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どうしてこうなったのかなあ?
私の体が毒漬けになったのはこんなところで養分にされて
食べられるためなんかじゃないのに。

姉さんの仇を死なせるためだったのになあ。

水銀
コバルト
カドミウム

硫酸
オキシダン
シアン
マンガン
バナジウム
クロム
カリウム
ストロンチュウム。

いつぞやの日本で
海も青空も穢した科学物質の醜態の中に
藤の花の毒が仲間入りを果たそうとしていた。


「オエエ``ゥぷぶぇぇっ。」

悪臭を嗅覚が捉えた時点で涙が溢れる。
嗅覚を稼働させる神経がやめろお願いだから
やめてくれとまるて泣き叫んでいるかのようだ。

(な、なに…この匂い…)

放置されて何年間も掃除されていない田舎の公衆便所が
フローラルで優しい香りに感じるほど、最低な悪臭が襲いかかってきた。

世に存在する腐乱した汚染物をかき混ぜて煮詰めたような激物すらぬるい史上最低の臭い。

鼻から忍び込んだ時点で立ってはいられなくなり、
臓器にたまっていた液体、固形物が口内へジャンプするかの如く跳ね上がり、
あっという間に口の中を吐瀉物で満タンにして、濁流のように外から流れ出る。
臓器の中に含まれている水分が根こそぎ放出されたとしか思えないほどの
目を疑うような量の吐瀉物が流れ出てしまった。

嘔吐を繰り返し、下はすぐさまゲロの海と化した。
吐き気に苛まれている女性の名は麗美。

この殺し合いに召喚される前にも
死滅回遊というデスゲームに巻き込まられた女性である。

「ご、ぼぉぉお``おお``ぇええ」

ゲボをまき散らしながら悪臭から逃れたい一心で逃げ出す。
嘔吐するのにも体力を使うもので既に相当疲労しているはずだが
ここにとどまっていてはあまりの腐敗臭に頭までおかしくなりそうだ。

おぼつかない足取りながらも一心に駆けた。
死滅回遊とはまた異なる殺し合いに引き込まれた絶望や焦燥感も
悪臭に向けられた特大の嫌悪感によって今は吹き飛んでいた。

【麗美@呪術廻戦】
[状態]:疲労(大)吐き気(特大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:死ぬのは嫌
1:悪臭の要因から逃げたい

薬学に精通しているしのぶにはわかってしまった。
あの怪物は汚染物質や科学物質を主食としているのだ。
吐き気を催して吐瀉物を漏らした女性を放置して
こちらを狙ったのは肉体に浸透させた藤の花の毒を喰らうためだったのだ。

怪物から放たれる激臭には薬剤にも用いられてた
化学物質の匂いもほのかに混ざっており
そこから推察は容易だった。

あの大きいヘドロの化け物は汚染物や化学物質を主食にしている。

しのぶの肉体は藤の花の毒が含まれており
鬼が摂取すれば致死量の700倍にも至るほど多量であった。


既に逃走した女性は怯えており保護を試みたのとほぼ同時に
ひどすぎる臭いをまき散らす巨大な怪物が視界に入った。

激臭に呑まれたしのぶと麗美は悶えずにはおられず
しのぶは嘔吐を堪えて状況を冷静に分析しようとしたが
麗美は一目散に走り出してゲロを吐きながらも泣き叫びながら逃げた。

泣き叫ぶ大声とゲロが地に叩きつけられるびちゃびちゃとした醜い音で
怪物に気づかれて狙われてしまうと思いきや
しのぶに狙いを定めて追い掛けてきた。

前述の考察のようにしのぶに含まれた毒を奪おうとしたのだろう。

それでも狙われた時点でしのぶの破滅は決定づけられていたようだ
背を向けてひたすら距離を離して逃走を図ったが、
走るのに夢中になったあまりに後方に気を置かなさすぎた。

ヘドラは眼球から光線を発射してしのぶの背中に的確に命中させた。
光線の速度は少なくともただの人間ではまず反応できないほどだ。

そもそもヘドラは60mの巨体であり
それほどのサイズであれば全速力で動かなくても
一度で動ける幅が等身大の人間とは比較にならないほど大きいのだ。

光線が命中しなくとも目を付けられた時点で詰んだようなものであり
いずれは追いつかれてしまったはずだ。

常人を遥かに超越した身体能力のしのぶであれば、
巻けた可能性も皆無とは言わないがそんな考察などもう意味はない。

公害怪獣ヘドラの素敵な汚食事になるまであと数秒なのだから。

(に、逃げないと…こんなところで散るわけには…)

背中の肉は高温の光線で骨もろともえぐれ焦げ、意識も朦朧として霧散する寸前。
それでも残された力を絞り尽くし、這ってでも生き延びようとする。
私の命は鬼を葬り、人を守るために、
そして最愛の姉を帰らぬ人とした上弦の弍に報いを与えるためにある。
浮遊する島という意味のわからない場所で息絶えるわけにはいかない。

(い…嫌だ…。)

呼吸も絶えかけ、酸素を肺に送ることすらも難しくなっていく。
両手に力が抜けていき、這い回ることももうできない。
吸い込めるのは空気ではなくヘドラから醸し出される
汚染された空気と嘔吐を誘う悪臭だけだった。

この状況では吐き気を抑えることもできず
胃袋にたまった胃液が一滴も残らず逆流し、周囲が吐瀉物で汚染される。
下に触れた胃液の酸味がじわりとして気持ちが悪い。

(そうだ、支給品を…)

バックの中へ手を伸ばし支給された道具に縋ろうとするも美味で壮大な食事が幕を開けてしまった。

しのぶの全身をヘドラの巨体が覆い尽くす。
まるでヘドロの津波に呑まれたようであっという間に取り込まれた。

「ぎゃああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ!!!?!!?!!!!」

これが死にかけた何もできなくなった人間の声か、これが。

今まで体に刻まれた痛みなど遥かに超えた苦痛がしのぶを蝕み、
苦悶の咆哮を否応なしに巻き起こす。

ヘドラの肉体は汚染されたあらゆる化学物質で構成されている。
人間の肉体が接触すれば瞬く間に肉も骨も融解させていく。
しのぶが身につけている隊服は鬼の暴力や鬼血術に耐えられるように
特殊な繊維を使用されて練られている。

しかしヘドラの前にはそんな隊服の効力など無意味だった。
金属すらも高温に曝された氷のように溶けていき、
しのぶの体表にあっという間に侵食。
なまじ優れた生命力を有するばかりに更なる地獄を招いた。
胡蝶しのぶは小柄な身体からは想像もつかないほど粘り強く、
肺を切られ。肋骨を切断されても立ち上がり殺意をたぎらせる意志を持つ。

けれども今回はその粘り強さが仇となってた。

即死はできず長く苦しみ、
ヘドラを構成する腐乱のヘドラが顔や身体中の穴という穴から
土足で入り込んでくる。
怪獣を除いた脆く軟弱な生き物ではまず堪えられない
地獄から溢れたような激臭がしのぶという女の全てに襲いかかる。

耳の穴も鼻の空洞も口内も、あらゆる穴の中がヘドロで埋もれていく。
口内に侵入したヘドロは体内にも忍び込み
内側から肉体を苦痛をもって融解させていく。
この世で最も忌み嫌われる悪臭の液がしのぶを蹂躙する。

(かああ"あ``あああああ!?あああ``あ!!!)

誰かに助けを乞うともできず、
ヘドロの濁流には当然の如く太刀打ちはできない。
誰かが救いが訪れることもなくひたすら
公害怪獣ヘドラの前にしのぶただ侵され新しい養分と成り果てていく。

体を覆う皮はまず焼け野原のように荒れ果て、
内の赤黒い肉が露わとなっていく。臓器も骨も肉も
すぐさまヘドロに屈し、ぐちゃぐちゃに、
断末魔を思わせる慟哭のような泡を起こしながら溶けていく。

体を構成する原子がすべて融解してしまいもうしのぶには何もわからなかった。

何も成せない絶望と悪鬼に報いを与えられず死ぬ屈辱。
公害怪獣がもたらす苦痛が胡蝶しのぶの全てだった。



【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃 死亡】


今まで味わったことのない藤の花の毒は美味だった。
工場の煙突が振る舞ってくれた猛毒の煙すらもしのぐほど
ほっぺがどろどろ落ちるような魅惑のお味。

昭和の高度経済成長期に自然環境を省みず。

我欲の赴くままに発展を求めた人間が生み出した
底なしの業が形となった怪獣。

公害怪獣ヘドラを進化させたのは直接的にも間接的にも人間が原因だった。

殺し合いに誘われたヘドラは食欲に身を任せて汚染物質を探し続ける。
金や物をほしがる人間と変わらずヘドラも求める物の為なら
犠牲など厭わず、そもそも人と同じく蹂躙している自覚があるのかも疑わしい。

しかし一部の人間は深刻な汚染を薄々察したのにも関わらず
発展や便利な物を生み出すために環境を踏みにじった。

犠牲となった存在とその現状を認識したというのに汚染を繰り返してしまったのだ。

犠牲に気付きながらもやり続けた人々と
これからも犠牲には無頓着で意識するのかも怪しいヘドラ。
そもそも怪獣にとって人間とは地を這う蟻に等しい。

人間も歩き回る中で足下で潰された虫を意識したりすることはほぼないだろう。

そしてヘドラの存在が命ある者にとっては
まさしく解決が困難を極める公害だという点は疑う余地もなかった。

【ヘドラ@ゴジラ対ヘドラ】
[状態]:健康、藤の花の毒を摂取
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:汚染物や化学物質を摂取
1:汚染物や化学物質を探して食べる

※首輪以外なにも支給されていません。
最終更新:2026年02月25日 19:15