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そこはまるで中世の時代から建てられたような古城だった。
月明かりも殆ど届かない薄暗く、ジメジメとしたお城の中へ入っていく女性がいた。

「ふっざけんじゃないわよっ!!」

彼女の名前は野原みさえ。
日本の埼玉県春日部に済む29歳の専業主婦でケツのでかい女性だ。

「ケツがでかいは余計じゃい!!」

みさえの怒りの理由は余りにも悪趣味極まりない催し物である。
命を塵のように踏みにじる振る舞いに腸が煮えくり返る感情で溢れていた。

「あのベリアルって奴、ちょーっと顔がいいからって調子に乗って!絶対にお仕置きしてやるんだから」

普通の一般人なら恐怖で怯えて震えているだろうがみさえは違う。
野原一家は今まで様々な冒険を経験してきた。
時には過去へ行ったり、未来へ行ったり、他の星へ行ったりと
メルヘンやファンタジーやSF世界のような大冒険をしてきた彼女は非常に逞しい女性である。

みさえはベリアルに屈しない。
協力者を集めてこの殺し合いを打破するという確固たる強い意志が瞳に宿っている。

「見てなさいよベリアル、春日部ファイヤーッ!!!」

決意を表明するかのように、自らに気合を入れかのように、お決まりのフレーズを名乗るみさえ。
まずは古城の探索である。
内部を見て回り、必要な物が無いか、他に参加者がいないか調べ回った。


結果を言うと最上階まで上がったみさえは、二人の参加者と出会うこととなった。

「えっ……」

参加者の一人を見つけたみさえは驚き、一瞬固まったあとで参加者の元へ走って駆け寄った。
みさえと出会った参加者も、はいはいの姿勢で進んでみさえの元へと近づく。

「ひま!!」
「たぁ〜」

みさえが抱きかかえる参加者、それは彼女の娘である野原ひまわりだった。
ベリアルはよりにもよって、まだ生後0歳である赤子を殺し合いの参加者として呼んでいたのだ。

「大丈夫?どこか怪我してない?痛い所は無い?」
「きゃはは!」

心配そうにひまわりを見るみさえの心情とは裏腹に
あっちこっち触れられて、ひまわりはくすぐったそうにきゃっきゃっとはしゃいでいる。

「どこも怪我してないわね。よかったぁ……ひまに何かあったら私……」
「あうー?」

ひまわりの無事に安堵するみさえ、それと同時にこんな場所に連れてきたベリアルに再び怒りの炎が燃え盛ったその時である。

「我が娘の身を案じる母親の美しい親子愛、とても素晴らしいじゃあないか」

パチパチパチ、と拍手をしながら二人の参加者を見つめるもう一人の参加者がいた。

「だ、誰なの!?」
「そう警戒するなマダム、俺はこの赤子を魔物達から守っていたのだよ」

玉座に座るその男は、金髪で血のように赤い瞳をしていた。
口調や振る舞いこそは紳士的であるが、みさえは彼の纏う氷のように冷たい異様な気配に警戒する。

「魔物ですって?」
「周囲をよく見るといい、薄暗くて見えづらいが分かるだろう」
「……ッ!?」

男の言う通り、周囲には魔物達の遺体が転がっていた。
これこそがベリアルの言っていた魔物の事だろう。

「つまり俺はこの赤子の命の恩人というわけだ」
「そうよね、警戒してごめんなさい。お礼に何か渡せるものを……」

大切な娘の命を助けてくれた人だと知ったみさえは
役に立つ物は無いかデイバッグを開けようとする。

「道具はいらないさ。ただそれ以外で必要なものがあってね。それを俺に譲ってもらいたいんだ」
「ええ、それで良ければ」

ひまわりの命と比べれば水や食料を渡すことなんてお安い御用、そう考えて快く承諾するみさえ、だったが

「それじゃあ、君達の生き血を俺に頂けるかい?」
「い……生き血?」

男の言うことにみさえは理解することが出来ず聞き返す。
あくまで紳士的な姿勢を崩さないまま気取った表情で男は語る。

「そう、生き血だよ。俺は吸血鬼でね。人間の生き血を糧としているのだよ」

ニヤリと笑う男の口から鋭い犬歯がギラリと映る。
伝承に存在する吸血鬼という物が本当なら魔物達をたやすく葬ったのにも納得が行く。

「ひまわりは……絶対にあんたには渡さない!」
「それじゃあ君が犠牲になるかい?娘のために我が身を捧げる母親、泣けるじゃあないか」

ピキッ!!

みさえの怒りが限界を越した。

「日本の主婦を、舐めんじゃ無いわよぉ――ッ!!!」

みさえの怒りの鉄拳が男の顔にめり込み、吹き飛ばした。
時には彼女は多数の男達を相手取り、勝利したパワフルさも持ち合わせている。
みさえのパンチ力は並みの主婦を凌駕していた。

「ククク、ククククク……気に入った。気に入ったぞ。マダムよ」

男は笑う。
思いっきり殴られ、腫れ上がったはずの頬は既に完治している。
吸血鬼は異常な再生力を持つ。
完全に脳を破壊しない限り、彼の命を断つことは出来ない。

「なにがおかしいのよ!ちょっとイケメンだからって調子に乗ってんじゃないわよ!」
「ククク、すまない。勝ち目が無いと分かっていながら楯突くその胆力は使えると思ってね。
 食料にするのは辞めよう。マダムよ。このディオ・ブランド―の下僕として仕えるがいい。
 恐れる事はない。赤子共々、永遠の命を与えようではないか」

「……そんなの、お断りよぉ!!」

拒絶、と共にみさえは後ろへ向き駆け出した。
目の前にいるこの男、ディオ・ブランドーは、普通じゃない。
明らかに常人とは逸脱した危険な匂いを感じ取ったみさえはひまわりを抱えて逃げた。

「しっかり捕まっててね。ひまわり!」
「おおーっ!」

(あんな奴に私の大事なひまわりを渡してたまるもんですか!)

全力疾走だった。
背後を振りむこうともせず、駆け抜ける。

脚力には自身があった。
毎朝、遅刻したしんのすけを乗せて幼稚園まで自転車で走ったりもしている。
みさえの底力はそこらの成人男性を凌駕している。

凌駕していたのだったが

「そんな慌てて走っては転んで大事な赤子に怪我をさせてしまうよ、マダム」

あっさりとみさえを追い抜き、ウィンクをしながら腕を組むディオの姿があった。
全力疾走するみさえに対し、ディオはまるでスキップをするかのように軽やかな動きで追いついてしまった。

「……ッ!!」

みさえの心は恐怖で凍りついた。
もうこの男からは逃げることは出来ない。
生きてしんのすけやあなたに再開することは叶わない。
そう悟ってしまった。

「げ……下僕ってあんたと同じ怪物になるの?」
「ああ、不安になることはない。いつまでも歳を取らず永遠に生きられるのだ」
「お願い、娘だけは……見逃してほしいの。私はどうなってもいいから」

せめてひまわりだけでも

愛する娘が誰かによって命を奪われないよう、懇願する事だけがみさえに残された手段だった。

「クク、涙ぐましい母子の絆よ。安心するがいい。君の望み通りとしようではないか。
 これから先、俺は君の娘を怪物にさせないし、命を奪うこともしない。決して約束を破らない事を誓おうではないか」
「うう……ありがとうございます……」

ディオの言いなりになるのは酷く嫌悪感を抱くが、娘の命には替えられない。
ひまわりを生かすにはディオの下僕になるしか道は無かった。

「これで契約は成立だ、マダムよ。君の名前を教えてくれないか?」
「野原、みさえ……」
「OK!OK!みさえよ。君はこの島でディオの下僕第一号になれるのだ。光栄に思うが良い!」
「あぅ……ぐっ!」

ディオの指がみさえの額へと突き刺さる。
ズキュンズキュン!!という音と共に
指先から流れる血がみさえの体内へと流れ、循環していく。

「アガがガガガががががッッ!!!」
「あうっ!?」

急激な肉体の変化に声を荒らげるみさえの姿に、ひまわりは不安そうな表情で見つめる。
ビキビキと音を鳴らしながらみさえの顔付きが歪んでいく。
鋭い犬歯が生えだし、ギョロっとした凶悪な目つきと化したみさえがひまわりを睨む。

「やぁぁぁ!!やぁぁぁ!!」

ひまわりは怯え、泣きながらみさえから逃げ出そうとするも
がっちりとみさえに抱きかかえられ、身動き一つ取ることが出来ない。

「うぇぇぇぇぇっ!!うぇぇぇぇぇっ!!」
「ひ、ひまちゃん……」

そう呟くと、みさえはひまわりを抱きしめる力が弱まり、下に俯く。
ゆっくりとひまわりを床に下ろした。

「はなれ……」
「えぅっ?」

自分から離れるようにジェスチャーをしながら苦しむみさえ。
状況が分からず不思議そうに首を傾けるひまわり。
この時がみさえに残された最期の良心だった。

「……美味しそう」

まるで口裂け女のようにみさえの頬が裂け、大口を開けると

「私のひまわりィィィィィッ!!」
「びぇ」

ブチブチィッと肉を噛み千切る音が響き渡る。
ひまわりの頭部を丸ごと食い千切り、首の切断面から噴き出す鮮血がみさえの顔を赤く染める。

ボリボリとスナック感覚でひまわりの頭蓋骨を噛み砕くみさえ。
屍生人となり強大な力を得た事で猛獣さながら咬合力を得ていた。
頭蓋骨の中に詰まっている脳漿もしっかり噛んで味わう。
とろけるような濃厚な風味が口の中に広がり、あまりの美味に恍惚の表情を浮かべうっとりとする。

「ああ、美味しい、美味しいわ。とっても美味しく生まれてくれてありがとうひまわり。
 こんな親孝行な娘を持って私は幸せよぉぉぉぉ!!」

屍生人になった者は邪悪な心が宿る。
例え生前が誇り高き騎士だろうと、我が子を心から愛する母親だろうと変わらない。
高潔な魂を汚し、邪悪なる化け物へと成り果てる、それが屍生人である。

みさえは続けてひまわりの胴体へ食らいついた。
お腹の肉を食い破り、中の臓物を咀嚼し、手足を引き千切り、手羽先のように噛み付く。
血の匂いが鼻腔を充満させる度にみさえの心は悦びに満ち溢れた。

「フフフ、ハハハハ、アハハハハハ!!」

まるで残さず全てを頂くのが親の愛と言わんばかりにひまわりの死体を食べ尽くし、血だらけとなったみさえは笑っていた。
ディオはそんなみさえの様子を眺めながらフッと笑みを浮かべた。

「約束通り、俺は赤子には手を出さなかった、食い殺すのは母親であるお前の方よ」

自らの選択の愚かさを嘲笑うかのように微笑むディオ。
やはり屍生人を増やすには参加者と接触する必要があると確信した。

ディオには屍生人(ゾンビ)を作り出す能力を持っている。
ここに呼ばれる前の彼はその能力で人々を屍生人へと変え、配下を増やしていた。
この世界でも配下を増やすべく、試しに周囲の魔物達を屍生人に変えようとしたが変化は無かった。

魔物では屍生人にならない。
それならば当面の目標は多くの参加者との接触となる。

「みさえよ」
「アハハ……ハイ、なんでしょう。ディオ様♪」
「これからエリアを探索し、他の参加者をここへ向かうように誘導しろ」
「分かったわ!それがディオ様のためになるなら喜んでやらせてもらうわ♪」

身も心もディオの下僕となったみさえはルンルン気分でデイオに従っていた。
骨格を変化させ、一般人と変わらない見た目に擬態して準備を済ませる。

「じゃあデイオ様!行ってきまーす♪」
「ああ、気を付けて向かうといい。それと決して日光には当たるなよ」
「は〜い♪」

夜の王は玉座へと座る。
ジョナサンは今頃、タルカスとプラフォードによって始末された頃だろうか。
ベリアルを始末した後は、その不可思議な力も手に入れようではないか。
その後にこの世界を支配してやろう。

ディオの野心は底しれない。
彼は吸血鬼だけでなく、ベリアルの力も己が手中に収めようと企むのであった。

【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん 死亡】


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険ファントムブラッド】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×2〜6
[思考・状況]
基本方針:優勝する
1:参加者を屍生人に変えて従わせる
2:配下のみさえを参加者集めに利用し、自分は古城で待機
[備考]
※参戦時期はタルカスとプラフォードにジョナサンの始末を任せた時期からです

「あんな素敵なディオ様の下僕にして貰えるなんて私はなんて幸せ者なのかしら♪
 これも私が魅力的だからだったりして……キャー!私ったら何を言ってるのよ〜もう♪」

ディオの下僕として人間を辞め、屍生人として産まれ変わったみさえはルンルン気分で歩いていた。
一先ずは近場の施設へ向かうとしよう。

「まずは近くの施設に向かわないと、万が一でも日光なんて浴びたら大変ですもんね」

ディオ様の役に立ちたい。
ディオ様に失望されたくない。
ディオ様の寵愛を受けたい。

今のみさえにとってディオこそが彼女を動かす原動力となっていた。
しんのすけやひろしの知るみさえはもうこの世にはいない。

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:屍生人化
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:ディオ様のお役に立つ
1:他の参加者を探さなきゃ
2:ひまわりはとっても美味しかったわ
[備考]
※屍生人化により邪悪な人格となっています。
※通常の人間の姿に擬態する事が出来ます。
最終更新:2026年02月15日 21:57