正常ではない雰囲気がその場を支配している。
拳銃を構えた青年と対峙するは
とある世界で世界の制服を野望としていた魔物たちの王。
悪夢を司る魔王ムドー…と同じ外見、同じ名前なだけで
あくまでも
別個体のムドーであった。
「まず正直に言うぞ!私はこんな殺し合いなんぞには乗らん!」
目の前に現れた人間に対して、魔王ムドーは殺し合いを否定している趣旨を伝えた。
そもそもこのムドーは厳密に言えば魔王ではなく
別に世の征服も野望としていない。
マルタの国の問題だらけの王子ことカメハが光のオーブで創り上げた魔物なのだ。
造り手のカメハの影響を受けているためなのかどこか威光が足らないが
親切で思いやりの宿った情のある魔物となった。
夢と現実を支配せんとした別のムドーとは外見以外のすべてが異なるのだ。
「嘘は言っていないな?」
白河は、もちろん人ではない生物兵器の類というの外見でわかる。
ツノに加えて深緑の体表のカエルに近い外見の
化け物。
この殺し合いを円滑に進行させるために参加させられた生物兵器に思えた。
しかし言葉を流暢に操りその上、殺し合いに乗る気がないとまで言った。
人と同じく言語による意思疎通が可能な時点で
常識に当てはまらない驚愕の事実だが
殺し合いを止めたいと申し出るのにも予想外だった。
見かけによらないのは怪物も人も同じと言うことだろうか。
それでも油断はできない。
殺害を繰り返す気がないという方針が本当かを調べたい。
こちらを欺いて油断した隙を突いて仕留めに掛かる恐れもある。
正面から有無を言わさず潰して行くよりも
警戒を解いてから狙う方が効率良しと学習している、
または刷り込みを受けていることもあり得たからだ。
そのように高度な調整が施された新型の生物兵器という線も捨てるわけにはならなかった。
エージェントの役目に就いてる白河は
寄生体の生物兵器が跋扈する島に赴いた任務のように、
命の危機に溢れた任務をこなすことも日常茶飯事。
命の危機に関する出来事や可能性は常に幅広く把握し、
その上で任務完了を目指すのがセオリーだ。
死を恐れ怯えるのは論外だが、
かと言って命を落とせば遂行などもちろん不可能だからだ。
壮健で我らが大いなる創造主こと魔王カメハによって
誕生したムドーにとって警戒される反応など想定済みであった。
戸惑われて当たり前のような恐ろしげな外見と
高き力が醸し出す魔王の側近としての威厳(実際にはそこまでないが)。
これらが備わり常人には近寄りがたく狼狽えさせる。
常識に基づいている参加者であれば、
厳戒を解かずに逃げるか武器を構えるのは当たり前である。
しかし敵対する意思は全く持たないが出会ったばかりで
殺し合いには乗っているとほぼ睨まれている状況で、
具体的にどのように説得するべきなのか。
「お前が私を疑うのも無理はないとは思う。
人間からすれば私のことはすぐに暴れそうな魔物に見えて仕方ないのだろう?」
「率直に言えばそうなるな。」
この怪物と出会ったのとほぼ同時に銃を構えて
危うく発泡するところであったが
意思疎通が可能な上に自ら他者を襲う気がないといきなり言われた。
仮に撃っていれば争いとなり命をどちらかが落としていたかもしれない。
「私も素直に気を許してくれるとは考えておらん。
共に歩み協力してほしいのが本音だがそこまでの強要はせん。
だがせめて争うのはよそうではないか。
こんなところで意味のない消耗などごめんではないか。
それにベリアルとかいう不届き者の言いなりにはなりたくないだろう。」
手を取り合い同行するのはできないとしても、
争わないメリットを伝えて戦いを避ける選択肢を
差し込むことができる可能性ならまだあるはずだ。
「……」
どうしたものか、いかにも人々を蹴散らすために作られた生物兵器にしか見えないが…。
誠意と言葉を尽くしている様は殺し合いを肯定しているようにはとても見えない。
ここで正直にぶつかり合っても勝てる保証はない上に敗れて死に絶えることあり得る。
多数の銃弾を浴びせて息の根が止まる確信もまだない。
相手が殺し合いにおいてどのようなやり方で命を奪いに掛かるのか、
何もかもわかることはない。
倒せることも確定してないのに挑むのは愚策。
確かに消耗しないで済むためにも無駄な戦闘に没頭するのは控えるべきだろう。
「わかった。俺も無用な苦労をしたくはない。
だがこの約束はしてもらいたい。
とても戦えない民間人や殺し合いを否定している参加者を襲ったりはするなよ。
お前も俺もやらないで済む戦闘はしないように済ませるべきだ」
「申し出を受け入れてくれて感謝する。
お前の言うとおりだ!手を取り合得るものとは戦わず
殺し合いを必ずや止めると誓おうではないか!」
同行とまではいかなかったが、無用な戦いに突入しなかっただけ良しとするべきだ。
このまま何事もなく別れて探索に専念することになると両者は思っていたが、
予想外、いや殺し合いである以上必然とも言えるトラブルに直面することとなる。
このムドーと同じく、
人の領域から逸脱した化け物が触手を伸ばして白河の頭部を潰さんとした。
「なんだ!?バァッ!!」
五臓六腑の温度を引き上げ体内で燃える火炎を息のごとく吐き出す。
触手はムドーのかえんのいきに阻まれて引火し、
覆った炎を払うために触手を無造作に振るい火は散りいく。
火炎にのまれて焦げた触手は萎み、しばらくは使い物にはならなくなるだろう。
「すまない、助かった…なに?」
恐るべきスピードだった。
訓練を重ねた人間でもまず反応できないほどの速度であった。
こちらの命を迷わず刈り取りに来たと見て間違いない。
そのような危機感が一時的に引っ込むほど、
驚かずにはいられなかった。
白河を世から葬りさろうとした怪物の面には覚えがあった。
ポニーテイルの髪型を水色のリボンでまとめ、
童顔に寄った顔はまるで死んだ魚のような目を初めとして
生気も正気も宿ることのない絶望と空しさに侵された表情。
「…晴香?」
任務で追っていた組織の構成員にして
その組織からの脱退を狙い自由をつかみ取った女性。
数え切れないほどの困難を切り抜けて
ついには寄生体の核を創造するマザーを止めて見せた人物。
「……」
その人物は紛れもなく藤堂晴香にしか見えなかった。
■
シんじゃッたはズナのニ。イきじゴくはホンとにあッたみタい。
ナカにすクウってた。ワたシをクイヤぶルはズだッたキせイチュうノかクは、
したイにナッたわたシとドうかミたイナコとをシて、
わタシ、バケモノにナつた。
アタまもこコロもそロソろこワれソうダ…。
イたい、わタシはソしキのオってかラにゲナくチゃ。
アのオンなにツかマったラ…。
ワたしのコわレかケタたアタまデはカンガえられナイほドのめにアワサれる。
ドこにムカエばいイかなンテワカらなイ。
ぜンシんがいタイ、しヌノがこわイ。
ハヤくイタみからもコわサかラモじゆウにナりたイ…。
たすケテ イタい イや くルシい コわい
モウヘんにナッちャイそウ
じゃなくテモうへンニナッテいルノかモ…。
■
「なにがあったんだ!?藤堂!!」
体内に植え込まれた寄生体の核は抗体を注射したためとうに除去を済ましているはず。
完全に化け物と墜ちて知能を失い獰猛な本能に従い
襲いかかる生物兵器に生まれかわったとしか思えない。
白河とムドーの前に姿を見せたのは藤堂晴香の成れの果て。
命が助からない重傷を負い、間もなく死ぬはずであったが
生き地獄の門を開いてしまったとは誰も、晴香も
生物兵器を作り出してしまった科学者さえも見抜けなかった。
寄生を続けるために瀕死の肉体を
なんとしても生かさなくてはならなかった核は
変異を生じさせて肉体と融合を果たしたのだ。
人の身ではまず得られない身体能力と生命力を予想外にも晴香は有した。
その代償は払えきれないほど重苦しく、
死を迎えない限り永久に幕を閉じない地獄を生き続けることとなった。
肉体のすべてが爆発的な掻きむしられるような苦痛と
自分の体が自分とは思えない軋むような違和感が永久に襲う。
自由とはほど遠い嘆きと拷問のような悲痛の時間を
もう何のためかもわからず歩み続ける。
限度のない痛みと絶望によって自我と精神は微塵と崩れかけて
襲われるかもしれない怯えから起因するのかどんな者で迷わず襲い殺す存在と化した。
「俺がわかるか?晴香…手遅れなのか?」
呑み込みの早い白河にとって察するのに長い時間はかからなかった。
声もかけても返答はない。意思疎通すら不可能なほどに知能も衰えてるのか。
心と理性を喪失したせいで、どんな言葉も届くことはなくなっていた。
おそらく晴香はこの殺し合いの元凶であるベリアルに
細工を施されて生物兵器も同然の化け物に改造されたのだろう。
誰かを殺めてしまう前に命を絶たなくては。
無辜の人物を手にかけるのはお人好しで責任感の堅い晴香にとっても
何が何でも避けたいはず。
躊躇せず引き金を握り
放たれた弾丸が晴香の肉体を抉ろうとする。
まだ健在であるもう片方の触手が目にもとまらない速度で弾丸を払う。
発砲してからでも対応は余裕。
今の銃では及ばないという証明である。
「よくわからないが私に任せてもらおう。」
極大の闇に荒れ狂う稲妻を宿した闇の呪文を唱える。
「ドルモーア!!」
邪悪な雷は球体となり、襲い掛かる。
再度触手で防ぐも只ではすまなかった。
「ゥゥグ!!」
高度な電圧の宿る禍々しい呪文に触手は耐えることはなく
感電して、一定の時間はまともに震えないほど激しく震えていく。
その大きな震えは異形となり身柄を狙われ続ける恐怖と絶望も表されているようでもあった。
「ァァァアアアア!!!」
触手という武器が使い物にならなくなり
打つ手を失ったためなのか背を向けて無我夢中で走り出す。
炎と雷による攻撃からの避難の意味と
なにより死ぬたくないという恐怖が突き動かしていた。
「いかん、こやつを逃がせば何をしでかすかわからん!追うぞ!」
「当然だ!人を殺める前に晴香を殺さなくては!」
「危険が迫ればおまえだけでも逃げて生き延びるのだぞ!!」
「了解した!!」
逃げて徐々に小さくなる藤堂晴香の後ろ姿を凝視しつつ二人は駆ける。
別行動する予定は互いに保留となり、
白河は身を救ってくれたムドーに対して同行を拒否しない程度の信頼をすでに寄せていた。
【白河大輔@寄生ジョーカー】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー銃@寄生ジョーカー
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考・状況]:
基本方針:殺し合いには乗らない
1:化け物となった藤堂を追う
【支給品解説】
リボルバー銃@寄生ジョーカー
シングルアクションの回転式拳銃。
連射性に欠け、弾の装填に時間がかかる。(作中より引用)
[備考]
※参戦時期はED12の後です。
【ムドー@ドラゴンクエストモンスターズ イルとルカの不思議な鍵SP】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考・状況]:
基本方針:殺し合いを止める
1:藤堂という者を追う。
[備考]
※参戦時期はED後です。
■
断腸のEndless
私が求めた自由は零れ落ちてずっとずっと離れていく
【藤堂晴香@寄生ジョーカー】
[状態]:激痛、精神の崩壊寸前。触手に焦げとしびれ(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考・状況]:
基本方針:こノイたミカらジゆうニナりタイ
1:ヒたすラニゲる
2:みんナコろス
[備考]
※参戦時期はED9の後です。
最終更新:2026年03月19日 22:43