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レンジャーズ~drop!~

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eroticman

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レンジャーズ~drop!~


 上空五百メートル。時速七百キロ。それは飛んでいた。

「グリーンへ。敵は散開を開始したわ。」
「解った。サーモバリックを使え」
「了解。進路はそのままでね」

 ファットクロウのコクピット。グリーンの後席に座るピンクはタッチパネルを操作し、兵装システムのウインドウを開く。いくつかある表示の内、ミサイルのマークを押し、使用する武器を選ぶ。

『Type-27』

 ピンクが選んだ武器はそれだった。
 ファットクロウのウェポンベイの扉が開き、アームがそれの頭を外側へと導く。
 前席のグリーンが叫ぶ

「射程に接近! 発射準備は!?」
「レーダーロックオン。いつでも撃てる」
「よし、やれ!」
「ファットクロウ、ファイアーボール発射!」

 空に白い雲が伸びる。それはマッハ二で伸びていく。

 彼らは異変に気付いた。遥か彼方から接近するそれに。
 そして思いだす。かつて戦った相手が似たような武器を使用した事に。彼らの集団がそれに気付いた時、彼らを支配したのは困惑だった。
 ありえない。滅びたはずの敵が、それを使用する程の敵が今、生き残っているはずは無いのだから。
 そしてそれが上空へ来た時、彼らの中の一人は見た。
 一瞬でそれが大きな真っ白い気体に変わり、次に巨大な火球になる様を。
 本来それは知覚など出来ないほどの速度で起こる。
 だが死を目前にした時、その感覚が極限まで研ぎ澄まされ、それを見る事を可能にさせたのかもしれない。
 事実、彼は巨大な火球の出撃と同時に死に絶えてしまったのだ。

 どぉーん。

 グリーンはそれを目撃する。とてつもない爆発が起き、敵に――寄生の一団の大多数にダメージを与えたはずだ。彼はそう確信していたが、確認作業は彼の仕事では無い。

「ピンク、敵性反応は?」
「まだ生き残りが居るわ。……大物も混じってるかも」
「了解。ここからは奴らの仕事だ」

 グリーンは機内無線を操作し、後部の仲間へ報告する。
 彼らもその時を待っていたはずだろう。

《レッド及びブラック、降下準備。イエロー。サポートシステムを確認せよ》

「……りょーかいっと」

 過疎レッド――陽斗はボソッっと返事をする。無線はヘルメットと連結されているため、小声でも十分だった。

「ようやく来たか。この時を待っていたぜ」
「はしゃぎ過ぎるなよ」

 過疎ブラック――望は、意気揚々としている。メンバー唯一の十代の戦士は、待ちきれないといった様子だった。
 モニターに囲まれたイエローが二人を見ずに言う。

「降下予定地点まで旋回してから接近する。敵も気付いているはずだ。降下中の攻撃に注意してくれよ」
「どーやって注意しろってんだよ」

 すぐさま望が食ってかかるが、陽斗はそれに冷静に言い返す。

「黙れよ。どうせ自由落下で下まで行く。敵も攻撃する暇ないさ」
「ハッ! わかんねーぞ。どんな武器持ってるか」
「俺らには通用しない」
「言ったな。ならその無敵っぷりをたっぷり見せてもらうぜ」
「二人とも止めろ。降下地点だ」

 イエローが言う。そしてそのイエローの操作でファットクロウの後部ハッチが開き、二人はその前に立つ。

「いい眺めだなぁおい! 七百キロの機体から飛ぶなんて滅多に出来ねぇぜ!」
「そのうち毎日のようにやらされるさ」

 二人は地上を見ながら指令を待つ。一人は静かに。もう一人はワクワクしながら。
 そして機内無線で連絡を受けたイエローが、その指示をさらに無線で二人に伝える。

《降下地点通過。レッド、ブラック。降下せよ》
「……レッド、了解」
「ィィィィヤッホォォォオオオウゥゥゥ!!」

 二人の反応は対照的だったが、行動は計ったように同じだった。二人とも昔から、地上作戦を行う為の訓練を共に受け、そして練磨し合いながら。
 同時に飛び出した彼らは、敵にとって地に降りる悪魔となるべくここまで来た。

 二人のバイザーに表示される高度計はみるみる数値を減らして行く。速度計は時速二百キロを指している。
 そしてもう一つ。接近する何かをも教えてくれる。

「……おい陽斗! 見えてるか!」
「今はレッドだ! 見えてる。構えろ!」

 落下しながら二人は銃を構える。バイザーの指示に従い敵が居る地点へ銃口を向けると、それは居た。
 第一撃の火球から逃れた、敵の一匹。
 巨大な鳥の姿をした、真っ黒い何か。寄生だ。

「連中飛んだりすんのかよ!!」
「関係ないさ。攻撃準備!!」

 レッドとブラックは銃の安全装置を解除し、フルオートに設定するよう頭の中で考える。ヘルメットはその脳波を感知し、システム連結された銃はカチと音を立てその状態になり、バイザーにはその旨が表示されている。

「撃て!!」

 銃が火を吹く。
 特別のホットロードは強烈なプレッシャーで弾頭を押しだし、銃口からマッハ三でそれが飛び出す。
 黒い鳥はその攻撃を受け大穴を開ける。翼は穴が空き、胴体には生々しい傷が出来る。
 銃はそれを一秒間に十発のペースで行う。しかも二人がかりでだ。

 打たれながらも、黒い鳥はこちらへ接近してくる。
 それから感じるのは殺気。それも明らかに憎悪の込められた――

 黒い鳥は接近する。もう目の前まであと僅かなという時、銃弾の一発が頭部を捕らえる。
 奇声が上がったと同時に、羽ばたきが止み、そのまま落下軌道に入る。
 しかし、少しばかり接近し過ぎたようだ。
 黒い鳥は惰性でさらに近づき、落下しつつも二人と交差し、そして一緒に落下していく。
 そして地面が目の前に来た次の瞬間、轟音を立てて黒い鳥は自らの体重が生み出した運動エネルギーによって粉々に砕け散った。
 そしてそれと同時に落下し、地面に叩き付けられたはずの二人は――


 落下地点の周りには生き残った人と同じ形をした真っ黒い寄生が集まってきた。

 火球から逃れた彼らはもっぱらヒトガタという安直な名前で呼ばれる寄生達。
 寄生軍の主力であり、人と同じ形が故に人と同じ武器を操る。
 そのうえ数は異様に多く、しかも次々生み出される。
 死も苦痛も恐れない彼らで組織された、「戦争の女王」たる寄生の歩兵達は、現在地上で最強の軍と言えるだろう。

 彼らは落下した黒い鳥を取り囲み、まだ舞い上がったままの砂煙の奥に目を懲らした。何かが居る気がするのだ。
 そして手にした銃を構え、砂煙の中へ潜入した時、向こうから二つの閃光が見えた。
 一瞬。連続した銃声の後、近づいた寄生達は次々倒れる。砂煙の外に居た寄生達は訳も分からずその様子を見ていたが、やがて彼らにも銃弾が襲いかかり倒れてゆく。

 真っ黒な死体が転がる中、砂煙の中に立つのは二人の人の影。


「……レッド及びブラック。降下完了」



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