口から出る言葉は罵詈雑言ばかりだ。
他人からの印象は余りいいものではないだろう。
中には、人を十分に傷つけるものでもあったはずだ。
しかし、それでも。彼/彼女は───燦然とあるべき舞台にて輝いていた。
(無理! 絶対無理!!)
頭を抱えながら内心も怯えている、濃緑の髪の少女。
普段であればクール、かっこいい。そういうのが見受けられそうだが、
今の状態ではとてもそうとは受け取ることのできないような光景になっている。
彼女、月村手毬はお化けと言ったものが苦手だ。元より一般的な感性を持っていれば、
殺し合いや死人が出ている状況で怯えるなと言う方が無理と言うものではあるが、
手毬の場合はあのベリアルと呼ばれた存在が
化け物にしか見えないのだから余計に怯える。
明らかに人の姿だ。でもあの所業はどうあがいても化け物のような思考や所業でしかない。
スプラッター映画のように人の首が飛んだのが脳裏から離れてくれないのも拍車をかける。
辛うじて理性を保っていられるのは、まだこんなところで死ぬつもりがないからだ。
Re:IRISを結成し、Begrazia敗北を喫して、リベンジしたいという、
人からすれば特別な願いと言うわけではない、どこにでもあるありふれた願いである。
アイドルの都合ありふれてないように見えるが、要するにリベンジマッチを望む。それだけ。
けれど、アイドルである手毬にとってはそれが大事なことだ。その為に努力を重ねてきた。
(支給品に武器があるって言うけど……)
人を殺して夢を叶えろ。
或いは生きろ。つまりそういうことなのだと。
他のアイドルを蹴落として輝かうのがトップアイドル。
けれど、断じて人の屍の上に立つのがトップアイドルではない。
それぐらいは分かってる。分かっている。そんなことをしたところで、
最後は誰も振り向かないアイドルの出来上がりだ。たとえこれが公にならず、
自分だけが知ることになることだとしても、それを自分が許すことができないだろう。
恐怖もある。しかし自分で自分を殺したくなるようなアイドルになることの方が恐怖だ。
その二つが混ざり合った結果、彼女は殺し合いがが始まってもまともに行動できずにいた。
そんな彼女を時間は、敵と言う存在は待ってはくれない。
彼女の前に現れ、追ってきているのは茶色の毛並みの見た目通りの狼。
空の世界でラウンドウルフ呼ばれる、本来ならば群れでの行動をする狼ではあるが、
今回は運がいいのかたまたま群れを成してないのか、此処には一匹だけである。
しかし、それでも空の世界では一般的に恐れられる魔物であることには変わりはない。
首輪がないので参加者ではないのは分かるが、説明には参加者を襲うNPCもいると言っていた。
武器を手に取れば戦うこともできるだろうが、彼女は特別戦いに身を置いてるわけではない。。
アイドルと言う戦いの場に身を置いていたが、殺し合いとは無縁の代物になるだろう。
せめて逃げる。走る。アイドルとして培った身体能力は決して無駄ではないものの、
相手は狼だ。移動速度は彼女よりも早く、追いつかれるのも時間の問題だった。
(なんで、なんでこうなったのよ!!)
相性の悪い二人と組んでアイドルユニットRe:IRISを組むことになって。
学園一のアイドルの一番星(プリマステラ)である十王星南達には敗北を喫し、
始まるのは地獄のような殺し合いにより、今まさに命懸けの追いかけっこの急転直下。
いずれ追いつかれる。それまでに何とかしないといけない。
支給品にある武器を手に取って戦う以外の選択肢は今の彼女には残されてなかった。
あるにはあるが、手に持ってるのは刺股。武器ではあるのだが警察官が使うように、
人を殺さず捕縛するものであり、根本的な戦闘において解決するには程遠い代物だ。
これでどう戦えばいいのかわからず困惑してている最中、事態は進展が起きる。
そう思っていたその時。脇道から飛び出すように槍が矢のように飛来し、ラウンドウルフを貫く。
飛沫する血飛沫。手毬に届くことはなかったが、思わぬ展開に理解が追い付かずその場にへたりこむ。
誰かが助けに入ったのか、たまたま狙いが逸れたからそうなっただけなのか。
困惑してる中、その槍を投げたと思しき、顔の傷が目立つ厳つい男が姿を見せる。
顔の生傷を見るに、余り堅気やまっとうな人間には見えがたい顔つきをした黒服の男は、
どちらかと言えばアイドルとは無縁でいたい、反社会的勢力にいそうな風貌をしていた。
二メートルはあろう長槍を引き抜きながら、死体を一瞥した後男は手毬を見やる。
(助かった、の……? いや、まだ油断しちゃダメ。)
殺し合いに乗った参加者なのかどうか。
それが分からず言葉が出せないままゆっくりと立ち上がる。
暫く沈黙と共に警戒する手毬。しかしいくら時間が経っても、
さっきから一向に相手は喋ることもしなければ、襲うこともしてこない。
ただ静寂の時間だけが流れてゆき、僅かばかりの時間が経過する。
「あ……あの、ありがとう、ございます。」
身構えていた手毬も流石に何もないと分かると、
素直に礼を言うものの、男から返事は返ってこない。
ずっと黙っている。声が出せない人なのかと思ったが、
少し唸っているような声も聞こえるので、喋れないわけではないことは分かった。
「あの……なんでずっと黙ってるんですか。」
謎の沈黙。
喋りたくないとかそういうのではないのか。
それすらも分からず、静寂を破るように手毬は尋ねた。
「……ん? ああ、そうだったな。喋っていいんだったな。
普段は藍染……知り合いに黙ってるように言われてたから慣れねえな。」
なんだ、普通に喋れるんだ。
少しばかり面食らったところもあるが、
ちゃんと言葉が通じてるのも相まって少し安心する。
「何でそんなことを? 知り合いが黙ってるようにって?」
「身内からも口が最悪って言われてたんだよ。まあ自覚はあるが。」
「え。」
なんとまあ身につまされる言葉だと手毬は感じた。
素直に言えばいいのに、曲解した言い方になり結果端から見ればすこぶる悪い。
実際は実体験に基づいた正論をぶつける、と言うのが手毬と言う人物ではあるのだが、
それを理解してなければ彼女の言葉は酷いとしか言いようがないレベルで酷く目立つ。
そういう風に振舞う理由は一応あるにはあるのだが、此処では関係のないことだ。
結局のところ正論とは、暴論よりも人を怒らせるものなのは変わらない。
「だから部下から口うるさく言われたんだよ。
ヒーローのイメージダウンに繋がるから、無口キャラでいろって。
本当に一々うるさい奴だったなと、今思い返せば言いたいことは色々あるな。
まあ、もう言えることはねえだろうけどな。」
「ヒーロー……そういえば別の世界もあるって言ってたっけ……」
今の戦い方。
恐らくヒーローショーなんてものとは違う、
本当に怪人とかそういうのを相手にしてきた、
本物のヒーローか何かの人物だということが伺える。
自分にとって別の次元で、命懸けの戦いに身を置いている存在だ。
様々なアイドルを見てきたことによる審美眼は、決して嘘をつかない。
「あの、これからどうしますか?」
「俺はクズで半端ものだが一応はヒーローだ。
だが、少なくとも人を守るぐらいはするつもりだ。」
彼、青嶋庄吾はヒーローだ。
偽りのヒーロー、ドラゴンキーパーの一人。
だが彼は既に死んだはずだ。戦闘員との戦いの最中、
頭を撃ち抜かれて命を落としたことだけは記憶している。
なのになぜか生きている。理由は一切分からなないものの、
悪い意味で癖の強いドラゴンキーパーの中でも正義感そのものは割とある方だ。
無力な一般市民を捨て置くようなら、猫を虐待する連中を半殺しにしたりしないだろう。
彼は、そういう志を持ったヒーローだと藍染からも言われるぐらいにはヒーローはしている。
「……嫌。」
しかし、帰ってきたのは拒絶の言葉。
は? と思わず青嶋は素の言葉が飛び出してしまう。
「お前バカか? それとも脳みそ空っぽでクソでも詰めてるのか?
俺が来なかったら今頃食われてただろうが。分かっててボケてんのかよ。
さっきまでワンワン泣きわめいて言うことが嫌ってバカ通り越してアホだろうが。」
さっきまでは割と普通だったのに一気に印象が悪くなる。
本当にその通りだった。自分も大概だが相当口が悪いと。
うわ、と内心で自分が言えたことではないが軽くひきつる。
これは黙っていた方が良いんだろうなと、少しばかり思ってしまう。
藍染と言う人がうるさく言っていたのも理解できるほどだ。
なんてこと思いながらも、手毬は胸に手を当てながら紡ぐ。
「嫌なのは『ついていくこと』じゃないです。
『強い人に甘えて、何もしないままの自分』なのが嫌なんです。
だから……私も戦います。甘えてばかりの私はもう、嫌だから。」
月村手毬と言う少女は、昔はおよそアイドルとは縁遠いものだった。
太ってて、怠け者で、いつも誰かに甘えてしまう。言うなれば怠惰的存在。
そんな自分が嫌いだ。だから彼女は憧れたアイドルになる為に必死に努力し続けた。
中等部においては、トップクラスのアイドルになるほどの結果も出しているのが証拠だ。
故に、弱いままの自分が嫌いだ。自分を好きになりたい。だからストイックに努力し続けている。
二度と嘗ての惨めな自分には戻らない。その決意は、たとえ殺し合いの中であっても同じことだ。
人を殺せる覚悟なんてない。だからと言って誰かに手を汚させて甘え続ける自分もきっと嫌いだ。
できることなんてたかが知れている。それでも、彼女は今のままでいることを望まない。
「めんどくせえ女だな……さっきも言ったが正義の味方としても、悪としても半端者さ。
だから本物の悪に負けて死んじまった奴だ。そんな俺と一緒に戦って、
テメエが無事でいるなんて言う保障、どこにもねえぞ。そこは覚悟しとけよ。」
「覚悟ならもうできてます。この先、何があっても私は……弱い自分でいたくないから。」
反骨精神だけなら一人前だな。
そういう風に思いながら青嶋は槍の血を払って歩き出す。
手毬もすぐに彼の後ろをついていくように歩き出した。
不器用な男女は立ち向かう。この悪辣な場所で、自分の信念を貫くために。
【月村手毬@学園アイドルマスター】
[状態]:健康、覚悟と不安
[装備]:愛棒@ガチアクタ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2
[思考]:殺し合いはしない。
1:この人(青嶋)についていく
2:でも守られるだけの自分は、嫌。
3:咲季やことねもいるのかな……美鈴達も……?
[備考]
※参戦時期は初星コミュにおけるbegraziaに敗北後。
※愛棒を使えます。
【青島庄吾@戦隊大失格】
[状態]:健康
[装備]:無敗の紫靫草@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2
[思考]:半端ものでも正義の味方として動く。
1:こいつ(手毬)、どうするか。足手まといになるつもりはないらしいが。
2:あの戦闘員(D)や幹部がいたら絶対殺す。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※神具はないため変身はできません。
※ブルーキーパーの服ではありません。
【無敗の紫靫草@Fate/Grand Order】
青嶋に支給。マク・ア・ルインと読むフィン・マックールの宝具。
邪悪な妖精アレーンを倒したとされる魔法の槍で、長さは二メートル以上。
自動攻撃機能、精神干渉無効などの効果を持っており単なる槍ではない。
真名解放により、戦神ヌアザの司る「水」の激しい奔流を伴う一撃を放つ。
流石に別マガ版コミカライズのような水量は出ない。
【愛棒@ガチアクタ】
手毬に支給。ザンカ・ニジクの持つ人器。
人器化すると更にでかい刺股になるものの、言い換えるとそれだけの能力。
元々ザンカはそういった人器に特殊な能力を持たず、技術で補う部分がある。
本ロワでは適性があればの話だが、誰でも人器化を行使することが可能。
最終更新:2026年02月18日 00:25