古き趣のある、集落のような地。
日本の田舎のような雰囲気のあるこの場所は、
夜となると妖や獣の類が出てもおかしくはないだろう。
もっとも、殺し合いの舞台となる場所ではそれ以上のもいるやもしれないが。
唯一周囲を照らす月明かりの中、集落を駆けながら戦うのは二名の参加者。
一人は赤い髪を縛っている、十代後半の少女だ。
忍装束に身を包み、背には身の丈にも近いほどの大型の巻物を背負う姿は、
軽快に動いてる姿も相まってくノ一や忍者と呼ぶに相応しい姿をしているだろう。
「火遁・火燐灯!」
後方から迫りくる下手人を相手に放つは、複数の炎の爆発。
追尾してる相手からすればたまったものではない一撃ではあるが、
爆発の範囲外まで跳躍しながら、難なく相手は飛び越えて着地してからの肉薄。
その速度は今までとは違う速度で迫ってきたのもあり、青ざめた顔をしながら横へ飛ぶ。
迫りながら相手が握っていた得物による斬撃はすんでのところで避けたので致命傷は避けたが、
真一文字の傷と共に頬から血飛沫が舞い、整った顔立ちの少女の表情が苦痛に歪む。
「イツッ……水遁・酒蒸満充!」
距離を取りながら彼女の周囲から蒸気が発生し、相手の視界を妨害。
続けざまに攻撃をすることはせず、相手は上空へ跳躍して蒸気の中から脱する。
月に照らされるのは、渋みを持ちながらも若々しさを持った成人男性。
高そうに感じない白いワイシャツに、どこにでもありそうなボトムスともあり、
外見だけならばまだまだ若作りができるであろう一般人に見えるものの、
今の彼の瞳は鷹のように鋭く、視線だけで人を射抜くのではないか、
そう思わせるだけの修羅場をくぐったのだと理解できる眼差しだ。
「霧が何処まで広がってるか分からないなら、そーするしかないよね!」
無論、これは彼女の策略だ。逃げの一手ではなく迎撃の一手。
空中に逃げたところを、手に持つ短刀を構え今度は彼女が肉薄。
間合いはワン・インチ。いかにリーチのある刀を持つ相手でも、
この間合いでは刀では取り回しができないと見ての判断だったが、
「な!?」
少女は相手の挙動に思わず変な声が出てしまう。
相手の長い髪は生物のようにうねり、束になった髪が槍のように少女に迫る。
迫るそれらをかろうじて掻い潜り攻撃をするものの、髪は地上に突き刺さっており、
其方へと引き寄せられるように移動することで攻撃はを難なく回避されてしまう。
「っと!」
着地する時に振り返りながらバク転で距離を取る。
彼女が着地する場所には髪が突き刺さっており、
彼の肉体がどれだけ異質なものかが伺える光景だ。
距離的には十メートルは軽く超えるぐらい離れているものの、
先ほどの攻撃を考えれば、この程度の距離はあってないようなものになる。
寧ろ、まともにこっちの攻撃が届かない距離では不利でしかないだろう。
だからと言って、あのまま攻め続けて勝てる道理があるかと言うと、なかった。
修羅のような男に付け入る隙などどこにもなく、攻め時が見つけられない。
「全く、うちのガキ共と変わらない年でやりやがるな。最近のガキは進んでるのか?」
「うーん、あんまよそのこと言うもんじゃないけど、子持ちが殺しはよくないんじゃないの?」
「俺達は暗殺が仕事なもんでな。つまり、俺のガキもそういうこった。」
「……因みに、仕方なくやらされてたとかは?」
「否定はできないが肯定もできねえラインだな。それがなんかあるのか?」
「いんにゃ、別に。ただ、あーしの方も色々あってね。」
相手の言葉に、嫌なことを思い出す。
彼女、さとは忍の里にて暮らす一人の忍者だ。
だが忍の里の宗長であるジンナイと一部の上層部により、
同胞の鵺の一族と呼ばれる存在ははあくどいことに手を染めさせられた。
下手な悪党よりもはるかに悪事をさせられて、葬られそうになる闇を見た。
暗殺も当然やっており、彼女の思う忍者の在り方とは違う外道な行為の数々を。
今では解決した問題ではあるものの、彼女にとっての忍者としての在り方には、
そういう後ろめたい行為は好まないと言うのはあるのだが。
「にしても暗殺部隊かぁ。優勝して仕える人の為とか、そういう?」
「そんな愛国心とか忠義じゃねえよ。
教えたら殺されてくれるほど、お前さんの命も軽くねえだろ?」
問いには首を縦に振るだけに留める。
はいそうですかで渡せる程、死にたがりでもない。
忍者だけど忍ぶ気などない、美少女忍者として空に名を残したい。
鵺の一族で世話になったコーちゃんともまだまだしたいことはたくさんある。
だから此処で、彼女は死ぬつもりは毛頭なかった。
実力で言えば間違いなく向こうの方が上だ。
上忍であるさとから見ても格上と認識せざるを得ない、
化け物じみた体質と身体能力は恐怖以外の感情は出てこなかった。
髪の毛を操作する人物は知り合いの仲間にそういうのがいるとは聞いたことがある。
ただ、それがどれほど脅威であるのかについては、想像もしなかったことだが。
(さっきの太刀筋……せーっちんと同じか、それ以上に剣技にもたけてる。
近づけば剣技、離れすぎたら髪の毛、遠近どっちでも対応されて厳しい。なら!)
できることはただ一つ。一番の大技で決める以外にないと。
大地を強く踏みしめると、全速力で間合いへと持ち込まんと走り出す。
今まで、人生と言う意味でも含めて最速を出してると言ってもいいだろう。
それぐらい無茶をしなければ、この男に太刀打ちできないと判断したがゆえに。
(団長は何度も世界を救う戦いをしてるんだ。あーしも少しぐらい根性見せないと!)
迫るさとへと降り注ぐは髪の毛の槍の雨。
生き物のように、触手のように敵を貫かんとする攻撃が次々と降り注ぐ。
全てを回避することはできず、進むたびにその身に裂傷が刻まれ、血が飛沫する。
速度は緩めない。緩めればその場で死ぬと確信を持っているから。
この程度では倒せないと判断した男は刀を構え、迎撃の姿勢に入る。
懐へ入った瞬間、斬撃が見舞われるのは誰が見ても明らかな光景だ。
ほんの数秒だ。一瞬で勝負の決着がつく刹那の瞬間に二人は命を懸ける。
(此処か!)
(此処だ!)
刀の間合いに入ったと判断した瞬間、男の一太刀を振るう。
風を切る音が耳に届くほどの一撃。並の戦士ならばまず見切れない。
後方に風を飛ばすような勢いのある斬撃はさとの身体には届かなかった。
刀の間合いに入るそのギリギリの距離で、跳躍していたからだ。
跳躍の勢いのまま後方へと飛んださとは身を翻しながら背中の巻物を広げる。
「秘伝忍法───」
広げた巻物はさとの周囲をとぐろを巻く蛇のように周囲を舞う。
巻物は全てが炎へと変換され、その炎を全てを吸い込んでいく。
千屠勢雨。周囲の炎を集約して、巨大な火の玉を口から吐き出す。
彼女にとっての大技となる忍法だ。
(そう来やがったか!)
具体的な技の内容は知らない。
けれど、炎を使う類の技なのは明白だ。
いくら化け物じみた操作ができるし下手な武器よりも鋭くとも、
あくまでそれは毛髪だ。炎を前にしては容易く燃えてしまう代物。
髪の毛で迎撃しようにも、巻物から返還される周囲の炎が邪魔をしてくる。
全方位の防御壁。隙は攻撃する時の一瞬だが、それを狙えばまず相討ちで死ぬ。
大振りに刀を振るった以上刀をそのまま攻撃にも回避にも転じさせることはできない───
「暗殺者って情報の時点で、隠してる武器に気づくべきだったなお嬢ちゃん。」
さとは吐き出した。炎ではなく、逆流する血液を。
髪の毛ではこの炎を突破することは容易ではない。事実その通りだ。
けれど、彼女の胸を貫くそれは髪の毛ではない。当然刀でもない。
腕だ。
異常なほどに伸びた手が貫手となって、胴体を貫通していた。
無論、炎の壁を突き破った以上ある程度焼け爛れてはいる。
それでも言い換えればその程度だ。それでは致命傷には程遠い。
「腕も、伸びるんだ……ッ。」
痛みと胴体を貫かれて、
まともに発せられたのはそれぐらいだ。
後悔も、痛みも、他のことは何も言えない。
ずるりと引き抜かれた手は赤黒く染まっており、
抜いたそばから致死量に至るであろう血が溢れ出し、落下する。
(コーちゃん、ゴメン……あーしが、そっち側だったみたい。)
鵺の一族の生き残り、コタロウことコーちゃん。
彼がふとしたらまたいなくなるのではないか、そんな風に危惧して彼女は旅立てなかった。
コタロウと親友のユズリハの後押しにより不安を拭い空の世界へと発った彼女だが、今度は逆だ。
今度は自分が、帰らぬ人になることを食いながら彼女は大地に叩きつけられる。
「……話に聞く焼却部隊に負けず劣らずのやばさだったな。」
やけどで滲む痛みに少しばかり顔をしかめる男。
相性は大分悪い方もあり、早めに殺せたのは安心感もある。
ただ、まだ一人だ。この殺し合いにどれだけ戦える奴がいるのか。
ましなダメージで済んでるとは言え、一人で戦うのは困難を極める。
『子持ちが殺しはよくないんじゃないの?』
「……ま、だろうな。けどそんなお人よしでもねえのさ、俺は。」
先ほど、さとに言われたことを彼、ゴズキは思い出す。
ゴズキは暗殺者だ。帝都の為に尽くす、暗殺部隊の教育係でもある。
腐敗しきった帝都に歯向かう事はあらず、非人道的な薬物強化も黙認。
教育係と言っても、離反させないための洗脳に近い教育方針を取っており、
彼と言う人物を善か悪かの一言で表すのであれば、まず悪と呼べる存在だ。
だからこうして殺し合いに巻き込まれたところで、そりゃそうだとも受け入れる。
けれどゴズキが外道かどうかと言われると、少しだけ違う部分があった。
育てた子供の一人が死んだときは、口では何の気にも留めてなかった口ぶりだったが、
家族として過ごした時間が長かったためか、完全に割り切ることはできなかった。
間違いなく殺される謂れはある人間はあるものの、
『さよなら、父さん。』
それでも、彼は父親としてもあったのは間違いない。
自分を殺して帝都から離反した少女、アカメも同じだった。
死の間際に垣間見た、自分が育ててきた子供たちの姿。
殺すことにはなったが、アカメにも、皆にとっても父親だったのだと。
「これが最初で最後の、歪んだ親としての愛情さ。
分かったところで、受け入れねえだろ? お前も。」
生還しても帝都に仕えたいとか、滅私奉公の志なんてものは何処にもない。
贖罪もない。自分のやってきたことは悪であると認識してはいるが後悔もなかった。
今回ぐらいは自分らしく生きてみよう。悪人であったとしても、父親でありたいから。
今際の際に見た子供たちの手を取ることは、きっとそれは難しいのだろう。
でも、子供達に何かしてあげられるのであれば。何を前にしても戦えると。
願いを叶えるのが胡散臭いとしても、それ以外のことは考えなかった。
【さと@グランブルーファンタジー 死亡】
【ゴズキ@アカメが斬る! 零】
[状態]:右腕に火傷(中程度)、右手が血に染まってる
[装備]:不壊刀・倶利伽羅@アンデット・アンラック
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:優勝して、アイツらだけでもまっとうに生きられるよう願う。
1:ろくでなしでも、願いはあんだよ。
2:アカメやナハシュ達がいたら、どうするかねぇ。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※近くにさとの死体、基本支給品一式、ランダム支給品×0~1、短剣@不明、さとの巻物@グランブルーファンタジーがあります。
【さとの巻物@グランブルーファンタジー】
さとに支給。具体的な内容は不明であり、少なくともさとが千屠勢雨に使う際に使用する。
さとか、同じ忍の里の者でもなければ使用の仕方は困難を極めるだろう。
【不壊刀・倶利伽羅@アンデット・アンラック】
ゴズキに支給。一心が作った日本刀。
否定能力「UNBREAKABLE(不壊)」により製造された刀は、基本壊れることを知らない。
錆びず、折れず、切れ味も落ちない。そのためアンディが酷使している。
最終更新:2026年02月25日 19:19