「マジで使えねえなあいつ」
俺は告げられた放送と名簿に思わず溜息を吐いた。
知った名前があった。エンシン、俺の率いるワイルドハントの一員。
こいつが死ぬのも二度目だ。
一度目は俺が動けない間にナイトレイドの連中にやられて。二度目はここに連れてこられてからわずかな時間で。
こうまで短期間で脱落を繰り返されては、自分と帝具の目が節穴だったとしか思えないほどの醜態だ。
しかも、ワイルドハントの連中は誰も呼ばれていない。ここにいたのは自分とエンシンだけ。
「あ~ッ、クソがッ!!」
思わずそばにあった木を殴りつける。
一回目は失望でも二回目は怒りになるのは仕方のないことだろう。
これで正真正銘の孤立だ。
ナイトレイドやイェーガーズ、エスデスやらブドーやらがいないのは不幸中の幸いだったが、戦力になる者もいない。1人いたがそいつはもう死んでいる。
これがドロテアなら良かった。錬金術は大いに役立つし、他の連中ほど短慮じゃねえから俺のように動けたはずだ。
イゾウでも良かった。あいつは腕が立つし殺人狂だが、意外と自制と分別ができる男。
俺の邪魔になるやつらだけ斬らせておけばそれで満足してたはずだし、紅雪が没収されてたらそれはそれは大人しくしていただろう。
コスミナなら百歩譲ってまだ許せた。
俺みたいに帝具が没収されていれば、あいつにはロクな戦闘力は無い。ただの尻軽ビッチならまだ相手によってはこれ幸いと受け入れられるだろう。
チャンプとエンシンはダメだ。
どう足掻いても好き放題に暴れていらねえ厄介ごとを持ち込みやがる。
帝国の後ろ盾がない状況でそれをやりゃあ、俺たちと同等かそれ以上の力を持ってる奴には太刀打ちできなくなる。
あいつらがそれを自制できるとは到底思えねえ。
あの真っ先に死んだ馬鹿は、どうせ襲いかかったのを返り討ちにでもされたのだろう。
「マジふざけんなよクソが...」
何度目かもわからない悪態はさらに苛立ちを募らせてくる。
するとどうだ、ぐぅ、と腹から音が鳴り無性に小腹が空いてきやがった。
そういや親父も久々に会った時はストレスで体重が増えるって言いながらも土産を食ってたっけか。
あの時は食い過ぎだって笑ってたが、今ならその気持ちもわかるってモンだ。
イラついてる時にはつい口元が寂しくなってくるのは血筋かね。
俺は配られた支給品から小袋のセットを取り出す。
包装に書いてある名前は「タ◯グミ」。
説明書を参照すれば、固形状のハード・食感の菓子とのことだ。
ふうを切り、掌に出してみれば、中からは正方形の固形物が幾つも転がり出てくる。
プルプルとしつつ、しかしプリンほどの柔らかさはない。ふにふに、といった感触が1番近いだろう。
思ったよりも大きいので、一つを残しあとは袋の中に戻す。残る一つを人差し指と親指でつまみ、凝視する。
オレンジ色に透き通った正方形の固形物になにやら粉が纏わりついている。
...ヤクとかじゃねえよな?
少しばかりの不安を抱きつつも、説明書にあった菓子という単語を信じて口に含む。
「!?」
するとどうだ。たちまちに謎の風味が口の中に広がり始めたではないか。
「ふふぉっ!?」
思わず変な声が出ちまった。
それくらいの衝撃的な初体験に、思わず歯が動いてしまう。
ふにっ
「!?」
まただ。また、俺の口内で未知の感覚が展開される。今度は風味じゃねえ。食感だ。
柔らかく、しかしその芯に存在する確かな噛み応え。噛めば噛むほど反発し、味が拡散するのとともに次が欲しくなる。
ーーーこの弾力、クセになる。
美味い。
世界を回ってきた中で色んな美食を堪能したが、それを踏まえても食感も含めて美味いと言わざるを得ない。
味だけじゃねえ。
噛めば噛むほど、さっきまで荒ぶっていた思考が冷えていく。
咀嚼と思考のリズムが噛み合い始める。
(いつまでも愚痴を言ってても仕方ねえ)
グミを飲み込み、再び袋から新たに取り出して口に入れる。
(親父もいない以上、起きちまったことはもう対処していくしかねえんだ)
もにゅ、もにゅ、と歯で噛み締め、溶けていく粉の甘さを舌で堪能する。
親父のように甘党というわけではないが、疲れた脳には確かに効果的だ。
食感と、甘さと、風味。
三位一体で疲れた心身が癒やされていくのがわかる。
(やることは当初の予定とさして変わらねえ。
①使える仲間や同盟相手を集める。
いくらエスデスやブドーがいないとはいえ、ランドルみてえな俺とやり合える奴らがいることには変わりねえんだ。仮にあいつを殺せたとして、もしも俺たちが上限じゃなけりゃどうなる?そのまま消耗するだけ消耗して他のやつに狙われりゃ終わりだ)
ハードな食感も慣れてくれば消化も早い。また一つ、袋から取り出して口に含む。
(ヤローの言いなりはシャクだが、普段の調子の査定は控えておくべきだな。なあに、ある程度のネコの被り方は世界を旅してわかってる)
もにゅもにゅもにゅもにゅ ゴクン
また一つ、取り出して放り込む。
(②ワイルドハントについては大っぴらに名乗らねえ。後ろ盾がない上に悪名が轟いちまってる以上、名乗るメリットはねえからな。逆の立場なら俺だってとりあわねえさ)
もにゅもにゅもにゅ ゴクン
ガサゴソ ポイっ ぱくん
(③協力者にバレないようにほんとの役立たずをぶち殺して首輪を回収する。
いくら美辞麗句を並べたところで首輪解除の目処がたたないことには話にならねえ。首輪を外すには仕組みを知らなくちゃならねえし知るためにはサンプルが必要だ。そのためには強くもねえ専門知識もねえ本当に邪魔なやつを間引いてやる。ごちゃごちゃ言われないように、バレないように、な)
噛んで。溶けて。飲み込んで。
もう一つ、袋から出そうとした手がピタリと止まる。
(...何個食った?俺)
手にした袋を開けて中身を見れば、既に中身はもう半分を下回っていて。
それだけ食べていたことに気づけなかった事実に戦慄する。
(こいつはヤベェな。クセになっちまう)
まるで麻薬のような中毒性に少しばかりの恐怖を抱き、うっかり追加で食べないようにデイパックに袋を仕舞い込む。
これだけ美味いなら親父への悪くない手土産にもなりそうだ。...親父に見限られる寸前までいって急に消えた俺にまだ居場所が残されているなら、の話だが。
「小腹も満たせたし、動くとするか」
地図を開き、改めて目ぼしい施設を確認する。
「やっぱ何度見ても知ってる名前は一つだけ、か」
イェーガーズ本部。よりによってあのカスことウェイブの部隊の本拠地しかないとは。まあ、流石に本物じゃなく模造だとは思うが...せっかく近くにあることだし、ここから見てまわるとするか。
「にしても、なんでイェーガーズなんだ?俺たちの詰め所ならあのバカも生きてたら目印にしてたろうが...ま、どうでもいいか」
さっきはベリアルは俺に似てるところがあると思ったが、俺が「どうでもいい」と思っていることはあいつも「どうでもいい」と思ってるのは容易に察せる。
それはつまり。あいつにとって俺は関連する施設さえ覚えてねえ、その程度の存在だってことだ。
ムカつくぜ。ああ、ムカつくぜ本当によ。
「せいぜい今のうちにたっぷり笑っとけ。最後に笑うのはこのシュラ様だ」
全てをひっくり返して返り咲く。
ただその未来を求めて、俺は進む。
【C-5/イェーガーズ本部付近/深夜/1日目】
【シュラ@アカメが斬る!】
[状態]:苛立ち(特大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2、◯フグミ×5袋@現実
[思考・状況]
基本方針:今はとにかく死なない方法を探す。
1:とにかく仲間をそろえる。
2:優勝はどうしようもなくなった時に考える。
3:使えねえやつはなるべく処分して首輪に変えたい
[備考]
※参戦時期は漫画版、ランに告発されラバックのところに向かう途中。
【タフ◯ミ@現実】
高弾力・サワーパウダーが特徴のハード・グミ。噛めば噛むほど美味しく集中力が増していく、作業や運転のお供にオススメ。
某大人気格闘漫画と名前が被っているが別に関係ないと思われる
♦︎このSNS・ツイートは...?
最終更新:2026年03月30日 01:24