすぎる。
それが嫌で―――矢蜘さんは心身ともに不調をきたし、橘咲矢さんは、業界を去ってしまったという話だ。
「―――その通りよ。でも、決定的に違う」
「はい?」
「『North side』を、使っているんじゃないの。むしろ、それは正しいあり方」
「言ってる意味がわかりません」
「レイムもマリサも、実在しないの」
世界から音が消えた。
「は?」
「レイムも、マリサも、架空の登場人物よ。勿論、ユカリもエーキも、皆そう」
―――――
「いつか必ず行わざるを得ない侵略の正当化とプロパガンダのため、国策として作られた英雄譚よ」
「わ、私何を聞いているのか解らない・・・・・・・・」
軽く点いているはずの明かりも、もう見えない。
混乱しきった頭を、ペチペチと叩かれる扉の音が何とか正常に戻す
勢いで、あまり関係の無いことを言ってしまった
「へえ。じゃあ、『ゆっくり』も戦争の道具って訳ですね。とんだマヌケな軍国主義があったもんだ」
―――それじゃあ、外にいるあいつ等は何なのだろう
―――実在しなければいけない人間が実在せず、いてはいけない化け物が、横にいる。
気が狂ってしまう。
もっと、気の紛れるような冗談を――――できれば、これ以上ショックを与えないでほしい―――と、目で弥栄に訴えたが、
首を振って、心底悲しげに彼女は言った。
「ゆっくりは、 実在するわ。 そして、この大陸の先住民族よ」
最終更新:2009年04月04日 10:40