ウパ太郎放浪記3
ウパ太郎は超空間発生装置/モバイルによる空間超越を用い、館内の観測を実行した。
それは空間を小さく繋げた窓を用意し肉眼で視認するというアナログな手法であったが、
処理能力限界に達しているモバイルの力では、それが限界であった。
この館は特殊な“揺らぎ”に包まれて居るらしく、ウパ太郎の力の源であるモバイルの
力が完全には発揮できない状況に置かれていたのだ。モバイル/超空間発生装置は名の通
り超空間を発生させる装置である。空間を湾曲させ空間同士を繋げたり軸同士を繋げたり
は出来るものの、そこに流れる“時間”の軸には操作が及ばない。量子スピンの安定に最
大限配慮し、同じ時間軸に属する世界への安定接続が可能ではあるが、現在以外への接続
を試みる時、その安定性は全く失われる。少しのズレが指数関数的に拡張され、もし違う
時間軸との接続を試みれば、宇宙の開闢よりも前の高密度過ぎる絶対の虚無、もしくは完
全に増大したエントロピー最大の死んだ宇宙に繋がる。そうなれば元の軸は、誕生の産声
か死の嘆きに耳を劈かれ、たちまち絶命してしまう。幸いなことに、時間軸間の移動はモ
バイル側で規制してくれている。
ウパ太郎はモバイルの精神感応基/テレパススキャナを利用した翻訳機により、先頃仲
間になった“記憶喪失した桃花”とやらに報告した。
『残存51──また一人殺られた。あと50人』
記憶喪失した桃花は生簀のそば、キッチンの上に腰を下ろし、醤油の瓶を抱えてウパ太
郎に返事をする。
「ふむ、シェアワに参加したことはあるが、ロワは初参加だな」
ところで、と記憶喪失した桃花は続ける。
「淡泊な味だという噂もあるんだが、お前は自分がどんな味だと思う」
『……美味しくはない、と思う』
試して見る気はないか、と記憶喪失した桃花は、醤油の瓶を抱えて身を乗り出す。その
目は大好物を目の前にした犬みたいにキラキラと輝いていた。身を乗り出して前屈みにな
った記憶喪失した桃花のサラシも巻いていない無防備な胸が、はだけた和服の合わせから
ウパ太郎には見えてしまったが、種族が違うので特に何の感想も浮かばなかった。先端の
色みがウーパールーパーみたいで少し親近感が沸いた程度である。
『遠慮しておくよ。君が腹を下したら大変だ』
ウパ太郎は、最悪のときには一人で逃げよう、と心に決めたのだった。
それは空間を小さく繋げた窓を用意し肉眼で視認するというアナログな手法であったが、
処理能力限界に達しているモバイルの力では、それが限界であった。
この館は特殊な“揺らぎ”に包まれて居るらしく、ウパ太郎の力の源であるモバイルの
力が完全には発揮できない状況に置かれていたのだ。モバイル/超空間発生装置は名の通
り超空間を発生させる装置である。空間を湾曲させ空間同士を繋げたり軸同士を繋げたり
は出来るものの、そこに流れる“時間”の軸には操作が及ばない。量子スピンの安定に最
大限配慮し、同じ時間軸に属する世界への安定接続が可能ではあるが、現在以外への接続
を試みる時、その安定性は全く失われる。少しのズレが指数関数的に拡張され、もし違う
時間軸との接続を試みれば、宇宙の開闢よりも前の高密度過ぎる絶対の虚無、もしくは完
全に増大したエントロピー最大の死んだ宇宙に繋がる。そうなれば元の軸は、誕生の産声
か死の嘆きに耳を劈かれ、たちまち絶命してしまう。幸いなことに、時間軸間の移動はモ
バイル側で規制してくれている。
ウパ太郎はモバイルの精神感応基/テレパススキャナを利用した翻訳機により、先頃仲
間になった“記憶喪失した桃花”とやらに報告した。
『残存51──また一人殺られた。あと50人』
記憶喪失した桃花は生簀のそば、キッチンの上に腰を下ろし、醤油の瓶を抱えてウパ太
郎に返事をする。
「ふむ、シェアワに参加したことはあるが、ロワは初参加だな」
ところで、と記憶喪失した桃花は続ける。
「淡泊な味だという噂もあるんだが、お前は自分がどんな味だと思う」
『……美味しくはない、と思う』
試して見る気はないか、と記憶喪失した桃花は、醤油の瓶を抱えて身を乗り出す。その
目は大好物を目の前にした犬みたいにキラキラと輝いていた。身を乗り出して前屈みにな
った記憶喪失した桃花のサラシも巻いていない無防備な胸が、はだけた和服の合わせから
ウパ太郎には見えてしまったが、種族が違うので特に何の感想も浮かばなかった。先端の
色みがウーパールーパーみたいで少し親近感が沸いた程度である。
『遠慮しておくよ。君が腹を下したら大変だ』
ウパ太郎は、最悪のときには一人で逃げよう、と心に決めたのだった。