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ウパ太郎

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eroticman

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ウパ太郎


 ウパ太郎はモバイルの精神感応基(テレパススキャナ)越しに悪意を感じ取った。
 ウパ太郎は複雑な心持ちのまま、その悪意を責め切れずに感知し続ける。
 善意が必ずしも善で無いように、悪意もまた絶対の悪足り得ることは無く、ともすれば
世界を生み出してしまうほどのプリミティブな切っ掛けとさえ成り得る事を、ウパ太郎は
自らの存在が発生した“軸”の開闢を神格生物との語らいから知った時から、深く埒に置
いていた。ウパ太郎が生まれた“軸”もまた、悪意を初端として開闢し、善意による構築
と倦みによる放逐を経験し、流浪し、あって無いようなかそけき軸をおぼつかないまま手
繰りよせて結び合わせ、なんとか生き延びてきたのだ。
 ウパ太郎の生きる“軸”は、無限多元平行宇宙の形を成していない。
 神格生物の有限の処理能力によって都度ごとに構成され、その軸が観測される価値無し
と判断されれば、割り当てられた有限の処理能力をより観測される価値がある世界の構築
に回される。そうなれば“軸”は鼓動を止め、断絶した可能性は近傍の軸に収束するかエ
ントロピーの彼方に霧消する。
 ウパ太郎の存在する“軸”はそのようにして神格生物の興味関心の数だけ分岐分枝を伸
ばし、処理能力との兼ね合いによって収束してクビレ、また神格生物の気紛れで分岐し、
そしてクビレる。ミミズが蠢動するように“軸”は前進する。
 生と死は同様に辛く厳しい。だがウパ太郎は自らの生をそれだけのものとは考えられず、
また、そうでは無いと信じたいがゆえ、自らの存在を理由付けた悪意というものをただ単
純に一絡の悪として捉えられなかった。
 現に神格生物は、ウパ太郎達のようなモバイラーにモバイルという手段を与えた。武力
均衡を計ったほうが長く楽しめる、という考えがその根底に在ったとしても、少なくとも
延命処置を施したくなる程度には、世界を構成する者に気に掛けられている、と言える。
 だからこそウパ太郎は与えられた力の意味を考え、考え過ぎて腹を減らす。
 水面近くに浮上して口をパクつかせると、腹減ったのかウパ太郎、とか言ってスーパー
モバイラーが餌をくれる。
 飯を食って腹が膨れている間、ウパ太郎は生と死が辛いだけにとどまらないことを痛感
するのだった。



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