「キャップ、かげぶんしんだ!」
ポケモントレーナー・サトシの指示により、船長帽子をかぶったキャプテンピカチュウ…ちぢめてキャップの身体が10体に分裂する。
キャップと対峙するウルフ型モンスター・ガルムは、10体のピカチュウに囲まれてキョロキョロと戸惑うように首を動かす。
どう切り抜けるか…結論が出る前に、相手の方が先に動いた。
「かみなりパンチ!」
「「「「「「「「「「ピッカアアア!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」
迫る10体のピカチュウに、ガルムはなすすべもなく硬直し、そのまま10体分…実際に命中したのは本物の1体だけだが…の雷拳を食らい、倒れた。
安堵する間もなく、再び別のモンスターが現れる。
今度の敵は空からやってきた。
トンビとアヒルを混ぜたような顔をした、なんかでかい鳥である。
先ほどのガルムよりも、頑丈そうである。
「キャップ、ボルテッカー!」
「ピカピカピカピカ…」
サトシの指示を受け、キャップは電気を身体に纏わせ、でかい鳥に向けてダッシュする。
「ピッカアアアアアア!」
そして雷をまとったまま突進すると、でかい鳥は苦悶の叫びをあげて墜落した。
飛行は電気に弱い…が、ポケモンではないこの鳥に通用するかは分からないが、墜落したでかい鳥は目を回して起き上がる様子もなく、戦闘不能のようだ。
「これがキャップのボルテッカーか…昔は俺のピカチュウも使ってたっけ」
懐かしさを感じつつ、サトシはキャップに駆け寄る。
「よくやったな、キャップ」
「ピッカー!」
サトシがねぎらうと、キャップは腕を組んで誇らしげにこちらを見上げる。
サトシとキャップは、周辺に現れるモンスターを相手に調整を行っていた。
ピカチュウとはよく慣れ親しんでいるが、今目の前にいるのはサトシのピカチュウではない。
技構成もまるで違うし、呼吸を合わせるべくNPCモンスター相手に戦っていた。
(ボルテッカーは反動があるから乱発はできない…かげぶんしんで撹乱しつつかみなりパンチで攻撃、が基本になるか)
幸いにもキャップとはすぐに息を合わせて戦えるようになった。
戦闘スタイルが違うとはいえ、伊達にピカチュウと共に戦ってはいない。
なにより彼は、世界チャンピオンにまで上り詰めるほどのトレーナーだ。
(あと一つ、試したいことがあるけど…)
そんなことを考えていると、持っていたスマホが震えだす。
主催者による、放送だった。
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レディエによる放送が終わるとともに、名簿というアプリに通知が入る。
サトシがアプリを開くと、そこには顔写真付きでこの殺し合いの参加者の名前が書き連ねられていた。
サトシは一つ一つ名前と写真を確認し、知り合いがいないことに安堵する。
しかし、気になる名前はあった。
自分のすぐ近くにある名前。
支給品説明の中にあった名前。
サトシは現在の相棒に顔を向けると、しゃがみこんでスマホを見せた。
「なあキャップ、もしかしてこの『フリード』って…」
「ピピーカ!?」
「うわっ!?」
サトシが名簿を見せると同時に、キャップはまるでサトシから奪い取るかのようにスマホに突っ込み、食い入るように名簿を見つめる。
サトシがのぞき込もうとして、その動きを止める。
背中を向けたキャップの足元の地面に、液体がこぼれていた。
それは、涙だ。
(知り合いが呼ばれて、悲しいのか?)
そう思ってキャップの顔を覗き込んだサトシは、すぐにそれが勘違いだと分かった。
それは、明らかに嬉し涙だった。
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―キャップ お前はみんなを頼む!
そう言い残し、彼は…相棒、フリードは自分のもとを去った。
飛行船から投げ飛ばされ、リザードンと共に墜落した。
―ピピーカ!
彼…キャップは去り行くフリードの名を呼び…そこで記憶は途切れ、気づけばこの空の世界へやってきていた。
そして今、フリードがこの殺し合いに呼ばれていると知ったキャップは、柄にもなく、喜びを隠せなかった。
もちろん、こんな殺し合いの会場なんかに呼ばれて嬉しがるなど、不謹慎であることは分かっている。
フリードだけでなく、リコまで呼ばれているのだからなおさらだ。
それでもキャップは…彼が、フリードが生きていることが、たまらなく嬉しかったのだ。
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「じゃあ、このフリードとリコってのが知り合いで…地図にあるブレイブアサギ号ってのが知ってる場所なんだな?」
「ピカ!」
サトシの問いに、キャップは首を縦に振り返事をした。
支給品、もとい支給ポケモンのキャップに名簿と地図を見せて、知っている人や施設を指さしてもらった。
その結果、サトシと違いキャップには名簿にも地図にも知っているものがあることが確認できた。
「ブレイブアサギ号…サントアンヌ号みたいな船なのか?名前からするとアサギシティの船みたいだけど」
地図によれば、ブレイブアサギ号があるのは北西の端の方。
サトシたちが今いるのは南のG-3らしいので、ここから北に進んで橋を渡り、少し西よりにさらに北上すればたどり着く。
「よし、それならさっそく出発…って行きたいとこだけど」
サトシはキャップの方を見て言った。
「なあキャップ…出発する前に、お前のもう一つの技を試したいんだ」
キャップの説明書には、彼が使う技が書かれていた。
何故か4つ目の技が不明で、「かみなりパンチ」「かげぶんしん」「ボルテッカー」
そして、ボルテッカーの横に、カッコつきである技の名前があった。
「『ライジングボルテッカー』…空撃ちでいいから、今ここで見せてくれないか?」
名前からして、ボルテッカーのすごい版、というのはサトシにも推測はできていた。
ボルテッカーは、強力な反面、使用時の反動ダメージを受ける技だ。
そのすごい版となれば反動もすごそうで、故にこの1時間での使用をためらっていた。
普通のボルテッカーでさえ、最後に倒したあのでかい鳥にしか使っていない。
先ほどの放送によれば、もうNPCのモンスターは現れることはないらしく、ここからは参加者同士の戦いになる。
もちろんサトシは殺し合いに乗る気はないが、自衛のためにもキャップを戦わせる必要があるだろうとは覚悟している。
だが戦うにあたってネックになるのが、このライジングボルテッカーだ。
前述のように、どんな技かは分からないにしろボルテッカーをさらに強力にした技なのだろうと思う。
そんな技を、ぶっつけ本番で使って、万が一ということもある。
だから、その前にどんな技が見ておきたかった。
それに、ボルテッカーのような反動ダメージのある技というのは、相手に衝突することに生じるものだ。
空撃ちなら、キャップ自身の消耗も少ないのではないかという思惑もあった。
サトシの提案に、キャップは腕を組んで考え込むように顔を俯かせた。
しかししばらくすると、首を横に振った。
「ダメか…」
ガクリと肩を落とすサトシ。
やはり消耗が大きくておいそれと使える技ではないのか。
それとも自分がまだそこまで信頼されていないのか。
「ピカ!」
そんなサトシに対しキャップは、尻尾をバネに飛び上がり、サトシの腕をつかんだ。
「うわ!?なんだ!?」
驚きつつ腕のキャップを見ると、どうやら彼はサトシの腕ではなく、腕にある時計に用があるようだった。
時計の、ある一点を指している。
「6?……6時……?……もしかして、朝になったら見せてくれるってことか?」
「ピカ!」
サトシの言葉にキャップは頷く。
ライジングボルテッカーは、ボルテッカーの高速回転により発生させた上昇気流に飛び乗り空を飛ぶ技である。
サトシのいう空撃ちによる試しでの使用の必要性はキャップも理解しているが、あまり乱発できる技ではないし、どうせなら有効活用するべきだ。
そう、空を飛んだピカチュウによる空中からの周囲の索敵だ。
そしてそれをやろうと思えば暗い夜よりも、明るい朝の方がいい。
それと、これは感傷的な理由のため重要事ではないのだが。
朝日を見るために開発したこの技は、蒼空広がる空で、使いたかった。
「分かった、ライジングボルテッカー、楽しみにしてるからな!」
以上の理由を当然人語を喋れないサトシに伝えることは不可能であったが、しかし彼は納得したようだった。
期待に満ちた爛々としたその瞳は、フリードを彷彿とさせた。
「とりあえず、ブレイブアサギ号ってとこ目指そうぜ!フリードって相棒と、会えるといいな」
サトシの言葉に、キャップは頷く。
フリードを、相棒を、絶対に取り戻す。
―太陽よりも高く昇って、世界中を見て回ろう
あの日の約束を、果たすために。
【G-3/深夜/1日目】
【サトシ@ポケットモンスター(サトシ編アニメシリーズ)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、キャップ&モンスターボール@ポケットモンスター(2023アニメ版)、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いを止め、脱出する。
1:リコとフリードを見つけるため、ブレイブアサギ号を目指す
2:朝になったら「ライジングボルテッカー」を試したい
[備考]
※参戦時期は「めざせポケモンマスター」編終了後
最終更新:2026年04月02日 19:01