蒼炎が焼く
肉を焼き 命を焼き 己すらも爛れさせ
童のように笑い 童のように泣きながら
煌めきたいのだ 燃え尽きたいのだ
ひたすらに地獄の底で
失った時間を足場に 踊りましょう
蒼く 青く 煌めいて
映りたいのは ただおまえの瞳だけ
◯ ◯ ◯
「殺し合い、ねェ…せっかく面白くなってきたところだってのに」
ボロボロのコートに白いシャツ。不遜な目付きの白髪の青年。名は───『荼毘』の二文字で通している彼は、ただ眺めていた。
動転するでもなく、動揺するでもなく、ただただ空を眺めていた。ただ何があるでもなく、木に覆われた森の中で、眺めていた。
鼻腔には土の匂いが入り込み、耳を澄ませて辺りを探っても、耳朶に響くのは風で葉と枝が揺れる音のみ。
時間の影響か、それとも此処がそういう土地なのか。
木々に覆われ暗い森の中で、硬い土を踏みつけながら、荼毘は何をするでもなく思案し。
そして、何かを思いついたのか。その顔に笑みが溢れる。口角が歪み、それは楽しくて楽しくて仕方がないとでも言うように。
「…おい。何笑ってんだおまえ」
思考に耽っていた荼毘の意識を、ある声が呼び戻す。聞き馴染みがあるようなないような、そんな声。
荼毘が振り向くと、そこには男がいた。木々を抜け、植物の間を進んだのだろう、黒の上下に白のジャケットとベルトでシックに纏めたその服装には葉が纏わりついている。
腰に差した刀は日本刀だろうか。その男を眺めながら、ゆっくりと視線を下に落としていく。
視線が、止まる。
青い髪の男の掌に、何かが握られている。べっとりと濡れたそれはペンキをぶちまけたよう。生命に必要な液体を垂らしながら、その肉の塊は男に頭蓋を握られたまま動かない。
否。もう、動けないのか。
「…いきなり襲ってきたからな。とりあえず殺しておいた」
「乱暴だな」
「一々
化け物に『味方か』って確認するのか? てめえは」
見る者がみれば、魔物と呼ばれるとある世界では一般的な怪物だと理解できただろう。だが残念ながら、ここにはその常識を知る者がいなかった。
ただ、その世界の常識が無かったとしても。
ここの二人には、共通する常識が、一つあった。
「で、てめえはどうなんだよ」
「主語が足りねえな」
「そうだな、やり合って確かめりゃいい」
『虫の居どころが悪い』。命を命と思わない両者には、命を奪うに値する理由だった。
「焼けて死んでも文句はないな」
「区別も差別も必要ねえ」
「勝った方が生き残る」
「それが『戦い』ってもんだ」
両者の間で、熱と圧が加速する。
目に見えぬ殺意が、圧となって加速する。
「死んだらあの世で!」
「後悔してろ!」
互いの方向が重なった瞬間、青髪の男の姿が掻き消えた。ノーモーションで放たれる、高速の移動技。何かしらの能力の一つだろうと判断するが、荼毘の反応速度を軽く超えていた。
背後。反応が間に合わない荼毘の頭蓋を砕こうと、迫る拳。当然反応できない荼毘には対処することも───。
「───赫灼熱拳」
それは。自身の熱を高め、そして放出するもの。その熱は炎となり、体外へと放出される。
今回の場合は、足首だった。足首から放出された蒼炎が荼毘の身体に推進力を与える。速度で劣っていても、反応速度で劣っていても、荼毘にはこの火力があった。
荼毘の足は地面を焼き、土と木々を焼き溶かし、凄まじい速さで移動する。荼毘の頭蓋を狙った拳は、まだ熱の残る空間をなぞる。
「薪になってくれよ、俺のために」
荼毘はスラスターのように足首からの炎の推進力で浮きながら、振り返る。青髪の男に狙いを定め。
視界の全てを、蒼炎が焼き尽くした。
木々はぱちぱちと音を立てながら倒れていく。遺体も残らぬほど火力を上げ、掌から放出した蒼炎が全てを焼き。
そろそろ炭になったかな、と思案した瞬間。
蒼炎の中から伸びた左腕が、荼毘の右腕を掴む。
「…火遊びか? この程度で鋼皮が焼けるとでも思ったか?」
突如。蒼炎を打ち消す閃光が、辺りを包んだ。
ほんの一瞬だった。放たれた閃光が、荼毘の残した焼け跡を上書きし消し飛ばしていく。
あわや森林火災となりかけていたものの全てを、その閃光が吹き飛ばす。
荼毘は直前に身を捩り、その閃光を交わしていた。直撃していたら、荼毘の上半身は今頃文字通りの塵と化していた。
「良い威力だな、憧れるよ」
そして。次は掴まれている腕から、閃光が漏れている。
蒼炎すら無視して突撃する硬さ。辺りを消し飛ばす火力。目で追えない速さ。
認めざるを得ない強敵を前に、荼毘は先ほどの閃光を掴まれた腕から零距離で浴びようとしている。
おそらく、腕は消し飛ぶだろう。腕だけで済めば良いが。腕を振り払うか、ダメージを最小限にすべく腕を犠牲にするか。凡夫が取り得る二つの選択肢を荼毘は即座に脳裏から捨て。
─── 『赫灼熱拳』。
荼毘の体内に、再び熱が灯る。それこそ、今までより比べ物にならないほど。閃光を飲み込まんとするほど。
火力には火力。荼毘は後先考えぬ放出特化。火力を上げることに関しては天賦の才を持っている。
「火力上げろ! 火葬にしてやるよ!」
「安心しろ、骨すら残さねえよ!!」
青髪の男の閃光と、荼毘の蒼炎。
互いを巻き込み、破裂したそれは───
轟音。
混ざり合い、破裂した。
互いを飲み込まんと膨らみ、混ざり、燃え上がり。上げられた火力は互いを殺し合い、破裂した。
そして。相殺され立ち込めた煙が晴れる頃には、荼毘は両手を上げていた。
「───何のつもりだ」
「…いや? 俺にはわかるんだよ。燻っている火が」
くつくつと笑う荼毘に、更に眉間に皺を寄せる青髪の男。互いに相反した表情を浮かべつつ、それでも青髪の男は腕を止めた。
それは、あくまで個人的な感情。読まないで捨てた手紙に、何が書いてあったか後から気になるような、捨て置いて構わない感情。
しかし。その感情が何であろうと、荼毘は男の腕を止めることに成功した。
「殺したいヤツ…いるだろ。奇遇だな、俺もだよ」
「てめえ程度の力を借りるとでも思ったか?」
「別に? ただ俺は…土産に持って帰る首が多ければそれでいい。犬みてェに首輪付けられてはいどうぞ、で従うのも億劫だ」
「あいつもてめえも、追いついて殺せばそれで済む」
「そうだ。その前に、それを邪魔するこの"クソッタレ"をぶん取る必要がある。探せばいるだろ、頭が回るヤツ。優先すべきモノの話だよ」
単純な話。成すべきことに必要な手足は多い方がいい、と首輪を指差しながら荼毘が言う。
訪れる静寂の中。戦いの余波でぱちぱちと木々が燃える音と焦げ臭い煙の香りが、静かに泳いでいる。
男はというと、眉間に皺を寄せたまま。暫く思案する素振りを見せた後。
「…確かに、この俺に首輪を嵌めやがったヤツを殺すには必要かもな」
「そのための休戦だ。俺だって、ここで死ぬつもりはない。まだ『顔』が見たいヤツがいるんでね」
「…仕方ねえ。変な気起こすんじゃねえぞ」
焦げついた荼毘の腕を、男が乱暴に離す。首輪を外すまでの休戦協定。
男にとって、荼毘はどちらかと言うと『どうでもいい存在』だ。ここで消しても構わないし、後で消しても構わない。ならば、今、一番気に障るこの首輪を一刻も早く外すことに利用するのも悪くない。
男は争いを好む。舐められれば殺すし、必要なら誰だろうと消し飛ばす。
だが。敵とそうでない者の区別がつかないほどの狂人ではない。虚圏では意外にも『穏健派』の括りに入れられていた彼だ。
必要でない争いをするほど、馬鹿ではない。
「まだまだ火力を上げられるみてえだが…その程度じゃ『解放状態』の俺は焼けねえぞ」
「待て。名前、聞いてねえぞ」
足早に去っていく青髪の男を呼び止める。
背を向けたまま、そのまま首だけを荼毘の方へ向け。
「グリムジョー・ジャガージャック。この名を再び聞かねえよう祈っとけ」
「そうか。俺は…荼毘で通してる。覚えといて損はねえかもな」
足早に去っていくグリムジョー。
彼にとって、この空間そのものが不快であった。
王だ。グリムジョー・ジャガージャックこそが王だ。相対する全ての血肉を喰らい、骨を砕き、鎧を鳴らす。全てにおいて、上から抑え跪かせようとするモノをグリムジョーは許さない。
たった一人。誰もついてこれなかった、たった一人の玉座に、たとえ心が軋もうとも。
───それが。オレンジ頭の死神に、変えられたのは何時頃だろうか。
あの頃から、グリムジョーの目的は変わった。決着をつける。あの日横槍の入った戦いの始末をつける。
負けていない。どちらかが死なない限り、それは敗北ではない。
「……誰だろうと、だ」
グリムジョーを抑えつけるモノは、何一つ。
噛み砕かれ、塵となる運命にある。
【グリムジョー・ジャガージャック@BLEACH】
[状態]:火傷(小)
[装備]:グリムジョーの斬魄刀@BLEACH
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:殺し合いを強制させている主催者を殺す
1:敵に会えば殺す。無害なら興味はない。
[備考]
※参戦時期は本編終了後
※豹王及びグリムジョーの『野性』の力において、毒攻撃・精神攻撃への耐性を得ています。今後、何らかの耐性を得る可能性があります。
【グリムジョーの斬魄刀@BLEACH】
支給品ではない。破面化の際に虚としての本来の力を刀の形に変えたもの。
魂の一部であり、没収はされていない。
死神の斬魄刀とは根本的に作りが異なり、魂魄の浄化などは基本的に不可能。
破面が虚としての姿へと変わることを帰刃(レスレクシオン)、または刀剣解放と呼び、破面から虚へと変化する為、肉体の傷は大抵は再生する。
「解放状態、ねえ」
グリムジョーが去った中、荼毘は適当に其処らの石に腰掛け、自らの腕を見る。
ぱちぱちとまだ火の粉が舞う中、爛れた腕。自損覚悟の放出特化、火力特化の燃え上がる執念。
「…温存なんざ向いてねェんだ」
この戦場において、何人が招かれているか。荼毘はそれを知らない。律儀に一人一人殺していたのでは限界がある。
荼毘には目的がある。執念がある。手放そうとも離れない、掌に焼きついた執念が。
故に、この場で限界を迎える訳にはいかない。執念で生き続けた彼は、恩讐にその身を焦がし、爛れながらも生きている。
「何人いるかは知らねえけど…全員の首持って帰ったらどんな顔するかなァ…」
地面にそのまま身を投げ出し、大地に体を預ける。荼毘の目に映るのは、ただの空。
爛れた腕を伸ばし、空を掴むように拳を握る。
「なあ お父さん」
ヒーローはヒーローらしく、滅私奉公の理念の下、見返りを求めず生きねばならない。連続殺人鬼、ステインの思想。
ああ、そうだと共感する。ヒーローらしく生きてくれ。頼むよヒーロー。
全員じゃなくていいんだ。お前だ。お前だけでいいんだ。
エンデヴァー。お父さん。全ては、お父さんの為だけに。
「だからさ、頼むよ」
荼毘はゆっくりと目を閉じる。眠った訳ではない。目を閉じると蘇る、赤い焔。ソレに想いを馳せる。
「焼けて死んでくれよ。───俺たちのために」
地獄で一緒に踊ろう。
此方は死んでも熱いよ、お父さん。
【荼毘@僕のヒーローアカデミア】
[状態]:体温上昇(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:帰るために殺し合いを強制させている主催者を殺す
1:未来ある命がまたお父さんの炎で焼けていく。悲しいねえ。
2:とりあえずは体温を下げる。利用できるものは利用する。
[備考]
※参戦時期は全面戦争編、蛇腔病院跡地から逃げた後です。
───嫌やわぁ、もう少しやらへんの?
───酒のつまみにもならへんよ。炙る匂いとか期待させといて、つまらんわあ。
───まあ? 気配消しとったおかげでバレへんかったし。
───どっちにつくか、どっちにもつかへんか…。
───よう考えて、楽しまんとねえ?
【アサシン(酒呑童子)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:どうするのが正解と思う?
1:とりあえずはお酒欲しいわぁ。口寂しくて堪らんの
[備考]
※気配を隠し、覗き見ていました。荼毘とグリムジョーの情報を得ています。また、荼毘が耳を澄ましても気配を掴めなかったことから、二人からはバレていません。
※カルデアのサーヴァントか、誰に召喚されたサーヴァントなのか、マスターを持たぬサーヴァントなのか詳細は後続に任せます。
最終更新:2026年03月21日 19:25