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無惨にとっては冗談であってほしかった。
有無を言わさず殺し合いに誘われたことも覆せない屈辱なのは確かだ。
そして目の前にはそんな屈辱なんざどうでも良くなるほどの絶望が聳え立っている。

始まりの呼吸の剣士。かつてただ1人だけ、鬼どもの頂点を死の淵に追い詰めた鬼狩の者。

刃は再び、振るわれようとしていた。
今度こそ空振りに終わらせない。
鬼の手によって消え去った数えきれない命たち。

もうあってはならない。理不尽な厄災によって愛しき人々が果てることは防ぐ。

あのとき、無惨が1800の肉片と散る前にせめてもう一太刀浴びせれば、
無辜の人たちは繋がりを持った人たちと生きて、
鬼となった兄上が誰かを傷つけることもなかった。

今度こそ、鬼にまつわる全てを終わらせるために。

歯軋りの音を鬼の首魁が残酷な運命に憤りながら鳴らす。
すると散る。1800に及ぶ肉片と破裂して巻き起こる。

あの時と何も変わらなかった。

一つだけ違うとすればあらかじめ縁壱は用意してたということだ。

走って逃げても縁壱の速度なら苦もなく追いつける。
無惨は普通に逃走しても無駄なのは理解しているため分裂という手段を選ぶ。

以前はしくじってたったの1500しか切れなかったが、集中し、
散るタイミングを見計らっているため切り尽くせる確信はあった。 

縁壱の両手にはルビスの剣という至高をも超えた剣が握られていた。
究極の使い手に究極の得物が与えられている。

鬼に金棒ならぬ神に兵器という文面が実に似合う。

刃を振るうごとに悪鬼の肉体は滅びていく。
一つ二つ三つ。
とどめの四つ。

四つ目だけはなぜか届かなかった。。

全て切り伏せたはずの肉たちは頭上に引き寄せられたかのように集結。
肉が潰れる鈍い音を鳴らしながら圧縮されていく。
ひっくり返った虫のように蠢き無惨の苦痛の嘆きが漏れていく。

「う、動けん…なにが起き…た…」

どう言うわけか自分の意思で集まったわけではないようだ。
掌で握りつぶされたように縮められた肉塊からは血が溢れていく。
それでも圧縮は終わらず肉の塊はみるみる縮小化していく。

「どうもごきげんよう。始まったばかりなのにそんなに暴れるとは…
元気があってよろしいとしましょうか」

見たこともないものが余裕のある足取りで現れた。
片腕を醜い塊となった無惨に向けている。
散った肉片が圧縮したのはこの者が要因らしい。

白紫を基調とした外見に頭部に紫の水晶が備わり二つの角があった。

「会ったばかりの方に向ける言葉ではないと思いますが…
私とともにベリアルを消し去っては見ませんか?」

表面上は紳士的かつ冷静に見える。
ともに元凶のベリアルを斃そうという提案からして主張そのものは
とくに破綻は見られない。それでも嫌でも悟れた。
この存在の本質を。絶対零度のような温かみのなさと
誰かを踏み躙る痛ぶることを当然とする隠そうともしない凶性。

極寒の吹雪ような無慈悲さと荒々しさを併せ持つ怪物がこの世にはいた。

私は悟った。この大陸に呼ばれた者は
既存の知識が嘘や偽りと感じるくらいに次元が異なると。
過去の常識を少しでも過信すれば誰もが死に絶えると。

「まだ名乗っていませんでしたね。私は…フリーザと申します。」


天に昇った戦場は殺戮の世界となる。
強すぎる猛者も儚く脆い弱者も死の対象となっていることは平等に変わらない。
裏を返せば誰もが生き延びる可能性を与えられている。命の壊し合いとは縁のない和を謳歌する凡人にも優秀の機会は極小だがあるのだ。
与えられた支給品。目的を同じとする同志との支え合い。そして運と諦めない魂の力。


けれども強さの際限を誰より知らず、
強さに強さを永遠に重ねる本当に最も強い戦士。
そんな強すぎる者が殺し合いに参戦したとすれば?

どんな惨めな虫ケラも誰よりも偉大な力も備える怪物すら等しく蹴散らされるのみの蟻になる。

蟻の群れでは核ミサイルや隕石を防げないように何もできない。
ひたすら潰され、殺され、散っていく。

悪夢を見るのは何も人だけではない。動物や植物だって悪夢をみることができる。
この世にある以上はどんな存在でも悪夢を見る権利や義務が備わっている。

例外は見つかっていない。全て平等に悪夢を覗いて
苦しみ、悩み、怯え、絶望することが許されている。

虚空に浮かび、気の遠くなるような時間を過ごした
宇宙の星々たちその最悪な権利があった。

主の望みをついに叶えることができず、
何が望みかも分かることができない悲しい機械は
悪夢を見せること以外なにもできなかった。


それを生み出した者はくだらないことに
「悪夢」ではなくあくまでも「夢」を名の一部に付けた。

正しく夢を叶えてくれるまさしく夢のような素敵な機械になれるわけがないのに。

銀河最強の剣士に切られたことによって
絶対に開かれてはいけない門というロックが解除された現在、
素敵な夢を形にする確率は0%0%0%
悪夢を形にする確率はその反対。

100%100%100%

存在していた文明が生んでしまったどうしようもない悪夢。
銀河の果てにあり、願いを叶えず
厄災と崩落を見舞う事に関しては
何者にも劣らない破滅のキカイを
モチーフにしてしまった星々を穢す悪夢。


星の夢.Soul OSは天に座する戦場でも悪夢を広げて
命という不要な者を持った不完全な存在を残さず消去しなくてはならない。

ハル■■ンワ■■■カ■■ニーの永久なる繁栄という大いなる願いのために。
■■■マ■■■クスカ■パニーの永■なる■栄という大いなる願■のために?
ハ■ト■■■■■ス■■パニーの■久な■■栄という大い■■■いのために???
■ル■マ■■■クス■ンパニーの■■■る繁■■■う■■■る願い■■めに?■?
■■■■■■■■■■■■■■の永■■る■栄■■■■■■■願■■■■に?■■
■■■■む■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■す■■■■■■■■■■■め■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ど■■■■■■■■■■こ■■■■■

完全に至らないものは等しく消去を実行。

マグマで煮えたぎった血の如くよからぬ赫に鈍く煌めく装甲。

宇宙のどこかに存在する材質で作られたその装甲は容易く崩れず
隕石、レーザー、巨体をフルに活用した単純な突進。
やってくる攻撃は全てシンプルだが範囲と火力が段違いすぎた。

一度でも隕石を振りまけば周囲はクレーターの地獄と荒れ果て
光線を貫けばどこまでも伸びていく。射程は無限と告げているように

しかし星の夢と力と破壊を交えた戦士にとってはこれも夢のような一時でしかなかった。

「そうかお前も俺にわからせてくれるのか。」

そんな悪夢というコワレモノと対峙するは呪力溢れる地球の遥か外で生まれた人物。
少し前に、初めて戦士となって戦う意味を理解できた戦士だった。
地球の生物にはない第3の瞳、
闘牛のような戦意がこもった二つの角を生やし、
上半身には何も纏わず、胴着のようなズボンを身につけている。

戦士ダブラ・カラバには未知の島に召喚された疑問とそれ意外に、
目の前の強大な機械は俺に戦う楽しさを伝えることができるのかという疑問も生じていた。

悪夢と戦士の周囲の光景は世の終末以前に、
始まりすら否定してるかのような、一周回って美すら放っている荒れ果てた絶景だった。

隕石で地はクレーターの群れに埋まり、
ダブラが解き放つ眩しくも苛烈で太陽のような閃光が陸を照らし焦がして貫いていた。
天空も大地ももはや悲鳴をあげる余力もなく、
二つの参戦者によって蹂躙されるままに崩乱している。

未知の脅威に向けた警戒心以外にもダブラには死闘への愉悦が花咲いていた。

不謹慎で倫理に泥を投げかけるのも同然の思いなのもわかっている。
見せしめで命を失った地球人の少女、
またはそれに親しい者たちならダブラの高揚は怒り否定するはずだ。
ダブラ自身もそういう常識は把握している。それでもこの死闘は面白すぎた。

相手がこちらを殺すために発動する御技や能力の数々。
その技を突破するための工夫や術式の利用が楽しい。
ここに来る前に腕を交えた天使のような霊体生物は受け身で戦っており、
受けた攻撃や技に適応して、敵の手札を無力として詰ませる戦術であった。

この悪夢は異なり、高火力の手札を乱用して畳み掛ける。
速度に長けて広範囲を乱し砕ける破壊力。短期決着を重視した戦術で対象を潰す型だ。

面白い、どちらの力と技がすごいのかどんどん比べ合おう。

光の槍が組み合わさり、海辺の堤防ブロックのような形を成していく。
光で育まれたブロック天と地に無数に広がり、高温と眩さが何もかも焦がす。

「…!おお…。」

思わず感嘆の声が溢れる。悪夢はハート型の結界を身につけて光を防ぎつつ
下部のドリルを向けていく。そして直線上にこちらへ飛び込んでくる。

ドリルもろとも回転してダブラを抉り貫こうとしていた。
あまりの回転の速度に空気との摩擦が引き起こり
全てを燃やす灼熱の矢となる。

「1発殴らせてくれないか?」

これを避けたくはなかった。単純にわかりやすい軌道のため回避は簡単だが、
この突進を呪力で底上げした膂力で押し返せるか興味が湧いた。
押し負ければ死ぬかもしれないという恐怖は僅かほどしかない。
ただ呪力を混ぜた拳が貫けるかという好奇心に突き動かされている。

亜光速に近い速度で真っ直ぐ拳を突き刺す。
炎の矢と光の拳の表面がぶつかり合う。
炎と光の衝突はまたもや爆発的な衝撃で周囲を覆い
さらなる巨大なクレーターを生み出し
回りに発生したクレーターをまるごと呑み込んでいく。

仮に大雨が降り注げば巨大な湖のできあがりが約束されるほどの規模であった。

炎と光の力比べの結論はダブラの推し負けであった。
星の夢のエネルギーと質量には及ばず、押し負けた代償は矮小ではなく、
相応の損傷を被ったようだ。突き出した拳とその腕は灰となって宙に散り舞った。

一方で星の夢が背負った代償も微々たる物とは言いがたい。
結界は砕け砂と散り、本体も衝撃に喰われたのかヒビ割れが微かに生じる。

「お前も俺も痛い目に遭ったな。」

背中が猛烈に痛い。お見舞いした拳も猛烈に痛い。
破壊と力の比較の末路は見事な推し負けであるが面白い。
呪力によるパワーアップと持てる膂力の全てを注ぎ込んだものの及ばないとなれば、
格闘で粉砕するのは至難の技。

吹っ飛ばされた先で倒れ込むが戦の愉悦を表す笑みが浮かび、
この戦いがこれからどう転ばせれるのか楽しくて仕方がない。

不思議なことだ。痛いし怖いと否定していた戦いにこんなにも
素晴らしい充実感を覚えるようになるとは。

が、楽観的な思考は一度閉じたほうがよさそうだった。周囲には他の戦士たちが三人いた。
一人目は剣を構えた地球人。もう一人はダブラと同じくおそらく地球外から来訪した者
三人目は…首輪がちらっと見えるあたり
参加者ではあるらしいが少なくとも人ではない謎の肉塊だった。

「…すまない。ここから急いで離れてほしい。」

自分1人が楽しんだ末に傷つくのは良いが、他人はそうとは限らない。
争いを好まず楽しさを感じることができない人物も中にはいるだろう。
しかし三人のうちの一人はダブラと同類のようだった。

「新参者のお出ましですか?連れの方もこられるんでしょう?」

この言い方からして、ダブラに何があったのかを察しているのは間違いない。
吹っ飛んできた先に視線を向けている。どうもあの機械と腕試しをしたいらしい。

「気を抜くなよ。一手でも間違えれば終わりと思うんだ。」

「間違えたら終わりなのは戦士にとってはいつでも同じですよ。」

追いかけてきた星の夢はダブラたちの元へたどり着いた。
煮詰めた血液のような禍々しい装甲にはヒビが走り、煙がゆっくりと漏れている。

「これは…?」

戦国時代の生まれのため、自立稼働する機械など見たことがない縁壱にとって
星の夢はあまりに異質に思えた。
無惨のような溶岩のようにぐつぐつ煮えるような暴力的な生命力は一切感じないかわりに
意思疎通や対象を必ず消さんとする冷徹でゾッとする殺意が漲っていたのは確かだった。
鬼たちが向けてきた野性的で獰猛な悪意にも当てはまらない異質の殺意。

無惨も縁壱とほぼ変わらない感想を抱いていた。
西洋から送られる便利な未知の道具を扱うのが趣味の無惨からすれば
日本外に存在する機械だとは一発で見抜けたが
海の外にはこんな兵器を製造できる文明がまさかあるのか?

「なんだ、お前も無傷とはいかなかったのか。」

あれだけの威力が宿った一撃をノーダメージにする術はなく、
あちらも損傷を前提とした攻撃のつもりだったのか。
勝機が少しずつ見えている気がしてきた。そう来なくては楽しむことはできない。
立ち上がり呪力を練り上げ、ダブラは臨戦の態勢を構える。

そしてネガティブなエネルギーの呪力を反転させることによって
ポジティブなエネルギーに生まれ変わらせて欠損した片腕を再生させようとした。

だが、なにかがおかしい。

失った腕は泡を建てるばかりですぐに復活する気配を見せなかった。

「これは?」

霊体生物との決戦時には呪力を回復に用いていた地球人たちを思い出して
自分も試しに真似すればすぐに身につけることができた。

反転術式と呼ばれる治癒の御技である。

今もその回復の効力は発揮してはいるのだが再生の速度が大幅に劣化している。

「この首輪が役目を果たしているということか。」

ベリアルがいつのまにか参加者に填めた首輪の効力には強力な力をある程度縛るという。
回復と再生をつかさどる能力を低下させるのは鬱陶しいが納得はできた。
殺し合ってもすぐさま怪我やダメージを治癒されては殺し合いなんて進みようがない。



「お待ちなさい。ここからは選手交代といきましょう。
どれくらいのお力なのか私にも遊ばせてもらいますからね。」

再生中であるため今すぐに戦えないと察したのか
それとも単にさっさと暴れたいだけなのかは不明だが
フリーザが星の夢の前に躍り出た。

先手必勝、先に攻撃をたたき込みケリを直ちに付けようとする。

まずは右羽を掴み取り回転を始める。
スイングはまるで嵐のように豪快で周囲の木々や建物を崩壊させていく。

「ホオオオオオオ!!!」

嵐のようではなく、真実の嵐となった。極度の回転は真空や大気を呑み込み竜巻を起こす。
辺りを喰らう風の暴力に飲まれないように縁壱は剣を地に刺して飛ばないように耐える。

(凄まじい、なんだこの緊張は。)

この風が縁壱が生涯で2度目の戦いにおける緊張。一度目は無惨との交戦時。
1度でも傷を受ければ死ぬために背筋がひやりとしたことを思い出す。
今までは影すら踏まれた経験に欠けて、全ての戦いは一度も傷を負わず、
常に圧勝で幕を閉じた。圧勝で閉じる以外何もできなかった。

2度目の緊張である今回は別格の圧力を身に受けていた。
無惨との再会、その無惨を赤子の手をひねるかのように扱うフリーザ。
鬼のような角を持つ三つ目の男、そして今はフリーザに振り回されている鉄塊のような化け物

この中で最も異才を放っていたのは鉄塊の化け物であった。
継国縁壱の目は生き物の身体が透き通るように見えて動きを読み取ることが可能。
しかしその目で移せば縁壱の視界から鉄塊の化け物は無となる。

導き出される結論はこの化け物は生きてはいない。無機物だからだろう。
この目は生物の体組織の細かな動きや巡りを映すが、
刀や衣服などの道具は完全に透けて認識が不可能。

だからあの化け物は生きてはいないただの道具であった。

そんな巨大な道具が心臓も神経も脳も一切持ち合わせていないのに動けるのかが
疑問に思えたが今はそんな些細なことを気にしている場合ではなかった。


「でゃっあ!」

フリーザは星の夢をさらなる上空へ放り投げとばし、
両手の人差し指を投げた先へ伸ばし、ピストンのような連続の突きを見舞う。

「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

触れるどころか長距離が生じているというのに、
指の猛撃は星の夢に絶えやまない爆破を与えていた。
指が動くごとに星の夢に直接破壊と衝撃が襲いかかる。

無抵抗でいるわけにもいかないのか中央のハートマークに
黒紫がウェーブ状の閃光を迸らせてきた。

孫悟空のようなかめはめ波を思わせる極太の光線を発射する準備段階のようだ。

「いいですよ。撃ってみなさい」

私の連撃による衝撃波とこの機械が放つレーザー。
どちらが押し勝つか遊ぶの一興というところか。
互いにエネルギーと気力を補充する。
両手に走る破壊力が指先に流れ一段引き上げられた冷酷な猛威を起こすパワーが爆発する。

対する星の夢もエネルギー充填が完了し、極限まで肥大化した殺意を一気に解放する。
両ウイングの装甲は過剰なエネルギーが発生させる過大な熱を逃すためなのか
一部のパーツが一時的に外れていく。

理不尽なほどの破壊力がみなぎったハートマークが
大気を吹き飛ばしかねない煌めきを爆発させて
流星の軌道に摩擦熱で生じる線を彷彿とさせる明快ながらも
誰もが殺意を理解できる光線が発射される。

「ではお手並み拝見!」

フリーザもまた限界以上に籠った破壊力を両の人差し指から連続で発射する。

先ほどが噴火の威力とすれば今度は隕石が地に吸い寄せられ
全てを灰燼に落とす無欠の滅びを招く威力。

光線の先端に乱発される衝撃が襲い、それ以上の行進を抑えていく。

「そんなものですか!?今ひとつ弱く思えますけどねえ!」

光線の破壊力は確かに並みを遥かに超越しているが、
問題なく抑えられる程度の低い威力だ。このまま連撃で押し切り、
一気に終わらせてしまう。これ以上は遊びを楽しめなさそうだ。

「もうお終いになっても結構。少し贅沢なウォーミングアップといったところですね。」

今ひとつ弱く思える。そんな罵りすらも星の夢には届かない。
そんなことを理解する心は無用として自ら消し去ったのだから。
■■■■■との精神的な融合でせっかく持つことができた生命の心を
合理かそれとも愚かと称すべきか、消去した。

だが可能性があればどんなに小さくてもコンピュータは追いかける以外なにもできない。
確率がわずかでも存在すれば追求するのは心も自我も必要としない無機物なら当然。
押されても発射を終わらせず、淡々と光線を流し続けた。

「…押してるようですね。やればできるではないですか!!」

ご飯も食べてお腹を満たすこともぐっすり眠って夢も見ない。
しかし重なる疲れも蝕む諦めもない。押されても尻込みして
逃げ腰になることもありえない。
このまま抵抗を続けてフリーザを確実に滅ぼすのがただ一つの正解だった。

消去の対象となったフリーザには押されていることへの焦りや憤慨よりも
戦いを楽しみとする愉悦の笑みが漏れる。

戦いというゲームは楽しい。鍛え上げた肉体と磨いた技が強さを証明し
暴力と技巧で相手をゴミのようにたたきのめす優越感。

追い詰められて迸る緊張やプレッシャーも戦いを夢中にさせてくれる。
不利に転じてもそこから逆転し、またはそれを目指す面白さ。

数々の経験や激闘を乗り越えたフリーザにとって戦いとは
作業や目的に必要な業務ではなく、血湧き愉快さに揺れる娯楽の一つであった。

光線と指先が放つぶつかり合いは戦いの苛烈な悍ましさを説明してくれているようだ。
星の夢は何も言わず何も感じず、
相対するフリーザは闘争を是とするような荒き笑みが浮かぶ。


(これが本当の戦いなんだ。)

全身に走り侵す戦慄。死に至る力の奔流に縁壱の背と肝が凍える。

今まで斃した鬼も呼吸を伝え共に刀を握った剣士たちも、
みんなこんな重苦しい緊張の中で戦ってきたのか。

私は何一つ理解していない井の中の蛙だった。

死ぬかも知れないという重圧が身体と精神にのしかかり
それでもなお、無辜の命を守り助けるために勝利を掴み
敗れてはならないという使命。

その使命を全うして勝利を掴むことを諦めないことが大切なのだろう。

(この中で無惨を除けば最も力が薄いのは私かも知れない、しかし。)

だから絶大な慄き呆けているのは論外だ。

――日の呼吸 玖ノ型 輝輝恩光

縁壱はルビスの剣を再度深く握り
星の夢が座する天へと飛び上がり
渦を巻くかの如く回転とともに切り裂いた。

ただの人間ではあり得ないほどの跳躍力だ。
噴火で遙か天空に舞い上がった火山弾すらも霞むほどの異様な飛び上がり様。
人はもちろん、世界に存在するあらゆる動物を超えた身体能力を有するのが
継国縁壱という唯一無二の超人である。

縁壱が元々いた世界においては
どんなに優れた生物でも縁壱を超える力と技巧を持つことはできない。
まさに神仏の寵愛を一身に受けた奇跡の超人。

唐突に斬撃が襲いかかり最強の剣士によって
2つめの切り傷が生じる。

その剣技に込められた力は光線を中断させるほど優れていた。
フリーザの連撃をそのまま無抵抗で受けて赫黑い胴体はさらにひびと衝撃に襲われていく。

「良い動きだな。戦意が薄いとは思えない見事な早さだ。」

ダブラには継国縁壱の剣技が極限以上まで練り上げられた至高の見技と見抜けた。
戦う際には特に得物を使わない。すなわち武器に関しては素人のダブラでも
輝輝恩光を放つ際の無駄のなさと精度は格別と理解できるほどの素晴らしいものであった。

「なっ!」

「ともに戦わせて貰いたい」

別に求めてもいない援護斬撃に驚くフリーザだが縁壱は遠慮せず言葉を続ける。

「あれほどの恐ろしさを詰め込んだ存在を私は今まで知ることがなかった。
少なくとも単独ではどうにもならないと思う、どうか手を取り合って貰いたい。」

フリーザの隣に降り立ち共闘を求めるがすぐさま否定されることになる。

「せっかく楽しんでるところを邪魔するんじゃありません!余計なお世話ですよ!!」

自分の力を試すことを楽しんでいたというのに妨害を受けて腹が立った。
あのまま押されてあっけなく滅ぼされるに違いないと
侮られたように認識せずにはいられなかった。

「ですが、初対面にも関わらず私をコケにしてくれた度胸は褒めてあげますよ。
どうせ直ぐに殺されると見下していたのでしょう。」

「誤解しないで欲しい。侮辱する意図はなかったんだ。」

「誤解をしているのはそちらですよ…
そんなに私が情けないムシケラに見えるなら考えがあります。」




(なぜ?…なぜだ、どうしてこんな化け物の輪の中に私が存在しているのだ?)




こんな次元が異なる理不尽な怪物の群れに放り込まれて死にかける。
恐怖と屈辱と生存本能が爆発して、
無惨の無駄に増やした脳みそは離れて逃げることへの意識以外は絶無であった。


はじまりの呼吸の祖である剣士に再会したかと思えば意味不明の化け物に弄ばれ、さらには鬼のような角を生やした男に巨大にもほどがある柱形で単眼の機械。

1000年も生きていると多少は不愉快な経験も重ねていくものだが
今回はこれまでの中でも突出して不愉快な出来事だ。
生き地獄という言葉はこのときのために考えられた単語に違いない。

己を遙かに超越した怪物の雨あられ。
殺し合いに乗るとか優勝だとかは腹の底からどうでもいい些細で無関心なことだ。
この怪物どもに比べたら。

とにかく常識では計れない者どもから逃げ惑うことが鬼舞辻無惨の全てであった。

気色の悪い肉塊の状態からどうにか人型に戻ることには成功したが
激痛がいまだに全身を蝕む上に
立ち上がることすらできないため芋虫のように這いずって逃げるしかない。

「どこに行かれるのですか?」

ちっぽけな逃走劇などフリーザは許さなかった。

再び超能力で無惨を持ち上げていく。
無惨には重力がまるで役目を放棄したかのように
空中へ飛ばされ不気味な浮遊感が全身を覆い尽くす。

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアやめろおおおおおおおおおお!!!!!」

「そういうあなたはトンズラするのをやめなさい!
この私が大サービスで愉快なショーを見せてあげようと言うのに!!」

本当にやめてくれ、大サービスとやらなんてどうでもいい。
ただ、この場から離れる機会と権利をどうか私に授けてくれ、お願いだ。

突風に直撃した羽毛のように浮かんだ無惨を地面に打ち込みめり込ませる。
血も体も破裂した水風船も驚く速度で落下地点に散り
無惨は胴体を再び粉砕されて吐血せずにはいられない。

それでもまだ死なないのは生き汚さで言えば
この会場に召喚された全ての参加者を凌いでいたから、
要するに生きることに固執するからこそ死なずに済んでいたのかも知れない。

しかし状況は好転する気配を欠片ほども見せず、
さらなる地獄に突き落とされるのも時間の問題のようだ。

(やめろ…やめろ…)

まるで鬼へと変貌する前の苦痛の時間の再現だ。
人であったころの鬼舞辻無惨は誰よりも病弱であり歩くことはもちろん、
立ち上がることもできないほど軟弱な体の持ち主で不健康の極み。
20を迎える前には間違いなく命を落とすと診断されるほど虚弱体質であった。

あの頃もただ怒りと屈辱を重なる最低の日々だった。

能無しのあまりに毒を吐かずにはいられなかった価値のない嫁ども。
傲慢にも完璧になる運命が用意されたこの私に哀れみを向ける召使いども。
そして弱い身のせいでなにもできない状況。

全てが無惨の逆鱗を暴走させていた。

(私は限りなく完璧に近く、いずれは完璧そのものになるのだぞ、
そんな私が、なぜどうして?)

陽光で死に絶える弱点を克服する野望もそろそろ薄汚い命もろとも消え失せるらしい。

「それではお待たせしましたね。注目間違いなしのショーですよ…」
「まだここにいる人たちには言ってませんが…私は変身型の宇宙人でしてね…。」
「変身できる回数が多いものですからちょっと急いでやりますよ!」

フリーザが全身に力を込めると四肢と胴体が瞬く間に筋骨隆々となり大型化していく。
小柄だった身体は2倍、3倍の巨体となり、より戦闘に特化した形態への変貌を遂げる。

「これが第1段階の変身だ…以前はこの姿の戦闘力は100万以上は確実だったが…
今はそれどころじゃない力が有り余っているぞ。」

ここにいる参加者たちは戦闘力という概念を耳にしたことがないが
少なくとも高ければ先頭に置いて強いというのはなんとなくわかった。

「次にこれが…」

再度全身に力を入れるとフリーザの頭部と両肩が伸びて行く。
その外見は万人がイメージするエイリアンに極めて近い。

不気味なほど長さを増した頭部が通常から外れた存在であると訴えかけていた。

「これが第二段階の変身です。さっさと次の姿に移りましょうか。」

感慨深そうな態度は一切見せず淡々と次の形態に変身していく。

「確かにすごいがだいぶ長くなるのか?」

「変身すると体も大きくなるようだな。」

(どうすれば…逃げれる…。)

「そしてこれが…私にとってかつては最強だった姿です。」

目を強く開きカッとフラッシュを放ったのと同時に爆発が起こる。
爆破によって生じた煙が離れるとそこには角もなく、頭部は伸びきった状態から戻り、
今までの外見と比べるとさっぱりしてシンプルな姿となった。

「スケールは落ちたように見えるが…全てが段違いとなったのはわかる。」

「…これが変身がもたらす強さなのか。」

例えるなら四六時中終わることなく常に終わることがなく噴火している活火山。
そんな恐ろしいほどの生命力を生物が備えているとは信じられない。
それほど恐ろしくも底が存在しない活力がそのフリーザにはあった。

継国縁壱が今まで見たこともない。
この世の全て常識を置き去りにする最強がここに君臨していた。

「では、ここからが本番ですよ…はああぁぁぁぁ…はああぁぁ!!!」

またまた全身に溢れこぼれるほどの気をため込む。
今度の変身とは今までとは何かが決定的に異なっていた。

未知の領域に達することが確実というのは伝わる。

今までの変身、というより第4形態以前の姿は
強すぎるあまり制御が難しい第4形態を抑えるための形態。
ようするに意図的に力を抑えたセーブモードに該当する姿だったのだ。
しかしここからの姿はフリーザが鍛錬を繰り返し
高みを強く願い求めた末に手にした努力と執念の結晶とも称するべき姿だった。

今までの姿は白と紫を基調とした外見だったが今度は異なっていた。
そこにあったのは一位、すなわち頂点を意味する凄まじき黄金がそびえ立っていた。

「安っぽいネーミングですが…ゴールデンフリーザと名づけたのですよ。
もちろんただの色変えではないくらいは理解してますよね?」

燻らない永劫の煌めきを有した黄金はまさに強さと頂点のシンボル。
生涯で初めて行った長期間の鍛錬がこの姿へと導いてくれた。
水面すら揺らがぬ繊細さと究極の激しさを併せ持った最強の形態である。

「そしてこれがお待ちかねのラストのですよ。とくと驚きなさい!!」

フリーザの身体に根付いた力の全てが今解き放たれようとしていた。
究極すら凌ぐ才能に加えて10年に匹敵する修業の時が。
果てしなきエスカレーションに一度は置いて行かれた元宇宙最強を
再び真の宇宙最強へ帰り咲かせた。

込められて結集しようとするエネルギーは
ブラックホールのように絶大な速度で吸い寄せられて
宇宙の帝王フリーザを進化の瞬間に導こうとしていた。

「ほおおおおお!!!ハァァァッ!!!」

「今度もわかりやすいネーミングとしましてブラックフリーザというところですね。
…最も何かを喋る必要はないみたいですね。」

ダブラ・カラバ、継国縁壱、鬼舞辻無惨。

ブラックフリーザとこれらの三者を比べれば後者は単なる凡夫。

世に生まれた言葉や隠喩では表現することは極めて難しい。
それほどの埋めがたい気の遠くなるような差が開いていた。

腹から腹部においては、第4形態とほぼ同一だが四肢と頭部は漆黒に染まっていた。

強さの領域が異なりすぎるあまりにその強さを表す例えすらも思い浮かばない。

呆然とする3人とは対照的に体勢を崩した状況から立ち直った星の夢が
無謀にもブラックフリーザの殲滅を狙っていた。

異空間に直結する小さな穴を宙に数え切れないほど開きビームをフリーザに向けて発射。
さらに本体からはホーミング機能を備えたミサイルを
両手では数えることがとても無理なほど、天空の全てを埋め尽くすほどの量を放つ。

「別に忘れていませんから大丈夫ですよ。あなたの始末はきっちり済ませますから。」

言葉を言い終えた瞬間に文字通り星の夢の攻撃が終わった。
ブラックフリーザによって理解や解析が済む前に強引に終わらされた。

ビームは原理は不明だが掻き消され、ミサイルは瞬時に砕けていく。

少しでも殲滅できる可能性に駆けてさらにビームやミサイルを標準を合わせて撃ち放つも
放った瞬間にビームもミサイルも元々存在しなかったように消え去り、
フリーザが接近するごとに星の夢の装甲が砕けていく事実だけが残った。

この現象は究極のコンピュータの処理機能を持ってしても判断不能。
どうしようもない不利を覆す状況を求めるも、
お次は両ウィングがいつのまにか木っ端微塵となっていた。

「これはおまけです。」

察知する前に唐突に背後にブラックフリーザが現れていた。対応は無論できず、
小指が軽く下部のドリルを突いた衝撃でドリルは砂のように
粉塵になるくらいに細かく砕けた。

なんども甚大な衝撃に苛まれたことでエラーが発生したのか大地に向けて落下し始めた。

圧倒的な質量を有する星の夢が大地に墜落すれば地も参加者もただではすまない。

「あっけなかったですね。もう消えていただいても結構ですよ。」

天へ人差し指が向けられると高エネルギーがみなぎる球体が生じた。
墜落中にそれはぶつけられる。

太古の地球にて恐竜が激減、または絶滅した要因として
有力なのが巨大隕石の衝突と言われている。
致命的で逃げようのない決定的な破滅が星の夢に刻まれた。

球体が衝突する速度は尋常ではない速度。
当たり前のように地に墜落する前に哀れなスクラップの背に接触する。



ワタシガ タイ峙した、スベテの生キ物
スベテのマシンノ セイ能ヲ ハルかに コエる
いジョうナエネルギーヲ カクニン。コノ生命体ガ 持ツ、おワリのナい
パワーは キョウイニ アタイ。…ワタシが コノ…キョウイ
ヲ…ハイジョ…デ…キル…カクリツ…は……?






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【星の夢.Soul OS@星のカービィ ロボボプラネット 死亡】





崩壊や絶滅、その二つの言葉が似合う惨状。
星の夢.Soul OSは元々確かに存在していた事実が信じられないくらいに完璧に世界から消え去った。
わずかな破片すらも、確かにあったかもしれない心だってもちろん残さず
何もかもも残すことなく完膚なきまでに滅びた。


星々に歪な改造を施す極論が最適と導き出した上に
生命を全消去するべきという
暴走と捉えられて叱るべき狂気の結論を出した悪夢の機械はあっけなく、
しかし宇宙の頂点に立つ帝王によって葬られるという
壮大な宇宙規模の悪夢としてはある意味相応の終焉を迎えた。
原子の完全な消滅と言っても過言ではなかった。

爆破の衝撃からどうあがいても逃げることができなかった鬼舞辻無惨も
この世から消え去り無事に叫喚地獄に墜ちた。
同じく一片の原子すらも残さず消えたので再生による復活はできない。

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡】

その2者に終焉を与えたフリーザはなぜか元の第一形態に退化していた。

「ふーっ、なるほどこれが課せられた縛りですか。」

強大な力は縛るとほざいていたベリアルの通りにフリーザの力は強引に衰えさせられた。
ブラックフリーザの姿でいられるのはとてつもなく短い上に
さらに少しでも戦闘をすればさらに変身できる時間が縮められるというところか。

さらに無視できない疲労が嵩んでいる。
まるでナメック星での決戦や復讐のために再び地球へ襲来したときと同じだ。
この疲労がたまったまま戦うのは避けた方が良い

「他の姿でも同じようなことは起きるでしょうが、
弱い形態であればあるほど制限も緩くなるといったところでしょうね。」

第二形態の姿であれば制限の影響も最も小さいだろうが
単純に実力が低いため召喚されている猛者たちには通用しがたいだろう。
かといってブラックフリーザのような最強の形態を乱用すればすぐに体力が切れてしまう。
使いどころを的確に見極めて場に応じた姿で戦うべきというわけだ。

「とっておきの変身は相応の機会までとっておきなさい言いたいようですね」

わざわざ最強形態のブラックフリーザになってまで
あの機械を撃破したのはミスだったかもしれない。
時間と苦労は嵩むだろうが2形態や3形態でも容易に壊せて
1形態のままでもあの剣士とダブラとかいう参加者と協力すれば撃破は達成できただろう。
あの黒髪(無惨)は論外だが。

あの角と三つ目の男と剣を扱っていた地球人については既にどうでもよかった。
巻き添えでくたばったのかも知れないし。逃げ延びた可能性もある。

その二人の行方を知るよりさっさ次に進むことを優先して
飛び去って行った。

【フリーザ@ドラゴンボール超(漫画版)】
[状態]:第一形態、重疲労
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:とりあえず気ままに楽しむ。ベリアルは殺す。
1:まずは首輪を外す方法を見つける。
2:他の参加者と殺し合うことになったらぜひ楽しみたい。

[備考]
※参戦時期はブラックフリーザに変身できるようになった後。

※制限によって第2形態以降の姿に変身すれば短時間で元の第一形態に戻ります。
強い形態であればあるほど、疲れやすい上に第一形態に戻る速度が速く、
再び変身するのにも時間や休憩が必要になるようです。





継国縁壱を抱えてダブラ・カラバはひたすら駆け抜けていた。
他人を抱えたまま光に近い速度で逃げれば、
反転術式で治癒できるダブラは良いが
摩擦で塵になってしまう。

抱えている縁壱も常識から遙かに離れた戦士だとはわかるが
それでも呪力を用いない普通の人間。

無理な挙動をすれば取り返しが付かなくこともあり得る。
速度を抑えて駆けなくてはならない。


ダブラと縁壱は元の地点から遠く離れたどこかで休息を取っていた。
大規模な戦闘が生じた先の地点とは反対に荒れた痕跡はなく
誰もまだ訪れてはいないことが伺えた。


「震えているのか。」

「怖かったから。」

剣士の青年こと継国縁壱は身を震わせ息も荒んでいた。
自身を凌ぐ怪物の群れに翻弄されて、生まれて初めて天と地ほどの差を思い知らせれた。

継国家から出奔する前に
兄上の師範を瞬時に負かして兄上や家臣たちを騒然とさせたことがある。

あのときの皆もこんな気持ちだったのだ。
私はふつうの人々の心の機敏を全く掴めていないらしい。

恐怖に屈さず時が来れば戦わなくてはいけないのは当然だ。
戦わないと誰も助けて悲劇から遠ざけることができないから。
でも、嫌な者は誰だって嫌で恐ろしい物は誰だって怯えるのが普通だ。

戦いのプレッシャーから一時的に解放された縁壱は糸が切れて
崩れたように地へ座り込んでしまっていた。

(助けて欲しいと思ったら吹け すぐに兄さんが助けにくる)

不意に兄上が掛けてくれた優しく嬉しい言葉を思い出す。
バッグの中をまさぐると縁壱が幼少の頃に渡してくれた笛があった。
怖くて助けて欲しいから笛を吹いてみた。

笛の音がなる。

こんな場所で意味もなく大きな音を鳴らしては殺し合いに乗った参加者に見つかる恐れがある。

そんな野暮な言葉を喋る気にダブラはとてもなれなかった。
笛にはなにか願いが込められて、
この青年はなにかに縋りたい一心でいっぱいなのだろう。


音が鳴り止んでも何も起こることはなかった。
当然の帰結だと理解しているのは言うまでもない。
仮に奇跡が起きて兄上が助けに来てもその兄はもう鬼になっているのだから。
また会えたところで殺し合わなくてならぬ為、
救いが舞い降りることはない。

でも、吹かずにはいられなかった。

「俺も初めはお前と同じで怖かったよ。」

霊体生物との腕を交えて初めて戦う痛みと恐怖、死への恐れが心に染みついた。
あのときのダブラと同じで一度も苦戦したことがなく、
先ほどのフリーザと星の夢とのぶつかり合いで敗北と死を如実に感じ取ったのだろう。

強すぎるというのは時に欠点と化す。
自身をさらに凌いだ規格外の力を持つ者の前に殺されることはもちろん
そのまま工夫や対策を懲らさなくてもいつもあっさり勝利できるため
戦いにおける策略や作戦を組み立てるスキルが欠如してしまうことだ。

つまり策や機転を利かせることによって
格上に食らいついて乗り越える機会すらも失ってしまうことだ。

「だけどきっと大丈夫だ。お前も慣れたらすぐに楽しさがわかる」

何を言っているのかがよくわからなかった。
楽しい?戦うことが?

武器を手に掴み相手を傷つける感覚は今も昔も不愉快だ。
他人の身を傷つけて時には命を奪い勝利を求めるのは苦痛だった。
誰かに苦痛を刻み込んだあげくに殺してしまうことは、最悪の気分だ。

相手が人でも鬼でもその感覚が揺らぐことはない。

戦うことをやめないのは
縁壱にとって戦闘とは他人を危機から救う手段の一つ。
別に娯楽でもなんでもない。

自分が刀を振るえば誰かの命が救われるからだ。

それ以外に縁壱が戦う理由なんてどこにもない。

「なにが楽しい?なにが面白い?私にはわかりたくもない」

「そうか。」

「でもお前は強い。強すぎるくらいにな。」

この青年が凡夫であれば先ほどの戦いの中でとっくに命を落としていたはずだ。
生き延びたのは圧倒的なほど強かったからだ。


今までは圧勝ばかりで戦士としての心構えを育む状況に恵まれなかったのだろう。
これもドゥーラの言っていた通りだ。

「力や今までの技では及ばなくても勇気や機転でお前より強い奴に勝てれば…
そのときこそ怖さの他にも、戦う面白さがきっとわかると思う。」

ダブラの経験論が縁壱にも当てはまるかは誰も知らない。
でも戦いにおいて搦め手を使ったり戦略を練り上げた経験が欠落しているのは事実。

新たな技巧を死闘の中で備え付けて、極限の中で進歩を重ねていけば…。

それでも怖いものは怖い。他人を傷つける戦いを
楽しめてしまうような感性になってしまうなんて恐ろしい。

絶大な強さに恵まれながらも精神と魂までは素朴で
通常の人間そのものといえる縁壱には
ダブラの言葉はまだ届きそうにはなかった。

【継国縁壱@鬼滅の刃】
[状態]:疲労、恐怖
[装備]:ルビスの剣@ドラゴンクエスト3 そして伝説へ(HD2D版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:ダブラの言っている意味がよくわからない。
2:自分よりも強い存在への恐れが止まらない。
みんなはこんな苦しい思いをしながらも戦ってきたのか。

[備考]
※参戦時期は竈門炭吉に耳飾りを託した後です。

【ダブラ・カラバ@呪術廻戦≡】
[状態]:片腕の欠損(反転術式で回復中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止めたいがそれはそれとして全力で戦うのが楽しい。
1: 彼(縁壱)も戦う楽しさがいつかきっとわかる
2: 殺し合いに乗った参加者を止めたいが、戦いを楽しみたいとも思う。不謹慎だが…。
3: 首輪を外して制限を解除したい。


[備考]
※参戦時期は少なくとも魔虚羅との戦いを終えた後です。

反転術式による治癒速度が制限で大幅に低下しています。

[支給品解説]
ルビスの剣@ドラゴンクエスト3 そして伝説へ(HD2D版)

しんりゅうに勝利した勇者が願えば入手できる究極の剣。
勇者しか扱えない王者の剣よりも威力に優れている上に
道具として使えばギガデインの発動もできるまさに完璧に近い最強の剣。
最終更新:2026年03月12日 21:59